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転生先は自作小説の世界でした
炊くと煮るの違いについての考察
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さてとうとう来ました翌日の朝。
昨日は、慌てふためきながらガイナスが持ってきてくれたもち米を、軽く研いでたっぷりのお水で浸した後、普段はお野菜とかを備蓄している氷室へと置いてきたのだ。
いわゆる吸水なんだけど、転生前に食べてたうるち米とは違い、もち米はたっぷりのお水で時間をかけて吸水させないといけないと、入院中読んでた料理本に書いてあった。
だいたいうるち米を炊く時の1・2倍くらいの水が必要なんだって。
それに、こっちの世界はお米を『炊く』という発想はほとんどない。どっちかといえば『煮る』が多いかな。
だから、この世界に転生して何回かお米を食べる機会はあったんだけど、リゾットのようなパスタの代替か、ミルク粥のデザートの素材かのどっちかしかお目にかかっていないのだ。
まあ、リゾットも芯の残った歯ごたえと、周りのスープを吸った噛めば噛むほど味のあるのもいいし、ミルク粥のタピオカにも似たモチモチした感触もミルクと蜂蜜の優しい味に合うんだけどさ。
ただ、なんというか、日本人に生まれた自分としては違うんだよなー、の一言に尽きる。
いつか炊き込みご飯とか、オムライスとか作ってみたいな。
その前に、今回のミッションが上手くいかないことにはお話にならないが……。
朝食が済んで、料理人たちが昼の仕込みを終えた隙間時間を使ってやって来たのですが、兄はもち米を手配してくれたからいいとして……。
「あの……、どうしてこんなに見物人がいるのかしら……?」
一般家庭のよりも広いとはいえ、兄のリオネル以外に、私のメイドのレイとミゼア、兄のメイドのリナと執事長のガイナス。まあ、これは想定内だったから、そこまで眦を上げる気もない。
が、なぜ私たちを囲むようにうちの料理人たちがいるのだろう。私は上野動物園のパンダか! こんなに人口密度高くなるなんて想像してなかったわ!
それに、こんな状況にも拘らず何故動かない、執事長!
仕事放棄か!?
「まあまあ、お嬢様。みんなお嬢様に興味津々なんですよ」
しれっと言い切るガイナス。こいつ、未知のもち米の方ではなく私に興味があるとか言ってのけたぞ。
えらくにこやかに笑ってるけど、本当は私の事嫌いなんじゃないの。
でも、まあいっか。
例の計画の時には、沢山のもち米を炊かなきゃならないから、その前に料理人たちに実習という形にしちゃえば、先行き問題ないもんね。
「レイ、氷室から昨日吸水させておいたもち米を持ってきてもらえる?」
「はい、お嬢様」
レイはさっと素早く厨房の隣にある氷室へと降りていく。
ちなみに氷室は半地下に作られた石造りの小部屋です。傍に井戸があるから、多分地下水脈が近くを通っているのだろう。年中を通して一定の温度が保たれた現代で言うなら冷蔵庫かな。
「次にもち米を炊くんだけど……」
「あの……、アデイラお嬢様」
きょろきょろと大きなお鍋を探していた私に、リナがおずおずと声をかけてくる。
「なに? リナ。どうかした?」
視線だけは鍋を探しつつ、リナの言葉を待っていると。
「この国では、『炊く』という調理法はございません」
しょっぱなから出鼻をくじかれる声が聞こえてきたのである。
まーじーかー!
料理人やリナからの言葉を拝聴するに、このガルニエ国の調理法としては、『生』、『焼く』、『煮る』、『蒸す』の四つが主だそうだ。
そういや、炊くって言葉をアデイラになってから耳にしてないかも。
「アデイラ、その『炊く』って、本にはどういった方法って書いてあった?」
うーんうーん唸っていると、リオネルが助け舟を出してくれる。本って言ったのは、私が転生者と怪しまれないようにしてくれたのだろう。
うぅ、なんて出来た兄なんだ。
「えーとですね、対象である食材を水またはスープ等で煮る事らしいですわ」
「つまり、それって普通に『煮る』とは違うのかい?」
「……」
がふぅっ!
吐血しなかった自分を褒めてさしあげたい。
や、美少女に吐血とか、ある意味ロマンだけど。ちがう、そうじゃない。薄幸の状況でなら儚げかもしれないけど、間違いを指摘されての吐血は美しくないって!
「お、おほほっ。そうですね、おにいさま流石ですわ!」
ここは誤魔化し作戦でいくしか!
