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本編
19.不穏な気配が?
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しかし……、とセレネイズは渋い顔をした。
「あの者が、諦めると思いませんな」
「同感だな。お気を付けください。女神である貴女様に、よもや、無礼を働くとは思えませんが……」
(あの程度で、私をどうこうできるとは思えないけど……。人を使われたら厄介かな)
あんなのでも、公爵子息だ。金だけはあるだろう。父親が止めてくれればいいのだが、それは望めないと思っている。息子と同じく、権力を笠に着て色々とやっていると聞いた。ただ、尻尾を出さないので泳がせている状態になっているらしい。全く、馬鹿らしいことだ。
「権力や、ましてや力で、ミズキ様に勝てるとも思えませんが……」
「それは確かに、だな」
「だが、馬鹿はいくらでもいるぞ。気をつけろ」
「はい」
まあ、そうなのだが。しかし、この場所はいい。誰も話しかけてこない。視線は痛いほど感じてはいるのだが。理由はわかっている。
それは、社交界ならではのマナー。上の人間に下の人間から声をかけるのはマナー違反。なので、女神に声をかけたくてもかけられないのである。
抜け道はあるのだ。ここにいるのは辺境伯と伯爵だが、伯爵以上の爵位であれば、セレネイズ、またはフォリアに声をかければいい。ただ一言、女神様に紹介してくれ、と、それだけでいいのだ。それができないのは、彼が第二騎士団長として傍に立つように彼女が命令をしてしまったために、声をかけづらくなっている。ジークレイにも騎士団長、と呼びかけたのでその扱いである。更に、辺境伯は侯爵とほぼ同等の爵位なので、余計であった。更に更に、見目麗しい者たちが集まっているのだ。ここだけ、煌びやかさ、華やかさが違う。
美男美女が、和やかに話している様は、邪魔してはいけないと思わせるほどだった。
そういえば、と瑞姫は思い出したように切り出した。
「そういえば、……お二方、パートナーさんは?」
ぎくり、と彼ら二人は肩を揺らす。その様子に、こてり、と首をかしげる。聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。
「え、……えぇと……、その……」
「……、女神様の、世界では……、その、同性の……」
そこまで言われて、ピン、と来た。この世界、男女の比率は地球と同じく同等。しかし、世界共通で同性婚も認められている。この国は一妻一夫を推奨しているが、事情がある場合は一夫多妻、一妻多夫も認めてもらえる。他の国も、複数持つことが許されているところもあるのだ。ちなみに、女性は普通に産むが、男性の場合、神官に頼めば産むことが可能な体に魔法でやってもらえるらしい。ファンタジー。
「まあ。私の世界は、同性婚認められておりますよ。魔法はないので、男性が産むことはないのですけど。私自身は、対象は異性ですけど、否定はしません」
「そうですか!……よかった、実は、その、聖女様の世界では、同性婚が認められていないそうで……。聖女様自身も、あまり同性婚は好まれてないようだったので……」
誰にも聞かれなかったので言わなかったが、むしろ、彼女は腐女子なので、同性バッチコイである。聖女の世界では、同性婚は認められないらしい。恐らく、腐女子はいるだろうが、彼女はそうじゃないようで、否定派らしい。
明らかに安心した感じの空気が周りからも感じ取れたので、聖女が否定派、というのは貴族の間で情報が流れたようだ。
「私とセレネイズは、婚約中です」
「まあ!どうぞ、末永く仲良くしてくださいね。……うーん、こういったほうがいいのかな……、えっと、女神は祝福します」
「!ありがとうございますっ」
「ありがとうございます、女神様」
形だけだし、言葉だけだが、それでも女神が祝福したということは、同性愛者が我慢しなくてもいい、ととってくれるだろう。先ほどより、距離が近い男同士や、女同士がいるので、理解してくれたようだ。うんうん、と頷いてにこにことしていれば、何組かが彼女に向かって軽い会釈をした。
