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一章
初めてのお茶会
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その後、私はお父様と共に公爵邸へ帰った。
そしてそのまま自室へと戻る。
そのときの私の頭の中を占めたのは王宮で見た殿下のことだった。
あんな殿下は見たことがなかった。
前世での殿下はいつだって私に冷たかったからだ。
なぜ今になって優しくするのか。
それが私には分からなかった。
(……まさか自分のお母様にあんなことを言うだなんて)
不思議に思ってじっと考え込んでいたそのとき、部屋のドアがノックされた。
「お嬢様、失礼します」
入ってきたのはミリアだ。
「お嬢様宛てに招待状が届いています」
ミリアは手に持っていた封筒を私に渡した。
「私宛てに?」
「はい、フォンド侯爵家からのようです」
――フォンド侯爵家
オルレリアン王国の名門侯爵家である。
(たしか、私と同い年の娘と、二つ上の嫡男がいたっけ……)
招待状を見るとどうやら侯爵家で開かれるお茶会のようだった。
「……」
前世での私はお茶会にはほとんど参加していなかった。
たくさんの令嬢たちから招待されていたが、勉強の方が大事だからと全て断りを入れていた。
(…………行ってみようかな)
「お嬢様、今回も断りますか?」
「いいえ、行くことにするわ」
「分かりました」
私の言葉にミリアは笑顔になった。
どうやら私が変わったのが相当嬉しいようだ。
(貴族令嬢と交流を持つことも大事よね!)
私はそう思いながらうんうんと頷いた。
◇◆◇◆◇◆
そして迎えたお茶会当日。
(ここが侯爵邸……!)
フルール公爵邸とはまた違った立派な邸に、私は目を奪われた。
そういえば私は他の貴族の邸に来たことなどほとんどなかったなと思う。
何だか新鮮だ。
フォンド侯爵邸に到着した私を、周りにいた招待客は驚きの眼差しで見つめる。
「見て、セシリア様よ……」
「うそ、本物かしら?」
「今まで一度もこういう場に現れなかったのになぜ……」
(……)
驚くのも無理はない。
私は今までこのような場に姿を現わすことは滅多に無く、出席するのは王家主催のものくらいだからだ。
「……」
私は他の令嬢たちと同じように驚きの目をしているフォンド侯爵令嬢――マリアンヌ様に挨拶をする。
「マリアンヌ様、お久しぶりです」
「まぁ、セシリア様!来てくださったのですね!」
私が挨拶をすると、マリアンヌ様は満面の笑みで私を迎えてくれた。
「他の皆さんも、私の招待に応じてくださってありがとうございます」
「とんでもありませんわ」
「そうです。マリアンヌ様の招待を断るわけにはいきません」
みんな口々にそう言った。
どうやらマリアンヌ様はみんなから慕われているようだ。
私は前世ではほとんど関わることがなかったが、マリアンヌ様はいつも令嬢たちの中心にいたのを覚えている。
いつも壁の花となっていた私とは真逆の人だ。
令嬢たちに囲まれながら楽しそうに笑っていて、私と違って幸せなんだろうなと思ったことが何度かあった。
(……)
私も彼女と仲良くなれるだろうか。
マリアンヌ様だけではなくどうせなら他の令嬢とも親しくなりたい。
前世では私に女友達など一人もいなかった。
だから今世では令嬢たちと恋愛の話や流行りのファッションの話などをしたいと思っていたのだ。
私はそう思って招待客を見渡してみる。
伯爵令嬢、子爵令嬢、男爵令嬢。
幅広い爵位の令嬢が招待されている。
高位貴族であるにもかかわらず、マリアンヌ様は身分関係なく誰とでも親しくするという噂は本当だったようだ。
(仲良くなれそうな人がいたらいいな。……ん?あれは……)
「ッ!!!」
招待客の中にいたある人物を見て私は戦慄した。
招待客の令嬢の中に確かにいたのだ。
前世で唯一殿下の心を射止めた令嬢。
そしてその後愛妾となった令嬢。
(マリア・ヘレイス…………)
ふわふわのピンクブロンドの髪に、髪色と同じピンクの瞳をしている。
まだ幼いが、面影がよく残っている。
