58 / 63
本編
46.帰還と報告
しおりを挟む
瑞姫、フォリア、アラン、エイバン、リネルカイトは、リカルド率いる騎士団とは別で王都に入った。彼らと一緒だと、目立って仕方ない。認識阻害つき眼鏡再び。そのまま、一度ギルドに顔を出す。
「お疲れ様でございました。急ぎ文を出し、派遣してもらうよう頼みましたが……。間に合いましたかな」
「タイミングはよかったわね」
「そうだな、タイミングはよかったな」
確かに、ある意味タイミングはよかったと言える。リカルドがいたならなおさら。相手は、王族を狙ってお披露目を襲撃してきたのだ。戦力にリカルドも入るとなると、真っ先に狙われること間違いなしである。それを考えると、終わった後でよかったと言えた。
エイバンがここを出発してからのことをまとめて簡潔に、フリッツへ話す。
行きは奥深くのアンデッドしかでず、他の魔物はいなかったこと。目撃された今までのキョンシーは、暗殺者ギルド“ナイトメア”の呪術師が禁術を使用して仲間の死体を利用し作っていたこと。隠れるために、仲間殺しをして数を減らしていたこと。最終的に九人しかおらず、瑞姫がほぼ一人で片付けたこと。そこに、リネルカイトが案内してきたリカルド率いる騎士団が到着したこと。ナイトメアは全員お縄につき、牢屋にぶち込まれること。帰ってくる途中、北の森に魔物が戻り始めていたこと。
「だから、原因はナイトメア共ね」
「そうか、ご苦労だったな。魔物が戻ってきているというなら、もう一度調査に出て以前のようになっていれば、立ち入り禁止を解除させよう」
「それがいいわね」
今後の方針を話し合っていく。このことに対する報酬だが、瑞姫は辞退した。何故かって?ギルドの依頼ではなく、自分から首を突っ込みに行っただけだから、である。それでも渋るフリッツに、瑞姫はこれで貸し借りなしで、と一言。
「そういえば、ありましたな……。本当に、よろしいので?」
「私は別に、他のことで返しても良いんですけど」
「いえ、これで」
即答である。女神に貸しがあるというのは、重いらしい。わからなくもない。というわけで、報酬話はこれで終いだ。リネルカイトにはギルドが依頼したので、ちゃんと支払われる。
そして、瑞姫の飛び級試験だが、敵がアンデッドしか出てこず偏りすぎだったし、暗殺者も弱く、全くもって参考にならなかったのでやり直しになった。申し訳なさそうにされたが、瑞姫もなんとなくこれは試験にならないな、と思っていたので問題はない。リネルカイトに、じゃあ私と手合わせは、と言われたが、それも断る。めちゃくちゃ残念そうにされたのは何故だ。
報告も終えたので、倒したアンデッドの魔石を換金してもらってから、ようやく王宮に戻った。お風呂に入って汚れを落とし、ソファに座ってくつろぐ頃に、フォリアも瑞姫の部屋に来た。
「しかし、ミズキ様?」
「なあに?」
「ギルドで報酬は断ったとはいえ、恐らく、国からは出るかと思いますよ?」
「……やっぱり?」
瑞姫も、それはもしかしてと思っていた。
(魔王の息子)ロキを旧隷属の首輪から解放→それにより芋づる式に誘拐犯&違法奴隷商逮捕、闇オークション等の摘発
王妃の呪い解呪→王妃を呪っていた呪術師捕縛→それにより王妃殺害(未遂)を企てた犯人特定
子爵邸にあった呪いの品解呪→それにより夫人を呪っていた犯人逮捕
(今は平民だが)龍人族ノヴェアン王国の第六王子、リネルカイトの呪いを解呪。死の淵から救い上げた
暗殺者ギルド“ナイトメア”逮捕→それにより国外逃亡を防ぐ
子爵邸の件を省き、ほぼ自分から首を突っ込んだだけだが、結果だけを見れば、国に貢献したことになる。
「まあ、話が来てから考えよう。フォリアは、報酬とかいいの?私に付き合ってるだけだけど」
「ミズキ様のお傍にいられることこそ、至上の喜びですので。それに、報酬はすでにいただいております」
