119 / 127
三章
決戦①
しおりを挟む
「アルベルト!!!」
「な!?何故オスカーがここに!?まさか、術が解けたというのか!?」
自身に剣を向けるお父様に、国王は酷く動揺しているようだ。
(王はきっとお父様が未だに魔法にかかっていると思っているのでしょうね)
「ああ、全て思い出したよ……アルベルト、よくもやってくれたな」
「な……クソッ!一体どうやって術を解いたんだ!」
「それはお前の知る必要の無いことだ」
次の瞬間、剣を持ったお父様が王に向かって突進していく。
「おい待て!やめろオスカー!私は昔からお前のことを実の弟のように可愛がっていたではないか!それなのに剣を向けるなど!」
「私を利用してさらなる権力を得ようとしていただけだろう!私はお前を兄などと思ったことは一度も無い!」
王がどれだけ喚こうと、父は止まらなかった。
物凄いスピードで国王へと向かっていく。
すぐに決着は着くと思われた。
が、お父様の剣が王の喉元に突き刺さる直前、突然魔法陣が発生し、お父様を吹き飛ばした。
「ウッ……!」
「お父様!!!」
「公爵!!!」
吹き飛ばされたお父様は壁に叩きつけられた。
(今のは一体……!?)
あ然とする私たち。
最初は何が起きたのかが分からなかった。
しかし、こんなことが出来る人はこの場で一人しかいない。
「――そう簡単に陛下の首を獲られたら困るんだよな……」
シンと静まり返った部屋に、僅かな怒りを滲ませたような低い声が響いた。
「ローレル……!」
声のした方を見ると、ローレル様が不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「お前は……」
起き上がったお父様が蔑むような視線をローレル様にに向けた。
「ハハ……こんな愚かな男につくとは……最強の魔術師が、落ちぶれたものだな!」
「久しぶりだな、オスカー」
お父様の姿を見て、彼はさらに楽しそうに口の端を上げた。
「最強の魔術師……?」
小さな声で呟いた私に、横にいたダリウス様が私にだけ聞こえる声でそっと囁いた。
「ローレルはお前とグレイの父親と同世代で、昔は最強の魔術師と呼ばれるほど優秀な男だった。年を取った今でもその力は健在だ。アイツは手強いぞ」
「ローレル様が……」
国王最側近の男は只者では無かったようだ。
「ローレル!!!」
「おっと、お前の剣は危ないな」
お父様が今度はローレル様に向かって突進した。
ローレル様の魔法陣と、お父様の剣がぶつかる。
「何故お前ほどの男が……こんな愚王に手を貸す!?」
「私には私の目的がある。目的のためなら私は手段を選ばない。が、お前がそれを知る必要は無い」
お父様とローレル様の戦いは激化していく。
「ダリウス様、殿下。お父様がローレル様の相手をしているうちに私たちは王を……」
「――無駄だ、フルール嬢」
「……え?」
驚いてダリウス様を見ると、彼は深刻そうな顔をしていた。
「王の周りを守っている魔法陣を見てみろ」
「……」
彼の視線の先に目をやると、いつの間にか王の周りに結界が張り巡らされていた。
「結界が何重にも貼られている。あれはそう簡単に壊せるものじゃない。破壊しようとするだけ時間と体力の無駄だ」
「なら、どうすれば……」
「――ローレルを倒す以外には無いな。アイツが倒れればあの結界も自然と消える」
そう言うと、ダリウス様は一歩前に出た。
「公爵、その男は俺がやる」
「お前は……」
「俺は魔術師だ。――術師の相手は術師がする」
「な!?何故オスカーがここに!?まさか、術が解けたというのか!?」
自身に剣を向けるお父様に、国王は酷く動揺しているようだ。
(王はきっとお父様が未だに魔法にかかっていると思っているのでしょうね)
「ああ、全て思い出したよ……アルベルト、よくもやってくれたな」
「な……クソッ!一体どうやって術を解いたんだ!」
「それはお前の知る必要の無いことだ」
次の瞬間、剣を持ったお父様が王に向かって突進していく。
「おい待て!やめろオスカー!私は昔からお前のことを実の弟のように可愛がっていたではないか!それなのに剣を向けるなど!」
「私を利用してさらなる権力を得ようとしていただけだろう!私はお前を兄などと思ったことは一度も無い!」
王がどれだけ喚こうと、父は止まらなかった。
物凄いスピードで国王へと向かっていく。
すぐに決着は着くと思われた。
が、お父様の剣が王の喉元に突き刺さる直前、突然魔法陣が発生し、お父様を吹き飛ばした。
「ウッ……!」
「お父様!!!」
「公爵!!!」
吹き飛ばされたお父様は壁に叩きつけられた。
(今のは一体……!?)