彼女で間違いないだろう。
私がブルブルと震えていると後ろにいたマリアンヌ様から声がかかる。
「セシリア様?大丈夫ですか?」
「あ、はい……大丈夫ですが……マリアンヌ様……あの方は……?」
私は男爵令嬢の方を見てマリアンヌ様に尋ねた。
「ああ、セシリア様はお会いするの初めてですか?ヘレイス男爵家のご令嬢マリア様ですわ。とても可愛らしいお方ですよね!」
「え、ええ……」
私は震える体に鞭を打ち、席に着いた。
そしてお茶会が始まった。
お茶会が始まるなり、令嬢たちは社交界で広がっている噂話をし出した。
「まぁ、そうなんですの!」
「えぇ、どうやらあの二人は恋仲だそうですわよ」
「キャー!!!素敵!!!」
令嬢たちがキャッキャッと騒いでいるようだが、全く耳に入ってこない。
(…………怖い、早くここから立ち去りたい)
私はずっとそんなことばかりを考えていた。
そうこうしているうちにお茶会が終了した。
男爵令嬢は驚くほど何もしなかった。
時折マリアンヌ様から振られる話題に答えながらお茶を飲んでいただけだった。
「皆さん、今日はありがとうございました」
マリアンヌ様が令嬢たちに言った。
「こちらこそ!」
「とっても楽しかったですわ」
令嬢たちがそれに答えて今日のお茶会は解散となった。
(……あの男爵令嬢と一緒にいたくない。早く帰ろう)
私はそう思ってすぐさま帰ろうとした。
しかし――
「セシリア様」
帰ろうとした矢先、マリアンヌ様に呼び止められた。
「……?」
マリアンヌ様は立ち止まった私に近づいてきて言った。
「セシリア様。これ、お近づきの印ですわ」
マリアンヌ様から手渡されたのは小さな青い箱だった。
「私にですか……?」
「ええ、私ずっとセシリア様と仲良くなりたいと思っていましたのよ。それで、もしお茶会に来てくださったら絶対渡そうと思っていましたの!」
マリアンヌ様はそう言いながら私に笑いかけた。
(私と……仲良く……)
その言葉に胸が温かくなった。
こんなことを言ってくれたのはマリアンヌ様が初めてだったからだ。
「今日お茶会に来ている皆さんもきっとセシリア様と仲良くなりたいと思っていらっしゃるはずですわ。セシリア様はもう少し交流を広げてもいいと思いますわよ」
「……!」
(交流を広げる……)
たしかに私は今まで殿下のことしか見ていなかった。
令嬢たちと関わることなどほとんどしなかった。
だけど――
――今世では、少しくらいは好きなように生きてみてもいいのだろうか。
(……うん、それもいいかもしれないわね)
「ありがとうございます、マリアンヌ様」
私はマリアンヌ様に笑いかけ、穏やかな気持ちのまま公爵邸へと戻った。
そしてそのまま自室へと戻る。
そのときの私の頭の中を占めたのは王宮で見た殿下のことだった。
あんな殿下は見たことがなかった。
前世での殿下はいつだって私に冷たかったからだ。
なぜ今になって優しくするのか。
それが私には分からなかった。
(……まさか自分のお母様にあんなことを言うだなんて)
不思議に思ってじっと考え込んでいたそのとき、部屋のドアがノックされた。
「お嬢様、失礼します」
入ってきたのはミリアだ。
「お嬢様宛てに招待状が届いています」
ミリアは手に持っていた封筒を私に渡した。
「私宛てに?」
「はい、フォンド侯爵家からのようです」
――フォンド侯爵家
オルレリアン王国の名門侯爵家である。
(たしか、私と同い年の娘と、二つ上の嫡男がいたっけ……)
招待状を見るとどうやら侯爵家で開かれるお茶会のようだった。
「……」
前世での私はお茶会にはほとんど参加していなかった。
たくさんの令嬢たちから招待されていたが、勉強の方が大事だからと全て断りを入れていた。
(…………行ってみようかな)
「お嬢様、今回も断りますか?」
「いいえ、行くことにするわ」
「分かりました」
私の言葉にミリアは笑顔になった。
どうやら私が変わったのが相当嬉しいようだ。
(貴族令嬢と交流を持つことも大事よね!)
私はそう思いながらうんうんと頷いた。
◇◆◇◆◇◆
そして迎えたお茶会当日。
(ここが侯爵邸……!)
