自由な女神様!~種族人族、職業女神が首を突っ込んだり巻き込まれたりの物語。脇に聖女を添えて~

時雨

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本編

17.パワーアップしたようです。

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 護衛の件だが、結局、護衛はフォリアのみで他はいらない、ということになった。なってしまった。休みとか、休みとか、どうすんだ、という話になったのだが、どうせ、休日でも側にいるということで。主君の側から離れる方がつらいらしい。……それは、仕方ない、な?
 とりあえず、一人になりたいときとか出かけたいときがあったら、遠慮なく言って欲しい、とはフォリアに言っておいた。
 女神が護衛を選びに行く、というのは団長および副団長しか通達していないので、事情だけ話して中止になった。まあ、それでも、気が向いたら顔を出してほしい、とは各団長たちから言われたので、忙しさが落ち着いたらにしようと思う。

 フォリアも王宮に部屋を移し、瑞姫の隣で続き部屋にするため、瑞姫自身も部屋を移動することになった。続き部屋など、夫婦の部屋じゃないのかと言う疑問もあったが、主君に何かあったときに直ぐ駆けつけられるようにするためだから、これは普通のことらしい。寝室が繋がっているわけじゃないので、瑞姫はまあいいか、と納得した。

 フォリアにも、王たちへ報告したことと同じこと教えておく。宝石の異能のことは、とんでもない代物を渡して鑑定された時点で、薄々勘付いていたらしいが。
 警察という職業に就いていたことや、そこで何をやっていたかも話した。

「なるほど。戦争とは違いますが、それに近いですね。通りで強いわけです」
「フォリア、私の恩恵受けたなら、一度自分の力をどこかで試した方がいいよ。加減調節がね、変わると戦いにくい」
「あ、確かにそうですね」

 瑞姫も苦労している。そろそろ、ギルドに顔を出さないと、とも思っているので、そのときはフォリアと一緒に行こう。

「あ、そうだった、私これでも、ギルドランクBだから。フォリアは、確かAだったよね?」
「え、び、え、はい、そうです、が。え、ミズキ様が、あの強さで……B?」
「あー、それにはちょっと訳があって」

 飛び級試験を受けたのはいいが、Bあたりまでしか出ない西の森に行ったのでB止まりになった。瑞姫としては、魔物で実験も含めてのことだったので、そのランクには納得している。

「ランクAになる試験は受けるよ」
「そうしてください。恐らく、Sでもいけるでしょう」

 レイノートはギルドに登録はしてないが、実力としてはランクSの魔物を倒せるほどなので、互角に渡り合った瑞姫は絶対にSになるだろう、とフォリアは予測していた。

「そういえば、フォリア?結局、恩恵って何だったの?」
「あぁ、それですか」

 フォリアは、風と水属性の魔法しか使えなかったのだが、氷属性も使えるようになったらしい。今までは詠唱していたが、無詠唱で魔法が発動できるようになった。魔力量もそうだが、身体的能力も全体的にあがっているらしい。

「あとは……、これは、恐らくですが……、その、真偽を見抜けるようになった、みたいです」

 あぁ、なるほど、と瑞姫は思い当たる節があり、納得する。

「嘘がわかるってことだよね?本心は?」
「いえ、本心まではわからないのですが……」
「贋作は見抜ける?」
「はい」

 うんうん、と瑞姫は頷いた。瑞姫と同じ力である。なるほど恩恵とは、いいものが渡ったようだ。
 これをスキル真偽鑑別という。嘘か本当か判別し、贋作か真作を鑑別するものだ。瑞姫の嘘発見器的能力はそれだろう、とシュバルツから聞いた。

「いいものだよ?確信できる答えを引き出したければ、はいorいいえ、で答えさせればいい」
「!……そうか、そういうふうに……」
「これって便利なんだよね。贋作を見抜くのはもちろんのこと、犯罪者の尋問にすごく役立つからね~。余裕こいてる犯罪者をこれで追い詰めるのは存外楽しい」
「……ミズキ様は、案外おなか真っ黒ですね」
「フォリア、その言葉、そのままそっくり返すよ」
「おっと」

 真っ白な外見にだまされる事なかれ。意外と腹黒かった。夜遅くまで起きていれば、どこか陰りのある黒い笑顔で強制的にベッドに運ばれたのは、記憶に新しい。反論を許さない圧だったので、大人しくしていたが。
 他は何かあるか、と問えば、どうやら、獣性……、否、蛇性が強くなったらしい。フォリアはハーフで、人間寄りだった。蛇化もできなかったのだが、できるようになったらしい。蛇姿であれば、大きくも小さくもなれる、とのこと。
 フォリアに頼んで蛇化してもらったその姿に、若干興奮を抑えきれなかった瑞姫は、うっとりとした眼差しと手つきで彼に触れた。今までそんな甘ったるい眼差しや、醸し出されている甘い空気に触れたことはなく、また、全身で好きだと言っている感情がフォリアにビシバシと伝わるので、途端、動きが止まってしまったが。
 結果、それに耐えきれなかったフォリアが蛇化を解いて元に戻ったことにより、ふれあいは強制終了。瑞姫は残念そうだが、あれ以上はまずかった、とフォリアは別の意味で瑞姫を恐れた。

