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第180章 闇を裂く突破戦
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一同はしばらく議論を続けた。
意外にも、いくつかはフィルードの目から見ても実行可能性が極めて高く、思わず内心で評価させられるものだった。
(……なるほど。戦場経験の浅い者たちでも、追い詰められた状況では悪くない案を出すものだ。だが――最適解はすでに見えている)
最終的に、一同は当初の方針通り、夜陰に紛れ城内へ突破する案に決定した。
ウェインとウェリアムが同時にフィルードへ視線を向ける。
穏やかな表情をしたウェリアムが言った。
「フィルード団長。あなたが夜戦に長けているのは承知している。我々の状況からすれば夜間突破が唯一の道だ。この件について、何か良い助言はあるか?」
(来たな。予定通りだ。こちらが提案する前に“指名”させたことで、発言の通りやすさは段違いになる)
フィルードは咳払い一つして口を開いた。
「侯爵様。敵は我々を包囲していますが、距離はそれほど離れていません。前回と同じく軍を百人規模の小隊に分け、蜂の群れのように散開しながら子爵城へ突進するだけで充分です。
城壁下にさえ辿り着けば、我々は壁を盾に戦えます。そうなれば敵の騎兵は全く役に立ちません」
そして、淡々と続ける。
「さらに重要なのは、城内に私の配下三千が待機していることです。全員が投槍兵。敵兵が近づけば、想像以上の“驚き”を与えられるでしょう。
加えて、城壁上には私が持ち込んだ大型弩弓が数十基あります。あれは騎兵殺しです。敵の騎兵は距離を詰めようとすれば、甚大な損害を受けることになります。
ただし――その前に城内へ人を送り、かがり火で連携を取る必要があります。これを怠れば夜間突破は不可能です」
そこではじめて、一同はフィルードが連れてきた奇妙な部隊――奇妙な矢ではなく“投槍”を背負った兵士たち――を思い出した。
話がまとまると、その夜、夜目の利く兵数名が城内へ潜入し、点灯の準備を整えた。
――翌夜。
大軍は一気に城壁へ接近した。前回と同じく、蜂の巣が崩れるように各方向へ散開して疾走する。
夜間の騎兵は行動が大きく制限され、敵が追跡するのはほぼ不可能だった。
最終的に、三万五千のうち三万二千が城下へ到達。
三十隊が完全に殲滅されたが――
(……この状況では上出来だ。損失は痛いが、致命傷にはならん)
城壁下で防衛線を速やかに再編し、敵の追撃に備えた。
夜が明け、薄光が戦場を照らしはじめる頃には、敵はすでに包囲陣形を整えていた。
今にも大戦が始まりそうな緊張が走る。
城外の兵は内部に入ることを恐れ、弓兵だけがロープや雲梯を用いて城壁へと登った。城上には重厚な防衛線が築かれた。
敵軍が百メートルまで近づく。
次の瞬間――
城壁の上から矢がまるでイナゴの群れのように降り注いだ。
敵も同時に反撃する。
その中で、フィルードが持ち込んだ数十台の大型弩弓は圧倒的な存在感を放った。
一射ごとに数名の命が吹き飛ぶ。
城下にいるウェインでさえ思わず息を呑んだ。
(……派手すぎるぐらいだが、こういう“誇示”は士気に直結する。悪くない)
距離が縮まると、兵士たちは熟練した動作で投槍器に投槍を装填。
ブルースとユリアンの号令が響く。
「投槍準備――放て!」
空が裂ける音。
投げ放たれた槍の雨が空を覆い、敵の隊列へ突き刺さった。
距離がまだ遠いため威力は抑えられていたが、それでも中央の軽歩兵に甚大な損害を与えた。悲鳴が連鎖的に広がる。
敵味方双方がその凄惨な光景に息を呑む。
(……やはり、俺の投槍兵は“歩兵殺し”として完璧に機能する)
隊列が乱れかける敵軍を、軍官たちが怒号で必死に押し留める。
だが、再装填を終えた投槍第二波が飛来した瞬間、状況は一変した。
距離が縮まったため威力は倍増し、後陣は野草のように倒れ続ける。
