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番外編
フォリア・エヴィル(本編16~17話)3
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女神が忙しく、主従契約をするまでに日数は開いたが、フォリアは女神の側にいられることが何よりも嬉しく、楽しかった(無表情がデフォなので、女神は気づいてない)。お披露目まで二ヶ月を切っているので、マナーやダンスのレッスン、この国のことや貴族のことを勉強する期間が短く、かなり引っ詰めた内容だったが。ただ、ダンスレッスンは、先生が相手の時もあれば、フォリアが相手するときもあったので、役得だと思っている。
(ミズキ様は、こんなにも小さい方なのですね。柔らかい……いい匂いもする……)
フォリアはこんな感じでずっと上機嫌だった。変態に傾き始めているが、突っ込みがいないので誰にも止められない、止まらない。名前呼びを許可されたときには、尊い御名を呼ばせてもらえるのかと、(内心)大興奮である。もはや崇拝の域。正直、名前を呼ばせてもらえている殿下やセイランずるいと思っていた。反対に女神は、男を呼び捨てには慣れてないらしく、しばらくは少し恥ずかしそうにしながら名前を呼ばれ、その都度、フォリアの内心にはかわいいが乱舞していたという。
騎士団を正式に辞めたので、制服から普段の服に切り替えたそれが、どうやら女神には効果抜群だった模様。惚けたようにフォリアを見る女神の顔をのぞき込めば、はっ、と意識を戻し、若干仰け反りつつぶんぶんと首を横に振った。
「……い、いや。……似合ってるよ。今までのよりも、そっちの方がいい」
少し照れたように言われた賛辞に、フォリアも照れたように微笑んだ(瞬間、キラキラエフェクト(幻覚)とバッグに大輪の花が咲いた(幻覚)ように見えたとは女神談)。そのあと、女神が戦闘服に切り替えようかな、と言うのでどんなものか聞いてみれば、遙か西にある国のキモノをアレンジした感じだった。
(す、スカートが、短い……。これを、ミズキ様が?……いい、いや、よくない。全くよくない。他の野郎共に見せるわけにはいかない)
女神の世界では、この丈が普通らしい。文化の違いは恐ろしい。この国は、女性が足を見せるのははしたないのだ。女神は、考えるのが楽しくなってきたらしく、何枚も服を描いていた。作らないのかと言えば、考えるだけはタダと言う。庶民派の女神である。
そして、迎えた主従契約当日。フォリアの、待ちに待った当日である。朝からそわそわと落ち着きがなく、はやる気持ちを抑えるのに苦労した。本来、立会人は不要なのだが、シリウスたちが見たいということなので、同席している。
誓う前に守って欲しいことがある、と女神は前置きした。
「絶対にその命を捨てる選択はしないこと。貴方の代わりはどこにもいないよ。だから、死ぬ覚悟ではなく、生き抜く覚悟を持って。絶対に、その命がつきるのは寿命だけしか認めない。いい?」
言われた瞬間、心が震えた。
(あぁ、この方は、人の死に慣れていないのか。いや、慣れるものではないが。優しい方だ。従者の俺にまで気を遣ってくださる。騎士団に所属していた以上、死は身近だった。いつ死んでもおかしくないと思っていたが、こう言われてはな。……もとより、この命はミズキ様に捧げると決めたのだ。ミズキ様がそう仰るならば、生きなければならない。この方は、俺が死んだら悲しまれるだろうから)
この瞬間、女神という存在は、フォリアの生きる意味となった。
そして、間違った道に行こうとしていたら、物理でもいいから叩いてでも正して、と言う。果たして、叩くだけで止まってくれるのかは、まあ、疑問だが。
(絆を深め、距離を縮め、いてよかったと言われる存在に。一番最初に、俺の声が届くような存在になろう)
フォリアは何かある?と聞かれるとは思わなかったが。女神が女神であればいいのだ、フォリア的には。何かあれば遠慮せずにいてくれと、女神は言った。少しだけしんみりとした空気になったが、女神がそれをぶち破る。
「じゃあ、はい」
フォリアに向けて出された手に、疑問符が浮かんだ。
「フォリアに傷をつけたのは私だから、今度はフォリアが私に傷をつけるといい」
「えっ!?」
「あ、あのね、噛んでそのまま舐めるか啜って」
「はあ!?」
(な、難易度が上がった、だと……!?)
