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第三章 追憶の英国式スコーン
追憶の英国式スコーン④
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店を出てから、憂さ晴らしに私は町をぶらついた。
ショーウィンドウを覗き込んだり、書店の看板を見つけて足を止めたり。
しかし心は少しも晴れなかった。
宿へ戻ったのは、日が落ちかけた頃だった。
今夜の夕食は何だろう。そう思いながらドアを開けると――。
「あぁ!サクロー!!」
駆け寄ってきたおかみさんは、勢いそのままに私に抱きついた。
「サクロー、支度しな!今すぐ日本に帰るんだ!」
耳を疑った。日本に帰る?どうして?
「奥さんが……あんたの奥さんが、死んじまったんだよ!」
頭が真っ白になった。妻が――死んだ?
そんなはずはない。彼女は日本にいて、私の留守の間、家を守っているのだ。
娘だって、まだ手のかかる年頃で……。
言葉を失ったままの私の頬を、おかみさんはパシン!と打った。
「しっかりしな!あんたがそんなんじゃ、ひとり残されたお嬢ちゃんはどうすりゃいいんだい!」
本当に……?本当に妻は――。
背後の扉が勢いよく開き、荒々しい足音が近づいてきた。
「榊原くん、やっと戻ったか。パスポートと必要なものだけ持ってきてくれ。飛行機はもう押さえてある」
オフィスで顔を合わせたことのある日本人の同僚が、淡々とした声で告げた。
呆然としたままの私の腕を掴み、廊下の奥へと押しやる。
何が何だかわからぬまま、タクシーに詰め込まれ、空港へ運ばれた。
気が付けば、私は機上の人となっていた。
***
空港の到着ロビーには、同期入社の同僚が待っていた。
彼に促されるまま空港を出て、私はタクシーに乗った。
家に着くまでに聞かされた内容は、俄には信じがたいものだった。
私が日本を発ってすぐ、妻の体を病が蝕んでいることがわかった。
ガンだった。
治療は尽くしたが、病巣を取りきることはできず、彼女は徐々に弱っていった。
彼女は自らの病を、私に知らせようとしなかった。
理由は同僚も知らなかった。
わかっているのは、たった独りで病と向き合い、そして力尽きたという事実だけだった。
斎場の駐車場に滑り込んだタクシーを降り、足をもつれさせつつホールへ駆け込む。
『榊原家』と書かれた部屋の扉をくぐると、白い菊で飾られた祭壇と棺、その前に座る娘の姿が目に入った。
娘は静かに泣いていた。
荒い息を吐く私に気付くと、赤く腫れた目をちらとこちらに向けたが、すぐに棺に向き直り、声もなく泣き続けた。
肩を小さく揺らす娘の横顔は、私の記憶の中の彼女より、ずっと大人びて見えた。
私が日本を発ってから、二年が過ぎていた。
娘は、高校二年生になっていた。
***
導師の読経は絶えることなく続き、祭壇前には線香と花の香りが重く漂っていた。
喪主としての私の役目は、定められた所作を順にこなすことに尽きた。
焼香、合掌、礼。
そこに心を添える余裕はなく、ただ形ばかりの動作を、機械的に繰り返していった。
続いて立ち上がった娘は、躊躇いなく抹香をつまみ、深く礼をした。
制服姿の背中は華奢なのに、振る舞いには不思議な落ち着きがあった。
焼香を終えると、親族一人一人に向かって頭を下げ、静かに席に戻っていく。
その姿を見つめながら、私は自分がこの場の中で、最も所在なげに立っていることを痛感していた。
親族たちの顔は、誰一人として判然としない。
私の記憶にない人々が、決まった順序で焼香を済ませ、娘に言葉をかけ、労わるように肩へ手を置いていく。
彼女はそのたびに小さく会釈し、礼を返す。
私に声をかける者は――いなかった。
式は粛々と進み、やがて出棺のときが訪れた。
棺の蓋が閉じられる前に、参列者は白い菊を一輪ずつ手に取って、妻のそばに添えていった。
私も花を受け取り、棺の中を覗き込んだ。
そこに横たわっていたのは、見慣れたはずの妻の顔――だがそれは、私の記憶の中の彼女とはまるで違っていた。
死化粧を施されても隠しきれないほどに痩せて、頬の線は鋭く落ち窪んでいる。
これは本当に、あの妻なのだろうか。
そんな呟きが胸の奥に浮かび、花を置く指先がよろめいた。
隣に並んだ娘は迷いなく花を手向け、目を閉じて合掌した。
その瞳から、一粒の涙が零れ落ちた。
それを拭い取った横顔には、受け入れる強さと諦めの静けさが同居していた。
花に囲まれた妻からも、気丈に振る舞う娘からも、私は視線を逸らした。
慮って寄り添うように見つめる――心が空虚な私には、そんなことすらできなかった。
葬儀を終えて自宅に戻ると、家はしんと静まり返り、ひどくよそよそしい空間に見えた。
……いや、そんなことはない。
シンク脇のカゴには洗ったグラスがあり、ダイニングテーブルには妻の名前が記された薬袋が置き去りになっていた。