と、冷や汗を額に浮かべ引きつった笑みでそう答えたものの、周りの冷ややかな視線が返ってくるばかり。
分かってるよ、二十五プラス七歳、合計三十二歳にも拘らず、今まで『炊く』と『煮る』が同意義だなんて気付かなかったんだもん。
だってだって、ご飯は炊飯器のボタンひとつでできちゃうから、中でどういった流れなのか知らないもん。
自分の不勉強から全身にきのこが自生しそうな暗さに陥った私に、近くに立っていたリナが、
「それで、アデイラお嬢様。一体なにをお作りになられるのですか?」
ふわりと微笑んで言ったのだ。
たった一言が、周囲からの私を見る眼差しが一変したのを感じる。
「えっとね、ちまきを作ろうと思うの!」
「ちまきって?」
気分を変えるためにとりわけ明るく宣言した私に、リオネルが首を傾げて再度問う。
あ、そうか。こっちではちまきって一般的な食べ物じゃないか。
「前に読んだ東の国の本にあったんです。もち米を色んな具材と炒めて、葉っぱにくるんで蒸す料理なんですって」
「じゃあ、蒸すのだったら、『炊く』必要はなかったんじゃ……」
「……」
ハイ……ソウデスネ……。
兄よ、そんなに私を貶めて楽しいか……。
と、色々ありましたが、さっそくちまき作りに取り掛かりたいと思います。
ええ、逃避と言っていただいてもかまいませんことよ。
少しささくれだった気持ちを抱えたまま、広いツヤツヤとした石の調理台に、もち米の入ったボウルと、お野菜たち。
そう! こっちの世界の野菜は、私の前の世界にいたものと同じだったので安心ですよ!
まあ、自分の創った世界だし、基本ベースは地球と同じにしてあったのが幸いしたけど、いかんせん世界観が西欧だったために、お醤油や味噌がなかったのである。ああ、お醤油の焦げる匂いやお味噌の香ばしい独特の味が味わえないとか辛い……。
悲嘆まで追加されてしまったけど、まずはミゼアやレイ、リサも手伝ってくれるそうで、みんなで材料の下準備です。
人参をサイコロ状に、玉ねぎは大きめのみじん切り、ベーコンも同じように大きめの拍子切りにして、最後に生の栗があったのでこれは渋皮まで剥いて水にさらしてあく抜き。
最初は自分で調理するつもりだったんだけど、厨房に来て初めて知った。この世界ではガスとかは当然なく、薪で火を起こして料理してると思ってたんだけど、なんと、薪にくべたのは小さく透明な真紅の石。
「おにいさま、あれはなんですの?」
「ああ、あれは魔石だね。火の属性が込められた石を、ああして種火にして火をつけてるんだ」
こっそりと兄に尋ねてみれば、同じように小声で教えてくれた。
なんじゃそれえええええ!
自分が創った世界なのに、知らないことがあったなんて!!
「そう……なんですの。ありがとうございます、おにいさま」
はあ……、こんな短時間で色々感情の振り幅が大きすぎて疲れた……。このまま部屋に戻ってベッドでふて寝したい……。
.
昨日は、慌てふためきながらガイナスが持ってきてくれたもち米を、軽く研いでたっぷりのお水で浸した後、普段はお野菜とかを備蓄している氷室へと置いてきたのだ。
いわゆる吸水なんだけど、転生前に食べてたうるち米とは違い、もち米はたっぷりのお水で時間をかけて吸水させないといけないと、入院中読んでた料理本に書いてあった。
だいたいうるち米を炊く時の1・2倍くらいの水が必要なんだって。
それに、こっちの世界はお米を『炊く』という発想はほとんどない。どっちかといえば『煮る』が多いかな。
だから、この世界に転生して何回かお米を食べる機会はあったんだけど、リゾットのようなパスタの代替か、ミルク粥のデザートの素材かのどっちかしかお目にかかっていないのだ。
まあ、リゾットも芯の残った歯ごたえと、周りのスープを吸った噛めば噛むほど味のあるのもいいし、ミルク粥のタピオカにも似たモチモチした感触もミルクと蜂蜜の優しい味に合うんだけどさ。
ただ、なんというか、日本人に生まれた自分としては違うんだよなー、の一言に尽きる。
いつか炊き込みご飯とか、オムライスとか作ってみたいな。
その前に、今回のミッションが上手くいかないことにはお話にならないが……。
朝食が済んで、料理人たちが昼の仕込みを終えた隙間時間を使ってやって来たのですが、兄はもち米を手配してくれたからいいとして……。
「あの……、どうしてこんなに見物人がいるのかしら……?」
一般家庭のよりも広いとはいえ、兄のリオネル以外に、私のメイドのレイとミゼア、兄のメイドのリナと執事長のガイナス。まあ、これは想定内だったから、そこまで眦を上げる気もない。
が、なぜ私たちを囲むようにうちの料理人たちがいるのだろう。私は上野動物園のパンダか! こんなに人口密度高くなるなんて想像してなかったわ!
それに、こんな状況にも拘らず何故動かない、執事長!
仕事放棄か!?
