黒羽の約束

猫目オテテ

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第28章 魂の揺らぎ

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封印の結晶――内側

 意識の深淵。
 凍てついた空気の中で、アルマの意識は浮かんでいた。

 孤独だった。暗闇の中、音もない。
 ただひたすら、凍りついた記憶の中に閉じ込められていた。

 けれど――その中に、微かな温もりが触れた。

 (宗一……?)

 薄氷のような世界の中、名を呼ばれる感覚が、彼の魂に震えを起こす。

 ――来てくれたのか。

 遠く、結晶の外から伝わってくる懐かしい気配。
 それはカラスの姿だった自分を拾い、無償に優しさを注いでくれた男。

 自分の正体を知ってなお、拒まなかった人。

 (会いたい……)

 今、ようやくその想いが、はっきりと胸に浮かんでいた。



封印外――宗一の魂の共鳴

 掌に感じる冷たさの中に、確かに鼓動がある。
 宗一の指先に、柔らかい温もりが流れ込んだ。

 「……感じた。お前、ここにいるな」

 言葉に出したとき、結晶の奥でアルマの姿がゆらりと現れる。

 眠ったように、静かに横たわる白い姿。
 黒い羽が肩に一枚、揺れている。

 宗一の視界が滲む。何かが込み上げてきて、言葉にならない。

 「お前が……どんな世界に生きていたとしても。俺の想いは変わらない」

 そう言って、宗一は結晶に額をそっと当てた。



精神の接触

 その瞬間、ふたりの心が交差した。

 「……宗一……?」

 (アルマ……!)

 空間が歪み、二人の意識が重なる。

 アルマは目を見開き、宗一の姿を見つめた。
 宗一もまた、まるで夢の中のように、柔らかく彼に微笑みかけた。

 「待ってろ。今度は、俺が迎えに行く」

 「……俺、もう……逃げない。お前に、会いたかったんだ……」

 ふたりの距離が近づく。指先が触れ合い、微かに灯がともる。
 そのぬくもりが、封印の結晶に走る亀裂をさらに深く刻んでいった。



エリスの妨害

 しかし、結界の中心が崩れようとしたそのとき。
 天井が割れ、漆黒の魔力が落下する。

 「――愚か者どもが」

 石畳を砕いて降り立ったのは、長女・エリス。
 その瞳には情のかけらもなく、口元には冷笑が浮かぶ。

 「私の命令に逆らった罪、弟に手を貸した罪。全部、ここで清算してもらう」

 黒い蛇のような魔力が、兄弟たちの周囲を取り囲む。
 結界の扉が激しく揺れ、封印が崩壊しかけた瞬間に、また締め直される。

 「――くそっ、間に合わないのか……!」

 ノアが叫び、宗一が拳を強く握る。

 「行かせるかよ……。アルマは、もうお前の操り人形じゃねぇ!」



絶望の中の希望

 宗一が魔力に飲まれかけながらも、叫ぶ。

 「アルマァ!! ――生きろ!!」

 その叫びが、結晶の奥まで届いた。

 アルマの瞳が、開かれた。

 その瞬間、封印の中から黒い羽が一斉に舞い上がり、氷の檻に裂け目が走る。

 だが、エリスの手がそれを阻もうとした刹那――

 兄弟たちの魔力が連結され、封印へ最後の力を注ぎ込む。
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