フォリアは大混乱である。詳しく話してくれたが、どうやら女神は特異体質らしく、傷口は直ぐに結晶化して塞がるし、血が肌から離れても結晶化するようだった。シリウスたちも聞いていなかったようだが、もう一つの異能が関係している、と言われて納得していた。それは後から詳しく話してくれるらしい。よかった。
差し出されている手を宝物に触るように手に取り、フォリアはその手の甲に噛みついた。がり、と肌が噛まれた痛みに、女神の体が小さく跳ねる。ぷくり、と出た血を、聖水を飲むがごとく、慎重になめとった。
(あぁ……ミズキ様の血を……!このような高貴な方の血が、俺の体に……。心なしか、血がおいしく感じられる)
それはフォリアの気のせいである。
ちゅ、と最後にリップ音を立てて離れれば、本当に直ぐ傷口が結晶化した。そして、二人で誓いの言葉を交わせば、ふわ、と柔らかな風が二人を包み、ちかちかと光が取り巻いた。女神の鎖骨あたりと、フォリアの左手の甲に虹色の光が集まる。一瞬、フォリアの全身が熱を帯びるが、光が収まると同時に熱も収まった。左手の甲を見れば、きっちりと印が現れている。
(これは、すごい……。ミズキ様と、魔力で繋がっているのが、とてもよくわかる……)
「……自分の魔力が、ミズキ様に塗り替えられた、感覚が……。いえ、包み込まれたというか……。その、暖かいです。とても、心地がいい。それに、魔力量も増えています。今なら何でもできそうです」
「あ、そ、そう。……え、フォリア、髪の毛!私の色が混じったというか、メッシュが入った感じに」
女神の声に、鏡を見せてもらえば確かに。髪が左右に一房ずつ、前髪にも一房、黒のメッシュが入っていた。そして瞳も、女神の宝石眼と言われる、所謂宝石の如く美しい煌めきが移って、光の加減で虹色に見える。それ以外に、表の変化はないようだ。
(ミズキ様の、と、いわれている……。俺は、これで、ミズキ様のものに……っ!あぁ、なんてよい日だ。俺はこの瞬間を、絶対に忘れない……!家族に自慢しよう)
恐らく度肝を抜かれるだろうが。シリウスの言うとおり、主君が相当強くなければ、従者に色移りなどしないのだ。そして、紋章だが。どこかで見た紋章に、女神とフォリアは少し驚いた。フォリアに渡されたとんでもない代物と、同じである。形こそ丸形と扇形で、文字もあるかないかの違いはあれど、中はほぼ一緒。
(え、ミズキ様何者?神か。……あ、女神だった。素晴らしいっ)
女神の素晴らしさは、留まることを知らないらしい。印璽になる魔道具は、血を垂らせば持ち手の部分は勝手に形作られる魔法陣が組み込まれている。シリウスたちが退室した後、血を垂らしたのだが、形を変えた魔道具に、女神は乾いた笑いを漏らした。
独鈷杵は、神の法具として知られている。蓮は神聖なるものの象徴である。元の世界でターコイズは、世界各地で神聖視されており、人類が古くから採掘してきた宝石。どこかでは神に捧げた石だ。と。これ全て、神に通ずるものがあるという。女神にふさわしい逸品ですねといったら、お揃い、とへにゃりとした笑顔で言われた。崩れ落ちるかと思った。
「おそ、ろい……。恐れ多いですが……とても……。はい、とても、嬉しいです」
(お揃い……。なんと……なんと、いい響き……!これも宝だな)
そのまた別の日。女神の異能のことや、元の世界で何の職に就いていたかなどの詳しい話が聞けた。まあ、色々と納得できたことの方が大きい。まず初日に見た不思議な魔法だが、水の異能で、空気中の水分を操れる魔法とは違った力だった。そして、こっちはあまりいわないで欲しいと言われたのが、もう一つの異能である宝石だった。とんでもなくヤバい代物がどうやって作られたのか、ようやくそこでわかった。道理でレイノートも口を噤むはずである。
(まさか、ゼロから宝石が造れるとはな……。水といい宝石といい、女神様だからと言えば納得できる要素ではあるが……。確かに、あまり知られないほうがいいな。余計な混乱や厄を引き寄せかねない。……まあ、その程度、ミズキ様ご自身で対処なされるだろうが)
そして、強いことにも納得した。女神の所属していた部署が、国内屈指を誇る強者たちの集まりというのだ。強くないわけがない。女神が言うには、自分はまあまあで、強い人なんかゴロゴロいるよ、とのことだ。……え、異世界怖い。つまり、レイノート並みの化け物がゴロゴロということで。女神には悪いが、その世界に生まれなくてよかった、と思ったフォリアである。
驚いたのが、女神がギルドランクBだというのだ。嘘だろ試験官何してんだと思ったが、腕試しとちょっとした実験を兼ねて行ったので、とりあえずBで、となったとか。また試験を受けるというので、Sでもいけると思うと言って置く。
恩恵のことも聞かれたので、氷魔法が扱えるようになり、詠唱なしでも発動することになったことや、嘘が見抜けることや贋作までもわかるようになったこと、ハーフだから蛇化できなかったのにできるようになったという報告もする。蛇化して欲しいと言われたのでしたら、女神がめちゃくちゃ触れてきてヤバかった。
(蛇が好きなことはよくわかった、よくわかった、が……!あれは、まずい。なんだあの色気、いや、まさか、あんな……。あんな、熱を孕んだ瞳で見られるとは思いもしなかった……!)