少しだけ表情を和らげたフォリアは、左胸の内ポケットからとんでもなくヤバい代物を取り出した。主従契約になる前に渡した、例の宝石の塊である。なんで持っているのかと思ったが、これはそういう仕様だった。
(あー、そっか~。コレ持ち歩かないといけない仕様だったわー、あはは)
女神の加護付き、フォリア以外は長時間持てず、一定の範囲を超えるとフォリアのもとに自動的に戻ってくる仕様である。瑞姫としてはとんでもない物渡しちまったぜ、的な感じだが、フォリアからすれば、一生の宝!だ。金品とかはどうなのかと聞いたら、私はお金ほしさに仕えているわけではありません、と冷ややかな声で言われ、反射的に謝った。
(うーん、でも……。正直、四六時中と言っても過言ではないくらいに一緒にいてくれるから、一人じゃないって思えるし、寂しさも感じないんだよね。魔力繋がってるから、本人側にいなくても側にいる感じがすごいあるし……)
思えば、この世界に来て完全に一人になったことがない。フォリアが来るまではエルが控えていたし、夜は影が天井裏にいる。フォリアが来てからはなおさらだ。この世界でひとりぼっちだ、なんて思う暇もなかったような気がする。昨日の夜も、一人になったのは一瞬だった。世界が変わってもいつもの自分でいられるのは、シリウスたちのおかげもある。だが、一番大きいのは寄り添うようにいてくれるフォリアの存在だ。
(何かしてあげたいんだけどね。……何でも喜ぶんじゃないかなと思うわけで。何でもいいが一番困るよね……)
何でもいい、は一番困る返答である。どうしようかな、と悩んでいれば、エルが一通の文を持って現われた。確認すればシリウスからで。文を要約すると、報告がたくさんあるから時間が欲しい、という感じだ。文面から、とても上機嫌なことが伝わってくる。いい報告らしい。よければ夕食後に伺いたい、とも書いてあるので、二つ返事で了承した。
*
――――夕食後、応接間にて。
瑞姫が応接間に入ると、シリウスはすでに来ていた。セイラン、ライハルト、ガラルドもいて、彼らは瑞姫の前で仰々しくお辞儀する。瑞姫は驚きで目を丸くしたあと、一瞬考えた。そうか、立場女神じゃん。と言うことを思い出す。慌てて一言、“顔を上げてください”というと、彼らは顔を上げた。
「一瞬考えただろう?早く慣れなよ?」
「ぅぐ……き、気をつける……」
シリウスは開口一番にそう言って苦笑いする。好きでこの立場になったわけじゃないので、時折忘れてしまうが、反応は大分早くなったと思う。最初の慣れていなかった頃は、フォリアに言われるまで首をかしげたりしていたので。瑞姫がソファに座り、シリウスに座るよう促した。
「モッチニャー!」
「あ、やっぱりいた。よしよし~」
「モチモチ!」
透明化していたモチネコが、瑞姫のもとに飛び込んできながら姿を現す。膝に着地したモチネコを、ミズキは笑顔で迎え入れた。
「リカルドに聞いたよ~。リネルカイトさんが持ってた文、王様に届けたんだって~?偉い偉い」
「モッチ!」
えっへん、と可愛く胸を張っている。が、瑞姫はところで、と話題を変える。
「ところで、――――王城内に入ったことあるんだよね?王様の居場所と顔知ってたもんね?」
「モチッ!?モ、モチ?モーチニャ~……」
「いや、誤魔化し方下手くそだよね」
ぎくっ、を体現する猫は中々見ない。さ、さあ?とか、しーらね、みたいな感じで、モチネコは瑞姫の視線から逃れるように、膝の上で丸くなった。じー、と各方面から視線を浴びているのはわかっているはずだが、知らん!と言った態度でそっぽを向く。
「なんだ、やはりモチネコは入り込んだことがあるのか。一目散に父上のもとに向かっていったそうだからね」
「みたい」
そんなモチネコを一撫でして、瑞姫は話って?とシリウスに聞いた。
