愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの

文字の大きさ
65 / 127
二章

殿下へのプレゼント

そしてついに殿下と王妃陛下にプレゼントを渡す日がやってきた。
庭師が用意してくれた花束を手に、私は王宮へ向かう馬車に乗っていた。


(それにしても、本当に綺麗……)


右手には殿下に渡すための赤い薔薇の花束。
そして左手には、王妃陛下に渡すための赤いガーベラの花束を持っていた。


私が王妃陛下のために選んだのはガーベラという花だった。
何故この花にしたのか。
それについては直感で選んだというのが一番大きいだろう。


しかし、やはり私の目は間違っていなかったと今になってそう思った。


庭園の中でも存在感を放っていた赤いガーベラの花。
たった一輪だけでもこんなにも美しく見えるところが王妃陛下によく似ているなと思ったのだ。
赤色を選んだのは美しさの中に秘められた力強さを感じたからだ。
そういうところが王妃陛下と似ている。


(喜んでもらえるかしらね……)


馬車の中で終始私の胸はドキドキしていた。


「――お嬢様、着きましたよ」
「あら、ありがとう」


どうやら馬車が王宮に着いたようだ。


(何だかいつもより短く感じたわね)


緊張していたせいか、普段よりもこの道がとても短いように感じた。
御者の手を借りて馬車から降りると、すぐに殿下の姿が目に入った。
国王陛下がいつ接触してくるか分からないため、私が王宮へ来るときは毎回殿下が一番に出迎えをしてくれるのだ。


そんな彼の優しさに胸が温かくなる。
もちろん私だって彼に一番に会えるのは嬉しいことだった。


「殿下!」
「セシリア!」


私の姿を見た殿下が嬉しそうにこちらへ駆け寄って来た。
そんな彼の顔を見るのももう慣れた。


そして彼は私をギュッと抱き締めた。
私への気持ちを打ち明けてからの彼は少々――いや、かなり甘すぎるのだ。


「セシリア、会いたかったよ」
「殿下……私もです」


今となっては両想いだということをお互いが誰よりも知っているので、わざわざ隠す必要も無い。


(それにしても、毎回毎回会いたかったと言っているような気がするのは気のせいかしら?)


そんな疑念を抱いた私は、心の中でクスリと笑った。
決して不快ではなかったからだ。


しばらく抱き合ってから身体をゆっくりと離した殿下が、私の手に持っている物を珍しそうに見た。


「セシリア、それは何だ?」
「あ、これは……」


私は持っていた花束のうちの片方を殿下に差し出した。
赤い薔薇の花束だ。


「殿下、私からのプレゼントです。どうぞ受け取ってください」
「え、俺にか……?」
「はい、公爵家の離れにはとても花が美しく咲いている庭園があるのですよ」


殿下は少しだけ固まった後、そっと花束を受け取った。


「……ありがとう、大事にするよ」
「喜んでくださったのなら良かったです」


殿下はとても大事そうに赤い薔薇に触れた。
王太子殿下と花。
これほど似合わない組み合わせは他にあるだろうか。


そんなことを考えた私はフフッと笑みを溢した。


「いつか、殿下にもその場所を見ていただきたいです。本当に美しいんですから」
「ああ、もちろんだ。お前が好きな場所なら俺も好きになりたい」


殿下はフッと笑った後、私の頭を優しく撫でた。
そこでふと何かに気付いたかのように尋ねた。


「セシリア、そっちの花は……?」
「これは、王妃陛下に贈るために用意したものです」
「母上に……」


殿下は少しだけ考え込む素振りを見せた後に優しい口調で言った。


「そうか、喜んでもらえるといいな」
「はい、殿下」


私が殿下が自然に差し出した手に自分の手を重ねて王宮の廊下を歩き出した。
行き先は一つ。


(……どうか、上手くいきますように)


あなたにおすすめの小説

【本編完結】初恋のその先で、私は母になる

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。 王宮で12年働き、気づけば28歳。 恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。 優しく守ろうとする彼。 けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。 揺れる想いの中で、彼女が選んだのは―― 自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。 これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。 ※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。

「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜

まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。 愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。 夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。 でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。 「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」 幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。 ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。 夫が全てを失うのはこれからの話。 私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。

「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」 新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。 それもそのはず。 2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。 でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。 美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。 だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。 どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。 すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?  焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。