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二章
王妃陛下の元へ
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「じゃあ、早速母上のところに行くか」
「え、早くないですか!?」
驚く私に、殿下は冷静に言った。
「父上がまたいつお前に手を出そうとするか分からない。あの人は馬鹿ではないからな。罠を仕掛けてくるかもしれない。今から動かないと危険だ」
「た、たしかに……」
殿下の言っていることも一理ある。
が、しかし――
(本当に王妃陛下が協力なんてしてくれるのかしら……)
私はエリザベス王妃陛下のことをよく知っている。
気位が高く、あまり人を寄せ付けないタイプの方だった。
(それこそ、実の息子である殿下ともそれほど親しくしているようには見えなかったわ……)
私は横にいる殿下の横顔をじっと見つめた。
もしかすると、彼も私と同じ境遇にいたのかもしれない。
母を早くに亡くし、父親に放っておかれている私と。
「セシリア、行こう」
「……はい、殿下」
私は彼が差し出した手にそっと自分の手を重ねて部屋を出た。
こんな風にエスコートをされるのは初めてかもしれない。
こういう殿下の小さな気遣いはとても嬉しいけれど、胸の鼓動が速くなってしまうのは恥ずかしい。
彼に聞こえてしまっていないか、どうしても不安になってしまうから。
「王妃陛下がいる場所は知っているのですか?」
「ああ、この時間母上はいつも庭でお茶をしている」
どうやら庭まで行くようだ。
(殿下は王妃陛下に何て言うつもりなんだろう……)
そう思うと同時に、情けない自分に嫌気が差した。
私はいつだって彼に助けてもらってばかりで何も出来ない。
殿下はお前はそれでいいんだと笑い飛ばしてくれるのだろうが、私はそんな自分が嫌だった。
(勉強以外は何も出来ない女……とはまさに私のことね)
二度目の人生、前世よりかは成長しているかと思ったが人間の本質はそう簡単に変わらないらしい。
「――セシリア、庭に着いたぞ」
「あ……」
手を繋いでいた殿下から声がかかった。
到着したようだ。
「何だ、ボーッとしていたのか?」
「はい……」
素直に頷くと、殿下はクスリと笑った。
彼のそんな優しい笑みは未だに慣れない。
美しすぎて、この世の者とは思えないというか。
庭に入ると、美しい花々が視界に入った。
(綺麗……)
公爵家の離れにある庭園もとても綺麗な場所だったが、ここも負けていない。
殿下の話によると、この場所は何とエリザベス王妃陛下が直々に管理しているらしい。
花が好きなのだろうか、何だか意外だ。
(王妃陛下はどちらにいるんだろう……?)
私は庭園の中をキョロキョロと見渡した。
「!」
王妃陛下は庭園に設置されたガゼボでお茶をしている最中だった。
後ろには侍女と護衛騎士が一人ずつ控えている。
お茶を一口飲んだ王妃陛下は、花を見て穏やかな笑みを浮かべていた。
(王妃陛下って……あんな顔するんだ……)
舞踏会で国王陛下の隣に控えているエリザベス王妃陛下は滅多に笑わず、冷たい雰囲気をお持ちの方だった。
しかし、今の王妃陛下は違う。
優雅で気品に溢れていて、そこにいつも見せる冷たさは一切感じられなかった。
元々の美貌も相まって、その姿はとても美しいものだった。
「母上だな」
「はい」
殿下も王妃陛下に頼みごとをするとなって緊張しているのか、いつもより少しソワソワしている。
「殿下、大丈夫ですか?」
「ああ……そうだな……」
心配になって声を掛けるも、殿下は曖昧な言葉を返した。
(殿下も緊張とかするのね……)
普段の殿下からは想像もつかない姿だった。
息を整えた彼が、決心したかのように言った。
「じゃあ、行くか」
「はい」
私と殿下は王妃陛下に向かってゆっくりと大きな歩幅で歩き出した。
「え、早くないですか!?」
驚く私に、殿下は冷静に言った。
「父上がまたいつお前に手を出そうとするか分からない。あの人は馬鹿ではないからな。罠を仕掛けてくるかもしれない。今から動かないと危険だ」
「た、たしかに……」
殿下の言っていることも一理ある。
が、しかし――
(本当に王妃陛下が協力なんてしてくれるのかしら……)
私はエリザベス王妃陛下のことをよく知っている。
気位が高く、あまり人を寄せ付けないタイプの方だった。
(それこそ、実の息子である殿下ともそれほど親しくしているようには見えなかったわ……)
私は横にいる殿下の横顔をじっと見つめた。
もしかすると、彼も私と同じ境遇にいたのかもしれない。
母を早くに亡くし、父親に放っておかれている私と。
「セシリア、行こう」
「……はい、殿下」
私は彼が差し出した手にそっと自分の手を重ねて部屋を出た。
こんな風にエスコートをされるのは初めてかもしれない。
こういう殿下の小さな気遣いはとても嬉しいけれど、胸の鼓動が速くなってしまうのは恥ずかしい。
彼に聞こえてしまっていないか、どうしても不安になってしまうから。
「王妃陛下がいる場所は知っているのですか?」
「ああ、この時間母上はいつも庭でお茶をしている」
どうやら庭まで行くようだ。
(殿下は王妃陛下に何て言うつもりなんだろう……)
そう思うと同時に、情けない自分に嫌気が差した。
私はいつだって彼に助けてもらってばかりで何も出来ない。
殿下はお前はそれでいいんだと笑い飛ばしてくれるのだろうが、私はそんな自分が嫌だった。
(勉強以外は何も出来ない女……とはまさに私のことね)
二度目の人生、前世よりかは成長しているかと思ったが人間の本質はそう簡単に変わらないらしい。
「――セシリア、庭に着いたぞ」
「あ……」
手を繋いでいた殿下から声がかかった。
到着したようだ。
「何だ、ボーッとしていたのか?」
「はい……」
素直に頷くと、殿下はクスリと笑った。
彼のそんな優しい笑みは未だに慣れない。
美しすぎて、この世の者とは思えないというか。
庭に入ると、美しい花々が視界に入った。
(綺麗……)
公爵家の離れにある庭園もとても綺麗な場所だったが、ここも負けていない。
殿下の話によると、この場所は何とエリザベス王妃陛下が直々に管理しているらしい。
花が好きなのだろうか、何だか意外だ。
(王妃陛下はどちらにいるんだろう……?)
私は庭園の中をキョロキョロと見渡した。
「!」
王妃陛下は庭園に設置されたガゼボでお茶をしている最中だった。
後ろには侍女と護衛騎士が一人ずつ控えている。
お茶を一口飲んだ王妃陛下は、花を見て穏やかな笑みを浮かべていた。
(王妃陛下って……あんな顔するんだ……)
舞踏会で国王陛下の隣に控えているエリザベス王妃陛下は滅多に笑わず、冷たい雰囲気をお持ちの方だった。
しかし、今の王妃陛下は違う。
優雅で気品に溢れていて、そこにいつも見せる冷たさは一切感じられなかった。
元々の美貌も相まって、その姿はとても美しいものだった。
「母上だな」
「はい」
殿下も王妃陛下に頼みごとをするとなって緊張しているのか、いつもより少しソワソワしている。
「殿下、大丈夫ですか?」
「ああ……そうだな……」
心配になって声を掛けるも、殿下は曖昧な言葉を返した。
(殿下も緊張とかするのね……)
普段の殿下からは想像もつかない姿だった。
息を整えた彼が、決心したかのように言った。
「じゃあ、行くか」
「はい」
私と殿下は王妃陛下に向かってゆっくりと大きな歩幅で歩き出した。
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