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第29章 《やわらかな夜明け》
しおりを挟む魔力の果て、崩れゆく封印
砕けた氷のように、アルマの封印は完全に崩壊した。
白く浮かぶ羽の中心に、ぼろぼろの姿でアルマが現れる。
その瞳はどこか遠くを見ていた。けれど、意識ははっきりと宗一の元へと向いていた。
「……お前が……俺を、呼んでくれたんだな……」
「当たり前だろうが……遅ぇんだよ」
宗一はそのまま崩れそうになるアルマを抱きとめた。
その体は軽く、温もりは確かにあるけれど、何かがすり減ってしまっているのがわかった。
「まだ……言ってないこと、いっぱいあるんだ」
「それはお互い様だ」
宗一の手がそっとアルマの頬に触れる。
「全部聞くから、生きろ。ここで、ちゃんと――生きろ」
⸻
遠く、響く声
一方で、遠くでノアが律を抱きとめていた。
「……終わったよ、律。少しだけ、だけど……道が開けた」
「ノア……お兄ちゃん、助かったんだよな?」
「うん。でも――これからが本当の始まりだ」
幼子と化したエリスを静かに見守る兄弟たち。
王位継承の混迷、魔界の秩序の再構築――それは、まだ先のこと。
けれど、今だけは。
この夜だけは、誰もが小さな安堵に包まれていた。
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