もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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12章 美味しいもの大好き!

505.ドラちゃんの事情

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 僕が必死に疑惑を否定したら、龍馬ドラシュバルは『あら?』と首を傾げた。

『確かに食欲の念を感じたんだけど……? 失礼な子だと思って、文句を言いに来たのよ』
「食欲の念???」

 初めて聞いた言葉だ。
 僕は食い意地が張ってる自覚はあるけど、そんな念を飛ばしたことはない……はず。

 でも、ふと部位識別スキルのことを思い出して、パチパチと目を瞬かせてから空を見上げた。

「──もしかして、部位識別スキルって、向けられた方は『お前を食ってやるぞぉ!』っていう意思として受け取るのかな?」

 あり得るぅ……。モンスターを食材として見るスキルだもん。

 きょとんとしてる龍馬ドラシュバルから、ショコラの方に視線を移す。

「くまま(どうしたのー?)」
「実は──」

 かくかくしかじかで、と部位識別スキルのことを説明して、向けられた相手がどう感じるか、ショコラに試していいか聞いてみた。

「くまま(ボクに試すのー? いいよー)」

 のほほんと許してくれたショコラに「ありがとー」とお礼して、部位識別スキルを使ってみる。

「【部位識別】! あ、ショコラは弱点が頭で、腕と脚とお腹に食材ポイントがあるね」

 弱点と食べられる部位が点で表示されたのを見て、ふむふむと頷く。

 ショコラを食べるつもりは一切ないけど、弱点を知るのはいいことかも。そこを守れる装備を用意したら、ショコラの生存力を高めることに繋がるし。

「……くまま(美味しそうって思われてるー。あんまり気分よくなーい)」
「ごめんごめん!」

 ポツリと呟かれた言葉に、慌てて謝った。
 部位識別スキルは、ホントに食欲の念として受け取られちゃうみたいだ。使う相手やタイミングをちゃんと考えないと、余計なヘイトを稼ぐことになるなぁ。

 拗ねた感じになったショコラに、機嫌取りのためのオランジェットを渡した。
 農地でたくさんオレンジができたから、ショコラにあげようと思って用意してたんだよ。

「くまま(わーい! モモ、いつでも部位識別スキルを使っていいからねー)」
「もう使わないよ?」

 一気にご機嫌になったショコラに苦笑しちゃう。
 チョロすぎてちょっと心配になっちゃうよ。

「くるる(僕にも使ってもいいよ? キュウリちょうだい)」
「わざわざ嫌な気分になってでもキュウリ欲しいの? そうじゃなくてもあげるのに」

 ツンツンと僕をつついてねだってきたペタに、たたきキュウリの梅ナムルを渡す。
 梅もキュウリも僕の農地産です!
 みんなの好物はできる限り素材から自分で用意したいから、たくさん作ってるんだよー。

「みんなもオヤツにしよっかー」

 ショコラとペタだけにあげるのは贔屓になっちゃうかな、と思って次々に食べ物を取り出してみた。

 ここはバトルフィールドだけど、龍馬ドラシュバルがいるからか全然敵の気配を感じないから、休んでも大丈夫そうだし。

 ナッティは僕が作ったブールドネージュに夢中で、龍馬ドラシュバルへの恐怖もどこかへ飛んでいったみたいだ。

 ブールドネージュはアーモンドプードルを使ってて、粗めに砕いたナッツをふんだんに入れてるから、ナッティが気に入ってくれると思ってたんだよー。

「きゅぃ(このブドウ飴、美味しいね!)」
「ぴぅ(ボクはイチゴ飴も好きだよ)」

 スラリンとユキマルは、果物を飴でコーティングしたお菓子をパクパクと食べてる。
 見た目が綺麗で、食べて美味しい、自慢の一品です! 喜んでもらえて嬉しいよ。

 ニコニコとみんなを眺めてから、龍馬ドラシュバルの方に視線を戻す。
 龍馬ドラシュバルは僕たちのノリについてこれなかったみたいで、きょとんとしてた。

「鑑定スキルの一種を使ったら、変な誤解を与えちゃったみたい。ホントに、食べようなんて思ってないよ。でも、嫌な気分にさせたのは申し訳ないから、お詫びにこれ食べる?」