興奮を抑えきれなかったらしく、うっとりとした眼差しで見られ、ちょっと怪しい手つきで触れられた。今までそんな甘ったるい眼差しや、醸し出されている甘い空気に触れたことはなく、また、全身で好きだと言っている感情がフォリアにビシバシと伝わるので、途端、動きが止まってしまったが。正直起つかと思った。危なかった、本当に。
結局、フォリアが耐えられなくなって蛇化を解いた。残念がる女神には申し訳ないが、あれ以上はまずい。唐突に色気を出してくるのはやめて欲しい、と切に願った。こちらの心臓に悪いから。蛇化するときは気をつけよう、とフォリアは思った。
聖女の話題になったが、途中で女神が聖女に嫉妬したと気づいて歓喜した。
「いや……私に、独占欲なんかあったんだな、と」
「ふふ、何もおかしいことではありません。主従契約を結べば、従者は主人の所有物。従者に対して、独占欲は沸くものと聞いております。逆も然り、ですが」
「……嬉しそうだね」
「はい、とても」
「……私の物っていわれて、嬉しい?」
「至上の喜びでございますれば」
(嬉しいに決まっている!俺だけかと思ったが、ミズキ様が、独占欲と……独占欲と、仰った!しかも、私の物と……。はあ、俺は今日死ぬのか?いや、生きねば)
その後も話が続いたが、お披露目が終わったらギルドの依頼を受けて遠出しようと言われた。それも、二人で、二人で!(エコー)
(ミズキ様に、殺されそうだ……いろんな意味で)
フォリアは、これから女神に振り回される予感を覚えたのだった。
~~*~~
フォリアだけで本編が作れそう。なにこれ、君どこに行くの?え、変態?え、乙女?なんでだ。
(ミズキ様は、こんなにも小さい方なのですね。柔らかい……いい匂いもする……)
フォリアはこんな感じでずっと上機嫌だった。変態に傾き始めているが、突っ込みがいないので誰にも止められない、止まらない。名前呼びを許可されたときには、尊い御名を呼ばせてもらえるのかと、(内心)大興奮である。もはや崇拝の域。正直、名前を呼ばせてもらえている殿下やセイランずるいと思っていた。反対に女神は、男を呼び捨てには慣れてないらしく、しばらくは少し恥ずかしそうにしながら名前を呼ばれ、その都度、フォリアの内心にはかわいいが乱舞していたという。
騎士団を正式に辞めたので、制服から普段の服に切り替えたそれが、どうやら女神には効果抜群だった模様。惚けたようにフォリアを見る女神の顔をのぞき込めば、はっ、と意識を戻し、若干仰け反りつつぶんぶんと首を横に振った。
「……い、いや。……似合ってるよ。今までのよりも、そっちの方がいい」
少し照れたように言われた賛辞に、フォリアも照れたように微笑んだ(瞬間、キラキラエフェクト(幻覚)とバッグに大輪の花が咲いた(幻覚)ように見えたとは女神談)。そのあと、女神が戦闘服に切り替えようかな、と言うのでどんなものか聞いてみれば、遙か西にある国のキモノをアレンジした感じだった。
(す、スカートが、短い……。これを、ミズキ様が?……いい、いや、よくない。全くよくない。他の野郎共に見せるわけにはいかない)
女神の世界では、この丈が普通らしい。文化の違いは恐ろしい。この国は、女性が足を見せるのははしたないのだ。女神は、考えるのが楽しくなってきたらしく、何枚も服を描いていた。作らないのかと言えば、考えるだけはタダと言う。庶民派の女神である。
そして、迎えた主従契約当日。フォリアの、待ちに待った当日である。朝からそわそわと落ち着きがなく、はやる気持ちを抑えるのに苦労した。本来、立会人は不要なのだが、シリウスたちが見たいということなので、同席している。
誓う前に守って欲しいことがある、と女神は前置きした。
「絶対にその命を捨てる選択はしないこと。貴方の代わりはどこにもいないよ。だから、死ぬ覚悟ではなく、生き抜く覚悟を持って。絶対に、その命がつきるのは寿命だけしか認めない。いい?」
言われた瞬間、心が震えた。
