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「じゃあ、俺はそろそろ帰ることにする」
「何か用事でもあるの?」
「ああ、兄貴に……ちょっと顔見せに行こうかと思ってな」
「お兄さん……」
ルークの言う兄貴とは国王陛下のことだろう。
「お兄さんと仲良いのね」
「良いってほどじゃないけど……王族だった頃もそうだが、身分を捨ててから何かと助けてくれたのは兄貴だし……顔見せに行くくらいのことはしないといけないからな」
ルークの異母兄であるアルタイル国王陛下は先王と違い、穏やかで優しい性格をしている。
彼との仲も良好なのだろう。
(陛下はとても優しい方だもの……唯一の弟を放っておけなかったんでしょうね……)
国王陛下の気持ちは分からないことも無い。
私だってお兄様が大切だし、仮に母親の違う兄弟がいたとしても仲良くしていたはずだ。
「なら、しっかりと元気にやってるってこと伝えないとね!」
「ああ」
ルークはソファの上に置いていたローブを身に着けた。
「いってらっしゃい、ルーク。またお話しましょう」
「そうだな、何だか近いうちに会えるような気がする」
私はいつものように窓から外に出るルークを見送った。
(帰りは窓から出るのね……でもその方がルークらしくて良いわね……)
彼の姿が完全に見えなくなったとき、入れ替わるように別の人物が応接間へと入って来た。
「…………お兄様?」
「エミリア」
中へ入って来たお兄様は、私の傍までやって来た。
「……まさか、ずっと話聞いていたの?」
「いや……」
私の問いに、お兄様は言葉を詰まらせた。
言いづらそうに視線を逸らしている。
「……もしかして、知っていたの?」
お兄様はルークが王族だったということを知ってもまるで驚いていない。
まるで全てを予想していたかのように落ち着いている。
「そうだな……実はお前の話を聞いたときからずっと疑っていた」
「……」
「黒い髪に青い瞳といえば、先王陛下と同じ色だろう?」
「そうね……言われてみればそうだわ……」
「逆に何でお前はずっと気付かなかったんだよ」
「だ、だって……先王陛下と会ったことなんてほとんど無いし……」
九年前に亡くなった先王陛下とは話したことなどほとんど無く、舞踏会やパーティーで会っても遠くからチラチラと見る程度だった。
(先王陛下って何だか話しかけにくい雰囲気があったのよね……例えるなら超怖いおじさんって感じ?)
元々あまり他人を寄せ付けない人だった。
ルークにとっては深い傷を残した最悪の父親だったことだろう。
「これからもあの男と会うつもりか?」
「当然よ!」
私のその答えに、お兄様が眉をひそめた。
「分かっているのか?元王族だったとはいえ、今はただの旅人だ。お前とは身分が違う」
「そ、それはそうだけど……」
二度とルークに会えなくなるだなんてそんなのは御免だ。
せっかく彼は私に秘密を全て話してくれたのに。
そんな私に追い討ちをかけるように、お兄様が現実を突き付けた。
「それに旅人なら、いつかはこの国を出て行くだろう。そうなったらお前はどうするつもりだ?」
「あ……」
お兄様の言う通りだ。
ルークは旅人で、いつかはこの王国を出て行く。
そうなったら私は、もしかすると数年に一度しか彼に会えなくなってしまうかもしれない。
「よく考えておくんだな」
「……」
お兄様はそれだけ言って部屋を出て行った。
「何か用事でもあるの?」
「ああ、兄貴に……ちょっと顔見せに行こうかと思ってな」
「お兄さん……」
ルークの言う兄貴とは国王陛下のことだろう。
「お兄さんと仲良いのね」
「良いってほどじゃないけど……王族だった頃もそうだが、身分を捨ててから何かと助けてくれたのは兄貴だし……顔見せに行くくらいのことはしないといけないからな」
ルークの異母兄であるアルタイル国王陛下は先王と違い、穏やかで優しい性格をしている。
彼との仲も良好なのだろう。
(陛下はとても優しい方だもの……唯一の弟を放っておけなかったんでしょうね……)
国王陛下の気持ちは分からないことも無い。
私だってお兄様が大切だし、仮に母親の違う兄弟がいたとしても仲良くしていたはずだ。
「なら、しっかりと元気にやってるってこと伝えないとね!」
「ああ」
ルークはソファの上に置いていたローブを身に着けた。
「いってらっしゃい、ルーク。またお話しましょう」
「そうだな、何だか近いうちに会えるような気がする」
私はいつものように窓から外に出るルークを見送った。
(帰りは窓から出るのね……でもその方がルークらしくて良いわね……)
彼の姿が完全に見えなくなったとき、入れ替わるように別の人物が応接間へと入って来た。
「…………お兄様?」
「エミリア」
中へ入って来たお兄様は、私の傍までやって来た。
「……まさか、ずっと話聞いていたの?」
「いや……」
私の問いに、お兄様は言葉を詰まらせた。
言いづらそうに視線を逸らしている。
「……もしかして、知っていたの?」
お兄様はルークが王族だったということを知ってもまるで驚いていない。
まるで全てを予想していたかのように落ち着いている。
「そうだな……実はお前の話を聞いたときからずっと疑っていた」
「……」
「黒い髪に青い瞳といえば、先王陛下と同じ色だろう?」
「そうね……言われてみればそうだわ……」
「逆に何でお前はずっと気付かなかったんだよ」
「だ、だって……先王陛下と会ったことなんてほとんど無いし……」
九年前に亡くなった先王陛下とは話したことなどほとんど無く、舞踏会やパーティーで会っても遠くからチラチラと見る程度だった。
(先王陛下って何だか話しかけにくい雰囲気があったのよね……例えるなら超怖いおじさんって感じ?)
元々あまり他人を寄せ付けない人だった。
ルークにとっては深い傷を残した最悪の父親だったことだろう。
「これからもあの男と会うつもりか?」
「当然よ!」
私のその答えに、お兄様が眉をひそめた。
「分かっているのか?元王族だったとはいえ、今はただの旅人だ。お前とは身分が違う」
「そ、それはそうだけど……」
二度とルークに会えなくなるだなんてそんなのは御免だ。
せっかく彼は私に秘密を全て話してくれたのに。
そんな私に追い討ちをかけるように、お兄様が現実を突き付けた。
「それに旅人なら、いつかはこの国を出て行くだろう。そうなったらお前はどうするつもりだ?」
「あ……」
お兄様の言う通りだ。
ルークは旅人で、いつかはこの王国を出て行く。
そうなったら私は、もしかすると数年に一度しか彼に会えなくなってしまうかもしれない。
「よく考えておくんだな」
「……」
お兄様はそれだけ言って部屋を出て行った。
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