愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの

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一章

王宮へ

帰路についた私は、近くで迎えに来ていた騎士たちと合流して公爵邸へと帰った。


「もう、セシリア様ったら!はぐれないようにとあれほど言ったではありませんか!」
「ごめんごめん!はしゃぎすぎてつい……」


邸に帰った後はもちろんミリアからのお説教を食らうはめになってしまったが。


(ふふふ、何だかお母さんみたいね)


私は実の母と会ったことがない。
だからこそ、ミリアがお母様のようなものだった。


「ミリア、今度は気を付けるから」
「いいえ、その必要はございません」
「え?」
「セシリア様は当分の間お出かけ禁止です」
「……えっ!?」


ミリアは頬を膨らませながらぷいっと顔を背けた。


(ちょ、ちょっと待って……お出かけ禁止だなんて……!)


本当に母親並みの厳しさである。


「ちょ、ちょっと待ってよミリア……たしかに今回の件は私に非があったけれど……」
「いいえ、ダメです。本来なら旦那様にお伝えするところですからね」
「お、お父様に……」


このことがお父様に伝わるのだけは勘弁である。
もちろん私に無関心なあの人は心配などはしないだろう。
しかし「王太子の婚約者としての自覚を持て」だの「勝手な行動は慎め」だの口煩く言ってくるのであろうことが用意に想像出来た。


(それだけは御免だわ……!)


この邸にいる使用人たちはほとんどが私の味方なので、そんな私の気持ちを知ってかお父様にこういうことを伝えようとはしない。
むしろそれで良いし、彼らのそういうところに助けられているのだが。
私の顔が青くなっていったのに気付いたのか、ミリアが諭すように言った。


「セシリア様は当分謹慎です」
「……むぅ、分かった」


不満を感じながらも、私は渋々頷いた。



***



翌日。
私は一人邸の中を歩き回っていた。


(外出禁止……って言っても本当にすることが無いわね……)


ミリアによって出掛けることが禁じられている今、邸の外に出てはいけない。
しかし、だからといって部屋の中でじっとしていることも出来なかった。
そのため、こうやって邸の中を歩き回って退屈さを解消させているのである。


「お嬢様、おはようございます」
「あら、おはよう」


すれ違う使用人たちがニコニコしながら私に挨拶する。
これだけでも気分が良くなる。


ちなみに今日はお父様が家にいない日だ。
なので比較的自由に行動することが出来る。


(それだけはラッキーね)


厨房の前を通りかかると、良い香りがした。
どうやら朝食を準備している最中のようだ。


「お嬢様、朝食を摂られますか?」
「そうしようかしら」
「分かりました、では食堂に……」
「あ……今日はお部屋に持って来てくれないかしら」
「お部屋に……ですか?」
「ええ……今日はお父様もいらっしゃらないし……」


せっかくなら一人でゆっくりモーニングを楽しみたい。
そう思った私は、自室で食事をすることにした。


「承知しました、お嬢様」
「ありがとう、助かるわ」


それからしばらくして、部屋に戻った私の元に朝食が運ばれてきた。


(お腹空いてたのよね)


準備されるなり、私はすぐに食事に手を付け始めた。
ちょうどお腹がペコペコだったため、あっという間に食べ終えてしまった。


「とっても美味しかったわ」
「うふふ、料理長にお嬢様がそう言っていたとお伝えしておきますね」


侍女が食べ終わった食器を下げ、部屋になっていたそのとき突然扉がノックされた。


(……随分早いわね)


扉から顔を覗かせたのは先ほどの侍女ではなく、ミリアだった。


「お嬢様、お手紙が届いております」
「……手紙?一体誰から?」
「王太子殿下からです」


殿下が手紙を送ってくるだなんて。
滅多に無いことだから少しだけ驚いた。
私は侍女が持って来た手紙を受け取り、封を開けた。


「……」
「お嬢様、殿下は何て?」
「……今すぐ王宮に来てくれないかと」
「いくら何でも急すぎではありませんか?」
「そうね……」


私は国王陛下とお茶会をしたあの日から王宮へは一度も行っていない。
陛下からの誘いは全て適当な理由を付けて断っていた。


(殿下が……)


しかし、私は手紙の内容に少しだけ不審感を覚えた。
手紙には明確な理由もなくただ王宮に来てくれとだけ書かれている。
少なくとも、殿下はこのようなことをする人ではない。


(だけど……)


この筆跡には見覚えがあった。
間違いなく殿下のものだ。


「お嬢様、行かれるのですか?」
「……そうね、準備をお願い出来るかしら?」
「……分かりました」


私は手紙に書かれている通り、王宮に行く準備をした。


(今回は殿下からのお誘いよ……陛下と会ってしまうかもしれないけれど……一人にさえならなければきっと大丈夫……)


心の中で自分にそう言い聞かせるも、何だか妙な気分になった。
何より、この胸騒ぎは一体何だろうか。

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