このとき前線では刀盾兵が激突し、地鳴りのような鬨の声が響いていた。
城壁上の投槍兵は止まらず、依然として敵の後陣へ容赦なく突き刺していく。
敵の将軍もその異常に気付いたのか、背後の兵士が倒れていく様に明らかに動揺していた。
ここで味方の士気は一気に爆発した。
(あと一押し……このまま押し切れる)
まさにその時――
反攻の号角が高らかに鳴り響く。
ウェイン侯爵が好機を逃さず、中級魔法を放ち、敵前列を吹き飛ばした。
敵側の中級魔法使いも反撃する。
フィルードはその殺意を敏感に察知し、
(まずい)
と判断するや、人混みの陰に素早く身を潜めた。
初級魔法使いたちが入り乱れ、魔法を投げては逃げ、投げては逃げ――
超凡者に死傷はほぼ出ないが、一般兵は容赦なく倒れていった。
ついにウェインが叫ぶ。
「突撃!」
兵士たちは鬱憤を一気に吹き飛ばし、大反攻を開始。
超凡者の戦士たちも敵陣に突入し、次々と敵を切り伏せていく。
薄くなった敵陣は瞬く間に破られた。
周囲にいた敵騎兵は城壁を恐れ、手を出せない。
隊列が崩れた瞬間、敵兵の一部が武器を捨てて逃げ出し、雪崩が起きるように全軍が混乱していく。
味方の兵士は追撃に移ろうとしたが――
フィルードは焦りを隠さず叫んだ。
「追うな! 絶対に追うな! 城壁の援護外へ出れば、敵騎兵に皆殺しにされるぞ!」
その声に兵士たちは我に返り、足を止めた。
こうして開戦以来最大の勝利を得た。
敵に四千以上の損害を与え、こちらは千未満。
久しぶりに胸のすくような勝利だった。
敵が安全距離まで退くと、カールトン子爵城も城門を開き、城外部隊を受け入れた。
しかし――
人間同士の戦いは獣人との戦いより遥かに陰湿だ。
ちょうど麦が穂を出しかけた頃、老いぼれシウスは周囲の農作物を破壊し、小領地を焼き払い、民衆に耐え難い苦しみを与えた。
(……これが“人間の戦争”だ。救いなどない)
味方の騎兵は少なく、城に籠もるしかなかった。
敵は半月も荒らし回り、ようやく撤退した。
こうして今回の遠征は、竜頭蛇尾の形で幕を閉じた。
ウェインにとっても痛恨の結果だった。
さらに数日間の駐屯を経て、フィルードはウェインと共にダービー城へ撤退した。
意外にも、いくつかはフィルードの目から見ても実行可能性が極めて高く、思わず内心で評価させられるものだった。
(……なるほど。戦場経験の浅い者たちでも、追い詰められた状況では悪くない案を出すものだ。だが――最適解はすでに見えている)
最終的に、一同は当初の方針通り、夜陰に紛れ城内へ突破する案に決定した。
ウェインとウェリアムが同時にフィルードへ視線を向ける。
穏やかな表情をしたウェリアムが言った。
「フィルード団長。あなたが夜戦に長けているのは承知している。我々の状況からすれば夜間突破が唯一の道だ。この件について、何か良い助言はあるか?」
(来たな。予定通りだ。こちらが提案する前に“指名”させたことで、発言の通りやすさは段違いになる)
フィルードは咳払い一つして口を開いた。
「侯爵様。敵は我々を包囲していますが、距離はそれほど離れていません。前回と同じく軍を百人規模の小隊に分け、蜂の群れのように散開しながら子爵城へ突進するだけで充分です。
城壁下にさえ辿り着けば、我々は壁を盾に戦えます。そうなれば敵の騎兵は全く役に立ちません」
そして、淡々と続ける。
「さらに重要なのは、城内に私の配下三千が待機していることです。全員が投槍兵。敵兵が近づけば、想像以上の“驚き”を与えられるでしょう。
加えて、城壁上には私が持ち込んだ大型弩弓が数十基あります。あれは騎兵殺しです。敵の騎兵は距離を詰めようとすれば、甚大な損害を受けることになります。
ただし――その前に城内へ人を送り、かがり火で連携を取る必要があります。これを怠れば夜間突破は不可能です」
そこではじめて、一同はフィルードが連れてきた奇妙な部隊――奇妙な矢ではなく“投槍”を背負った兵士たち――を思い出した。
話がまとまると、その夜、夜目の利く兵数名が城内へ潜入し、点灯の準備を整えた。