「まあまあ、お嬢様。みんなお嬢様に興味津々なんですよ」
しれっと言い切るガイナス。こいつ、未知のもち米の方ではなく私に興味があるとか言ってのけたぞ。
えらくにこやかに笑ってるけど、本当は私の事嫌いなんじゃないの。
でも、まあいっか。
例の計画の時には、沢山のもち米を炊かなきゃならないから、その前に料理人たちに実習という形にしちゃえば、先行き問題ないもんね。
「レイ、氷室から昨日吸水させておいたもち米を持ってきてもらえる?」
「はい、お嬢様」
レイはさっと素早く厨房の隣にある氷室へと降りていく。
ちなみに氷室は半地下に作られた石造りの小部屋です。傍に井戸があるから、多分地下水脈が近くを通っているのだろう。年中を通して一定の温度が保たれた現代で言うなら冷蔵庫かな。
「次にもち米を炊くんだけど……」
「あの……、アデイラお嬢様」
きょろきょろと大きなお鍋を探していた私に、リナがおずおずと声をかけてくる。
「なに? リナ。どうかした?」
視線だけは鍋を探しつつ、リナの言葉を待っていると。
「この国では、『炊く』という調理法はございません」
しょっぱなから出鼻をくじかれる声が聞こえてきたのである。
まーじーかー!
料理人やリナからの言葉を拝聴するに、このガルニエ国の調理法としては、『生』、『焼く』、『煮る』、『蒸す』の四つが主だそうだ。
そういや、炊くって言葉をアデイラになってから耳にしてないかも。
「アデイラ、その『炊く』って、本にはどういった方法って書いてあった?」
うーんうーん唸っていると、リオネルが助け舟を出してくれる。本って言ったのは、私が転生者と怪しまれないようにしてくれたのだろう。
うぅ、なんて出来た兄なんだ。
「えーとですね、対象である食材を水またはスープ等で煮る事らしいですわ」
「つまり、それって普通に『煮る』とは違うのかい?」
「……」
がふぅっ!
吐血しなかった自分を褒めてさしあげたい。
や、美少女に吐血とか、ある意味ロマンだけど。ちがう、そうじゃない。薄幸の状況でなら儚げかもしれないけど、間違いを指摘されての吐血は美しくないって!
「お、おほほっ。そうですね、おにいさま流石ですわ!」
ここは誤魔化し作戦でいくしか!
と、冷や汗を額に浮かべ引きつった笑みでそう答えたものの、周りの冷ややかな視線が返ってくるばかり。
分かってるよ、二十五プラス七歳、合計三十二歳にも拘らず、今まで『炊く』と『煮る』が同意義だなんて気付かなかったんだもん。
だってだって、ご飯は炊飯器のボタンひとつでできちゃうから、中でどういった流れなのか知らないもん。
自分の不勉強から全身にきのこが自生しそうな暗さに陥った私に、近くに立っていたリナが、
「それで、アデイラお嬢様。一体なにをお作りになられるのですか?」
ふわりと微笑んで言ったのだ。
たった一言が、周囲からの私を見る眼差しが一変したのを感じる。
「えっとね、ちまきを作ろうと思うの!」
「ちまきって?」
気分を変えるためにとりわけ明るく宣言した私に、リオネルが首を傾げて再度問う。
あ、そうか。こっちではちまきって一般的な食べ物じゃないか。
「前に読んだ東の国の本にあったんです。もち米を色んな具材と炒めて、葉っぱにくるんで蒸す料理なんですって」
「じゃあ、蒸すのだったら、『炊く』必要はなかったんじゃ……」
「……」
ハイ……ソウデスネ……。
兄よ、そんなに私を貶めて楽しいか……。
と、色々ありましたが、さっそくちまき作りに取り掛かりたいと思います。
ええ、逃避と言っていただいてもかまいませんことよ。
少しささくれだった気持ちを抱えたまま、広いツヤツヤとした石の調理台に、もち米の入ったボウルと、お野菜たち。
そう! こっちの世界の野菜は、私の前の世界にいたものと同じだったので安心ですよ!
まあ、自分の創った世界だし、基本ベースは地球と同じにしてあったのが幸いしたけど、いかんせん世界観が西欧だったために、お醤油や味噌がなかったのである。ああ、お醤油の焦げる匂いやお味噌の香ばしい独特の味が味わえないとか辛い……。
悲嘆まで追加されてしまったけど、まずはミゼアやレイ、リサも手伝ってくれるそうで、みんなで材料の下準備です。
人参をサイコロ状に、玉ねぎは大きめのみじん切り、ベーコンも同じように大きめの拍子切りにして、最後に生の栗があったのでこれは渋皮まで剥いて水にさらしてあく抜き。
最初は自分で調理するつもりだったんだけど、厨房に来て初めて知った。この世界ではガスとかは当然なく、薪で火を起こして料理してると思ってたんだけど、なんと、薪にくべたのは小さく透明な真紅の石。
「おにいさま、あれはなんですの?」
「ああ、あれは魔石だね。火の属性が込められた石を、ああして種火にして火をつけてるんだ」
こっそりと兄に尋ねてみれば、同じように小声で教えてくれた。
なんじゃそれえええええ!
自分が創った世界なのに、知らないことがあったなんて!!
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