47 / 113
47 再会
しおりを挟む
しばらくして、お茶会が終わる時間となった。
「二人とも、忙しいだろうに私の我儘に付き合ってくれて本当にありがとう」
「気にしないで、私だって楽しみだったんだから」
「そうですよエミリアさん。誘っていただき光栄です」
お義姉様はともかく、レイラとはしばらく会えないのだと思うと何だか寂しくなる。
「レイラ、またね」
「ええ、今度私の子供たちを紹介するわ」
「本当!?楽しみにしてるわ!」
私たちは手を取り合って別れの挨拶をした。
「レイラ様、今日は招待していただいてありがとうございました」
「全然!また来てくれると嬉しいわ」
「もちろんです」
お義姉様も随分レイラと打ち解けたようだった。
何だか二人とも名残惜しそうにしている。
「お義姉様、そろそろ行きましょうか」
「はい、そうしましょう」
私たちはレイラに向かって手を振りながらお茶会が行われていたガゼボを出た。
「楽しい時間はあっという間なのですね」
「そうですね、また集まりたいです」
「ふふふ、きっとすぐに叶いますよ」
私とお義姉様は二人並んで会話に花を咲かせながら馬車までの道のりを歩いた。
その途中で私は自身がある忘れ物をしていたことに気が付いた。
「あ……いっけない!」
「エミリアさん、どうかなさったのですか?」
私は懐に入ったままの包み紙に気付いてハッとなった。
(渡すつもりだったのに……忘れちゃってた……)
離婚してから最初に行われた舞踏会で私はレイラやリーシェお義姉様、王宮にいる侍女たちに本当に世話になった。
だからこそお礼をしたいと思い、協力してくれた全ての人にささやかな贈り物を用意したのだ。
しかし、レイラとお義姉様には無事渡せたものの、侍女たちへの贈り物を渡し忘れてしまったのである。
「まぁ、それは……」
「お義姉様、すみません。先に戻っていてもらえますか?」
「分かりました。大事な御用ですものね」
お義姉様は取り出された包み紙を見て察したのか、穏やかな顔で頷いた。
それからお義姉様と一度別れた私は、すぐに来た道を戻った。
(どこにいるか分からないから、レイラに頼もう)
レイラに任せるのが一番良いだろう。
彼女はきっと確実に渡してくれるはずだ。
そんなことを考えながら早足で曲がり角を曲がったそのとき、向かいから歩いてきた人物とぶつかってしまった。
「キャッ!」
「――!」
ぶつかった反動で、私は後ろによろめいてしまった。
「す、すみません……って、貴方は……」
「……」
顔を上げた私は、目の前にいる人物を見て驚いた。
(この人……前に私を助けてくれた人よね……!?)
顔はハッキリと見ていなかったものの、その美しい碧眼だけは見間違いようが無い。
相手も私に見覚えがあるようで、目をパチクリさせていた。
(どうして王宮にいるんだろう……?でもまた会えて良かった!)
私は気まずそうに目を逸らす彼に声をかけた。
「あ、あの!」
「……?」
「前は助けていただいてありがとうございました!」
「……」
彼は何も言わなかった。
(何だろう?どこかで見たことあるような……)
前に一度見たのはたしかだが、何だかそれ以前に会ったことがあるような気がする。
男性はしばらく黙り込んだ後、ようやく言葉を発した。
「……気にするな、ただの気まぐれだ」
「でも、助けてくださったのは事実なので!どうしてもお礼を言いたくて!」
「……」
私がそう言うと、彼は踵を返してこの場を立ち去ろうとした。
「あ、待ってください!」
「……まだ何かあるのか?」
私は思わず彼を引き留めていた。
そんなつもりは無かったのに。
「あ……えっと……」
「……」
私をじっと見つめる彼の視線に焦った私は、咄嗟に思い付いたことを口にしていた。
「貴方のお名前を教えてくださいませんか!」
「……名前?」
「はい……私は、もう既にご存知かもしれませんがエミリア・ログワーツと申します」
「ログワーツ……」
知っているのか知らないのか、彼はボソリとその名を呟いた。
それからしばらくして、彼はゆっくりと口を開いた。
「……俺はルークだ」
「ルーク、って言うんですね!覚えておきます!この前は本当にありがとうございました!お気をつけてお帰りください!」
私は彼にもう一度礼を言った後、今度こそはレイラの元へと急いだ。
「二人とも、忙しいだろうに私の我儘に付き合ってくれて本当にありがとう」
「気にしないで、私だって楽しみだったんだから」
「そうですよエミリアさん。誘っていただき光栄です」
お義姉様はともかく、レイラとはしばらく会えないのだと思うと何だか寂しくなる。
「レイラ、またね」
「ええ、今度私の子供たちを紹介するわ」
「本当!?楽しみにしてるわ!」
私たちは手を取り合って別れの挨拶をした。
「レイラ様、今日は招待していただいてありがとうございました」
「全然!また来てくれると嬉しいわ」
「もちろんです」
お義姉様も随分レイラと打ち解けたようだった。
何だか二人とも名残惜しそうにしている。
