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<始まりのルール> LOUNGE ー談話室ー
しおりを挟む┈┈ここは、とある談話室。ほんの少し興味を抱いてしまったばかりに私達は招かれた。
手紙に書かれていた内容通り、案内役の執事からこの部屋で待機するようにと説明され通されたのに、この部屋には照明さえついておらず、目の慣れで周りを見ている。
天井には "豪華さ" の意味をなさないシャンデリアが私達を冷たく見下ろし、壁には鹿や熊・黒豹といった多くの動物達の首だけの剥製が飾られ、目があった者を睨み返す。
さらには見たこともない様々な爬虫類のホルマリン漬けの瓶が、この室内にある全ての棚の上に飾られて、外部を遮断するかのように閉められたカーテンから差し込む細い光が、高級品を思わせる家具と不釣り合いな不気味さを醸し出している。
「……やべぇ、やべぇよ。何なんだ。此処はよ…気持ち悪ぃな」
参加者の男の一人が思わず、ボソッと呟く。全くその通りだ。
「…っ…帰ろうよ! こんな所、見るからに怪しすぎるってッ! 剥製だってさ、普通じゃ見かけない動物ばかりだし……だから反対したじゃん!!」
隣にいた友人と思える少し小柄な男が、落ち着かない様子で、周りをキョロキョロ警戒しながら涙声で声を荒らげた。
「耳元でうっせーなクリス!! お前だって此処に来るまでは "懐かしの人生ゲームで賞金が貰える" ってノリノリじゃなかったのかよ?!」
「そこまでノリノリじゃなかったよ…!」
クリスと呼ばれた男は、もう立っているのがやっとな程、腰が今にも抜けそうな状態だ。
┈┈そうだ。私を含め、ここに居る人達は皆 "人生ゲームで賞金" の招待状に釣られて来てしまったのだ。
先日、ポストに届いた "招待状" と書かれた手紙には日時と集合場所、そして "時間には決して遅れぬよう、お願いします。" と入記されていた。┈┈なのに差し出し当本人が遅刻なんて心底、ふざけている。
すでに何分、何時間と待たされただろう┈。時間の感覚はとっくに麻痺してる。そんな事をふつふつと考え不満を募らせていると、
ガチャ…
重い扉が開く音に金属の擦れた「キィー…」という音が重なった。
ドアから流れ込んだ空気は一瞬、冷気を運び、私はブルっと身震いをして、それに敏感に反応してしまった。すぐ目の前には暗闇に混ざり、恐れや不安を思わせる雰囲気が漂ってくる。
「…これはこれは。お話が気になる参加者の皆さん、初めまして。お待たせしました」
それは男性の声。こんな暗い部屋じゃ姿をハッキリと確認できない。
「こんなに人を待たせておいて、お詫びの言葉がそれだけ!?」
奥にいた二十代ほどの女が声を荒らげた。
全く詫びる気もない陽気に満ちたその声質は、どこか圧をも感じてしまう。
「吾輩は誰かって?」
嘆げかけた質問に噛み合わない答えを返され、女は思わず目を丸くする。
その表情を見て楽しんでいるのか、ふっ、と微かに笑った口元だけが不気味にハッキリと見えた。
「それは後ほど分かる事です」そう言い放つ。
「それにしても皆さん、この物語が気になるなんて…始めに一つ、吾輩の口から言っておきましょう。
皆さんは既にこの時点で『容疑者』となっています。この場所に来てしまった以上、ここからはどんなに足掻いても逃げることはできません」
"逃げることはできない"
その一言は一種の警告にも感じ、また全てを賭けられているような気分にさえなる。 言い返せない。
「では大変、遅くなってしまいました。ゲームを始めましょうか。おっと…いけない。物語を始める前に皆さんには基礎となるルールをお教えしましょう。この物語のルールは三つ」
【1.被害者と加害者の人生の偽造は、一回きり可能であり、保証される】
【2.よって一度、偽造を行った人生は決定され元には戻せない】
【3.その後、加害者の人生の中で生きていく者の人生に、保証は付かない】
「このルールの意味が何を示すのか…それは皆さん、個人でお考えください」
この簡潔にまとめられた3つの「ルール」は、
「ルール」というよりも「禁忌」のように耳に響く。
「さぁ、物語の説明はこれでおしまい。早速、本番へと進みましょう。分からないことは案内役の執事が助手をしてくれます。吾輩は先に行って皆さんをお待ちしていますよ。
Then let's meet you in a story…」
流暢な英語を口にした黒い影は背を向け、そしてゆっくり開けた扉が「パタン」と閉じてゆくのが見えた…。
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