 たくさん出した食べ物を龍馬ドラシュバルに差し出す。
 これで許してくれたらいいなー。
 龍馬ドラシュバルの大きさを考えたら、腹の足しにもならない量かもしれないけど。

『あらまあ……よくわからないけど、あなたに悪意がなかったのはわかったわ』

 そう言って目を細めた龍馬ドラシュバルが、『私、こう見えて果物が好きよ』と言って、フルーツタルト(ホール)を一口で食べた。
 おっきな口だねー。
 感心しながらも、許してもらえそうな気配にホッとする。

「果物が好きなんだねー。何が一番好き?」

 どうせなら好みのものをたっぷりあげたいな、と思って聞いてみた。
 あわよくば、友好度が上がらないかなー、という思惑もある。えへへ、僕は抜け目ないところもあるのです!

 ……まあ、今はテイム枠が埋まってるから、仲良くなってもテイムはできないんだけど。
 先にテイマー講座を受けてくるべきだったなぁ。

宝果ジュエルフルーツかしらねぇ。とっても美味しい果物だし、私たちにとって特別な意味のある果物なのよ』

 龍馬ドラシュバルがフフッと楽しそうに教えてくれた。

 宝果ジュエルフルーツかぁ……まだ栽培途中だから、手元に一個もないんだよなぁ。
 収穫した後にまた会えたら渡そう。

 それにしても、特別な意味のある果物って、どういうことなんだろ?

宝果ジュエルフルーツは美味しいだけじゃないの?」
『そうよー。私たちが次代を生み出すために必要なの!』

 うふふー、と照れ照れした感じで言われて、きょとんとしちゃった。
 次代? それって、子どもってこと?

『──私、旦那様を探しに降りてきたのよー。メスは普段、空中都市で暮らしていて、オスはドラゴンの里にいるから、こうして降りてこないと出会えないの。里には私たちメスは入れないから、ここでひたすら探すのよ』
「……婚活しに来たの?」
『コンカツ? よくわからないけど、旦那様をゲットして、次代を生み出すために、宝果ジュエルフルーツも探すのよ』

 素敵な旦那様に出会いたい、ときゃあきゃあはしゃいでる龍馬ドラシュバルに、「ほえー」と声が漏れる。

 まさか、この場所が龍馬ドラシュバルたちの婚活会場だったとは……。

 でも、ハカセが言ってたことも間違ってなかったってわかったね。
 龍馬ドラシュバルのオスは、メスと出会うために里を出奔して、ここを彷徨うわけだ。

 ……あれ?
 そうなると、モンちゃんから依頼されたはぐれドラゴンは、オスとメスどっちのことかな?
 とりあえず、事情さえ報告すればいい感じ?

 うーむ……講座を受けるついでに、報告してみよっと。
 何はともあれ──

宝果ジュエルフルーツは僕が今栽培中だから、収穫したらあげるね!」
『まあ! あなた、素敵なウサギさんね!』

 目をキラキラさせて喜んでくれたから、オールオッケー♪

「収穫はどうやってお知らせしたらいい?」
『これを打ち上げてちょうだい。すぐに行くわ。あ、私の名前はマリーよ。素敵なオスを見かけた時も、お知らせしてくれたら嬉しいわ』

 マリーちゃんかぁ。可愛い名前だね。
 なんて思っていると、ロケットの発射装置のようなものを渡された。

——————
竜火砲ドラフレイムホウ】レア度☆☆☆☆
 ドラゴンの魔力が込められた花火発射装置
 発射すると空に美しい花火が現れ、魔力を込めたドラゴンを呼ぶことができる
 使用可能回数:5回
——————

〈シークレットミッション【素敵な旦那様探しを手伝う】が開始しました〉

 おっと? いつの間にか、受けた覚えのないミッションが開始してるぞ……?

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