「そういえば、聖女様にお会いしました」
「……あー、そういえば、まーったく会ってないわ。どう?」

 王宮内で全く会わないので、その存在すら忘れかけていた。以前は、離れていても階は同じだったが、フォリアが来たと同時に瑞姫も部屋を移ったので、階すら違う。瑞姫は最上階、ゆりあは一個下の階だ。すれ違うことすらなかった。

「どう、といわれても。ただの平民では?」

 どう、と聞かれて、返答がただの平民とは。何があってそんな感想になるんだろうか。

「男好き、というのでしょうね。私も見目が麗しいから、と、自分の護衛にならないか、と言われました」
「……あぁ、そう」

(私のなの……に?)

ちょっと、イラッとした。そして、あれ?と首をかしげる。思いかけたことは、独占欲丸出しの想いだ。

「もちろん、丁寧にお断りさせていただきました。私の身も心も、女神ミズキ様だけのものだ、と」
「そ、そう」

 吹き出しそうになった。言い方ひどいな!?それは、誰が聞いても誤解を招くのでは!
 確かに、主従契約を結んだ今、その言葉は間違ってはいない。いないが、違う。もっと違う言い回し方があったのでは?と思ったが、心底愛おしそうに左手の甲を撫でるので、言う気が失せた瑞姫だった。
し かし、今度は、すっとした。気分も少しいい。

(……、あー、まじか。そういうの私にもあったのね-)

 元の世界では、色々ありすぎて、大事なモノを作らないようにしていたし、作れなかった。人付き合いも、広く浅く。故に、そのような想いがあったとは驚きだった。この世界に来て、元の世界であったしがらみやなにやらから解放された反動か、それとも元からあったのか。

――――独占欲、というものは。

 それも、自分でも意外と思うが、強い方なのではないか。自分で自分に引いていたら、どうやら感情が随時伝わっているフォリアが、気づいたらしい。

「……もしや、ミズキ様。……その、感情の波が……聖女様に、嫉妬なさって……?」

 頭の回転が速い人は、これだから!

「いや……、私に、独占欲なんかあったんだな、と」
「ふふ、何もおかしいことではありません。主従契約を結べば、従者は主人の所有物。従者に対して、独占欲は沸くものと聞いております。逆も然り、ですが」
「……、嬉しそうだね」
「はい、とても」

 時折、フォリアの様子を見ていると、まるで恋人か何かだと錯覚してしまいそうになるときがある。言動が甘いったらない。元の世界ではされてこなかった“お姫様扱い”を自然としてくるので、全く慣れずに流されるばかりだ。主人が女だから、男である従者は当然の行為である。女はエスコートするものだ。更にフォリアは騎士。その手のことはお手の物だった。少し前に、そこまでしなくてもいい、といったのだが、“私の幸せなので嫌です。ミズキ様が慣れてください”ときっぱり言われた。幸せと言われてしまえば駄目とは言えず、結局流されているが、これは慣れるのだろうか、とたまに頭を抱えそうになる。

「……、私の物っていわれて、嬉しい?」
「至上の喜びでございますれば」

 あ、そうですか。今だって、犬の尻尾があるならぶんぶんと振られていそうなくらい、嬉しそうにニコニコと眩しい笑顔だ。これには勝てない。瑞姫は早々に白旗を揚げた。勝負をしているわけでもないのに、負けた気分である。

「それから、聖女様はようやく聖属性魔法が形になってきたと聞きました。この調子でいけば、お披露目の後から、各地に赴くことができるそうですよ」
「へえ。危険な旅、になるかもだけど、怪我しないといいね」
「えぇ。魔獣に襲われはするでしょう。ですが、聖女様がいらっしゃれば、周りに与える影響は大きく、普段の魔獣も少しは弱くなるかと思われます」

 どこぞの空気清浄機か。いや、その点では女神もあまり変わらないかもしれない。なにせ、いるだけで世界が安定すると。瘴気は浄化できないが、瘴気がポコポコ沸くことはある程度抑えられるらしい。過去に召喚された者たちは、引っ切りなしに各地を旅して回ったようだ。今代は、そこまで切羽詰まらなくてもいい、かもしれない、とのこと。少し前に、ドライアドが更に調べてきてくれたことを教えてくれたのだ。

「ねえ、フォリア。お披露目終わったら、ギルドの依頼受けて、ちょっと遠出しよっか」
「!二人で、ということですか」
「当然でしょーに」

 護衛はフォリアしかいないのだから。

「楽しみです」

 そう言って、フォリアはとても綺麗に笑った。直視した瑞姫は、さ、と目をそらすのだった。
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