「お義姉様、そろそろ行きましょうか」
「はい、そうしましょう」
私たちはレイラに向かって手を振りながらお茶会が行われていたガゼボを出た。
「楽しい時間はあっという間なのですね」
「そうですね、また集まりたいです」
「ふふふ、きっとすぐに叶いますよ」
私とお義姉様は二人並んで会話に花を咲かせながら馬車までの道のりを歩いた。
その途中で私は自身がある忘れ物をしていたことに気が付いた。
「あ……いっけない!」
「エミリアさん、どうかなさったのですか?」
私は懐に入ったままの包み紙に気付いてハッとなった。
(渡すつもりだったのに……忘れちゃってた……)
離婚してから最初に行われた舞踏会で私はレイラやリーシェお義姉様、王宮にいる侍女たちに本当に世話になった。
だからこそお礼をしたいと思い、協力してくれた全ての人にささやかな贈り物を用意したのだ。
しかし、レイラとお義姉様には無事渡せたものの、侍女たちへの贈り物を渡し忘れてしまったのである。
「まぁ、それは……」
「お義姉様、すみません。先に戻っていてもらえますか?」
「分かりました。大事な御用ですものね」
お義姉様は取り出された包み紙を見て察したのか、穏やかな顔で頷いた。
それからお義姉様と一度別れた私は、すぐに来た道を戻った。
(どこにいるか分からないから、レイラに頼もう)
レイラに任せるのが一番良いだろう。
彼女はきっと確実に渡してくれるはずだ。
そんなことを考えながら早足で曲がり角を曲がったそのとき、向かいから歩いてきた人物とぶつかってしまった。
「キャッ!」
「――!」
ぶつかった反動で、私は後ろによろめいてしまった。
「す、すみません……って、貴方は……」
「……」
顔を上げた私は、目の前にいる人物を見て驚いた。
(この人……前に私を助けてくれた人よね……!?)
顔はハッキリと見ていなかったものの、その美しい碧眼だけは見間違いようが無い。
相手も私に見覚えがあるようで、目をパチクリさせていた。
(どうして王宮にいるんだろう……?でもまた会えて良かった!)
私は気まずそうに目を逸らす彼に声をかけた。
「あ、あの!」
「……?」
「前は助けていただいてありがとうございました!」
「……」
彼は何も言わなかった。
(何だろう?どこかで見たことあるような……)
前に一度見たのはたしかだが、何だかそれ以前に会ったことがあるような気がする。
男性はしばらく黙り込んだ後、ようやく言葉を発した。
「……気にするな、ただの気まぐれだ」
「でも、助けてくださったのは事実なので!どうしてもお礼を言いたくて!」
「……」
私がそう言うと、彼は踵を返してこの場を立ち去ろうとした。
「あ、待ってください!」
「……まだ何かあるのか?」
私は思わず彼を引き留めていた。
そんなつもりは無かったのに。
「あ……えっと……」
「……」
私をじっと見つめる彼の視線に焦った私は、咄嗟に思い付いたことを口にしていた。
「貴方のお名前を教えてくださいませんか!」
「……名前?」
「はい……私は、もう既にご存知かもしれませんがエミリア・ログワーツと申します」
「ログワーツ……」
知っているのか知らないのか、彼はボソリとその名を呟いた。
それからしばらくして、彼はゆっくりと口を開いた。
「……俺はルークだ」
「ルーク、って言うんですね!覚えておきます!この前は本当にありがとうございました!お気をつけてお帰りください!」
私は彼にもう一度礼を言った後、今度こそはレイラの元へと急いだ。
382
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい
神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。
嘘でしょう。
その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。
そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。
「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」
もう誰かが護ってくれるなんて思わない。
ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。
だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。
「ぜひ辺境へ来て欲しい」
※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m
総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ ありがとうございます<(_ _)>
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる