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一章
灯籠流し
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「はい、どうぞ!」
「……」
私が差し出したぬいぐるみを、フォンド侯爵令息は無言で受け取った。
彼は袋に入れられたぬいぐるみをじっと見つめている。
(あら?気に入らなかったかしら?)
思っていたよりも反応が薄くて不安に思っていると、侯爵令息が顔を上げた。
「ここまでして取らなくてもよかったのに……」
「どうしてですか?これが欲しかったんじゃないんですか?」
「そうだけど……」
彼はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
(悪いとでも思ってるのかしら?)
かなりのお金を使ったので彼の気持ちは理解出来なくもない。
しかし、私はそんなつもりでこれを取ったわけではないのだ。
(どうしてもお礼がしたかったもの)
一度ならず、二度も彼に救われたのだから当然のことだ。
「平気ですよ。言ったじゃないですか、この間のお礼だって。それにこれくらいの散財、どうだってことありません。なんてったって、私の生家はフルール公爵家ですからね!」
「……」
私が自慢げにそう言うと、フォンド侯爵令息はクスリと笑った。
(だからそんなこと気にしないで)
私の思いが伝わったのか、彼がゆっくりと口を開いた。
「……ありがとう」
「……!」
恥ずかしそうに顔を背けながらも、そう口にした彼を見て私も自然と笑いがこみ上げてくる。
「ふふっ、どういたしまして」
「何故笑うんだ」
「いえ、ただ喜んでもらえて嬉しかっただけです」
人から感謝されるのはいつだって気分が良い。
「それより、その知人とやらのところに戻らなくてもいいのか?」
「あっ、そうでした……」
そこで私はミリアたちのことを思い出した。
(今頃、私を探しているだろうなぁ……)
私とはぐれて、ミリアたちはハラハラしているだろう。
そんな彼女の気持ちを考えると胸がズキッと痛んだ。
思い悩んだ様子の私を見た侯爵令息が、声をかけてきた。
「………それなら、僕が助けてあげようか」
「えっ?」
驚いてフォンド侯爵令息の方を見ると、彼は懐から何かを取り出した。
「それって……もしかして、魔道具ですか……?」
「そうだ」
侯爵令息が手に持っているのはどうやら魔道具のようだ。
(私は使ったことないけれど……)
「これは伝達の魔道具だ。これを使って君が僕と一緒にいることを伝えればいい」
「え、そんなこと出来るんですか?」
「少し時間はかかるだろうが、可能だ。外を巡回している騎士たちは大体これを持ってるだろうから、君の知人にもおそらく連絡が行くだろう」
「へぇ~便利なんですね」
それからフォンド侯爵令息は慣れた様子で魔道具を使ってみせた。
「ああ、今フルール公爵家のセシリア嬢と一緒にいる」
『えっ、フルール公爵令嬢とですか!?』
魔道具から驚いたような声が聞こえてくる。
「フルール公爵家にそのことを伝えてほしいんだが」
『そのこと、と言いますと?』
「セシリア嬢は僕と一緒にいるから心配しないでほしいと」
『……分かりました、お坊ちゃまがそう言うのであれば』
それからすぐに彼は魔道具をしまい、こちらに顔を向けた。
「これでもう大丈夫だ。同行者にもじきに連絡が行くだろう」
「わぁ!ありがとうございます、ラルフ様!」
満面の笑みを浮かべてそう言うと、彼は再び顔を逸らしてしまった。
(何はともあれ良かった……)
「せっかくなのでどこか行きましょうか」
「……そうだな」
彼は私の言葉にコクリと頷いた。
それから私たちは、再び王都の街を歩き出した。
***
夜になった。
時刻は既に夜の七時を回っている。
「もうこんな時間だったんですね」
「そうだな、祭りの灯りのせいでまるで気付かなかった」
あれから私とフォンド侯爵令息はご飯を食べたり歩き回ったりして祭りを満喫していた。
(楽しい時間はあっという間なんだなぁ……)
もうそろそろ邸に帰らなくてはいけない。
そう思うと何だか寂しい気持ちになる。
「ラルフ様はもうお帰りになられますか?」
「ああ、そうだな……」
「そうですか……」
分かりやすく気持ちの沈んだ私に気付いたのか、彼が心配そうにじっと見つめた。
そして、突然何かを思い立ったかのように口を開いた。
「そうだ、最後にあれを見に行かないか?」
「……あれ、ですか?」
侯爵令息の言うあれが何なのか私には全く分からない。
しかし、何故か目の前にいる彼は明るい顔をしている。
(何だろう?何かあるのかな?)