――翌夜。
大軍は一気に城壁へ接近した。前回と同じく、蜂の巣が崩れるように各方向へ散開して疾走する。
夜間の騎兵は行動が大きく制限され、敵が追跡するのはほぼ不可能だった。
最終的に、三万五千のうち三万二千が城下へ到達。
三十隊が完全に殲滅されたが――
(……この状況では上出来だ。損失は痛いが、致命傷にはならん)
城壁下で防衛線を速やかに再編し、敵の追撃に備えた。
夜が明け、薄光が戦場を照らしはじめる頃には、敵はすでに包囲陣形を整えていた。
今にも大戦が始まりそうな緊張が走る。
城外の兵は内部に入ることを恐れ、弓兵だけがロープや雲梯を用いて城壁へと登った。城上には重厚な防衛線が築かれた。
敵軍が百メートルまで近づく。
次の瞬間――
城壁の上から矢がまるでイナゴの群れのように降り注いだ。
敵も同時に反撃する。
その中で、フィルードが持ち込んだ数十台の大型弩弓は圧倒的な存在感を放った。
一射ごとに数名の命が吹き飛ぶ。
城下にいるウェインでさえ思わず息を呑んだ。
(……派手すぎるぐらいだが、こういう“誇示”は士気に直結する。悪くない)
距離が縮まると、兵士たちは熟練した動作で投槍器に投槍を装填。
ブルースとユリアンの号令が響く。
「投槍準備――放て!」
空が裂ける音。
投げ放たれた槍の雨が空を覆い、敵の隊列へ突き刺さった。
距離がまだ遠いため威力は抑えられていたが、それでも中央の軽歩兵に甚大な損害を与えた。悲鳴が連鎖的に広がる。
敵味方双方がその凄惨な光景に息を呑む。
(……やはり、俺の投槍兵は“歩兵殺し”として完璧に機能する)
隊列が乱れかける敵軍を、軍官たちが怒号で必死に押し留める。
だが、再装填を終えた投槍第二波が飛来した瞬間、状況は一変した。
距離が縮まったため威力は倍増し、後陣は野草のように倒れ続ける。
このとき前線では刀盾兵が激突し、地鳴りのような鬨の声が響いていた。
城壁上の投槍兵は止まらず、依然として敵の後陣へ容赦なく突き刺していく。
敵の将軍もその異常に気付いたのか、背後の兵士が倒れていく様に明らかに動揺していた。
ここで味方の士気は一気に爆発した。
(あと一押し……このまま押し切れる)
まさにその時――
反攻の号角が高らかに鳴り響く。
ウェイン侯爵が好機を逃さず、中級魔法を放ち、敵前列を吹き飛ばした。
敵側の中級魔法使いも反撃する。
フィルードはその殺意を敏感に察知し、
(まずい)
と判断するや、人混みの陰に素早く身を潜めた。
初級魔法使いたちが入り乱れ、魔法を投げては逃げ、投げては逃げ――
超凡者に死傷はほぼ出ないが、一般兵は容赦なく倒れていった。
ついにウェインが叫ぶ。
「突撃!」
兵士たちは鬱憤を一気に吹き飛ばし、大反攻を開始。
超凡者の戦士たちも敵陣に突入し、次々と敵を切り伏せていく。
薄くなった敵陣は瞬く間に破られた。
周囲にいた敵騎兵は城壁を恐れ、手を出せない。
隊列が崩れた瞬間、敵兵の一部が武器を捨てて逃げ出し、雪崩が起きるように全軍が混乱していく。
味方の兵士は追撃に移ろうとしたが――
フィルードは焦りを隠さず叫んだ。
「追うな! 絶対に追うな! 城壁の援護外へ出れば、敵騎兵に皆殺しにされるぞ!」
その声に兵士たちは我に返り、足を止めた。
こうして開戦以来最大の勝利を得た。
敵に四千以上の損害を与え、こちらは千未満。
久しぶりに胸のすくような勝利だった。
敵が安全距離まで退くと、カールトン子爵城も城門を開き、城外部隊を受け入れた。
しかし――
人間同士の戦いは獣人との戦いより遥かに陰湿だ。
ちょうど麦が穂を出しかけた頃、老いぼれシウスは周囲の農作物を破壊し、小領地を焼き払い、民衆に耐え難い苦しみを与えた。
(……これが“人間の戦争”だ。救いなどない)
味方の騎兵は少なく、城に籠もるしかなかった。
敵は半月も荒らし回り、ようやく撤退した。
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