二人は彼女に感謝した後、顔を見合わせてふわりとほほ笑みあっている。そんなピンク色の空気にあてられ、彼女は若干ほほを染めた。顔がなまじいいので、キラキラしい上に視界の暴力である。
「いちゃついてくださって結構ですが……、節度だけは弁えてくださいね?目のやり場に困ります、見たいですけど」
「ゴホン……、失礼しました」
「いいんです、見たいので。あ、そうです。誰かが何か言ってこようものなら、女神が祝福した、と言ってくださって構いませんよ」
心の声が駄々洩れだ。少し興奮しているのか、顔がキラキラと輝いている。そんな瑞姫を、あぁ尊い、と思って見ているのはフォリアだけの秘密だ。
「そういえば、女神様。元の世界では、そういう恋人などは……」
「!」
ジークレイの言葉に、フォリアもそういえば、と驚いたように瑞姫を見た。
「あら、うふふ。私、仕事仲間以外の男は信用しなかったので、いませんよ。結婚する気もないので、一生独身です」
「え、ミズキ様、ミズキ様の世界では、男女の結婚はどのような?」
「男女とも、様々だけど。かなり遅いよ。昔はここみたいに早かったけど、今は三十、四十代で結婚もないわけじゃないし。女の独身も多いね。政略結婚なんてほとんどないと思うな。ほぼ恋愛結婚だよ。離婚率も高いけど」
「そうなのですね……」
「こことはかなり違いますね」
瑞姫もフォリアのそういうことは聞いたことがなかったので、聞いてみた。
「私も、結婚は考えておりませんでしたよ。話はありましたが、気が乗らなかったのでお断りしました」
「そうなんだ」
「これからも、ありませんよ。ミズキ様一筋ですので」
「……、うん?」
確かにこれからはどうなのか、と考えていたが、心を読まれたかの返答に、意味のわからない言葉までくっついてきた。首をかしげるも、フォリアは話す気がないのか、にっこり微笑んで口を閉じる。恐らくは、従者としてだろう、と瑞姫は納得した。伝わってくる感情も、いつも感じるような温かなものだったので、余計、フォリアの真意には気づかなかった。瑞姫は幼少期から色々あり、人との付き合いはかなり浅かったため、その手のことに関しては、激・鈍感、と言うことも拍車を掛けている。
そんな瑞姫の代わりに、フォリアの言葉の真意に気づいたのはセレネイズとジークレイだった。二人して顔を見合わせたが、フォリアが口を閉じているのでいうわけにもいかず。ジークレイがフォリアに目でいいのか、と問いかけると、いいのだ、と返ってきた。また、セレネイズとジークレイは目を合わせるが、本人が伝える意思のない以上、他人が口を挟むわけにも行かず、肩をすくめたのだった。
「!」
まただ。ぴり、と空気が震える。会場内のどこかで、殺意、又は敵意が、先ほどからちょくちょくとするのだ。それも一瞬に消えてしまうので、出所が分からない。この位置は、会場内全体が見える場所である。しかし、さりげなく見渡しても、それらしき人物が分からない。この場で何かを起こす気なのかさっぱり見当がつかないが、そうならば誰狙いなのか。はっきりしないのだ。
(給仕の中に、何人か動きと気配が一般人じゃないのがいるけど……。どうだろうなあ。さっきから、殿下方の周りをちょろちょろしてるけど、あれは恐らく護衛だ。周囲を警戒してる)
フォリアも周囲を警戒しているのか、警戒心が瑞姫に伝わってきている。
「フォリア、もしかして、潜入調査とかしたことない?」
「え?あ、はい、私は前線でしか……」
「あー、うん、そんな感じ。とりあえず、一瞬に気取られないで。あれは攪乱……、いや、陽動したいのかな。警戒は必要だけど、無視していい」
「!……承知しました」
フォリアの容姿では、目立って仕方ないだろう。変装したところで、市井に紛れることも難しい様に思う。
「お気づきでいらっしゃったのですね」
「いや、全くそんなそぶりも見えませんでした」
「ふふふ、そうです?……空気がぴりついていやですねえ」
どうやら、彼らも空気がぴりついていることに勘づいているようだった。まあ、それはそうだ。彼らは曲がりなりにも騎士団長である。彼女は困ったなあ、という風に笑ってはいるが、その実、目の奥は冷え切っていた。