あるのは生活の跡。そして欠けているのは――私の居場所だった。
愕然と立ち尽くす私の脇を、娘は無言で通り過ぎ、自室の扉を閉ざした。
私は海外赴任を解かれ、日本での生活に戻った。
妻の看病をしていた娘は、家のことを一通りこなせたが、まだ学生の子どもに全てを任せるわけにはいかない。
私は慣れない家事に取り組んだ。
しかし目玉焼きは焦げ、シチューを作れば鍋を台無しにするばかりだった。
それを見ても、娘は何も言わなかった。ただ黙って、二人分の食事を用意してくれた。
妻のような献身ではなかったが、私は娘に任せられることは任せ、自分にできることを探してこなすようになった。
不器用ながらも、それなりに暮らせている――そう思えたある冬の夜。娘は言った。
「春から一人暮らしをするの。大学に進学するから」
関西の大学だという。
なぜ遠くへ行くのか、何を学ぶのか。
問いかけようとして、私は思い出した。
娘の夢も、将来の希望も――私は何一つ知らないことを。
その後ろめたさを隠すように、相談もなしに、と不満を口にすると、娘は冷めた目で私を見つめた。
「これまで何も見てこなかったじゃない。お母さんのことも、私のことも。……責めたりはしない。でも、お父さんに期待するのは止めたの」
私は何も言えなかった。
縛りつけることは、もしかしたらできたかもしれない。だが無駄なことだ。
娘の心は、既に私から離れてしまっていたのだから。
***
散り始めた桜の下を、スーパーの袋を提げて歩く。
春は人を新しい場所へ押し出す季節だ。だが私にはもう、押し出される先もない。
翌朝。平日よりは遅く起き、顔を洗い、髭を剃る。
昨日買った食パンを一枚、トースターに入れる。
軽快なチン!の音。焼き上がったパンにバターを塗り、その上にイチゴジャムを重ねた。
――ジャムを先に塗るなど、かつては許せなかった。けれど今は、そんなことにこだわる気力もない。
ふと、遠い異国の日々が蘇った。
下宿の食堂で囲んだシチュー、湯気を立てるスコーン。
あの時間を共に過ごした人たちは、今どうしているだろう。
しかし――私は首を振った。考えたところで、戻ることはない。
手にしたパンに歯を立てようとした、まさにそのとき。
ジリリリリン!と電話が鳴った。
パンを皿に戻し、手を拭って受話器を取る。すると、懐かしい声が耳に響いた。
『ハロー、サクロー。私のこと、覚えてるかい?』
――忘れるものか。イギリスの下宿屋のおかみさんだ。
「……お久しぶりです」
『ああ、本当に久しぶりだね。元気でやってるかい?あんたも……お嬢ちゃんも』
胸の奥がつんとした。返事が遅れると、おかみさんは不安げに私の名を呼んだ。
『……サクロー?』
「……はい、なんでもありません。それより、どうかしたんですか?わざわざ国際電話なんて」
一瞬の沈黙。受話器の向こうからは、躊躇うような息遣いが伝わってくる。
やがて。ぽつり、とおかみさんが言った。
『……サクロー。トーマスが、死んだ』
思いがけない名を聞いた瞬間、頭の中の時間が止まった。
無言の私に、おかみさんは言葉を継いだ。涙を含んだ声だった。
『大事故だったんだよ。バスが横転して……助からなかったんだ』
事故……バス……。
『仲良くしてたあんたには、知らせなきゃって思ったんだよ……』
耳に届く言葉は理解できるのに、その意味は入ってこなかった。
その後、何を話したのかは覚えていない。
受話器を置いてテーブルに向き直ったとき。目の前の食パンは冷めきり、バターもジャムも鈍く固まっていた。
***
どれほどそうしていただろう。
気づけば窓の外の陽は翳りを帯びていた。
のろのろとシンクに向かい、硬くなった食パンを三角コーナーへ放り込む。
皿を洗い、手を拭いて顔を上げると、ゴミ箱でふやけたパンが目に留まった。
食べられるためにあるはずのものが、役目を果たせぬまま打ち捨てられている。
妻の死。娘の早すぎる独立。そして――唯一の友の死。
どこで歯車が狂ったのか。どの瞬間に私は間違ったのか。
問い続けても、答えは返ってこない。
確かなことはただひとつ、全てが手のひらからこぼれ落ちてしまったということだった。
誰のせいでもない――いや、結局は私のせいなのだろう。
沈んだ確信を抱きしめながら、私は虚無の日々を生きることになった。
第三章 追憶の英国式スコーン / 完
◆・◆・◆
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しかし心は少しも晴れなかった。
宿へ戻ったのは、日が落ちかけた頃だった。
今夜の夕食は何だろう。そう思いながらドアを開けると――。
「あぁ!サクロー!!」
駆け寄ってきたおかみさんは、勢いそのままに私に抱きついた。
「サクロー、支度しな!今すぐ日本に帰るんだ!」
耳を疑った。日本に帰る?どうして?
