愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの

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三章

戦い② ダリウス視点

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「死んでもらう、か……ガキが、言ってくれるな」


ローレルは不敵に笑った。
その余裕そうな笑みに腹が立つ。


(国王アルベルトの犯した罪を知っていてこの男の傍についているのなら、お前も同罪だ)


セシリア、グレイフォード襲撃を唆したのはこの男に違いない。
あの二人のためにも、危険因子はここで排除しておく必要がある。


「危険因子を排除、か……私のことをそういう風に思っているのか……」
「……お前、読心術でも持っているのか」
「君は考えていることが顔に出やすい。今私に抱いている感情も、あの王太子に対する忠誠心もたった数分の間で全て理解したさ」


本当に、底の知れない男だ。
経験値からして俺はこの男にかなり劣っている。


「死んでもらうと自信満々に言っていたが、私の闇魔法に勝てるのか?」
「ぐっ……!」


その瞬間、再び闇に引きずり込まれそうになった。
全く表情を変えずに攻撃を仕掛けてくるため、掴みにくい。


魔術師ローレルの得意魔法は闇。
闇魔法を扱える者は魔術師の中でもそうはいない。


(一瞬でも呑み込まれたら終わりだ……!)


自身も魔法を発動し、ローレルの闇魔法に対抗したうえで何とか力ずくで抜け出した。
しかし、抜け出そうとする途中で闇の攻撃を喰らってしまい、口から血を吐いた。


「また抜けた……やっぱり王太子の側近は伊達ではないな」
「この程度にやられていては次の王の最側近は務まらないからな」
「……次の王か……」


不愉快だとでも言わんばかりに眉をひそめた。


(現王は馬鹿で操りやすいからその座に就けておきたいということか)


結局のところ、この男も国王と同じで権力に目が無いのだ。


「今度は俺から仕掛けるぞ」
「楽しみだな」


俺は最上級の火魔法を唱えると、ローレルに向かって放った。
Sランク魔物ですらダメージを喰らうほど強い魔法だった。
放たれた攻撃は見事、ローレルに直撃した。


が、しかし――


火の中から姿を現わしたローレルは傷一つ無くピンピンしていた。


(何故だ!人間が今の攻撃を喰らって生きていられるはずが無い……!)


そんな私の気持ちを読んだのか、ローレルは面白そうに声を上げて笑った。


「闇魔法で作った防御壁だ」
「な……」
「残念だったな、お前の魔法は私の魔法を上回らなかった」


ローレルの言っていることは正しかった。
もし俺の魔法の威力がもっとあれば、ローレルの張った防御壁など壊して攻撃を与えていただろう。


――こうなったのは全て、俺の実力が足りなかったせいだ。


「この防御壁がある限り、お前は私に攻撃を与えることは出来ない」
「……」
「もはや負けが確定しているも同然の勝負だ。それでも戦うのか?」


ローレルは挑発するように言った。
たしかに、俺はこの時点でローレルよりも格下だった。
もしかすると、本当に負けて死んでしまうかもしれない。


その可能性を全く考えていないわけでは無かった。
それでも、俺の返事は決まっている。


「ここで退いたらあの二人に合わせる顔が無い……」
「へぇ……随分と立派な忠誠心だな。やっぱり私の部下にしたい」


上着を脱いだ俺は、目の前に魔法陣を発動させてローレルと向き合った。
絶対にこの男に勝つ、という誓いを胸に抱きながら。






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