貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

文字の大きさ
39 / 54

断罪後

私はエイドリアン殿下の自室に行った後、お父様の後ろ姿を見つけた。


「お父様!」


私はそう言ってお父様に駆け寄る。


「エレン!」


私の声に振り返ったお父様は私の姿を確認するなりギュッと抱きしめた。


「お、お父様・・・この年で恥ずかしいわ・・・。」


私が顔を赤らめて言うとお父様は軽く笑った。


お父様はこんなにもよく笑う方だっただろうか。


「たまにはいいだろう。それよりエレン、怪我はしてないな?」


私を労うかのようにお父様が言った。


「はい。クリスが守ってくれたので。」


私は少し顔を赤くして言った。


「そうか。」


お父様が私の後ろにいたクリスを見て言った。


「クリス。エレンを守ってくれたんだな。ありがとう。」


「エレンは私の婚約者です。婚約者を守るのは当然のことですよ。」


その言葉に更に顔が赤くなる。


クリスは本当に優しい人だ。


いつだって私を守ってくれる。


クリスの言葉を聞いたお父様は私からそっと体を離し、クリスに向けて言った。


「クリス・・・。君がエレンの婚約者になってくれて良かったよ。君なら安心して娘を任せられる。」


その顔は本当に穏やかで、まるで実の息子に向けているようだった。


「そう言ってもらえて私も嬉しいです。」


クリスもお父様を見て微笑んだ。


二人とも、本当に私を想ってくれているということが伝わってくる。


エイドリアン殿下から婚約破棄されて、途方に暮れていた私がこんなにも幸せになれるだなんて未だに信じられない。


私が気づいていないだけで、私を愛してくれていた人はたくさんいたのだ。


「クリス、エイドリアン殿下はどうだった?」


お父様がクリスに尋ねた。


「あの平民の女に振られてかなり落ち込んでいましたが、エレンの説得で何とか元気を取り戻したようです。」


クリスが淡々と告げた。


「エレンの説得で?」


お父様が少し驚いたように言った。


「はい。今回は完全にエレンの手柄です。」


「そうか、エレンが・・・」


そう言われると照れる。


そういえばあの時、かなりエイドリアン殿下に失礼なことを言ったような気がする。


今思うと恥ずかしい。


穴があったら入りたい・・・!


もじもじしている私を見てクリスは少し不機嫌そうな顔をした。


お父様は私とクリスを交互に見て不思議そうな顔をしていた。


「公爵閣下のほうはどうだったのですか?側妃様とアズリール侯爵を相手にしていらしたんでしょう?」


クリスがお父様を見て尋ねた。


シャルル殿下の母君であらせられる側妃様はハッキリ言って性格に難ありだ。


そしてその側妃様の兄君であるアズリール侯爵様は妹を溺愛し、妹のためなら何だってやる人だ。


今回の不正も妹のためを思ってやったことだった。


「あぁ、大丈夫だ。あの二人なら既に捕縛してある。」


お父様が私たちを安心させるように言った。


「えっ、すごいですね、公爵閣下。あの側妃様相手に・・・」


「こら、クリス!」


クリスはシャルル殿下との作戦会議の時に「側妃のところにだけは絶対に行きたくない」と言うほど側妃様に苦手意識を抱いていた。


私もハッキリ言って側妃様はかなり苦手だった。


エイドリアン殿下の婚約者だった頃何かときつく当たってくることが多かった。


だけど今考えれば側妃様も辛い思いをしてきたのだ。


婚約者が平民の女性を正妃として迎え、自分は正妃の仕事をこなすためだけに側妃になった。


彼女はきっと国王陛下を心から愛していたのだろう。


私と境遇が少し似ているような気がして、同情してしまう。


私もエイドリアン殿下に婚約者候補から外されることを聞かされた時は物凄くショックだったからその当時の側妃様の気持ちが痛いほど理解できた。


今の側妃様からは信じられないことだけれど、側妃様は元々は心優しい女性だったと聞く。


もちろん側妃様のしたことは許されることではないが、全ての原因は国王陛下だ。


それを考えると、私はなんだか複雑な気持ちになった。


「「・・・」」


そんな私をお父様とクリスはじっと見つめていた。


「もうすぐシャルル殿下がいらっしゃるはずだ。それまで休んでいなさい。」


私の浮かない顔を見たお父様が優しい顔で言った。


「それではお言葉に甘えて。エレン、こっちに来い。」


クリスが私に手を差し出した。


私はその手を取ってクリスに寄り添った。


あなたにおすすめの小説

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!

ユウ
恋愛
辺境地に住まう伯爵令嬢のメアリ。 婚約者は幼馴染で聖騎士、親友は魔術師で優れた能力を持つていた。 対するメアリは魔力が低く治癒師だったが二人が大好きだったが、戦場から帰還したある日婚約者に別れを告げられる。 相手は幼少期から慕っていた親友だった。 彼は優しくて誠実な人で親友も優しく思いやりのある人。 だから婚約解消を受け入れようと思ったが、学園内では愛する二人を苦しめる悪女のように噂を流され別れた後も悪役令嬢としての噂を流されてしまう 学園にも居場所がなくなった後、悲しみに暮れる中。 一人の少年に手を差し伸べられる。 その人物は光の魔力を持つ剣帝だった。 一方、学園で真実の愛を貫き何もかも捨てた二人だったが、綻びが生じ始める。 聖騎士のスキルを失う元婚約者と、魔力が渇望し始めた親友が窮地にたたされるのだが… タイトル変更しました。

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。 彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。 さて、どうなりますでしょうか…… 別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。 突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか? 自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。 私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。 それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。 7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

【完結】婚約破棄に祝砲を。あら、殿下ったらもうご結婚なさるのね? では、祝辞代わりに花嫁ごと吹き飛ばしに伺いますわ。

猫屋敷むぎ
恋愛
王都最古の大聖堂。 ついに幸せいっぱいの結婚式を迎えた、公女リシェル・クレイモア。 しかし、一年前。同じ場所での結婚式では―― 見知らぬ女を連れて現れたセドリック王子が、高らかに宣言した。 「俺は――愛を選ぶ! お前との婚約は……破棄だ!」 確かに愛のない政略結婚だったけれど。 ――やがて、仮面の執事クラウスと共に踏み込む、想像もできなかった真実。 「お嬢様、祝砲は芝居の終幕でと、相場は決まっております――」 仮面が落ちるとき、空を裂いて祝砲が鳴り響く。 シリアスもラブも笑いもまとめて撃ち抜く、“婚約破棄から始まる、公女と執事の逆転ロマンス劇場”、ここに開幕! ――ミステリ仕立ての愛と逆転の物語です。スッキリ逆転、ハピエン保証。 ※「小説家になろう」にも掲載。 ※ アルファポリス完結恋愛13位。応援ありがとうございます。