泣き虫勇者と泣けない魔王

細川あずき

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1章-出会う

6話-レオナの決意

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『相手にどう思われるかじゃなく、相手をどう想うか』


「レオナ様?どうなさいました?」
「・・・・・・え、あ、ラシス・・・・・・いや、スフェナの言葉が頭をよぎって・・・・・・」
温かい午後の日差し、テーブルに突っ伏して呆然とするレオナを覗き込む。
「ぼくは、勇者になんか向いていない、泣き虫は必要とされてないってずっと考えてたんだ。正直、街に行って大勢の民に会うのすら怖かった・・・・・・名ばかりの勇者だ、って後ろ指指されるんじゃないかってね。でもそうじゃない・・・・・・」
心の中で考えていた言葉をツラツラと述べるうちに、自分の最終的な想いが見えてくる。
「そうじゃ、ないんだ・・・・・・ああ、民を想う気持ちが大切なんだ・・・・・・それならぼくにだってあるぞ・・・・・・!ラシス!」
「はい!」
ラシスは急な呼び掛けに驚くが、主の顔を見て嬉しくなった。
「今度、国王に呼び出されていたね?ぼくも行くよ!中央都に!」
「!はい!」
主のあのキラキラした瞳。これはかつての瞳だ。幼い頃のあの瞳。それを見たラシスは微笑んだ。
国王の呼び出しは何度かあったが、栄えた中央都を横断せねばならないため、いつもラシスとパイロだけに行かせていた。
だが今回は違う。レオナ自身がその足で向かうと言うのだ。
「ただいま帰りました」
パイロだ。大荷物を背負って帰ってきた。
「おかえりパイロ!聞いて!ぼくも国王の城へ行くよ!」
「・・・・・・え?そうか、ついに脅されたんですね。チッ、あの若造、レオナ様に何を吹き込んだんだ・・・・・・俺が国王の首持ってきましょう」
「え」
「え?違うんですか?」
「違うよ?」
「あっ!変なキノコでも食べました?すぐに解毒剤を!」
「え」
「え?違うんですか?」
「違うよ?」
「あっ!これは幻聴か・・・・・・自分の身体を弄りすぎたな。服反応が・・・・・・」
「え」
「え?違うんですか?」
「違うよ?」
「あっ!・・・・・・」
「レオナ様の意思です!!!」
ラシスが割り込みでようやく。
「実は、かくかくしかじか・・・・・・」
レオナは湖で出会った旅人のスフェナ=アルジャンについて語った。
「そのスフェナっていう人の言葉に押されたんですね」
「そう!」
「・・・・・・相変わらず単純な人だ。でも、あなたがそう言うなら全力で俺もついていきますよ」
「タンジュン・・・・・・ハハハ、ありがとう・・・・・・」
喜びきれないのであった。
「そうだ!パイロ、見て欲しいものが・・・・・・」
湖で拾った『ただの石』に見える謎の物体。毒霧蛙の事件の犯人だと思われるので精密に調べようと持って帰ってきたのだ。が、
「あれ?無い・・・・・・」
それもそのはず。スフェナが持ち帰ったのだから。しかし、この場の三人は知るよしもない。気が抜けていたとは言え、一国の勇者とダイヤモンドランクの騎士から盗みが出来るなど到底信じられないが、スフェナはただの旅人ではない。いや、旅人ですらない。彼は魔王である。この事実は国王の城へ行き、新たな任務を受けたときに知ることになる。
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