「あぁ、そうだった。こちらも、リカルドから全て聞いたよ。行く前に、一言欲しかったのは事実だけどね」
今度は瑞姫がそっぽを向いた。その様子に、シリウスはひょい、と肩をすくめる。
「まあ、いい。ミズキ、ありがとう。本当に助かったよ。国内で捕まえられたことは大きい」
「あ、いや、えっと、どういたしまして。とは言っても、まさかね、と思って確認しに行っただけだしね……」
「ミズキが行かなければ、恐らく国内で捕まえるのは難しかっただろうし、本当に、あなたには頭が下がるばかりだ」
「いいのいいの。勝手に首突っ込んだだけだし」
言外に、だから報酬はいらないよ、と含ませてみたが、駄目だった。
「首を突っ込んだだけとは言うが、結果だけを見れば国に貢献していることになる。報酬は、出さないとね。国の体裁に関わってくるものだから。……と、まあ、報酬の話は後回しにしよう」
先にこちらを聞いてくれ、とシリウスは話題を変える。
どうやら、子爵がようやく口を割ったらしく、その報告をしに来てくれたようだった。文に書かれていた報告はそれだったようだ。
一つ目、ナイトメアとの関係の件
子爵の父親、先代子爵の頃から関係があったらしく、今も続いていたようだ。黒幕ともその頃からつながりがあったらしい。
二つ目、ロキを捕らえた件
「これはまあ、そのまま、王族を殺すためだったみたいだね。たまたま魔族を見かけたから、捕らえただけだ、と」
「ロキさんと言ってることは一緒なんだね」
「あぁ。子爵は黒幕から指示されて、強い人を探していたらしい」
それで、目についたのが魔族だったようだ。目の付け所は悪くないが……。これがロキだったから外交問題にギリギリならなかったものの、これが他国の人だったり他種族だったりしたら、待ったなしでこの国は滅ぼされていても可笑しくはなかった。
三つ目、人身売買の件
これもまた先代からで、拐かしをナイトメアに指示し、奴隷商に流していたようだ。
四つ目、呪いの品の件
子爵はやはり見える人で、ネヴィン教の品も、男爵夫人からの贈り物も、曰く付きの品も気づいていたらしい。ネヴィン教の品が夫人の姉から送られてきたのは、間違いないようだ。ネヴィン教の品が幸せな人の前に現れることを知っていた子爵は、夫人との生活が幸せだなんて思われたくなく、世間体を気にして騎士団にも提出しなかった。しかし、呪いが自分に降りかかるのも嫌で、呪いの品をあの部屋に押し込み封印を施した。宝石も、気づいたらその都度部屋に押し込んでいたそう。そして、あの部屋が完成した。
「いや、どんだけ夫人嫌いなの?まあ、世間体を気にしてのことなら、離婚もしなかったのはそれが理由かな……」
「まあ、そこは聞いてないけど、恐らくね」
そこまで嫌っているなら、子爵が夫人を殺しても不思議じゃないのだが。
五つ目、子爵夫人殺害の真相の件
犯人は夫人付きの元侍女であり、毒殺である。殺害動機は、長年仕えていたのにぞんざいな扱いや体罰、罵詈雑言を投げつけられ、積もりに積もった憎しみが膨れ上がって爆発した、というものだ。そうなる前にやめればよかったのだろうがそう簡単ではなく、そこをやめると働き口がなかったために、仕方なく働いていたらしい。
――――そんな彼女には、恋人がいた。
「いや、待って、嫌な予感しかしない……」
「まあ、聞いてよ」
ここで登場する恋人に、いい予感はしない。というか、すでに情報過多で聞きたくないと思い始めているのだが。
さて、ここで、毒がどういうルートで元侍女の手に渡ったかに話は変わる。たかが侍女風情と言ったら言い方は悪いが、平民だろうが貴族だろうが、毒はそう簡単に入手出来るものではない。では、どうやって手に入れたかと言えば――――
「――――恋人からもらった、と言うんだ」
「デスヨネー」
ここまで来れば、勘のいい人ならわかるだろう。その恋人の正体が。何故、その恋人が毒を持っていたか、ということも。