「奥さんが……あんたの奥さんが、死んじまったんだよ!」
頭が真っ白になった。妻が――死んだ?
そんなはずはない。彼女は日本にいて、私の留守の間、家を守っているのだ。
娘だって、まだ手のかかる年頃で……。
言葉を失ったままの私の頬を、おかみさんはパシン!と打った。
「しっかりしな!あんたがそんなんじゃ、ひとり残されたお嬢ちゃんはどうすりゃいいんだい!」
本当に……?本当に妻は――。
背後の扉が勢いよく開き、荒々しい足音が近づいてきた。
「榊原くん、やっと戻ったか。パスポートと必要なものだけ持ってきてくれ。飛行機はもう押さえてある」
オフィスで顔を合わせたことのある日本人の同僚が、淡々とした声で告げた。
呆然としたままの私の腕を掴み、廊下の奥へと押しやる。
何が何だかわからぬまま、タクシーに詰め込まれ、空港へ運ばれた。
気が付けば、私は機上の人となっていた。
***
空港の到着ロビーには、同期入社の同僚が待っていた。
彼に促されるまま空港を出て、私はタクシーに乗った。
家に着くまでに聞かされた内容は、俄には信じがたいものだった。
私が日本を発ってすぐ、妻の体を病が蝕んでいることがわかった。
ガンだった。
治療は尽くしたが、病巣を取りきることはできず、彼女は徐々に弱っていった。
彼女は自らの病を、私に知らせようとしなかった。
理由は同僚も知らなかった。
わかっているのは、たった独りで病と向き合い、そして力尽きたという事実だけだった。
斎場の駐車場に滑り込んだタクシーを降り、足をもつれさせつつホールへ駆け込む。
『榊原家』と書かれた部屋の扉をくぐると、白い菊で飾られた祭壇と棺、その前に座る娘の姿が目に入った。
娘は静かに泣いていた。
荒い息を吐く私に気付くと、赤く腫れた目をちらとこちらに向けたが、すぐに棺に向き直り、声もなく泣き続けた。
肩を小さく揺らす娘の横顔は、私の記憶の中の彼女より、ずっと大人びて見えた。
私が日本を発ってから、二年が過ぎていた。
娘は、高校二年生になっていた。
***
導師の読経は絶えることなく続き、祭壇前には線香と花の香りが重く漂っていた。
喪主としての私の役目は、定められた所作を順にこなすことに尽きた。
焼香、合掌、礼。
そこに心を添える余裕はなく、ただ形ばかりの動作を、機械的に繰り返していった。
続いて立ち上がった娘は、躊躇いなく抹香をつまみ、深く礼をした。
制服姿の背中は華奢なのに、振る舞いには不思議な落ち着きがあった。
焼香を終えると、親族一人一人に向かって頭を下げ、静かに席に戻っていく。
その姿を見つめながら、私は自分がこの場の中で、最も所在なげに立っていることを痛感していた。
親族たちの顔は、誰一人として判然としない。
私の記憶にない人々が、決まった順序で焼香を済ませ、娘に言葉をかけ、労わるように肩へ手を置いていく。
彼女はそのたびに小さく会釈し、礼を返す。
私に声をかける者は――いなかった。
式は粛々と進み、やがて出棺のときが訪れた。
棺の蓋が閉じられる前に、参列者は白い菊を一輪ずつ手に取って、妻のそばに添えていった。
私も花を受け取り、棺の中を覗き込んだ。
そこに横たわっていたのは、見慣れたはずの妻の顔――だがそれは、私の記憶の中の彼女とはまるで違っていた。
死化粧を施されても隠しきれないほどに痩せて、頬の線は鋭く落ち窪んでいる。
これは本当に、あの妻なのだろうか。
そんな呟きが胸の奥に浮かび、花を置く指先がよろめいた。
隣に並んだ娘は迷いなく花を手向け、目を閉じて合掌した。
その瞳から、一粒の涙が零れ落ちた。
それを拭い取った横顔には、受け入れる強さと諦めの静けさが同居していた。
花に囲まれた妻からも、気丈に振る舞う娘からも、私は視線を逸らした。
慮って寄り添うように見つめる――心が空虚な私には、そんなことすらできなかった。
葬儀を終えて自宅に戻ると、家はしんと静まり返り、ひどくよそよそしい空間に見えた。
……いや、そんなことはない。
シンク脇のカゴには洗ったグラスがあり、ダイニングテーブルには妻の名前が記された薬袋が置き去りになっていた。
あるのは生活の跡。そして欠けているのは――私の居場所だった。
愕然と立ち尽くす私の脇を、娘は無言で通り過ぎ、自室の扉を閉ざした。