(あぁ、この方は、人の死に慣れていないのか。いや、慣れるものではないが。優しい方だ。従者の俺にまで気を遣ってくださる。騎士団に所属していた以上、死は身近だった。いつ死んでもおかしくないと思っていたが、こう言われてはな。……もとより、この命はミズキ様に捧げると決めたのだ。ミズキ様がそう仰るならば、生きなければならない。この方は、俺が死んだら悲しまれるだろうから)
この瞬間、女神という存在は、フォリアの生きる意味となった。
そして、間違った道に行こうとしていたら、物理でもいいから叩いてでも正して、と言う。果たして、叩くだけで止まってくれるのかは、まあ、疑問だが。
(絆を深め、距離を縮め、いてよかったと言われる存在に。一番最初に、俺の声が届くような存在になろう)
フォリアは何かある?と聞かれるとは思わなかったが。女神が女神であればいいのだ、フォリア的には。何かあれば遠慮せずにいてくれと、女神は言った。少しだけしんみりとした空気になったが、女神がそれをぶち破る。
「じゃあ、はい」
フォリアに向けて出された手に、疑問符が浮かんだ。
「フォリアに傷をつけたのは私だから、今度はフォリアが私に傷をつけるといい」
「えっ!?」
「あ、あのね、噛んでそのまま舐めるか啜って」
「はあ!?」
(な、難易度が上がった、だと……!?)
フォリアは大混乱である。詳しく話してくれたが、どうやら女神は特異体質らしく、傷口は直ぐに結晶化して塞がるし、血が肌から離れても結晶化するようだった。シリウスたちも聞いていなかったようだが、もう一つの異能が関係している、と言われて納得していた。それは後から詳しく話してくれるらしい。よかった。
差し出されている手を宝物に触るように手に取り、フォリアはその手の甲に噛みついた。がり、と肌が噛まれた痛みに、女神の体が小さく跳ねる。ぷくり、と出た血を、聖水を飲むがごとく、慎重になめとった。
(あぁ……ミズキ様の血を……!このような高貴な方の血が、俺の体に……。心なしか、血がおいしく感じられる)
それはフォリアの気のせいである。
ちゅ、と最後にリップ音を立てて離れれば、本当に直ぐ傷口が結晶化した。そして、二人で誓いの言葉を交わせば、ふわ、と柔らかな風が二人を包み、ちかちかと光が取り巻いた。女神の鎖骨あたりと、フォリアの左手の甲に虹色の光が集まる。一瞬、フォリアの全身が熱を帯びるが、光が収まると同時に熱も収まった。左手の甲を見れば、きっちりと印が現れている。
(これは、すごい……。ミズキ様と、魔力で繋がっているのが、とてもよくわかる……)
「……自分の魔力が、ミズキ様に塗り替えられた、感覚が……。いえ、包み込まれたというか……。その、暖かいです。とても、心地がいい。それに、魔力量も増えています。今なら何でもできそうです」
「あ、そ、そう。……え、フォリア、髪の毛!私の色が混じったというか、メッシュが入った感じに」
女神の声に、鏡を見せてもらえば確かに。髪が左右に一房ずつ、前髪にも一房、黒のメッシュが入っていた。そして瞳も、女神の宝石眼と言われる、所謂宝石の如く美しい煌めきが移って、光の加減で虹色に見える。それ以外に、表の変化はないようだ。
(ミズキ様の、と、いわれている……。俺は、これで、ミズキ様のものに……っ!あぁ、なんてよい日だ。俺はこの瞬間を、絶対に忘れない……!家族に自慢しよう)
恐らく度肝を抜かれるだろうが。シリウスの言うとおり、主君が相当強くなければ、従者に色移りなどしないのだ。そして、紋章だが。どこかで見た紋章に、女神とフォリアは少し驚いた。フォリアに渡されたとんでもない代物と、同じである。形こそ丸形と扇形で、文字もあるかないかの違いはあれど、中はほぼ一緒。
(え、ミズキ様何者?神か。……あ、女神だった。素晴らしいっ)
女神の素晴らしさは、留まることを知らないらしい。印璽になる魔道具は、血を垂らせば持ち手の部分は勝手に形作られる魔法陣が組み込まれている。シリウスたちが退室した後、血を垂らしたのだが、形を変えた魔道具に、女神は乾いた笑いを漏らした。
