愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの

文字の大きさ
94 / 113

94 悪魔 オリバー視点

しおりを挟む
公爵邸の地下にある監獄。
私は薄汚い格好をした一人の男と向き合っていた。


「いいか?必ずやり遂げろ。ヘマしたら死が待っていると思え」
「ひ……ひぃっ……!」


狂気に満ちた目でそう言うと、男は顔を真っ青にして体を震わせた。


「こ、公爵様……」
「成功したらここから出してやる。お前の犯した罪は不問にしよう」


私はポケットから出した紫色の液体が入っている小瓶を男の震える手に握らせた。


「で、ですが……無茶です…………そんな、晩餐会で王弟殿下に毒を盛るだなんて……!」


男は目に涙を溜めて必死で訴えてきた。


「王弟だと?馬鹿げたことを言うな。王族としての身分なんてとっくに捨てた男なんだ。それに加えてアイツは妾腹の子だ」
「しょ、妾腹の子……?」
「そうだ、先王が気まぐれに手を出した平民のメイドが産んだ汚らわしい王子だ。こう言えば分かるか?」
「……」


よほど衝撃的な事実だったのか、男は固まった。


「ただ王家の使用人に扮して毒を盛れば良いだけだ。これでお前の犯した罪が無くなると思えば悪くない話だろう?」
「だ、誰かに気付かれでもしたら……」
「王宮に使用人がどれだけいるか知っているか?誰も全員の顔なんて覚えちゃいない。もし断るなら……今ここでお前を切り刻んで殺す。楽に死なせはしない」
「……!」


この男は元々レビンストン公爵家の使用人だった。
使用人が何故こんなところにいるのか。
それはコイツが公爵家の金を横領していたからである。
元妻のエミリアが浪費をしていると嘘をついていたのも全てこの男の仕業だ。
全ては自分の犯した罪がバレないようにするため。


(ハハ……本当にムカつくな……)


この男も、それに気付かなかった自分も。


「せ、成功したら本当に助けてくれるんですか……?」
「ああ、そうだな。それだけじゃない、前よりも良い地位を約束してやる」
「……!」


そうは言ったものの、助けてやるつもりはさらさら無かった。
無事に帰ってきたところで口封じに殺害するだけである。


(こんなものを信じるとは……何と愚かな……)


どのみち罪人だ。
殺したところで問題は無い。


「それで、やるのか?やらないのか?」
「や、やります……!やらせてください……!」


少し脅し、少し良い条件を提示したら男は即答した。


(何と貪欲な男なんだ……)


呆れてものも言えない。


「ならここから出してやる。言っておくが、逃げようだなんて思うなよ?」
「と、当然です!さっきから殺気を向けてくるのをやめてください!」


今すぐにでもズタズタに切り裂いて殺してやりたかったが、ここは我慢だ。


(やはり罪人は利用するに限る……)


あの男の無惨な死体が見れると思うと、笑いが止まらなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...