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第28章(終幕)
しおりを挟む――暗闇の中で、誰かが傷つく気配がした。
ぼんやりと霞む視界の奥で、宗一が黒い鎖に縛られ、エリスの魔力に晒されていた。
「……やめろ……やめてくれ……!」
声にならない叫び。けれど、胸の奥から湧き上がる感情が、アルマの意識を揺さぶった。
(宗一に、触れるな……)
残った魔力は、ほんのわずか。封印に吸われ、ほとんど残されていなかった。
けれど、それでも。
――この命を燃やしても。
「俺は……もう、守られるだけじゃいられないんだ……!」
その瞬間、アルマの封印の内側で光が爆ぜた。
逆転の術式が構築される。
彼がかつて、誰にも教えず秘めていた最後の魔法。
封印術の反転。
本来「閉ざす」ための呪を、「封じ返す」ための力に変換する。
光と闇が入り混じる魔方陣が瞬時に結界の内側から展開され、エリスに向けて放たれる。
⸻
逆転の魔――その結末
「……なに、を……?」
予期せぬ方向から浴びせられた魔術に、エリスの身体がぐらつく。
「くっ……こんな、力で……!」
術は確かに彼女に届いた――けれど、魔力が足りなかった。
完全な封印とはならず、ただ、その肉体を急速に変質させていく。
「やめ……これは、なに……っ」
骨が軋み、体が縮んでいく。
その威圧的な姿は、やがて五歳ほどの幼子の姿へと変わっていった。
「……ぁ……う……?」
言葉が出ない。言語能力も記憶も剥がれ落ち、彼女は無垢な瞳であたりを見回す。
その場にいた誰もが、ただ呆然と立ち尽くす。
かつての恐怖の権化であった女が、今はただの無力な子どもとして、その場に座り込んでいた。
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