「ミズキ様は、仕掛けてくると思われますか」
「うーん……。来そうな予感はあるけどね」
「理由を、伺っても?」
「えぇ。殿下方が、護衛以外の誰かの手渡しは絶対に受け取ろうとしてないのですよ。護衛も、離れますが、すぐ戻ってきてます。相当警戒してますね。……それでも警戒しているように見えないので、さすがとしか言い様がないです」
セレネイズに理由を聞かれた。といっても、それほど大きい理由があるわけでもない。ただの予感だ。
潜入調査の経験がある瑞姫でも、シリウスたちの近くにいる護衛に気づくのには時間がかかった。彼女がわかったのは、シリウスたちが彼らからしか飲み物、食べ物を受け取らないのに気づいたからである。
「よく見ておられますな。……まあ、あの一瞬は、少し不規則ですから。思わずつられてしまうのも、無理はありますまい」
「えぇ、ですが、それも罠かもしれないと思わなくもないのですよ。騎士団もいるのに、わかりやすい殺気を漏らすなんて、見つけてくれと言っているようなものです。一瞬の敵意でも、気はそれるものです。そうでしょう?」
だからこそ、瑞姫はフォリアに、陽動かもしれない、といったのだ。
「なるほど。確かに、一瞬でも気がそれると、それが命取りになりかねませんな」
「はい。少し……、殿下方の護衛が、それにつられているようですので……。前だけを気にしているようで……、背後が。いや、アレはわざと誘い込んでるの、か……?うぅん、殿下方を囮、とか?深読みのしすぎ……?うぅん、わからん」
扇で口元を隠しており、見た目はにこやかにしているので、談笑しているように見えるはずだ。話の内容は、小声なので周りには聞こえていないだろう。
「やはり、かなり場数を踏んでおられるのか……」
「今は、まだ様子見でしょうね……」
「まあ、そうですね……」
だが、あまりこの状況が長く続くと、少々まずいかもしれない。おちょくられているような感じの気配なので、相当イラッとくるだろう。護衛や他の騎士たちが、怒りにとらわれず、冷静に対処してくれればいいのだが。
「あの者が、諦めると思いませんな」
「同感だな。お気を付けください。女神である貴女様に、よもや、無礼を働くとは思えませんが……」
(あの程度で、私をどうこうできるとは思えないけど……。人を使われたら厄介かな)
あんなのでも、公爵子息だ。金だけはあるだろう。父親が止めてくれればいいのだが、それは望めないと思っている。息子と同じく、権力を笠に着て色々とやっていると聞いた。ただ、尻尾を出さないので泳がせている状態になっているらしい。全く、馬鹿らしいことだ。
「権力や、ましてや力で、ミズキ様に勝てるとも思えませんが……」
「それは確かに、だな」
「だが、馬鹿はいくらでもいるぞ。気をつけろ」
「はい」
まあ、そうなのだが。しかし、この場所はいい。誰も話しかけてこない。視線は痛いほど感じてはいるのだが。理由はわかっている。
それは、社交界ならではのマナー。上の人間に下の人間から声をかけるのはマナー違反。なので、女神に声をかけたくてもかけられないのである。
抜け道はあるのだ。ここにいるのは辺境伯と伯爵だが、伯爵以上の爵位であれば、セレネイズ、またはフォリアに声をかければいい。ただ一言、女神様に紹介してくれ、と、それだけでいいのだ。それができないのは、彼が第二騎士団長として傍に立つように彼女が命令をしてしまったために、声をかけづらくなっている。ジークレイにも騎士団長、と呼びかけたのでその扱いである。更に、辺境伯は侯爵とほぼ同等の爵位なので、余計であった。更に更に、見目麗しい者たちが集まっているのだ。ここだけ、煌びやかさ、華やかさが違う。
美男美女が、和やかに話している様は、邪魔してはいけないと思わせるほどだった。
そういえば、と瑞姫は思い出したように切り出した。
「そういえば、……お二方、パートナーさんは?」
ぎくり、と彼ら二人は肩を揺らす。その様子に、こてり、と首をかしげる。聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。
「え、……えぇと……、その……」
「……、女神様の、世界では……、その、同性の……」
そこまで言われて、ピン、と来た。この世界、男女の比率は地球と同じく同等。しかし、世界共通で同性婚も認められている。この国は一妻一夫を推奨しているが、事情がある場合は一夫多妻、一妻多夫も認めてもらえる。他の国も、複数持つことが許されているところもあるのだ。ちなみに、女性は普通に産むが、男性の場合、神官に頼めば産むことが可能な体に魔法でやってもらえるらしい。ファンタジー。
「まあ。私の世界は、同性婚認められておりますよ。魔法はないので、男性が産むことはないのですけど。私自身は、対象は異性ですけど、否定はしません」
「そうですか!……よかった、実は、その、聖女様の世界では、同性婚が認められていないそうで……。聖女様自身も、あまり同性婚は好まれてないようだったので……」
誰にも聞かれなかったので言わなかったが、むしろ、彼女は腐女子なので、同性バッチコイである。聖女の世界では、同性婚は認められないらしい。恐らく、腐女子はいるだろうが、彼女はそうじゃないようで、否定派らしい。
明らかに安心した感じの空気が周りからも感じ取れたので、聖女が否定派、というのは貴族の間で情報が流れたようだ。
「私とセレネイズは、婚約中です」
「まあ!どうぞ、末永く仲良くしてくださいね。……うーん、こういったほうがいいのかな……、えっと、女神は祝福します」
「!ありがとうございますっ」
「ありがとうございます、女神様」
形だけだし、言葉だけだが、それでも女神が祝福したということは、同性愛者が我慢しなくてもいい、ととってくれるだろう。先ほどより、距離が近い男同士や、女同士がいるので、理解してくれたようだ。うんうん、と頷いてにこにことしていれば、何組かが彼女に向かって軽い会釈をした。
二人は彼女に感謝した後、顔を見合わせてふわりとほほ笑みあっている。そんなピンク色の空気にあてられ、彼女は若干ほほを染めた。顔がなまじいいので、キラキラしい上に視界の暴力である。
「いちゃついてくださって結構ですが……、節度だけは弁えてくださいね?目のやり場に困ります、見たいですけど」
「ゴホン……、失礼しました」
「いいんです、見たいので。あ、そうです。誰かが何か言ってこようものなら、女神が祝福した、と言ってくださって構いませんよ」
心の声が駄々洩れだ。少し興奮しているのか、顔がキラキラと輝いている。そんな瑞姫を、あぁ尊い、と思って見ているのはフォリアだけの秘密だ。
「そういえば、女神様。元の世界では、そういう恋人などは……」
「!」
ジークレイの言葉に、フォリアもそういえば、と驚いたように瑞姫を見た。
「あら、うふふ。私、仕事仲間以外の男は信用しなかったので、いませんよ。結婚する気もないので、一生独身です」
「え、ミズキ様、ミズキ様の世界では、男女の結婚はどのような?」
「男女とも、様々だけど。かなり遅いよ。昔はここみたいに早かったけど、今は三十、四十代で結婚もないわけじゃないし。女の独身も多いね。政略結婚なんてほとんどないと思うな。ほぼ恋愛結婚だよ。離婚率も高いけど」
「そうなのですね……」
「こことはかなり違いますね」
瑞姫もフォリアのそういうことは聞いたことがなかったので、聞いてみた。
「私も、結婚は考えておりませんでしたよ。話はありましたが、気が乗らなかったのでお断りしました」
「そうなんだ」
「これからも、ありませんよ。ミズキ様一筋ですので」
「……、うん?」
確かにこれからはどうなのか、と考えていたが、心を読まれたかの返答に、意味のわからない言葉までくっついてきた。首をかしげるも、フォリアは話す気がないのか、にっこり微笑んで口を閉じる。恐らくは、従者としてだろう、と瑞姫は納得した。伝わってくる感情も、いつも感じるような温かなものだったので、余計、フォリアの真意には気づかなかった。瑞姫は幼少期から色々あり、人との付き合いはかなり浅かったため、その手のことに関しては、激・鈍感、と言うことも拍車を掛けている。
そんな瑞姫の代わりに、フォリアの言葉の真意に気づいたのはセレネイズとジークレイだった。二人して顔を見合わせたが、フォリアが口を閉じているのでいうわけにもいかず。ジークレイがフォリアに目でいいのか、と問いかけると、いいのだ、と返ってきた。また、セレネイズとジークレイは目を合わせるが、本人が伝える意思のない以上、他人が口を挟むわけにも行かず、肩をすくめたのだった。
「!」
まただ。ぴり、と空気が震える。会場内のどこかで、殺意、又は敵意が、先ほどからちょくちょくとするのだ。それも一瞬に消えてしまうので、出所が分からない。この位置は、会場内全体が見える場所である。しかし、さりげなく見渡しても、それらしき人物が分からない。この場で何かを起こす気なのかさっぱり見当がつかないが、そうならば誰狙いなのか。はっきりしないのだ。
(給仕の中に、何人か動きと気配が一般人じゃないのがいるけど……。どうだろうなあ。さっきから、殿下方の周りをちょろちょろしてるけど、あれは恐らく護衛だ。周囲を警戒してる)
フォリアも周囲を警戒しているのか、警戒心が瑞姫に伝わってきている。
「フォリア、もしかして、潜入調査とかしたことない?」
「え?あ、はい、私は前線でしか……」
「あー、うん、そんな感じ。とりあえず、一瞬に気取られないで。あれは攪乱……、いや、陽動したいのかな。警戒は必要だけど、無視していい」
「!……承知しました」
フォリアの容姿では、目立って仕方ないだろう。変装したところで、市井に紛れることも難しい様に思う。
「お気づきでいらっしゃったのですね」
「いや、全くそんなそぶりも見えませんでした」
「ふふふ、そうです?……空気がぴりついていやですねえ」
どうやら、彼らも空気がぴりついていることに勘づいているようだった。まあ、それはそうだ。彼らは曲がりなりにも騎士団長である。彼女は困ったなあ、という風に笑ってはいるが、その実、目の奥は冷え切っていた。
「ミズキ様は、仕掛けてくると思われますか」
「うーん……。来そうな予感はあるけどね」
「理由を、伺っても?」
「えぇ。殿下方が、護衛以外の誰かの手渡しは絶対に受け取ろうとしてないのですよ。護衛も、離れますが、すぐ戻ってきてます。相当警戒してますね。……それでも警戒しているように見えないので、さすがとしか言い様がないです」
セレネイズに理由を聞かれた。といっても、それほど大きい理由があるわけでもない。ただの予感だ。
潜入調査の経験がある瑞姫でも、シリウスたちの近くにいる護衛に気づくのには時間がかかった。彼女がわかったのは、シリウスたちが彼らからしか飲み物、食べ物を受け取らないのに気づいたからである。
「よく見ておられますな。……まあ、あの一瞬は、少し不規則ですから。思わずつられてしまうのも、無理はありますまい」
「えぇ、ですが、それも罠かもしれないと思わなくもないのですよ。騎士団もいるのに、わかりやすい殺気を漏らすなんて、見つけてくれと言っているようなものです。一瞬の敵意でも、気はそれるものです。そうでしょう?」
だからこそ、瑞姫はフォリアに、陽動かもしれない、といったのだ。
「なるほど。確かに、一瞬でも気がそれると、それが命取りになりかねませんな」
「はい。少し……、殿下方の護衛が、それにつられているようですので……。前だけを気にしているようで……、背後が。いや、アレはわざと誘い込んでるの、か……?うぅん、殿下方を囮、とか?深読みのしすぎ……?うぅん、わからん」
扇で口元を隠しており、見た目はにこやかにしているので、談笑しているように見えるはずだ。話の内容は、小声なので周りには聞こえていないだろう。
「やはり、かなり場数を踏んでおられるのか……」
「今は、まだ様子見でしょうね……」
「まあ、そうですね……」
だが、あまりこの状況が長く続くと、少々まずいかもしれない。おちょくられているような感じの気配なので、相当イラッとくるだろう。護衛や他の騎士たちが、怒りにとらわれず、冷静に対処してくれればいいのだが。
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