「お疲れ様でございました。急ぎ文を出し、派遣してもらうよう頼みましたが……。間に合いましたかな」
「タイミングはよかったわね」
「そうだな、タイミングはよかったな」
確かに、ある意味タイミングはよかったと言える。リカルドがいたならなおさら。相手は、王族を狙ってお披露目を襲撃してきたのだ。戦力にリカルドも入るとなると、真っ先に狙われること間違いなしである。それを考えると、終わった後でよかったと言えた。
エイバンがここを出発してからのことをまとめて簡潔に、フリッツへ話す。
行きは奥深くのアンデッドしかでず、他の魔物はいなかったこと。目撃された今までのキョンシーは、暗殺者ギルド“ナイトメア”の呪術師が禁術を使用して仲間の死体を利用し作っていたこと。隠れるために、仲間殺しをして数を減らしていたこと。最終的に九人しかおらず、瑞姫がほぼ一人で片付けたこと。そこに、リネルカイトが案内してきたリカルド率いる騎士団が到着したこと。ナイトメアは全員お縄につき、牢屋にぶち込まれること。帰ってくる途中、北の森に魔物が戻り始めていたこと。
「だから、原因はナイトメア共ね」
「そうか、ご苦労だったな。魔物が戻ってきているというなら、もう一度調査に出て以前のようになっていれば、立ち入り禁止を解除させよう」
「それがいいわね」
今後の方針を話し合っていく。このことに対する報酬だが、瑞姫は辞退した。何故かって?ギルドの依頼ではなく、自分から首を突っ込みに行っただけだから、である。それでも渋るフリッツに、瑞姫はこれで貸し借りなしで、と一言。
「そういえば、ありましたな……。本当に、よろしいので?」
「私は別に、他のことで返しても良いんですけど」
「いえ、これで」
即答である。女神に貸しがあるというのは、重いらしい。わからなくもない。というわけで、報酬話はこれで終いだ。リネルカイトにはギルドが依頼したので、ちゃんと支払われる。
そして、瑞姫の飛び級試験だが、敵がアンデッドしか出てこず偏りすぎだったし、暗殺者も弱く、全くもって参考にならなかったのでやり直しになった。申し訳なさそうにされたが、瑞姫もなんとなくこれは試験にならないな、と思っていたので問題はない。リネルカイトに、じゃあ私と手合わせは、と言われたが、それも断る。めちゃくちゃ残念そうにされたのは何故だ。
報告も終えたので、倒したアンデッドの魔石を換金してもらってから、ようやく王宮に戻った。お風呂に入って汚れを落とし、ソファに座ってくつろぐ頃に、フォリアも瑞姫の部屋に来た。
「しかし、ミズキ様?」
「なあに?」
「ギルドで報酬は断ったとはいえ、恐らく、国からは出るかと思いますよ?」
「……やっぱり?」
瑞姫も、それはもしかしてと思っていた。
(魔王の息子)ロキを旧隷属の首輪から解放→それにより芋づる式に誘拐犯&違法奴隷商逮捕、闇オークション等の摘発
王妃の呪い解呪→王妃を呪っていた呪術師捕縛→それにより王妃殺害(未遂)を企てた犯人特定
子爵邸にあった呪いの品解呪→それにより夫人を呪っていた犯人逮捕
(今は平民だが)龍人族ノヴェアン王国の第六王子、リネルカイトの呪いを解呪。死の淵から救い上げた
暗殺者ギルド“ナイトメア”逮捕→それにより国外逃亡を防ぐ
子爵邸の件を省き、ほぼ自分から首を突っ込んだだけだが、結果だけを見れば、国に貢献したことになる。
「まあ、話が来てから考えよう。フォリアは、報酬とかいいの?私に付き合ってるだけだけど」
「ミズキ様のお傍にいられることこそ、至上の喜びですので。それに、報酬はすでにいただいております」
少しだけ表情を和らげたフォリアは、左胸の内ポケットからとんでもなくヤバい代物を取り出した。主従契約になる前に渡した、例の宝石の塊である。なんで持っているのかと思ったが、これはそういう仕様だった。
