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とんずら1
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「ご令嬢の今日の運勢は、破滅の一途。日没前には人生の転落を迎えるだろう。ラッキーアイテムは金のドアノブ。没落の道を回避する助けとなるやもしれぬ。見逃さぬことじゃ」
クラリスが、王太子に呼び出され、王城に参上した時のことである。内城へ通じる渡り廊下を渡るところで、そんな『お告げ』を聞いたのは。
相手はぼろをまとった老婆だった。その日は貧救日で、王宮の庭にはパンやスープの施しを求める民が溢れていた。老婆一人くらい迷い込んでも不思議はないけれど、広場の奥まで来て、わざわざ高位貴族を呼び止める者はそういない。まして、占いをしてやろうと持ち掛けてくる者は初めてに違いない。
クラリスに随行していた侍女がさり気なく遠ざけようとしたけれど、他でもないクラリスが発言を許したのだ。まさか破滅を言い渡されるとは思っていなかったので、ブロイ公爵家の人間として冷静沈着を教え込まれたクラリスも、さすがに返答に窮したけれど。
「アリサ、らっきーあいてむとは何だ?」
「真面目に取り合わないでください、お嬢様」
冷静に返すアリサに構わず、クラリスは老婆を見遣る。すると、老婆はみすぼらしい見た目を裏切る丁寧なお辞儀で応えた。
「ご令嬢の歩みは今、破滅へと一直線に向かっておる。その道筋を、僅かでも逸らすことができるきっかけとお考えくだされ」
「心強い話だな。今日没落すると言われても実感はないが、胸に留めておこう」
クラリスが金子を出させようと振り返ると、アリサは老婆の首を絞めかかりそうな顔をしていた。
クラリスはため息とともに、自分の指輪を一つ外した。
「占いの礼だ」
「クラリス様!」
「今日没落するなら渡しておかねば。財産を失ってからでは遅いだろう?」
「そ……」
クラリスがわずかに口角を上げる。滅多に冗談を言わない主人だけに、アリサも咄嗟に何も言えなくなったらしい。
老婆は節くれだった手で指輪を受け取ると、深く深くお辞儀した。
「噂と違い慈悲深い方じゃ。ご令嬢の道行きが明るいことを切に願いましょうぞ」
頷いて、クラリスは踵を返した。
もちろんクラリスはお告げなど信じていなかった。彩のない一日に少し面白い話を聞いた。それくらいの気持ちだった。
少なくともまだこの時は。
クラリスが、王太子に呼び出され、王城に参上した時のことである。内城へ通じる渡り廊下を渡るところで、そんな『お告げ』を聞いたのは。
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「真面目に取り合わないでください、お嬢様」
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「ご令嬢の歩みは今、破滅へと一直線に向かっておる。その道筋を、僅かでも逸らすことができるきっかけとお考えくだされ」
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クラリスはため息とともに、自分の指輪を一つ外した。
「占いの礼だ」
「クラリス様!」
「今日没落するなら渡しておかねば。財産を失ってからでは遅いだろう?」
「そ……」
クラリスがわずかに口角を上げる。滅多に冗談を言わない主人だけに、アリサも咄嗟に何も言えなくなったらしい。
老婆は節くれだった手で指輪を受け取ると、深く深くお辞儀した。
「噂と違い慈悲深い方じゃ。ご令嬢の道行きが明るいことを切に願いましょうぞ」
頷いて、クラリスは踵を返した。
もちろんクラリスはお告げなど信じていなかった。彩のない一日に少し面白い話を聞いた。それくらいの気持ちだった。
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