独鈷杵は、神の法具として知られている。蓮は神聖なるものの象徴である。元の世界でターコイズは、世界各地で神聖視されており、人類が古くから採掘してきた宝石。どこかでは神に捧げた石だ。と。これ全て、神に通ずるものがあるという。女神にふさわしい逸品ですねといったら、お揃い、とへにゃりとした笑顔で言われた。崩れ落ちるかと思った。
「おそ、ろい……。恐れ多いですが……とても……。はい、とても、嬉しいです」
(お揃い……。なんと……なんと、いい響き……!これも宝だな)
そのまた別の日。女神の異能のことや、元の世界で何の職に就いていたかなどの詳しい話が聞けた。まあ、色々と納得できたことの方が大きい。まず初日に見た不思議な魔法だが、水の異能で、空気中の水分を操れる魔法とは違った力だった。そして、こっちはあまりいわないで欲しいと言われたのが、もう一つの異能である宝石だった。とんでもなくヤバい代物がどうやって作られたのか、ようやくそこでわかった。道理でレイノートも口を噤むはずである。
(まさか、ゼロから宝石が造れるとはな……。水といい宝石といい、女神様だからと言えば納得できる要素ではあるが……。確かに、あまり知られないほうがいいな。余計な混乱や厄を引き寄せかねない。……まあ、その程度、ミズキ様ご自身で対処なされるだろうが)
そして、強いことにも納得した。女神の所属していた部署が、国内屈指を誇る強者たちの集まりというのだ。強くないわけがない。女神が言うには、自分はまあまあで、強い人なんかゴロゴロいるよ、とのことだ。……え、異世界怖い。つまり、レイノート並みの化け物がゴロゴロということで。女神には悪いが、その世界に生まれなくてよかった、と思ったフォリアである。
驚いたのが、女神がギルドランクBだというのだ。嘘だろ試験官何してんだと思ったが、腕試しとちょっとした実験を兼ねて行ったので、とりあえずBで、となったとか。また試験を受けるというので、Sでもいけると思うと言って置く。
恩恵のことも聞かれたので、氷魔法が扱えるようになり、詠唱なしでも発動することになったことや、嘘が見抜けることや贋作までもわかるようになったこと、ハーフだから蛇化できなかったのにできるようになったという報告もする。蛇化して欲しいと言われたのでしたら、女神がめちゃくちゃ触れてきてヤバかった。
(蛇が好きなことはよくわかった、よくわかった、が……!あれは、まずい。なんだあの色気、いや、まさか、あんな……。あんな、熱を孕んだ瞳で見られるとは思いもしなかった……!)
興奮を抑えきれなかったらしく、うっとりとした眼差しで見られ、ちょっと怪しい手つきで触れられた。今までそんな甘ったるい眼差しや、醸し出されている甘い空気に触れたことはなく、また、全身で好きだと言っている感情がフォリアにビシバシと伝わるので、途端、動きが止まってしまったが。正直起つかと思った。危なかった、本当に。
結局、フォリアが耐えられなくなって蛇化を解いた。残念がる女神には申し訳ないが、あれ以上はまずい。唐突に色気を出してくるのはやめて欲しい、と切に願った。こちらの心臓に悪いから。蛇化するときは気をつけよう、とフォリアは思った。
聖女の話題になったが、途中で女神が聖女に嫉妬したと気づいて歓喜した。
「いや……私に、独占欲なんかあったんだな、と」
「ふふ、何もおかしいことではありません。主従契約を結べば、従者は主人の所有物。従者に対して、独占欲は沸くものと聞いております。逆も然り、ですが」
「……嬉しそうだね」
「はい、とても」
「……私の物っていわれて、嬉しい?」
「至上の喜びでございますれば」
(嬉しいに決まっている!俺だけかと思ったが、ミズキ様が、独占欲と……独占欲と、仰った!しかも、私の物と……。はあ、俺は今日死ぬのか?いや、生きねば)
その後も話が続いたが、お披露目が終わったらギルドの依頼を受けて遠出しようと言われた。それも、二人で、二人で!(エコー)
(ミズキ様に、殺されそうだ……いろんな意味で)
フォリアは、これから女神に振り回される予感を覚えたのだった。
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