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二章
策略
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「セシリア、お前に話したいことがあるんだが」
「何でしょう?」
他愛もない話をした後、殿下は突然真剣な顔になってそう切り出した。
「陛下についてだ」
「……!」
国王陛下のことを考えると、一気に気分が沈む。
せっかく彼と楽しい時間を過ごしていたというのに。
(でも殿下の言う通り……放ってはおけないわ……)
あの様子だと、陛下は未だに私を諦めていないのだろう。
いつ仕掛けてくるか分からないから、警戒をするに越したことはない。
「セシリア、不安か?」
「殿下……」
私が俯いていると、彼が優しい言葉で尋ねた。
(不安だったけれど……)
殿下がいれば何だか安心出来る。
「殿下、私は大丈夫です。話を続けてください」
「そうか、それは良かった」
殿下はクスッと笑った後に言葉を続けた。
「俺にある考えがある」
「考え……ですか?」
「ああ」
殿下は軽く頷いた。
「陛下は腐ってもこの国の王だ。ただの王子に過ぎない俺では対抗出来ないときもあるだろう」
「……」
「だからこそ、俺はある人物に協力を依頼しようと思っている」
「ある人物って……?」
「――母上だ」
「……!」
――グレイフォード殿下の母君。
エリザベス・オルレリアン王妃陛下だ。
元々隣国の王女だった彼女はこの国で最も尊い女性である。
(エリザベス王妃陛下に協力を……!?)
「父上と同等の権力を持つ母上なら、きっとお前を守ることが出来る。母上は王妃という地位を無しにしても隣国の王女だし、父上も蔑ろには出来ないはずだ」
「たしかに……」
「実際にそうだった。父上は母上の願いは基本的に何だって叶えていたし、あまり強くは出れないようだった」
「なるほど……」
殿下の言うそれはたしかに良い案かもしれない。
しかし――
(エリザベス王妃陛下が……私に協力なんてしてくれるんだろうか……)
エリザベス王妃陛下は私を嫌っている。
その理由が明確な今、陛下にそれを頼むというのはどうも気が引けた。
私が王妃陛下の立場だったとしたら、不快感を覚えるはずだから。
「殿下……ですが王妃陛下は……」
「母上に守ってもらうのは気が引けるか?」
「いえ……王妃陛下は私を嫌っていらっしゃるので……」
それを聞いた殿下が、私の肩にそっと手を置いた。
「セシリア、そのことを気にしているのか?」
「……」
返事こそしなかったが、それは肯定を意味していた。
「セシリア、心配するな。母上は父上を愛していない」
「え、愛していらっしゃらないのですか……?」
「ああ、母上にとって父上はただの政略結婚の相手に過ぎないだろうな。お前を良く思っていないのは王妃のプライドなんじゃないか」
「……」
そうは言っても、まだ心の中にある不安感は拭えなかった。
(いくら愛していないとはいえ……)
王妃陛下の心境を思うと、胸がズキズキと痛む。
陛下はこの王宮でどれほど辛い思いをしてきたのだろうか。
(前世の私と似てるわ……)
前世での辛い気持ちを考えるとなおさらだった。
「セシリア、これしか方法が無いんだ。俺はお前を守りたい。だけど俺の力だけではどうにもならないことだってある。頼む」
殿下は悩む私に、懇願するようにそう言った。
(殿下……)
彼がどれほど私を想ってくれているかは今までの行動で十分すぎるくらいに伝わっている。
私だって彼が好きだ。
だからこそ、殿下の思いに背くようなことはしたくなかった。
「……はい、殿下」
結局、私は悩みながらもそっと頷いた。
「何でしょう?」
他愛もない話をした後、殿下は突然真剣な顔になってそう切り出した。
「陛下についてだ」
「……!」
国王陛下のことを考えると、一気に気分が沈む。
せっかく彼と楽しい時間を過ごしていたというのに。
(でも殿下の言う通り……放ってはおけないわ……)
あの様子だと、陛下は未だに私を諦めていないのだろう。
いつ仕掛けてくるか分からないから、警戒をするに越したことはない。
「セシリア、不安か?」
「殿下……」
私が俯いていると、彼が優しい言葉で尋ねた。
(不安だったけれど……)
殿下がいれば何だか安心出来る。
「殿下、私は大丈夫です。話を続けてください」
「そうか、それは良かった」
殿下はクスッと笑った後に言葉を続けた。
「俺にある考えがある」
「考え……ですか?」
「ああ」
殿下は軽く頷いた。
「陛下は腐ってもこの国の王だ。ただの王子に過ぎない俺では対抗出来ないときもあるだろう」
「……」
「だからこそ、俺はある人物に協力を依頼しようと思っている」
「ある人物って……?」
「――母上だ」
「……!」
――グレイフォード殿下の母君。
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元々隣国の王女だった彼女はこの国で最も尊い女性である。
(エリザベス王妃陛下に協力を……!?)
「父上と同等の権力を持つ母上なら、きっとお前を守ることが出来る。母上は王妃という地位を無しにしても隣国の王女だし、父上も蔑ろには出来ないはずだ」
「たしかに……」
「実際にそうだった。父上は母上の願いは基本的に何だって叶えていたし、あまり強くは出れないようだった」
「なるほど……」
殿下の言うそれはたしかに良い案かもしれない。
しかし――
(エリザベス王妃陛下が……私に協力なんてしてくれるんだろうか……)
エリザベス王妃陛下は私を嫌っている。
その理由が明確な今、陛下にそれを頼むというのはどうも気が引けた。
私が王妃陛下の立場だったとしたら、不快感を覚えるはずだから。
「殿下……ですが王妃陛下は……」
「母上に守ってもらうのは気が引けるか?」
「いえ……王妃陛下は私を嫌っていらっしゃるので……」
それを聞いた殿下が、私の肩にそっと手を置いた。
「セシリア、そのことを気にしているのか?」
「……」
返事こそしなかったが、それは肯定を意味していた。
「セシリア、心配するな。母上は父上を愛していない」
「え、愛していらっしゃらないのですか……?」
「ああ、母上にとって父上はただの政略結婚の相手に過ぎないだろうな。お前を良く思っていないのは王妃のプライドなんじゃないか」
「……」
そうは言っても、まだ心の中にある不安感は拭えなかった。
(いくら愛していないとはいえ……)
王妃陛下の心境を思うと、胸がズキズキと痛む。
陛下はこの王宮でどれほど辛い思いをしてきたのだろうか。
(前世の私と似てるわ……)
前世での辛い気持ちを考えるとなおさらだった。
「セシリア、これしか方法が無いんだ。俺はお前を守りたい。だけど俺の力だけではどうにもならないことだってある。頼む」
殿下は悩む私に、懇願するようにそう言った。
(殿下……)
彼がどれほど私を想ってくれているかは今までの行動で十分すぎるくらいに伝わっている。
私だって彼が好きだ。
だからこそ、殿下の思いに背くようなことはしたくなかった。
「……はい、殿下」
結局、私は悩みながらもそっと頷いた。
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