あ然とする私たち。
最初は何が起きたのかが分からなかった。
しかし、こんなことが出来る人はこの場で一人しかいない。
「――そう簡単に陛下の首を獲られたら困るんだよな……」
シンと静まり返った部屋に、僅かな怒りを滲ませたような低い声が響いた。
「ローレル……!」
声のした方を見ると、ローレル様が不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「お前は……」
起き上がったお父様が蔑むような視線をローレル様にに向けた。
「ハハ……こんな愚かな男につくとは……最強の魔術師が、落ちぶれたものだな!」
「久しぶりだな、オスカー」
お父様の姿を見て、彼はさらに楽しそうに口の端を上げた。
「最強の魔術師……?」
小さな声で呟いた私に、横にいたダリウス様が私にだけ聞こえる声でそっと囁いた。
「ローレルはお前とグレイの父親と同世代で、昔は最強の魔術師と呼ばれるほど優秀な男だった。年を取った今でもその力は健在だ。アイツは手強いぞ」
「ローレル様が……」
国王最側近の男は只者では無かったようだ。
「ローレル!!!」
「おっと、お前の剣は危ないな」
お父様が今度はローレル様に向かって突進した。
ローレル様の魔法陣と、お父様の剣がぶつかる。
「何故お前ほどの男が……こんな愚王に手を貸す!?」
「私には私の目的がある。目的のためなら私は手段を選ばない。が、お前がそれを知る必要は無い」
お父様とローレル様の戦いは激化していく。
「ダリウス様、殿下。お父様がローレル様の相手をしているうちに私たちは王を……」
「――無駄だ、フルール嬢」
「……え?」
驚いてダリウス様を見ると、彼は深刻そうな顔をしていた。
「王の周りを守っている魔法陣を見てみろ」
「……」
彼の視線の先に目をやると、いつの間にか王の周りに結界が張り巡らされていた。
「結界が何重にも貼られている。あれはそう簡単に壊せるものじゃない。破壊しようとするだけ時間と体力の無駄だ」
「なら、どうすれば……」
「――ローレルを倒す以外には無いな。アイツが倒れればあの結界も自然と消える」
そう言うと、ダリウス様は一歩前に出た。
「公爵、その男は俺がやる」
「お前は……」
「俺は魔術師だ。――術師の相手は術師がする」
557
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私を見ないあなたに大嫌いを告げるまで
木蓮
恋愛
ミリアベルの婚約者カシアスは初恋の令嬢を想い続けている。
彼女を愛しながらも自分も言うことを聞く都合の良い相手として扱うカシアスに心折れたミリアベルは自分を見ない彼に別れを告げた。
「今さらあなたが私をどう思っているかなんて知りたくもない」
婚約者を信じられなかった令嬢と大切な人を失ってやっと現実が見えた令息のお話。
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
【完結】さよならのかわりに
たろ
恋愛
大好きな婚約者に最後のプレゼントを用意した。それは婚約解消すること。
だからわたしは悪女になります。
彼を自由にさせてあげたかった。
彼には愛する人と幸せになって欲しかった。
わたくしのことなど忘れて欲しかった。
だってわたくしはもうすぐ死ぬのだから。
さよならのかわりに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる