もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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3章 商人への道?

74.新しい朝がきた

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 本日晴天。ゲーム日和です。

「雨の日なんて見たことないけどねー」

 ぐるりと見渡した部屋は柔らかなアイボリーの色でまとまってて落ち着く。
 寝室を出て隣は、友だちのリリとルトの部屋。今はログインしてないみたい。ざんねーん。

「朝ご飯は何を食べようかな~」

 減っている空腹度を眺めながら、アイテムボックスの中身を探る。朝食らしいメニューを食べたい気分。

「――クロワッサン、スクランブルエッグ、ウインナー、サラダ!」

 じゃじゃーん、と取り出したアイテムをダイニングテーブルに並べる。ホテルの朝食っぽくない? 美味しそう! でも、なんか足りないような……?

「あ、ジュースだ! ……コーヒーはないんだけど」

 ピーチジュースを置きながら、むむっと考え込む。コーヒーってどこにあるかな? 緑茶や抹茶、紅茶は街中で見たことがあるんだけど、コーヒーはないかも。

「カフェはあるのに……?」

 よく通っている桃カフェ・ピーチーズを思い出す。
 特別な果物幻桃ラールペシェを卸している関係で、賑わっている状態でもリザーブ席を用意してもらってるんだ。だから、桃食べたいなーって思う度につい行っちゃう。

 一応カフェって名前がついてるけど、メニューでコーヒーを見た記憶がない。たいてい紅茶かピーチティーを頼むから、視界に入ってないだけかもしれない。

「コーヒー探してみようかなー」

 サラダをパクッと食べながら考える。レタスがシャキシャキでみずみずしい。野菜好きってわけじゃなかったのに、ゲーム内だと好んで食べちゃうくらい美味しく感じる。

 ……僕のキャラがウサギ系のモンスター種族だから、味覚がそっちに寄ってるってわけじゃないよね?

「あ、クロワッサン、うまっ!」

 思わず声を張っちゃった。
 サクッとしててバターいっぱいのクロワッサンは、近くのパン屋さんで買ったもの。アイテムボックスに入れてたら、ほぼ焼き立て状態のままっていうのがいいよね。

 自分でもパン焼いてみたいんだけど、難しいのかな~。料理スキルの【成形】でいける気がしないや……。

「作り方のコツ、聞いてみようかな?」

 真剣に考える。パン屋さんとはちょっと仲良くなってきてると思うから、教えてもらえるかもしれない。

 そうとなれば、早速行動!
 朝食をもぐもぐしながら詰め込んで、ジュースで喉を潤わせたら、すぐ出発できる。

 生活スペースになってる二階から下りたら、すぐに工房があるけど、がらんとしてるのがちょっぴり寂しい。この空間も有効活用したいんだよなぁ。

「広さ的に、小さめのお店ならできそうなんだけど……」

 商売をするのって、なんか決まりがありそうだよね? そもそも、工房をお店に変えるのってどうしたらいいのかな?
 あ、市場で屋台するなら商業ギルドに許可もらう必要があるって、農業ギルドのサンゾーさんが言ってた気がする!

「――とりあえず商業ギルドに相談してみよ~」

 本日の予定が決まった。
 ①パン屋さんでパン作りのコツを聞いてみる!
 ②コーヒーを探してみる!
 ③商業ギルドでお店の開き方について相談する!

 玄関から飛び出したら、明るい日差しに照らされる。まるで今日という一日を祝福してくれてるみたいだ。テンション上がる。

「今日もいっぱい楽しむぞ~!」

 るんるんるん、と歩き始める。
 バトルを主に楽しむプレイヤーが多いみたいだけど、マイペースにほのぼの遊ぶのも楽しいよ。


◇◆◇ 


 近所のパン屋さん。
 カラン、と音を立てて入店した途端、パンの良い香りがする。なんか幸せな気分になるよね。

「いらっしゃいませ」
「こんにちは~、じゃなくておはよう?」
「おはようございます、モモさん。今日も元気で可愛いですね」

 焼き立てのパンを並べながら、パン屋の女主人パロさんが微笑んだ。

「僕はいつでも元気、もふもふだよ~」
「ふふ、いまだに、こうしておしゃべりできるのが不思議な気分になりますよ」
「そうなんだ。まぁ、そんなもんだよね!」

 プレイヤーは僕の中身が人間だって当然分かってるけど、異世界の住人NPCからすると、友好的なモンスターが話してるってことだもんね。
 モンスターの脅威にさらされてるという世界観であることを考えると、こうして歓迎されるだけでもありがたいかも。

「今日はどんなパンをお探しですか?」

 トングを持つパロさんの隣を、飛翔フライスキルを使って飛んでみる。
 人間用の棚って、人間の膝くらいの高さしかない僕には見にくいんだ。頻繁に飛翔フライスキルを使うから、そろそろレベルアップしてくれる気がする。

「クロワッサン! 今朝食べたら美味しかったから」
「ありがとうございます。うちの人気商品なんですよ」

 トレーに取ってくれるから、「十個!」とねだっておく。買い置きです。

「あと、甘い系もほしい。惣菜系もいいなぁ」
「甘いのだと、クリームパンが人気ですよ。惣菜系だと、コロッケパンが冒険者さんに人気ですね」
「じゃあ、どっちも五個ずつ」

 それに追加して、バゲットと食パン一斤を購入。しばらくパンには困らなそう。
 会計をしてくれてる間におしゃべり継続。情報を聞き出せるかな?

「パンって作るの難しい?」
「料理スキルで【パン焼き】を覚えたら簡単だと思いますよ。私のように職業にしている者は、【発酵】や【捏ねる】や【混ぜる】などのスキルを組み合わせて、手間ひまかけて作りますけど」

 なるほど。パン屋さんのパンが美味しい秘訣はそれなのか。単純に混ぜて焼くだけじゃダメなんだろうなぁ。難しい。

 ん~、と僕が考え込んでたら、パロさんが「ふふっ」と微笑む。

「――モモさんは多趣味ですね。農作業や釣り、錬金術などもしてるんでしょう? あ、本職は冒険者さんでしたね」
「一応ね。面白そうなことって、とりあえずやってみたくなるんだもん」

 ほぼ冒険者ギルドの依頼を受けてないので、冒険者を名乗っていいのか、ちょっと疑問。一応身分証はそれで発行されてるから、間違ってないんだろうけど。

「パン作りもしたくなったんですか?」
「うん! ここのパン美味しいから、自分で作ったらどうなのかなって思って」

 パロさんが嬉しそうに微笑む。
 そして、購入商品を僕に渡してから、カウンターの引き出しから何かを取り出した。

「様々なことを楽しめるって素晴らしいことですね。これ、丸パンのレシピです。一番簡単なものなので、挑戦してみてください」
「えっ、いいの!?」
「はい。でも、上手くパンを作れるようになっても、たまにはここに買いに来てくださいね?」
「もちろん! パロさんと話すのも楽しいからね!」

 やったー、パンのレシピゲットだ!
 錬金術は大体のレシピを錬金玉で検索できるけど、料理はそれがなくて手探り状態だから結構苦労してたんだよね。

「嬉しいことを言ってくれますねぇ。そんなモモさんには、おまけしちゃいましょう」
「なになに?」

 追加でメモを渡された。【養鶏場】や【牧場】などの言葉が書かれてる。

「うちで使っている食材を卸してくれているところですよ。市場で買うより、新鮮で安く手に入るはずです」
「ほんとに!? 嬉しいよ!」

 メモを受け取ったら、アナウンスがあった。

〈【生産家リスト】を入手しました。第二の街シークレットエリアが一部オープンになります〉

 ……およ?
 システムメニューからマップを見てみたら、これまでただの住宅地だと思っていた街の東エリアに、養鶏場や牧場などの表示が出てる。

 はじまりの街でアリスちゃんに地図をもらったときみたいに、第二の街でもシークレットエリアを探索できるようになったみたい。ラッキーだね!

「今日中に行ってみるね!」
「良い一日を」

 手を振ってくれるパロさんに、ふりふりと手を振り返して、次の目的地に出発。
 早速牧場とかに行ってみたい気分だけど、まずは予定通りコーヒーを探しつつ商業ギルドへ行こうっと。


******

◯NEWシステム
【生産家リスト】
 第二の街のシークレットエリアの一つに入れるようになる。入手すると自動的にマップが更新される。

******
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