自由な女神様!~種族人族、職業女神が首を突っ込んだり巻き込まれたりの物語。脇に聖女を添えて~

時雨

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本編

40.遭遇しました

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 あの後、善は急げとばかりに、瑞姫たちは北の森に足を踏み入れていた。元々、瑞姫やフォリアは依頼を受けるつもりで準備していたので、直ぐ出発する事ができた。メンバーは、瑞姫、フォリア、エイバン、アランの四人である。ちなみに、戦闘中は邪魔だという事で、眼鏡は外してある。代わりに、瑞姫は逆刃刀と太刀を帯刀していた。

「……本当に、出てこないなあ……魔物」
「そうですね……。静かすぎます」
「いつもの北の森じゃないわ。明らかに可笑しいわね」
「なんっつーか、魔物が潜んでる感じもしないし、ここらには何もいないと言った方がいいか……。異常だな」

 モチネコは戦力外だからギルドに留守番。アランの仲間は、少し口が軽いきらいがあるらしく、こういう極秘任務にはあまり向いていないんだとか。というのは建前で、仲間にいる女二人の腕は立つがあまり性格がよくなく、正体を隠している女神に突っかかって行きそうだから不安らしい。過去に、他の女性と衝突した事もあるとか。エイバン曰く、アランは貴族籍から抜けてないので、それにすり寄っている寄生虫だとか。そのため、ギルドに留守番だ。
 アランは元々ついていくと決まっていたのと、瑞姫の飛び級試験も兼ねる事になったため、試験官として。エイバンも、試験官としてと、光魔法が得意で治癒術に長けているので同行する事になった。フォリアは瑞姫の従者なため、試験官からは外れている。昔、とある貴族がランク上げのため、試験官を身内や侍従やらでかため、虚偽の報告をさせた事があった。実際は侍従たちが貴族の代わりに倒していたと言う事らしい。なので、試験を受けるときは、近しい人が試験官になることはできないと言うルールができた。

 四人は周りを警戒しながら、慎重に森の中を進んでいく。と、瑞姫は何かの気配に気づき、足を止めた。その気配をたどるため、目を閉じる。瑞姫に声をかけようとしたアランは、フォリアに止められ口を閉じた。

(呪い……の、ような、そうじゃないような。いや、でも呪いっぽい?え、動く呪い?……やけに跳ねている感じ?まるでウサギみたいにぴょんぴょん跳んでるような・・・?でも跳ね方と速度は一定なんだよね。なんだろ。同じところを行ったり来たりして……、まるで衛兵のように巡回しているかのような……)

 跳ねるように移動する呪いっぽい気配があり、一定の距離を行ったり来たりしている。薄目を開け、その方角に視線をやった。

「あちらに何かありました?」
「うん。呪いっぽい気配が跳ねながら移動してる」
「呪いっぽい?」

 瑞姫が呪いだと断言できないのは、そのもの自体は別の何かの気配が強く、呪いと思われる気配が弱いからだ。フォリアは感じ取れていない。

「呪いっぽい気配が」
「跳ねながら移動してる。……って、なんなのよ!聞いた事ないわよそんなの!」

 アランの語尾から言葉を続けたエイバンの突っ込みが入ったが、大丈夫だ。瑞姫も聞いた事がない。

「呪いの気配がわかるのか?」
「はい、まあ……。すごく気になるので、見に行って来ていい?」
「待ちなさい。行くわよ、当然。手がかりかもしれないんですもの」
「あっちか」

 歩いていた道から逸れ、瑞姫の言う方角へ進む。十分も経たないうちに、動き回る呪いっぽいモノを見つけた。

――――ピョン……ピョン……ピョン……

 腕をまっすぐ前に伸ばし、足首のみを利用して跳ねるように進む少し笑いをそそる動きは――――
 瑞姫が口を開く前にフォリアが手で塞ぎ、ひょいっと抱き上げて元来た道を急いで戻る。全員息を殺しつつ、半分くらい戻ったところで、はあーっ、と全員が息を吐いた。

「あ、っぶねー……」
「私も声上げるところだったわ……」
「うわー、ごめんフォリア、ありがとう。確実に声出してたよ……」
「いえ、役得です(問題ありません)」
「やく……っ」

(や、やや、役得ー!?こ、この従者は……っ、さらっとそういうことを言うんだから……っ)

「おーい、本音と建前が逆になってんぞー」
「フォリアってこんな子だったかしら……」

 アランの突っ込みをさらっとスルーし、フォリアは若干顔を赤くした瑞姫を丁寧に降ろす。

「ま、いいわ。感じた気配はあれだったかしら?」
「っ、あ、そう、だよ。呪いっぽいと思ったけど、呪いと似たような気配ってだけで。アンデッドだからなのかは、他の魔物にあってみないとわからないけど……」

 瑞姫が感じた跳ねる動きは、アレだった。近くにいったからわかったが、呪いっぽいが呪いではない。まあ、これがアンデッド特有の気配なのかどうかは、他のアンデッドにあってないのでわからないが。呪いじゃないからフォリアが気づかないのも当然だ。

「しっかし、いたな」
「いたわね」
「いましたね」
「うんうん」

『キョンシー』

 全員の声が重なった。それは、瑞姫も映画やドラマで見た事のある、ゾンビ系に分類される妖怪の一種である。この世界ではアンデッドに分類される。

「まだ真新しい死体でしたね。跳ねるだけです」

 キョンシー。真新しい死体は死後硬直で体が硬いため、腕をまっすぐ前に伸ばし、足首のみを利用して跳ねるように進むのが特徴である。また、視覚がなくなる代わりに、聴覚が発達する。そのため、少しの物音にも反応し、直ぐに襲ってくるので気をつけねばならない。だから、フォリアは瑞姫の口を塞ぎ、自分たちも息を殺して、気づかれる前に一度引き返したのだ。