フルール公爵邸とはまた違った立派な邸に、私は目を奪われた。
そういえば私は他の貴族の邸に来たことなどほとんどなかったなと思う。
何だか新鮮だ。
フォンド侯爵邸に到着した私を、周りにいた招待客は驚きの眼差しで見つめる。
「見て、セシリア様よ……」
「うそ、本物かしら?」
「今まで一度もこういう場に現れなかったのになぜ……」
(……)
驚くのも無理はない。
私は今までこのような場に姿を現わすことは滅多に無く、出席するのは王家主催のものくらいだからだ。
「……」
私は他の令嬢たちと同じように驚きの目をしているフォンド侯爵令嬢――マリアンヌ様に挨拶をする。
「マリアンヌ様、お久しぶりです」
「まぁ、セシリア様!来てくださったのですね!」
私が挨拶をすると、マリアンヌ様は満面の笑みで私を迎えてくれた。
「他の皆さんも、私の招待に応じてくださってありがとうございます」
「とんでもありませんわ」
「そうです。マリアンヌ様の招待を断るわけにはいきません」
みんな口々にそう言った。
どうやらマリアンヌ様はみんなから慕われているようだ。
私は前世ではほとんど関わることがなかったが、マリアンヌ様はいつも令嬢たちの中心にいたのを覚えている。
いつも壁の花となっていた私とは真逆の人だ。
令嬢たちに囲まれながら楽しそうに笑っていて、私と違って幸せなんだろうなと思ったことが何度かあった。
(……)
私も彼女と仲良くなれるだろうか。
マリアンヌ様だけではなくどうせなら他の令嬢とも親しくなりたい。
前世では私に女友達など一人もいなかった。
だから今世では令嬢たちと恋愛の話や流行りのファッションの話などをしたいと思っていたのだ。
私はそう思って招待客を見渡してみる。
伯爵令嬢、子爵令嬢、男爵令嬢。
幅広い爵位の令嬢が招待されている。
高位貴族であるにもかかわらず、マリアンヌ様は身分関係なく誰とでも親しくするという噂は本当だったようだ。
(仲良くなれそうな人がいたらいいな。……ん?あれは……)
「ッ!!!」
招待客の中にいたある人物を見て私は戦慄した。
招待客の令嬢の中に確かにいたのだ。
前世で唯一殿下の心を射止めた令嬢。
そしてその後愛妾となった令嬢。
(マリア・ヘレイス…………)
ふわふわのピンクブロンドの髪に、髪色と同じピンクの瞳をしている。
まだ幼いが、面影がよく残っている。
彼女で間違いないだろう。
私がブルブルと震えていると後ろにいたマリアンヌ様から声がかかる。
「セシリア様?大丈夫ですか?」
「あ、はい……大丈夫ですが……マリアンヌ様……あの方は……?」
私は男爵令嬢の方を見てマリアンヌ様に尋ねた。
「ああ、セシリア様はお会いするの初めてですか?ヘレイス男爵家のご令嬢マリア様ですわ。とても可愛らしいお方ですよね!」
「え、ええ……」
私は震える体に鞭を打ち、席に着いた。
そしてお茶会が始まった。
お茶会が始まるなり、令嬢たちは社交界で広がっている噂話をし出した。
「まぁ、そうなんですの!」
「えぇ、どうやらあの二人は恋仲だそうですわよ」
「キャー!!!素敵!!!」
令嬢たちがキャッキャッと騒いでいるようだが、全く耳に入ってこない。
(…………怖い、早くここから立ち去りたい)
私はずっとそんなことばかりを考えていた。
そうこうしているうちにお茶会が終了した。
男爵令嬢は驚くほど何もしなかった。
時折マリアンヌ様から振られる話題に答えながらお茶を飲んでいただけだった。
「皆さん、今日はありがとうございました」
マリアンヌ様が令嬢たちに言った。
「こちらこそ!」
「とっても楽しかったですわ」
令嬢たちがそれに答えて今日のお茶会は解散となった。
(……あの男爵令嬢と一緒にいたくない。早く帰ろう)
私はそう思ってすぐさま帰ろうとした。
しかし――
「セシリア様」
帰ろうとした矢先、マリアンヌ様に呼び止められた。
「……?」
マリアンヌ様は立ち止まった私に近づいてきて言った。
「セシリア様。これ、お近づきの印ですわ」
マリアンヌ様から手渡されたのは小さな青い箱だった。
「私にですか……?」
「ええ、私ずっとセシリア様と仲良くなりたいと思っていましたのよ。それで、もしお茶会に来てくださったら絶対渡そうと思っていましたの!」
マリアンヌ様はそう言いながら私に笑いかけた。
(私と……仲良く……)
その言葉に胸が温かくなった。
こんなことを言ってくれたのはマリアンヌ様が初めてだったからだ。
「今日お茶会に来ている皆さんもきっとセシリア様と仲良くなりたいと思っていらっしゃるはずですわ。セシリア様はもう少し交流を広げてもいいと思いますわよ」
「……!」
(交流を広げる……)
たしかに私は今まで殿下のことしか見ていなかった。
令嬢たちと関わることなどほとんどしなかった。
だけど――
――今世では、少しくらいは好きなように生きてみてもいいのだろうか。
(……うん、それもいいかもしれないわね)
「ありがとうございます、マリアンヌ様」
私はマリアンヌ様に笑いかけ、穏やかな気持ちのまま公爵邸へと戻った。
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