(あー、そっか~。コレ持ち歩かないといけない仕様だったわー、あはは)
女神の加護付き、フォリア以外は長時間持てず、一定の範囲を超えるとフォリアのもとに自動的に戻ってくる仕様である。瑞姫としてはとんでもない物渡しちまったぜ、的な感じだが、フォリアからすれば、一生の宝!だ。金品とかはどうなのかと聞いたら、私はお金ほしさに仕えているわけではありません、と冷ややかな声で言われ、反射的に謝った。
(うーん、でも……。正直、四六時中と言っても過言ではないくらいに一緒にいてくれるから、一人じゃないって思えるし、寂しさも感じないんだよね。魔力繋がってるから、本人側にいなくても側にいる感じがすごいあるし……)
思えば、この世界に来て完全に一人になったことがない。フォリアが来るまではエルが控えていたし、夜は影が天井裏にいる。フォリアが来てからはなおさらだ。この世界でひとりぼっちだ、なんて思う暇もなかったような気がする。昨日の夜も、一人になったのは一瞬だった。世界が変わってもいつもの自分でいられるのは、シリウスたちのおかげもある。だが、一番大きいのは寄り添うようにいてくれるフォリアの存在だ。
(何かしてあげたいんだけどね。……何でも喜ぶんじゃないかなと思うわけで。何でもいいが一番困るよね……)
何でもいい、は一番困る返答である。どうしようかな、と悩んでいれば、エルが一通の文を持って現われた。確認すればシリウスからで。文を要約すると、報告がたくさんあるから時間が欲しい、という感じだ。文面から、とても上機嫌なことが伝わってくる。いい報告らしい。よければ夕食後に伺いたい、とも書いてあるので、二つ返事で了承した。
*
――――夕食後、応接間にて。
瑞姫が応接間に入ると、シリウスはすでに来ていた。セイラン、ライハルト、ガラルドもいて、彼らは瑞姫の前で仰々しくお辞儀する。瑞姫は驚きで目を丸くしたあと、一瞬考えた。そうか、立場女神じゃん。と言うことを思い出す。慌てて一言、“顔を上げてください”というと、彼らは顔を上げた。
「一瞬考えただろう?早く慣れなよ?」
「ぅぐ……き、気をつける……」
シリウスは開口一番にそう言って苦笑いする。好きでこの立場になったわけじゃないので、時折忘れてしまうが、反応は大分早くなったと思う。最初の慣れていなかった頃は、フォリアに言われるまで首をかしげたりしていたので。瑞姫がソファに座り、シリウスに座るよう促した。
「モッチニャー!」
「あ、やっぱりいた。よしよし~」
「モチモチ!」
透明化していたモチネコが、瑞姫のもとに飛び込んできながら姿を現す。膝に着地したモチネコを、ミズキは笑顔で迎え入れた。
「リカルドに聞いたよ~。リネルカイトさんが持ってた文、王様に届けたんだって~?偉い偉い」
「モッチ!」
えっへん、と可愛く胸を張っている。が、瑞姫はところで、と話題を変える。
「ところで、――――王城内に入ったことあるんだよね?王様の居場所と顔知ってたもんね?」
「モチッ!?モ、モチ?モーチニャ~……」
「いや、誤魔化し方下手くそだよね」
ぎくっ、を体現する猫は中々見ない。さ、さあ?とか、しーらね、みたいな感じで、モチネコは瑞姫の視線から逃れるように、膝の上で丸くなった。じー、と各方面から視線を浴びているのはわかっているはずだが、知らん!と言った態度でそっぽを向く。
「なんだ、やはりモチネコは入り込んだことがあるのか。一目散に父上のもとに向かっていったそうだからね」
「みたい」
そんなモチネコを一撫でして、瑞姫は話って?とシリウスに聞いた。
「あぁ、そうだった。こちらも、リカルドから全て聞いたよ。行く前に、一言欲しかったのは事実だけどね」
今度は瑞姫がそっぽを向いた。その様子に、シリウスはひょい、と肩をすくめる。