私は海外赴任を解かれ、日本での生活に戻った。
妻の看病をしていた娘は、家のことを一通りこなせたが、まだ学生の子どもに全てを任せるわけにはいかない。
私は慣れない家事に取り組んだ。
しかし目玉焼きは焦げ、シチューを作れば鍋を台無しにするばかりだった。
それを見ても、娘は何も言わなかった。ただ黙って、二人分の食事を用意してくれた。
妻のような献身ではなかったが、私は娘に任せられることは任せ、自分にできることを探してこなすようになった。
不器用ながらも、それなりに暮らせている――そう思えたある冬の夜。娘は言った。
「春から一人暮らしをするの。大学に進学するから」
関西の大学だという。
なぜ遠くへ行くのか、何を学ぶのか。
問いかけようとして、私は思い出した。
娘の夢も、将来の希望も――私は何一つ知らないことを。
その後ろめたさを隠すように、相談もなしに、と不満を口にすると、娘は冷めた目で私を見つめた。
「これまで何も見てこなかったじゃない。お母さんのことも、私のことも。……責めたりはしない。でも、お父さんに期待するのは止めたの」
私は何も言えなかった。
縛りつけることは、もしかしたらできたかもしれない。だが無駄なことだ。
娘の心は、既に私から離れてしまっていたのだから。
***
散り始めた桜の下を、スーパーの袋を提げて歩く。
春は人を新しい場所へ押し出す季節だ。だが私にはもう、押し出される先もない。
翌朝。平日よりは遅く起き、顔を洗い、髭を剃る。
昨日買った食パンを一枚、トースターに入れる。
軽快なチン!の音。焼き上がったパンにバターを塗り、その上にイチゴジャムを重ねた。
――ジャムを先に塗るなど、かつては許せなかった。けれど今は、そんなことにこだわる気力もない。
ふと、遠い異国の日々が蘇った。
下宿の食堂で囲んだシチュー、湯気を立てるスコーン。
あの時間を共に過ごした人たちは、今どうしているだろう。
しかし――私は首を振った。考えたところで、戻ることはない。
手にしたパンに歯を立てようとした、まさにそのとき。
ジリリリリン!と電話が鳴った。
パンを皿に戻し、手を拭って受話器を取る。すると、懐かしい声が耳に響いた。
『ハロー、サクロー。私のこと、覚えてるかい?』
――忘れるものか。イギリスの下宿屋のおかみさんだ。
「……お久しぶりです」
『ああ、本当に久しぶりだね。元気でやってるかい?あんたも……お嬢ちゃんも』
胸の奥がつんとした。返事が遅れると、おかみさんは不安げに私の名を呼んだ。
『……サクロー?』
「……はい、なんでもありません。それより、どうかしたんですか?わざわざ国際電話なんて」
一瞬の沈黙。受話器の向こうからは、躊躇うような息遣いが伝わってくる。
やがて。ぽつり、とおかみさんが言った。
『……サクロー。トーマスが、死んだ』
思いがけない名を聞いた瞬間、頭の中の時間が止まった。
無言の私に、おかみさんは言葉を継いだ。涙を含んだ声だった。
『大事故だったんだよ。バスが横転して……助からなかったんだ』
事故……バス……。
『仲良くしてたあんたには、知らせなきゃって思ったんだよ……』
耳に届く言葉は理解できるのに、その意味は入ってこなかった。
その後、何を話したのかは覚えていない。
受話器を置いてテーブルに向き直ったとき。目の前の食パンは冷めきり、バターもジャムも鈍く固まっていた。
***
どれほどそうしていただろう。
気づけば窓の外の陽は翳りを帯びていた。
のろのろとシンクに向かい、硬くなった食パンを三角コーナーへ放り込む。
皿を洗い、手を拭いて顔を上げると、ゴミ箱でふやけたパンが目に留まった。
食べられるためにあるはずのものが、役目を果たせぬまま打ち捨てられている。
妻の死。娘の早すぎる独立。そして――唯一の友の死。
どこで歯車が狂ったのか。どの瞬間に私は間違ったのか。
問い続けても、答えは返ってこない。
確かなことはただひとつ、全てが手のひらからこぼれ落ちてしまったということだった。
誰のせいでもない――いや、結局は私のせいなのだろう。
沈んだ確信を抱きしめながら、私は虚無の日々を生きることになった。
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