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40 王族
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「わぁ、舞踏会以外で王宮へ来るなんて初めてです……!」
「心配しなくていい。私が君を守るから、何不自由ない暮らしを保証しよう」
「ありがとうございます、殿下」
荷物をまとめた私は殿下と共に王宮へと来ていた。
自分がこんな煌びやかな場所で生活するだなんて、未だに実感が湧かない。
「ですが……本当によろしいのですか?国王陛下や王妃陛下、王太子殿下もいらっしゃいますよね……」
「大丈夫だ、陛下たちには既に話が付いている」
「え……」
目を丸くした私を見て、彼がクスリと笑った。
「これから挨拶をしに行こう」
「私を受け入れてくださるでしょうか……」
「優しい人たちだからそう不安にならなくていい」
そして私は王宮に着いてからすぐ、両陛下と王太子殿下に挨拶をしに行くこととなったのである。
***
「国王陛下、王妃陛下、王太子殿下。お久しぶりでございます」
殿下と共に謁見の間を訪れた私は、両陛下と王太子殿下に向かって深く頭を下げた。
(……大丈夫かしら?本当はみんな不満に思っているんじゃ……)
心臓が破裂しそうなほど音を立てている。
こんなにも緊張したのは人生で初めてだ。
隣に殿下がいるおかげで何とか平静を保てているが。
「――顔を上げろ」
「……」
おそるおそる頭を上げると、玉座に座る両陛下とその傍に控える王太子殿下の姿が目に入った。
国王陛下は私と目を合わせると淡々と言い放った。
「話は聞いている。王宮を我が家だと思って楽に過ごしてくれ」
「は、はい……」
隣に座っていた王妃陛下も続けて言葉を発した。
「王宮での暮らしで何か分からないことがあれば私に聞いてちょうだい」
「あ、ありがとうございます……?」
(すごく優しいわ……一体どうして?)
疑問を感じていると、国王陛下が神妙な面持ちで口を開いた。
「そなたには娘が随分迷惑をかけたな」
「えっ!?い、いえ……」
娘とは今はアルデバラン公爵邸に滞在しているアメリア王女殿下のことだ。
(陛下は私とルーカス様の離婚理由を知っているの……?)
「公爵との離婚はアメリアのせいなんでしょう?気を遣わなくていいのよ」
「そ、それは……」
「もう……どうしてあんな子に育ってしまったのか……」
王妃陛下が深く溜息をついた。
そんな母親を慰めるように王太子殿下が背中に手を置いた。
「母上のせいではありません。あれは元々人格が歪んでいたんですよ」
「王太子……」
娘のことで頭を悩ませる両陛下を見たとき、社交界で聞いたある噂を思い出した。
(そういえば、王女殿下はご家族と折り合いが悪いという噂を何度か聞いたことがあったわ……)
彼女の本性を知るまではただの噂に過ぎないだろうと思っていたが、おそらく事実なのだろう。
でなければ両陛下や王太子殿下がここまで深刻な顔をするはずが無い。
(ジークハルト殿下が浮気したとか言うのも虚言なんでしょうね……最初から薄々勘付いていたけど)
王女殿下はその愛らしい容姿からは想像もつかないほどに性悪だった。
「アリス嬢、せめてもの詫びだ。そなたの家の事情も全て知っている。ここでは好きにしてくれてかまわない」
「今まで大変だったわね、よく耐えたわ」
「君を歓迎するよ、アリス嬢」
嫌味の一つでも言われるかと思ったが、陛下たちは私を快く迎え入れてくれた。
「……ありがとうございます、陛下、殿下……」
実の両親からも受けたことの無い優しさに、何だか胸が温かくなった。
「心配しなくていい。私が君を守るから、何不自由ない暮らしを保証しよう」
「ありがとうございます、殿下」
荷物をまとめた私は殿下と共に王宮へと来ていた。
自分がこんな煌びやかな場所で生活するだなんて、未だに実感が湧かない。
「ですが……本当によろしいのですか?国王陛下や王妃陛下、王太子殿下もいらっしゃいますよね……」
「大丈夫だ、陛下たちには既に話が付いている」
「え……」
目を丸くした私を見て、彼がクスリと笑った。
「これから挨拶をしに行こう」
「私を受け入れてくださるでしょうか……」
「優しい人たちだからそう不安にならなくていい」
そして私は王宮に着いてからすぐ、両陛下と王太子殿下に挨拶をしに行くこととなったのである。
***
「国王陛下、王妃陛下、王太子殿下。お久しぶりでございます」
殿下と共に謁見の間を訪れた私は、両陛下と王太子殿下に向かって深く頭を下げた。
(……大丈夫かしら?本当はみんな不満に思っているんじゃ……)
心臓が破裂しそうなほど音を立てている。
こんなにも緊張したのは人生で初めてだ。
隣に殿下がいるおかげで何とか平静を保てているが。
「――顔を上げろ」
「……」
おそるおそる頭を上げると、玉座に座る両陛下とその傍に控える王太子殿下の姿が目に入った。
国王陛下は私と目を合わせると淡々と言い放った。
「話は聞いている。王宮を我が家だと思って楽に過ごしてくれ」
「は、はい……」
隣に座っていた王妃陛下も続けて言葉を発した。
「王宮での暮らしで何か分からないことがあれば私に聞いてちょうだい」
「あ、ありがとうございます……?」
(すごく優しいわ……一体どうして?)
疑問を感じていると、国王陛下が神妙な面持ちで口を開いた。
「そなたには娘が随分迷惑をかけたな」
「えっ!?い、いえ……」
娘とは今はアルデバラン公爵邸に滞在しているアメリア王女殿下のことだ。
(陛下は私とルーカス様の離婚理由を知っているの……?)
「公爵との離婚はアメリアのせいなんでしょう?気を遣わなくていいのよ」
「そ、それは……」
「もう……どうしてあんな子に育ってしまったのか……」
王妃陛下が深く溜息をついた。
そんな母親を慰めるように王太子殿下が背中に手を置いた。
「母上のせいではありません。あれは元々人格が歪んでいたんですよ」
「王太子……」
娘のことで頭を悩ませる両陛下を見たとき、社交界で聞いたある噂を思い出した。
(そういえば、王女殿下はご家族と折り合いが悪いという噂を何度か聞いたことがあったわ……)
彼女の本性を知るまではただの噂に過ぎないだろうと思っていたが、おそらく事実なのだろう。
でなければ両陛下や王太子殿下がここまで深刻な顔をするはずが無い。
(ジークハルト殿下が浮気したとか言うのも虚言なんでしょうね……最初から薄々勘付いていたけど)
王女殿下はその愛らしい容姿からは想像もつかないほどに性悪だった。
「アリス嬢、せめてもの詫びだ。そなたの家の事情も全て知っている。ここでは好きにしてくれてかまわない」
「今まで大変だったわね、よく耐えたわ」
「君を歓迎するよ、アリス嬢」
嫌味の一つでも言われるかと思ったが、陛下たちは私を快く迎え入れてくれた。
「……ありがとうございます、陛下、殿下……」
実の両親からも受けたことの無い優しさに、何だか胸が温かくなった。
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