「まあ、いい。ミズキ、ありがとう。本当に助かったよ。国内で捕まえられたことは大きい」
「あ、いや、えっと、どういたしまして。とは言っても、まさかね、と思って確認しに行っただけだしね……」
「ミズキが行かなければ、恐らく国内で捕まえるのは難しかっただろうし、本当に、あなたには頭が下がるばかりだ」
「いいのいいの。勝手に首突っ込んだだけだし」
言外に、だから報酬はいらないよ、と含ませてみたが、駄目だった。
「首を突っ込んだだけとは言うが、結果だけを見れば国に貢献していることになる。報酬は、出さないとね。国の体裁に関わってくるものだから。……と、まあ、報酬の話は後回しにしよう」
先にこちらを聞いてくれ、とシリウスは話題を変える。
どうやら、子爵がようやく口を割ったらしく、その報告をしに来てくれたようだった。文に書かれていた報告はそれだったようだ。
一つ目、ナイトメアとの関係の件
子爵の父親、先代子爵の頃から関係があったらしく、今も続いていたようだ。黒幕ともその頃からつながりがあったらしい。
二つ目、ロキを捕らえた件
「これはまあ、そのまま、王族を殺すためだったみたいだね。たまたま魔族を見かけたから、捕らえただけだ、と」
「ロキさんと言ってることは一緒なんだね」
「あぁ。子爵は黒幕から指示されて、強い人を探していたらしい」
それで、目についたのが魔族だったようだ。目の付け所は悪くないが……。これがロキだったから外交問題にギリギリならなかったものの、これが他国の人だったり他種族だったりしたら、待ったなしでこの国は滅ぼされていても可笑しくはなかった。
三つ目、人身売買の件
これもまた先代からで、拐かしをナイトメアに指示し、奴隷商に流していたようだ。
四つ目、呪いの品の件
子爵はやはり見える人で、ネヴィン教の品も、男爵夫人からの贈り物も、曰く付きの品も気づいていたらしい。ネヴィン教の品が夫人の姉から送られてきたのは、間違いないようだ。ネヴィン教の品が幸せな人の前に現れることを知っていた子爵は、夫人との生活が幸せだなんて思われたくなく、世間体を気にして騎士団にも提出しなかった。しかし、呪いが自分に降りかかるのも嫌で、呪いの品をあの部屋に押し込み封印を施した。宝石も、気づいたらその都度部屋に押し込んでいたそう。そして、あの部屋が完成した。
「いや、どんだけ夫人嫌いなの?まあ、世間体を気にしてのことなら、離婚もしなかったのはそれが理由かな……」
「まあ、そこは聞いてないけど、恐らくね」
そこまで嫌っているなら、子爵が夫人を殺しても不思議じゃないのだが。
五つ目、子爵夫人殺害の真相の件
犯人は夫人付きの元侍女であり、毒殺である。殺害動機は、長年仕えていたのにぞんざいな扱いや体罰、罵詈雑言を投げつけられ、積もりに積もった憎しみが膨れ上がって爆発した、というものだ。そうなる前にやめればよかったのだろうがそう簡単ではなく、そこをやめると働き口がなかったために、仕方なく働いていたらしい。
――――そんな彼女には、恋人がいた。
「いや、待って、嫌な予感しかしない……」
「まあ、聞いてよ」
ここで登場する恋人に、いい予感はしない。というか、すでに情報過多で聞きたくないと思い始めているのだが。
さて、ここで、毒がどういうルートで元侍女の手に渡ったかに話は変わる。たかが侍女風情と言ったら言い方は悪いが、平民だろうが貴族だろうが、毒はそう簡単に入手出来るものではない。では、どうやって手に入れたかと言えば――――
「――――恋人からもらった、と言うんだ」
「デスヨネー」
ここまで来れば、勘のいい人ならわかるだろう。その恋人の正体が。何故、その恋人が毒を持っていたか、ということも。
0
あなたにおすすめの小説
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる