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三章
婚前旅行①
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それから数日後。
「わぁ、とっても良い天気ですね、殿下!」
「ああ、そうだな」
私は殿下と共に隣国へ旅行に来ていた。
(彼と二人で旅行だなんて……前世を含めても経験したことがないわ)
そもそも前世での私と殿下はそのような関係では無かった。
初めての体験に胸が躍る。
「セシリア、今日だけは他のことを忘れて思いきり羽根を伸ばすといい」
「はい、ありがとうございます、殿下」
私は殿下に手を引かれて今日滞在する宿へと向かった。
宿泊先に荷物を置いた私は、嬉々として殿下に声をかけた。
「殿下、海行きましょう!海!この近くに有名な場所があるらしいですよ!」
「……海?」
ポカンと口を開けて茫然とする殿下。
私はそんな彼の手を引っ張って外へと連れ出した。
「お、おいセシリア!どこに行くんだ!」
「せっかくですからたくさん楽しみましょう、殿下!」
「ど、どういう意味だ……」
事前にリサーチが済んでいる私。
今日はとことん殿下を振り回すつもりだ。
(こんな機会そうそうないもの!楽しむわよ!)
***
それから私たちがやって来たのは目的地のビーチの近くにあるお店だ。
男性用女性用問わずこの国特有の服がズラリと並んでいる。
(民族衣装もあるわ!こんなにいっぱいあるとどれにしようか迷っちゃうわね)
「やっぱりたくさんありますね!」
「何だここは」
「私と殿下の服を買いに来たんですよ!」
「……こんなものを着るのか?」
殿下が指を差したのは男性用の半ズボンだ。
(まぁ普段王族として過ごしていたらこういうのを着る機会なんてそうそう無いものね……)
殿下はあまり乗り気では無さそうだが、むしろ今の服装でこの街を歩いている方が目立つだろう。
今の殿下は平民が着るような服を着用しているものの、王族特有のオーラが隠しきれていない。
女性たちが目が離せなくなっていることに彼は全く気付いていないみたいだけど。
「今着ている服は暑いし……動きづらいじゃないですか。私たちが高貴な身分の人間だってバレないためにもこの国の人たちに合わせるべきではないでしょうか」
「……たしかにな」
私のその言葉で殿下はようやく納得してくれたようだ。
「それで、どれにするんだ?」
「これはどうですか?」
そこで私は、手に持っていたセットアップを殿下に見せた。
「…………ダメだ、露出が高すぎる」
「えっ」
丈が短すぎたその服は即座に却下されてしまったが。
「セシリア、俺の服はお前が決めてくれ」
「私が決めてしまっていいんですか?」
「ああ、お前が選んだものなら何だって着る」
「どれだけ変な服だったとしても?」
「……そこはお前を信頼してる」
殿下はそれだけ言うと、そそくさと店を出て行ってしまった。
「外で待ってるぞ」
「あ、殿下……」
(……殿下は本当にファッションに関心が無いみたいね)
そういうところも彼らしくて好きではあるが。
自分以外には全く興味を抱かない彼の姿に思わず笑みが零れる。
そして彼が初めて自分を頼ってくれたということが何よりも嬉しかった。
「どれが似合うかしら」
殿下が全面的に私に任せると言ってくれたからには私が責任をもってしっかりと選ばなければいけない。
男性の服を選ぶのは生まれて初めてだった。
何を選んだところで彼が私に文句を言うことは無さそうだが……。
(どれにしようかしら……あ、あれなんて良いかも!)
「わぁ、とっても良い天気ですね、殿下!」
「ああ、そうだな」
私は殿下と共に隣国へ旅行に来ていた。
(彼と二人で旅行だなんて……前世を含めても経験したことがないわ)
そもそも前世での私と殿下はそのような関係では無かった。
初めての体験に胸が躍る。
「セシリア、今日だけは他のことを忘れて思いきり羽根を伸ばすといい」
「はい、ありがとうございます、殿下」
私は殿下に手を引かれて今日滞在する宿へと向かった。
宿泊先に荷物を置いた私は、嬉々として殿下に声をかけた。
「殿下、海行きましょう!海!この近くに有名な場所があるらしいですよ!」
「……海?」
ポカンと口を開けて茫然とする殿下。
私はそんな彼の手を引っ張って外へと連れ出した。
「お、おいセシリア!どこに行くんだ!」
「せっかくですからたくさん楽しみましょう、殿下!」
「ど、どういう意味だ……」
事前にリサーチが済んでいる私。
今日はとことん殿下を振り回すつもりだ。
(こんな機会そうそうないもの!楽しむわよ!)
***
それから私たちがやって来たのは目的地のビーチの近くにあるお店だ。
男性用女性用問わずこの国特有の服がズラリと並んでいる。
(民族衣装もあるわ!こんなにいっぱいあるとどれにしようか迷っちゃうわね)
「やっぱりたくさんありますね!」
「何だここは」
「私と殿下の服を買いに来たんですよ!」
「……こんなものを着るのか?」
殿下が指を差したのは男性用の半ズボンだ。
(まぁ普段王族として過ごしていたらこういうのを着る機会なんてそうそう無いものね……)
殿下はあまり乗り気では無さそうだが、むしろ今の服装でこの街を歩いている方が目立つだろう。
今の殿下は平民が着るような服を着用しているものの、王族特有のオーラが隠しきれていない。
女性たちが目が離せなくなっていることに彼は全く気付いていないみたいだけど。
「今着ている服は暑いし……動きづらいじゃないですか。私たちが高貴な身分の人間だってバレないためにもこの国の人たちに合わせるべきではないでしょうか」
「……たしかにな」
私のその言葉で殿下はようやく納得してくれたようだ。
「それで、どれにするんだ?」
「これはどうですか?」
そこで私は、手に持っていたセットアップを殿下に見せた。
「…………ダメだ、露出が高すぎる」
「えっ」
丈が短すぎたその服は即座に却下されてしまったが。
「セシリア、俺の服はお前が決めてくれ」
「私が決めてしまっていいんですか?」
「ああ、お前が選んだものなら何だって着る」
「どれだけ変な服だったとしても?」
「……そこはお前を信頼してる」
殿下はそれだけ言うと、そそくさと店を出て行ってしまった。
「外で待ってるぞ」
「あ、殿下……」
(……殿下は本当にファッションに関心が無いみたいね)
そういうところも彼らしくて好きではあるが。
自分以外には全く興味を抱かない彼の姿に思わず笑みが零れる。
そして彼が初めて自分を頼ってくれたということが何よりも嬉しかった。
「どれが似合うかしら」
殿下が全面的に私に任せると言ってくれたからには私が責任をもってしっかりと選ばなければいけない。
男性の服を選ぶのは生まれて初めてだった。
何を選んだところで彼が私に文句を言うことは無さそうだが……。
(どれにしようかしら……あ、あれなんて良いかも!)
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