疑問符を浮かべる私を見てフォンド侯爵令息がクスリと口元に笑みを浮かべた。
「行こう、セシリアじょ………あ」
”セシリア嬢”と言いかけた彼はハッとなった。
「ご、ごめん……」
「いえ、別にかまいませんわ」
「セ、セシリアさ……ん……?」
「セシリアでいいですよ」
「……!」
彼は目を丸くした。
(誰かに見られたら誤解されかねないけれど……今だけは仕方ないわよね)
私がフルール公爵令嬢だと周囲に勘付かれるわけにはいかなかったからだ。
「……セシリア」
「はい、ラルフ様」
私の名前を慎重に呼んだ彼は、そっと手を差し出した。
「行こう、こっちだ」
「あ、はい、ありがとうございます」
私は差し出された手に自分の手を重ねた。
それから私は、前を歩いている彼に誘導されるような形で歩き始める。
(どこに行くんだろう?)
歩いている途中にフォンド侯爵令息に尋ねたが、到着するまでのお楽しみとはぐらかされてしまった。
後ろから見る彼の横顔は、気のせいかいつもよりも嬉しそうに見える。
(楽しみね……)
しばらくして、彼が突然歩みを止めた。
「セシリア、見てごらん」
「……」
その声で顔を上げて侯爵令息の横に並ぶと、信じられない光景が目の前に広がった。
「わぁ……!ラルフ様、これは一体……?」
「これは灯籠流しだ」
私たちが今いるのは近くにある川辺だ。
水面で無数の灯籠が光を放って浮いている。
それは、真っ暗な夜の川を明るく照らしていた。
私は一瞬にして、その光景に目を奪われてしまった。
(素敵……)
灯籠流しとは死者の魂を弔って灯籠を川に流す行事のことである。
私は初めて見るものだったが、この祭りの時期には毎年行われているのだという。
「すごく綺麗です……!」
「そうだな……ここはいつ見ても美しい」
ふと横にいる侯爵令息を見ると、彼もまた穏やかな表情で川に浮かぶ灯籠をじっと見つめていた。
「君はこういうのが好きか?」
「大好きです!」
「そうか、それは良かった」
私の返事を聞いた彼が安堵の表情を浮かべた。
「……セシリア」
「はい?」
声に反応して侯爵令息の方を見ると、ちょうどこちらを向いていた彼と視線が合った。
「最近、殿下とはどうなんだ?上手くやれているのか?」
「……殿下とですか?」
唐突な質問だったので、私は言葉に詰まってしまった。
(殿下と……殿下とか……)
『――セシリア』
そこで私の頭に浮かんだのは今世での彼との記憶の数々だった。
冗談を言ったり、微笑みかけてくれる彼。
不思議と前世の冷たい殿下の姿が浮かぶことは無かった。
(……)
気付けば、私の口は自然と動いていた。
「そうですね……王太子殿下は……優しい方です……」
「……そうか」
そこで彼は再び視線を川の方に向けた。
(殿下……)
たしかに、私は殿下にたくさん傷付けられてきた。
無視されたり放っておかれることもしょっちゅうだった。
最初の頃はそんな彼を恨んだりもしていた。
だけど、少なくとも今世の殿下と前世の殿下は同じ人ではない。
(私が変わったからかしら?理由は未だによく分からないけれど……)
あんな彼を見ていると、もう少しだけこのままでいいかなってついつい思ってしまいそうになる。
じっと考え事をしていると、フォンド侯爵令息が声をかけてきた。
「……セシリア、そろそろ帰ろうか」
「そうですね、もう遅いですから」
そこで私は侯爵令息に向き直った。
「ラルフ様、今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ」
私が深くお辞儀をすると、彼も軽く礼をした。
「じゃあ、またね」
「はい、また機会があればお会いしましょう」
フォンド侯爵令息と別れた私は帰路へとついた。
***
「……」
セシリアの姿が見えなくなってからも、ラルフはしばらくの間その場から動けなくなっていた。
『王太子殿下は優しい方です』
ついさっきセシリアが何気なく放った言葉が彼の頭の中にこだました。
ラルフは自分でも気付かないうちに拳をギュッと握りしめた。
「…………クソッ」
絞り出したその声は祭りの雑音の中に混ざって消えていった。
「……」
私が差し出したぬいぐるみを、フォンド侯爵令息は無言で受け取った。
彼は袋に入れられたぬいぐるみをじっと見つめている。
(あら?気に入らなかったかしら?)
思っていたよりも反応が薄くて不安に思っていると、侯爵令息が顔を上げた。
「ここまでして取らなくてもよかったのに……」
「どうしてですか?これが欲しかったんじゃないんですか?」
「そうだけど……」
彼はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
(悪いとでも思ってるのかしら?)
かなりのお金を使ったので彼の気持ちは理解出来なくもない。
しかし、私はそんなつもりでこれを取ったわけではないのだ。
(どうしてもお礼がしたかったもの)
一度ならず、二度も彼に救われたのだから当然のことだ。
「平気ですよ。言ったじゃないですか、この間のお礼だって。それにこれくらいの散財、どうだってことありません。なんてったって、私の生家はフルール公爵家ですからね!」
「……」
私が自慢げにそう言うと、フォンド侯爵令息はクスリと笑った。
(だからそんなこと気にしないで)
私の思いが伝わったのか、彼がゆっくりと口を開いた。
「……ありがとう」
「……!」
恥ずかしそうに顔を背けながらも、そう口にした彼を見て私も自然と笑いがこみ上げてくる。
「ふふっ、どういたしまして」
「何故笑うんだ」
「いえ、ただ喜んでもらえて嬉しかっただけです」
人から感謝されるのはいつだって気分が良い。
「それより、その知人とやらのところに戻らなくてもいいのか?」
「あっ、そうでした……」
そこで私はミリアたちのことを思い出した。
(今頃、私を探しているだろうなぁ……)
私とはぐれて、ミリアたちはハラハラしているだろう。
そんな彼女の気持ちを考えると胸がズキッと痛んだ。
思い悩んだ様子の私を見た侯爵令息が、声をかけてきた。
「………それなら、僕が助けてあげようか」
「えっ?」
驚いてフォンド侯爵令息の方を見ると、彼は懐から何かを取り出した。
「それって……もしかして、魔道具ですか……?」
「そうだ」
侯爵令息が手に持っているのはどうやら魔道具のようだ。
(私は使ったことないけれど……)
「これは伝達の魔道具だ。これを使って君が僕と一緒にいることを伝えればいい」
「え、そんなこと出来るんですか?」
「少し時間はかかるだろうが、可能だ。外を巡回している騎士たちは大体これを持ってるだろうから、君の知人にもおそらく連絡が行くだろう」
「へぇ~便利なんですね」
それからフォンド侯爵令息は慣れた様子で魔道具を使ってみせた。
「ああ、今フルール公爵家のセシリア嬢と一緒にいる」
『えっ、フルール公爵令嬢とですか!?』
魔道具から驚いたような声が聞こえてくる。
「フルール公爵家にそのことを伝えてほしいんだが」
『そのこと、と言いますと?』
「セシリア嬢は僕と一緒にいるから心配しないでほしいと」
『……分かりました、お坊ちゃまがそう言うのであれば』
それからすぐに彼は魔道具をしまい、こちらに顔を向けた。
「これでもう大丈夫だ。同行者にもじきに連絡が行くだろう」
「わぁ!ありがとうございます、ラルフ様!」
満面の笑みを浮かべてそう言うと、彼は再び顔を逸らしてしまった。
(何はともあれ良かった……)
「せっかくなのでどこか行きましょうか」
「……そうだな」
彼は私の言葉にコクリと頷いた。
それから私たちは、再び王都の街を歩き出した。
***
夜になった。
時刻は既に夜の七時を回っている。
「もうこんな時間だったんですね」
「そうだな、祭りの灯りのせいでまるで気付かなかった」
あれから私とフォンド侯爵令息はご飯を食べたり歩き回ったりして祭りを満喫していた。
(楽しい時間はあっという間なんだなぁ……)
もうそろそろ邸に帰らなくてはいけない。
そう思うと何だか寂しい気持ちになる。
「ラルフ様はもうお帰りになられますか?」
「ああ、そうだな……」
「そうですか……」
分かりやすく気持ちの沈んだ私に気付いたのか、彼が心配そうにじっと見つめた。
そして、突然何かを思い立ったかのように口を開いた。
「そうだ、最後にあれを見に行かないか?」
「……あれ、ですか?」
侯爵令息の言うあれが何なのか私には全く分からない。
しかし、何故か目の前にいる彼は明るい顔をしている。
(何だろう?何かあるのかな?)
