自由な女神様!~種族人族、職業女神が首を突っ込んだり巻き込まれたりの物語。脇に聖女を添えて~

時雨

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本編

35.女神とモチネコの組み合わせ。暗殺者ギルドは空っぽ。

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 続いて、曰く付きの品の件。

「曰く付きの品なのですがね、子爵ではなく夫人が買ったようです。仮面の方から足がつきまして」
「あー、あの、なんかどこぞの民族がつけてるみたいな仮面ですね」
「えぇ、まさに。とある遊牧民族がつけていたとされる、古代の仮面です。もう滅んでしまったのですが、遺跡から発掘されたもののようですね」

 夫人の代理人として、元執事の名前で購入歴があったようだ。何故短期間にわかったかといえば、自首してきた元侍女の存在が大きい。というのも、アレデナ商会は大きいので商品も膨大に取り扱っていた。あまりにも多いので、脳筋たちはギブアップ寸前。そこへ、夫人付きの元侍女が自首してきた。これじゃん。聞いてみねえ?一縷の望みをかけて聞いたら、ちゃんと答えてくれた。探したらあった。脳筋たちは歓喜した。仕事が進んだ!
 彼女は長く夫人に仕えていたようで、六年ほど前からのことをきっちりと覚えていたようだ。侍女曰く、とある遺跡から発掘された大変貴重で珍しい仮面、と言う謳い文句に夫人が惹かれたらしい。

「珍しいもの、に弱いんですね……」
「モチモチ~」
「……呆れてるのかな」
「モチ!」
「あ、そう」

 どうやら、モチネコは己の言わんとしていることを瑞姫が理解しているので、嬉しいらしい。ゆらゆら、と尻尾が左右に揺れていた。

「他にも、買うときは元執事の名前を使っていたので、直ぐにわかりました」
「よかったですね~」
「モチニャ!」

 なんとなくだが、短い前足を人間の手のように、ぐっ、と親指を立てているようだ。

「えっと……、お疲れ?頑張ったな?」
「モチッチッ」

 首を横に振ったので違うらしい。しかし、瑞姫は吹き出しそうになった。元の世界であった、某カップ焼きそばかラーメンの商品名のような鳴き方である。瑞姫は焼きそばの定番のソースも好きだが、塩もなかなかに……ゴホン。

「あー、よかったね、かな」
「モチ!」

 正解らしい。

「ふっ……、いやはや、和みますね」
「ははは、ですよね」

 モチネコの存在のおかげで、和やかな空気が漂う。

「元執事は、残念ながら亡くなっているので話は聞けないのですが、その侍女から今後も、わかることを聞いていきます」

 え、まさか消された!?と思ったが、老衰らしい。新たな事件にならなくてよかった。

「あと、呪いの品の総数をお聞きになりますか?」
「聞きます」

 呪いを全て浄化するのに、初日を合わせて三日かかったが、その数、神殿で浄化した品も含め、大小合わせて六四。内、ネヴィン教の品は十六。アクセサリーを含めた宝石類が二四。贈り物が四。曰く付きの品が三。残りは、呪いが移った品だ。

「かなりありましたね……」
「ねー。さすがに疲れたな」

 でも、これで、一日どれだけ呪いが浄化できるかどうか、大凡の数は把握できたというものである。呪いの強さによりけりで前後するが、大体二十以内だ。やってよかった。

「モチニャ-」
「そういえば、君はどうして子爵の隠し部屋に?捕らわれてたの?」
「モチ?モチッチッ。モーチニャ」
「え、捕らわれてたわけじゃない?」
「モチ!」

 鳴き声になれるまで時間がかかりそうだが、なんとなく言いたいことはわかる。正解!or間違い!はい!か いいえ!で答えさせれば、大体話は通じるし、モチネコも首を縦か横に振ってくれるので、意思疎通は難しくない。

「え、じゃあなに?自分で入っちゃったの?」
「モチニャ!」(そうだニャ)
「扉が開いてたから?とか?」
「ニャ!?モチモチ、ニャ。……モチー」(ニャ!?よくわかった、ニャ。……そうニャー)
「妖精だけど、壁すり抜けはできないの?」
「モーチ!」(できない)
「へえ。じゃあ、子爵は関係ないんだ」
「モチニャ」(そうなるニャ)
「そっかー。じゃあ、これは子爵に罪は問えないね~」
「モチニャー」(そうだニャー)
「そっかそっか~。ですって」

 会話を全てまとめると、子爵が捕らえたわけじゃなく、開いていた扉にモチネコが自分で入ってしまって出られなくなっただけ、ということだ。これは子爵の所為……まあ、扉を開けっぱなしにしてたのは子爵の所為だが、罪に問えることではない。瑞姫がいなければ、恐らく、モチネコが捕らわれていたと勘違いし、免罪をかけられていただろう。まあ、今更罪が一つ増えたところで、処罰は免れないのだが。

「大変癒やされました」
「この組み合わせは最強ですね」
「ぅん?」
「モチモチ、モチ。ニャ」(こいつら馬鹿ニャ。馬鹿)

 美女と猫は最強の組み合わせである。最後の方は、瑞姫もモチネコの緩い雰囲気に流されたのか、語尾が伸びているそれもプラス要素だ。癒やされました、と言うイズミルとフォリアに、瑞姫は首をかしげ、モチネコは心なしか(糸目なのでよくわからないが、恐らく)冷たい視線を向けたのだった。


――――少し時は遡り、王城内
 瑞姫が呪いを浄化し始めて二日目のことである。

「――――、か」

 はあ、と深いため息を吐いたのは、第一王子シリウスだ。彼に報告しているのは、第一騎士団団長レイノート。彼もまた、眉間にしわを寄せて険しい表情だった。

「えぇ。ですが、あそこがアジトだったのは本当です。痕跡がありました」

 シリウスは、第一騎士団と第五騎士団第一師団の合同で、暗殺者ギルド“ナイトメア”を捕縛するために、下っ端から得た情報をもとに編成を組み、指示を出した。だが、騎士団が到着した頃には、いなかった。しかし、そこをアジトにしていたという証拠は出てきたので、それを持ち帰ってきたのである。まあ、証拠と言っても、ほとんど死体だが。

「ひどい状態だったようだね」
「えぇ。扉を開ける前から、ひどい匂いがしておりました。よく魔物が集まってこなかったと思います」

 アジト内は、ひどい有様だった。何かの襲撃に遭ったのかというほどで、床や壁、天井にまでとんだ血に、四肢が引き裂かれていたり、顔が潰されていたり、腹あたりで真っ二つにされ中身がぶちまけられていたりなど、死体がそこかしこに転がっていた。さしもの団員たちも、吐き気を催すほどで。死体は、十人分。全員がナイトメアに所属する暗殺者だと思われた。シリウスがと言ったのは、ことを示している。

「どうやら、あの下っ端共に襲撃させ、その隙に頭含めた他の奴らは、アジトを変えたようですね」
「捨て駒だったか。そのときに揉めたのか、わからないが。……全く、逃げ足だけは速い」
「仰るとおりですな」

 下っ端に任せたのは、自分たちが逃げる時間稼ぎに過ぎないのだろう。証拠が残っていたとは言っても、そこを拠点として活動していたと言う証拠であり、お披露目襲撃の件の証拠は残っていなかった。持ち去ったか、処分してしまったかはわからないが。

「襲撃の依頼が来て直ぐにか、それ以前に少しずつ、逃亡の準備を始めていたのかもしれないね」
「そうだと思います。でなければ、こんな短期間に消えることなどできはしません。相手が、転移魔法をもっていれば、別ですが」
「転移魔法と言っても、制限はあるだろう?人を何十人も移動するなら、膨大な魔力と、大きめな魔法陣が必要になる。その跡はなかったんだろう?」
「はい。今のところ見つかってはいません」

 どんな優れた魔法でも、制限はある。転移魔法は、一人で近場なら、そこまで魔力は必要ない。だが、大人数で遠場なら、話は別である。襲撃してきた下っ端を抜きにしても、四十人近くはいたらしい。一人二人くらいは転移魔法が使えたとして、死体分を引いても三十人近くをいっぺんにというのは、考えにくかった。仮に少しずつ転移したとしても、痕跡は残るはずなのだ。

「捜索は続けてくれ」
「はっ。……そういえば、王妃様の件は」
「あぁ……。ふふ、じわりじわりと、追い詰めている最中さ」
「そうですか。上手くいくことを願っております」
「あぁ、逃しはしないさ」

 失礼します、とレイノートは静かに扉を閉めた。

「……逃しはしないさ。絶対にね」

 瑞姫の手土産を無駄にするつもりはない。それのおかげで、事がすんなりと運んだのだ。王妃に呪いをかけた呪術師も、罪を認めて依頼主まで吐いた。もうすでに外堀は埋められ、包囲網は完成している。ふふふふ、と笑っていれば、ベシンッ、と紙束で頭をはたかれる。

「セイラン……、仮にも主だが」
「笑っている暇があれば、手を動かしてください」
「ちぇー。ちょっとくらい休ませてくれてもいいじゃないか」
「……性 的 に 喰 い立てなくして差し上げましょうか」
「ぅ、が、頑張るさ」

 セイランのそれは、言葉通りで、本気で立てなくなる。性的に喰うぞコラァ、と副音声まで聞こえてくる。そう言ったときのセイランの目は、どろりと熱を孕んだ様に光ったし、魔力で伝わってくる感情が熱くて甘くて抱かれるときと同じだったので、本気だろう。シリウスは慌てて書類にかじりつた。確かに色々溜まっているのだが、というか、ちょっと今のにくらっときたのだが、立てなくなるのは勘弁して欲しい。書類を捌く合間にちらりとセイランを見たら、先ほどのは幻覚だったのかと言うほど、感情も落ち着いていた。

「……、キスくらいよくない?」
「っ、止まらなくなります」
「っ!」

 真っ赤になって書類を捌くシリウスをチラ見したセイランは、音もなく忍びより――――

「!?」
「これで、我慢してください。――――こっちも、ギリギリなのです」
「っっ!!」

 セイランの唇が耳に触れ、続けざまに低くかすれた声で吹き込まれた言葉に、シリウスは慌てて耳を押さえる。真っ赤になった首は隠せていなかった。セイランは満足げに笑う。お使いに出ていたガラルドやライハルトが帰ってくるまで、その甘い空気は続いたのだった。
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