「そうね。報告にあったのは、ランクAがほとんどだったけど」

 このときはまだ戦闘能力も低いため、ランクC。DかEだと思われるが、体が鋼のように硬く、安い剣では刃こぼれする事もあるほどだ。魔法も光限定で、他の魔法は効きづらい。爪に毒があるので、傷付けられれば生きた人間でもキョンシーになってしまう。光魔法の使い手がいなければ、逃げの一択である。幸い足は速くないので逃げ切れる。しかし、ほかっておいても危険であるので、キョンシーを見かけたら直ぐギルドに報告するのが義務づけられているのだ。――――何故か。

「あいつらがあたったのも、Aのやつだったろ?」
「そうよ」

 これは時間が経つと硬直が解け、普通の人間のようにスムーズに動く事ができるようになるからだ。そうなると、魔法は依然として効きにくいままだが、鋼のような体は普通の人と同じ柔らかさに戻る。剣で斬れるじゃん、と思うが、甘い。本当に厄介なのはここからで、戦闘能力が高い人がキョンシーになった場合、その戦闘能力を有したままのキョンシーができあがるので、生前と変わらない動きをする。なので、硬直が解けたキョンシーは、例え生前戦闘能力が皆無だったとしても動きは速いため、一律Aランク。セリーナたちが遭遇したのは、ランクAのキョンシーだ。

「ランクC、Bが苦戦したキョンシーになるか?……まあ、今のままじゃわからないが。倒せるなら今倒しておきたいな」
「えぇ、でも……、人為的な線が濃厚になってきたわね……」
「もし、人為的であり、ミズキ様が仰ったとおり巡回しているとしたら……、倒したら相手に伝わるような細工がしてあっても可笑しくはありませんね」

 もし本当に人為的であったら、あの死体はどこから持ってきたのかという疑問も浮かんでくる。
 キョンシーになるのは三パターンある。
 一つ目は、生前恨みや妬みをぶつけられたまま死に、死後も怨念を持つ事により自然になったもの。これはお化けゴースト系になる事もあり得る。
 二つ目は、キョンシーに傷付けられた、又は殺された者が感染したもの。絶対にキョンシーになる。
 三つ目は、呪術師が死んだ人間をキョンシーにしたものだ。もちろん、人の命を弄ぶ行為なので、禁忌の術になる。
 後者二つは魔物にならないんじゃ?と思うが、キョンシーになった瞬間、魔石が生まれるのだ。魔石があるなら魔物に分類される。これに関しては諸説あるが、生前持っていた魔力が何らかの原因で固まり、それが魔石になっているんじゃないか、と言うのが最有力説である。ちなみに、魔物も後者の二パターンでキョンシーができる。前者は、人間に殺されると、高確率で魔石や素材として解体されるので、なることはない。魔物の死体をそのまま放置すると、確率でゴーストまたはゾンビに転化する事がある。

「あの、憶測でも言った方がいいっぽいから、言っても?」
「えぇ、どうぞ」
「ナイトメアのアジトで、ナイトメアの人間が虐殺されていたのは知ってる?」
「え、そうなのか?」
「そうなの。十人って聞いてるし、人数分の死体は持って帰ってきてるらしいんだけど……」

 エイバンは知っていて、アランは知らない様子だった。これは恐らく、役職付きにしか流していない情報なのだろう。だが、ここでは必要な情報になるはずだ。幸い、聞いているのはアランしかいない。

「四十人いて、十人殺しても、残りって三十人いるよね?隠れるのに、その人数って多すぎると思わない?」

 口封じ。瑞姫なら、そう考える。騎士団に捜索されていて、他国でも指名手配されているのだ。そんな大人数で大移動していれば、直ぐにばれる。例えどこかで隠れ住もうにも、それだけの人数分、衣類や食料だって無限に湧き出るわけじゃない。それに、一つのギルドなのに、分割して移動ってあり得るのか?まあ、なくはないが、いささかリスクは高い。分割した方からばれる可能性もある。解散?解散するなら、あの虐殺された仲間は何だったのか。

「……やだ、この子怖い事考えるのね。でも筋は通るわ」
「あれまさか、仲間の死体か!?」
「さあ」
「……、まあ、そうだな。憶測だもんな」

 そう、全部憶測である。とりあえず、あのキョンシーをどうにかするのが先決だ。

「死なせないように無力化が好ましいですが……」
「だと、足や腕を折るのが望ましいな」
「私は無理よ」

 アンデッドは、他の魔物と違って倒したら魔石を残して消えてしまう。魔石はギルドで鑑定出来るので、持って行けば何の魔物かわかるが、死体は残らない。なので、あのキョンシーも倒せば消える。証拠と言えば残った魔石のみだが、ナイトメアだという証拠は右か左の肩に掘ってある刺青だけなので、倒せばそれごと消える。調べるなら無力化して捕縛せねばならないのだ。

「あ、私出来ると思うよ」

 死体を無力化であるならできるな、と思って挙手しながら言えば、え?と全員の顔が瑞姫に向いたのだった。

~~*~~

一般的に知られているキョンシーとはちょっと違う感じです。ファンタジー!なので。
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