疑問符を浮かべる私を見てフォンド侯爵令息がクスリと口元に笑みを浮かべた。
「行こう、セシリアじょ………あ」
”セシリア嬢”と言いかけた彼はハッとなった。
「ご、ごめん……」
「いえ、別にかまいませんわ」
「セ、セシリアさ……ん……?」
「セシリアでいいですよ」
「……!」
彼は目を丸くした。
(誰かに見られたら誤解されかねないけれど……今だけは仕方ないわよね)
私がフルール公爵令嬢だと周囲に勘付かれるわけにはいかなかったからだ。
「……セシリア」
「はい、ラルフ様」
私の名前を慎重に呼んだ彼は、そっと手を差し出した。
「行こう、こっちだ」
「あ、はい、ありがとうございます」
私は差し出された手に自分の手を重ねた。
それから私は、前を歩いている彼に誘導されるような形で歩き始める。
(どこに行くんだろう?)
歩いている途中にフォンド侯爵令息に尋ねたが、到着するまでのお楽しみとはぐらかされてしまった。
後ろから見る彼の横顔は、気のせいかいつもよりも嬉しそうに見える。
(楽しみね……)
しばらくして、彼が突然歩みを止めた。
「セシリア、見てごらん」
「……」
その声で顔を上げて侯爵令息の横に並ぶと、信じられない光景が目の前に広がった。
「わぁ……!ラルフ様、これは一体……?」
「これは灯籠流しだ」
私たちが今いるのは近くにある川辺だ。
水面で無数の灯籠が光を放って浮いている。
それは、真っ暗な夜の川を明るく照らしていた。
私は一瞬にして、その光景に目を奪われてしまった。
(素敵……)
灯籠流しとは死者の魂を弔って灯籠を川に流す行事のことである。
私は初めて見るものだったが、この祭りの時期には毎年行われているのだという。
「すごく綺麗です……!」
「そうだな……ここはいつ見ても美しい」
ふと横にいる侯爵令息を見ると、彼もまた穏やかな表情で川に浮かぶ灯籠をじっと見つめていた。
「君はこういうのが好きか?」
「大好きです!」
「そうか、それは良かった」
私の返事を聞いた彼が安堵の表情を浮かべた。
「……セシリア」
「はい?」
声に反応して侯爵令息の方を見ると、ちょうどこちらを向いていた彼と視線が合った。
「最近、殿下とはどうなんだ?上手くやれているのか?」
「……殿下とですか?」
唐突な質問だったので、私は言葉に詰まってしまった。
(殿下と……殿下とか……)
『――セシリア』
そこで私の頭に浮かんだのは今世での彼との記憶の数々だった。
冗談を言ったり、微笑みかけてくれる彼。
不思議と前世の冷たい殿下の姿が浮かぶことは無かった。
(……)
気付けば、私の口は自然と動いていた。
「そうですね……王太子殿下は……優しい方です……」
「……そうか」
そこで彼は再び視線を川の方に向けた。
(殿下……)
たしかに、私は殿下にたくさん傷付けられてきた。
無視されたり放っておかれることもしょっちゅうだった。
最初の頃はそんな彼を恨んだりもしていた。
だけど、少なくとも今世の殿下と前世の殿下は同じ人ではない。
(私が変わったからかしら?理由は未だによく分からないけれど……)
あんな彼を見ていると、もう少しだけこのままでいいかなってついつい思ってしまいそうになる。
じっと考え事をしていると、フォンド侯爵令息が声をかけてきた。
「……セシリア、そろそろ帰ろうか」
「そうですね、もう遅いですから」
そこで私は侯爵令息に向き直った。
「ラルフ様、今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ」
私が深くお辞儀をすると、彼も軽く礼をした。
「じゃあ、またね」
「はい、また機会があればお会いしましょう」
フォンド侯爵令息と別れた私は帰路へとついた。
***
「……」
セシリアの姿が見えなくなってからも、ラルフはしばらくの間その場から動けなくなっていた。
『王太子殿下は優しい方です』
ついさっきセシリアが何気なく放った言葉が彼の頭の中にこだました。
ラルフは自分でも気付かないうちに拳をギュッと握りしめた。
「…………クソッ」
絞り出したその声は祭りの雑音の中に混ざって消えていった。
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