陛下、あなたが寵愛しているその女はどうやら敵国のスパイのようです。

ましゅぺちーの

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王弟殿下の告白

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後日、グレンお兄様は王弟殿下を連れて私の元へやってきた。


「王弟殿下!グレンお兄様!」


幼馴染である王弟殿下と大切な家族であるお兄様の顔を見てほんの少しだけ心が穏やかになった。


王弟殿下とお兄様の二人は親友同士だ。私が王太子殿下の婚約者だったこともあって、お兄様もよく王宮へ行っていたためそこで知り合ったそうだ。ちなみにお兄様は王弟殿下とは親友であった一方、その兄である国王陛下のことは内心嫌っている。


「カテリーナ、王弟殿下がお前に話があるそうだ」


お兄様が王弟殿下の方を振り返りながら言った。


「話・・・ですか?」


私が不思議そうに首をかしげると王弟殿下はにっこりと笑った。


「―あぁ、大事な話だからよく聞いてほしいんだ、カテリーナ」







王弟殿下と私とお兄様は客間のソファに座っていた。


もちろん防音の結界が張ってあるため、私たちの会話が外に漏れることはない。


一番最初に口を開いたのは私の向かいに座ったグレンお兄様だった。


「この間、お前にあの愛妾の正体を伝えただろう?」


「ええ、ファルベ王国のスパイでしたよね」


「そうだ。その話をアルバートにしたんだが・・・アルバートから提案があるそうだ」


お兄様は殿下の方をチラリと見てそう言った。


二人はさっきも言ったように親友同士なので、公の場でなければ呼び捨てで呼んでいる。


お兄様の視線を受けた殿下が、ゆっくりと口を開いた。


「あぁ、私はあえてこの件を放っておこうと思っている」


「・・・・・・・・・・・・・・え?ええっ!?」


私は驚いて思わず叫んでしまった。


頭の良い王弟殿下がそのような判断をしたのが信じられなかったからだ。


「で、殿下・・・いくらなんでもそれはさすがに・・・」


「カテリーナ、落ち着け。アルバートにも考えがあるんだ」


落ち着かない様子の私をお兄様が宥めた。


「あぁ、もちろんただ放っておくわけではない。私はこの一件を理由に兄上を失脚させるつもりだ」


「・・・!」


(陛下を・・・失脚・・・・)


その言葉が私の心に重くのしかかった。


先ほどから固まっている私に殿下が静かな声で尋ねた。


「カテリーナは、何故兄上が王太子に―次期国王に選ばれたのかを知っているか?」


「知っています。先王陛下の寵愛を一身に受けていたからですよね。」


ウィルフレッド国王陛下は王子時代、お世辞にも優秀な王子とは言えなかった。


それに加えて母親の身分も低く、隣国の王女である王妃陛下から生まれた異母弟のアルバート殿下を次期国王にするべきだという声も多かった。


それを無理矢理王太子にしたのが先王陛下である。理由は愛する女との子供だから。どうしてもウィルフレッド陛下を次の王にしたかったのだという。


だから先王陛下は後ろ盾を得るために私と王命で婚約を結ばせたのだ。


「・・・父上は兄上を溺愛している一方で私には興味を示さなかった」


殿下は少しだけ悲しそうにそう言った。


「先王陛下が愛妾とウィルフレッド陛下を溺愛してたのは有名な話でしたからね。あれ、でも愛妾が亡くなってからはあまりそういう姿を見なくなったような・・・」


「・・・」


私の言葉に王弟殿下が押し黙った。


(・・・何かしら?)


それからしばらくして、再び口を開いた。


「・・・愛妾は、殺されたんだ」


「・・・え?」


(ウソ・・・殺された・・・?)


私は一瞬理解が追い付かなかった。


「そんな・・・殺されたって一体誰にですか!?犯人はもう捕まっているのですか!?先王陛下が決してお許しにならないはず・・・」


「愛妾を殺したのは父上だ」


「え!?」


(先王陛下が・・・愛妾を殺した・・・?あんなに愛していたのに・・・・?)


「何故・・・」


私がそう尋ねると、王弟殿下は言いにくそうにしながらも教えてくれた。


「愛妾は護衛騎士の男と不貞を犯していた。愛していたからこそ、父上はそれが許せなかったんだろう。だから殺したんだ。それも最も残忍なやり方で。まぁ国王の愛人が不貞をするのは重罪だから愛妾に同情は出来ないがな」


初めて知った衝撃の事実。


(愛妾は・・・殺されていたのね・・・それも彼女を愛していた先王陛下によって・・・)


「それからの父上はたかが外れたかのようにたくさんの女を囲い、関係を持った。兄上は、あの父上の悪いところをしっかりと受け継いでしまったってわけだ」


王弟殿下がハァと息をついた。


「アルバート、私はお前が国王になるのに賛成だ。あの愚王ではダメだ」


お兄様は不機嫌そうに顔を歪めてそう言った。


国王陛下のことを話しているときのお兄様はいつもこんな感じだ。


殿下もお兄様のその言葉に同調した。


「分かっている、私もそのつもりだ。兄上は王の器ではない。」


殿下はそこまで言うと、椅子から立ち上がった。


「それで、カテリーナに伝えたいことがあるんだ」


「・・・私に伝えたいことですか?」


私がきょとんと首をかしげていると王弟殿下は私が座っている椅子の前に跪いた。


「お、王弟殿下!?何を!?」


「カテリーナ」


王弟殿下が膝の上に置いていた私の手をぎゅっと握った。


そして熱のこもった目で私をじっと見つめて言った。


「もし私が王になったら・・・その時は私と結婚してくれないか?」


「・・・・・え?」


(な、なんですって―!?)


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