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3章 商人への道?
111.スイーツの効果はすごい!
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ステージでのパフォーマンスの後は、再度いろんな衣装に着替えてみんなと写真撮影。可愛く撮ってね~。
「そろそろ試食会だろ」
「うん! ルトも一緒に食べようね」
状況が落ち着いたところで近づいてきたルトと一緒にテーブルに移動。リリと数人の女の子が待っていた。
「モモさん、改めて言わせて。ほんっとうに素晴らしいステージだったよ!」
真っ先に感想をくれた子に「ありがとー」と返す。今日何度ももらった言葉だけど、嬉しさは変わらない。
「私もアイドル活動してるから、いつか共演したいなぁ」
「えっ、そうなんだ?」
まじまじと見つめる。確かに可愛い。黒髪の清純派って感じかな。キラキラしてる。
「掲示板とかで姫宮様って呼ばれてるプレイヤーさんだよ」
リリが教えてくれた。姫宮様って古風な呼ばれ方が、すごく合ってると思う。
「名前はアイリーンっていうの。よろしくね」
ウインクが様になってる! なんか照れちゃうよー。
握手をしながら「僕こそよろしくー」と答えた後で、ちょっと首を傾げる。なんか聞き覚えがある名前だぞ?
「……オジョウサマに絡んでた連中が出した名前じゃねぇか」
ルトがボソッと呟く。僕も思い出した! もしかして、イザベラちゃんに絡んでた人たちって、アイリーンのファンだったのかな?
何事か、と問いかけたアイリーンにルトが答えてる声を聞きながら、全神経がテーブルの上に集中していった。
桃カフェとのコラボスイーツが並べられたんだ。美味しそう……!
「――つー感じで、NPCに迷惑かけてる連中がいたから、あんたからも注意してやってくれ」
「それはもちろんよ。みんなに伝えておかなくちゃ」
プンプンとしてるアイリーンに言われたら、今後迷惑行為をすることはなくなるかもね。良かった。それより僕は、このスイーツを食べたいんだけど?
一見シンプルな桃のタルトだけど、断面は複雑な層になっていて、どんな味がするのか楽しみ。上に並べられた桃は、シロップでつやつやと光ってて『私を食べて』と訴えかけてくる感じがする。
「モモ、スイーツに気を取られすぎだろ」
「むしろ、なんでみんなは余裕な表情で我慢できるの!?」
「お前ほどスイーツ好きじゃねぇからだろうな」
ルトに呆れられながら、あふれそうなよだれを我慢する。さすがにそんな情けない姿を見せるわけにはいかないからね。
「皆様、本日はナンバーワン・スイーツフルへようこそ。当店をイベントの会場に選んでいただけたこと、大変光栄に思っております」
ライアンさんが挨拶を始めた。
「――最後に提供させていただくスイーツは、桃カフェ・ピーチーズと共同開発したメニューです。皆様からの評判がよろしければ、全国で売り出していく予定ですので、ぜひ忌憚なくご感想をくださいますようお願い申し上げます」
ナンバーワン・スイーツフルの窮状は説明しておいたから、みんな真剣な表情で話を聞いてる。
「では、皆様ご賞味くださいませ」
一礼してライアンさんが下がると、また賑やかさが戻ってきた。
みんなできゃっきゃしながら食べるの、楽しい気分になるね。
「もう食べていい?」
「別に俺らの許可いらないだろ」
ルトに苦笑された。リリが「私も食べるー」と言ったのを合図に、みんながフォークを手に取る。
「いただきまーす」
皿の上には桃のタルトと桃のムースがのってる。タルトの方が幻桃を使ったメニュー。
桃のムースもプリン・ア・ラ・モードのようにフルーツで飾られてて十分美味しそう。
まずはムースを一口。僕は好きなものを最後に食べるタイプなんだ。今回はどっちのスイーツも好きなものだけど、より大きな楽しみは後に取っておく。
「――ムース、うまうま。濃厚な桃ソースがいい感じ。飾ってある桃は、生のと、焼いたのと、コンポートしたのの三種類かな? 味わいが変わって面白いね」
「口直し的に、りんごとかイチゴとかあんのも、いいな」
ルトが「桃ばっかりじゃ飽きるし」と呟いてる。僕は桃だけでもいいけど、そう思う人がいるのは理解できるよ。
「美味しー!」
「これはたくさんのお客さんが詰めかけそうだね」
リリとアイリーンも満足そう。しかも、アイリーンが「みんなにおすすめしなきゃ」って呟いてるから、ナンバーワン・スイーツフルが盛況になるのは決まったも同然では?
桃カフェのパティエンヌちゃんを通して、フルーオさんのような農家も態度を軟化させてるらしいし、スパルくんも「良い取引先だ」ってライアンさんと仲良くなってるって聞いた。地元の人との関係改善も良い感じで進んでる。
もうそろそろミッションクリアになるかな。
そんなことを考えながらムースを食べきり、タルトに手を付ける。
さっくりしたタルト生地。中に入ってるのはクリームとジャムかな? 一口食べた瞬間、真っ先に幻桃の味がダイレクトに伝わってくる。うま!
その後に、ミルクの濃厚な味わいとタルト生地の香ばしさ、桃ジャムの甘さ、アクセントに酸味のあるソースが複雑なハーモニーを奏でるように口いっぱいに広がった。
「うまうま……これぞ至福の味……」
「……否定できねぇな」
あまりスイーツを食べないルトも認める最高の味わいだ。
にぎやかだった店内も、スイーツを真剣に味わっているのかちょっと静かだ。それくらい美味しいんだよ。
ライアンさんはちょっぴり不安そうな表情で見守ってるけど、そんな顔をする必要はないって全力で伝えたい。というか、伝える!
「ライアンさん! すっごく美味しいよ! このメニューを出したら、絶対に評判になるね!」
「ありがとうございますっ」
頭を下げるライアンさんに、他のみんなからの感想も降り注ぐ。どれも好意的で、素晴らしいスイーツを称賛するものだ。当然だけどね。
「うま~」
食べ進めてたら、あっという間に最後の一口になっちゃった。さみしい、けど美味しい。もっと食べたいぃ。
うろ、と視線を彷徨わせたら、隣の皿に二口分ほどのタルトが残ってる。
「おい」
伸ばした手があっさりと捕まった。そろりと視線を上げると、呆れた顔のルトが片手で僕の頬を引っ張ってくる。
「――なに、俺のタルト食おうとしてるんだ?」
「ごみゃんにゃしゃい……」
つい出来心で。
謝ったら、大きくため息をつかれた。その後、頬を解放されたと思うと、一口分のタルトを突き出される。
「一口だけな」
「ルトって、ほんといいヤツだよね!」
遠慮なくいただきます。ぱくっと食べて、「うまーい」と落ちそうな頬を押さえてたら、再びタルトが差し出された。
「私のもどうぞ!」
アイリーンがきらめく笑顔で勧めてくれる。女の子にあーんってされるの、ちょっと恥ずかしいけど、このタルトのためなら受け入れられるよ!
「ぱくっ――うまうま!」
僕がにこにこ笑えば、アイリーンもにこにこ。笑顔の連鎖だね。スイーツは誰をも幸せにするんだ。
「モモさん、私からもどうぞ!」
「え?」
いつの間にか僕の傍に列ができてた。みんなお皿を持って、僕にあーんってしようと、待ち構えてる。
「あー……えー……うん……」
嬉しいんだけど、恥ずかしい。でも、食べたい。
欲求を抑えられなくて、口を開く。
「――美味しい! ありがとう!」
食べては礼を言い、ついでに握手していく僕を、ルトが呆れた顔で見てた。止めてくれても良いんだよ?
「そろそろ試食会だろ」
「うん! ルトも一緒に食べようね」
状況が落ち着いたところで近づいてきたルトと一緒にテーブルに移動。リリと数人の女の子が待っていた。
「モモさん、改めて言わせて。ほんっとうに素晴らしいステージだったよ!」
真っ先に感想をくれた子に「ありがとー」と返す。今日何度ももらった言葉だけど、嬉しさは変わらない。
「私もアイドル活動してるから、いつか共演したいなぁ」
「えっ、そうなんだ?」
まじまじと見つめる。確かに可愛い。黒髪の清純派って感じかな。キラキラしてる。
「掲示板とかで姫宮様って呼ばれてるプレイヤーさんだよ」
リリが教えてくれた。姫宮様って古風な呼ばれ方が、すごく合ってると思う。
「名前はアイリーンっていうの。よろしくね」
ウインクが様になってる! なんか照れちゃうよー。
握手をしながら「僕こそよろしくー」と答えた後で、ちょっと首を傾げる。なんか聞き覚えがある名前だぞ?
「……オジョウサマに絡んでた連中が出した名前じゃねぇか」
ルトがボソッと呟く。僕も思い出した! もしかして、イザベラちゃんに絡んでた人たちって、アイリーンのファンだったのかな?
何事か、と問いかけたアイリーンにルトが答えてる声を聞きながら、全神経がテーブルの上に集中していった。
桃カフェとのコラボスイーツが並べられたんだ。美味しそう……!
「――つー感じで、NPCに迷惑かけてる連中がいたから、あんたからも注意してやってくれ」
「それはもちろんよ。みんなに伝えておかなくちゃ」
プンプンとしてるアイリーンに言われたら、今後迷惑行為をすることはなくなるかもね。良かった。それより僕は、このスイーツを食べたいんだけど?
一見シンプルな桃のタルトだけど、断面は複雑な層になっていて、どんな味がするのか楽しみ。上に並べられた桃は、シロップでつやつやと光ってて『私を食べて』と訴えかけてくる感じがする。
「モモ、スイーツに気を取られすぎだろ」
「むしろ、なんでみんなは余裕な表情で我慢できるの!?」
「お前ほどスイーツ好きじゃねぇからだろうな」
ルトに呆れられながら、あふれそうなよだれを我慢する。さすがにそんな情けない姿を見せるわけにはいかないからね。
「皆様、本日はナンバーワン・スイーツフルへようこそ。当店をイベントの会場に選んでいただけたこと、大変光栄に思っております」
ライアンさんが挨拶を始めた。
「――最後に提供させていただくスイーツは、桃カフェ・ピーチーズと共同開発したメニューです。皆様からの評判がよろしければ、全国で売り出していく予定ですので、ぜひ忌憚なくご感想をくださいますようお願い申し上げます」
ナンバーワン・スイーツフルの窮状は説明しておいたから、みんな真剣な表情で話を聞いてる。
「では、皆様ご賞味くださいませ」
一礼してライアンさんが下がると、また賑やかさが戻ってきた。
みんなできゃっきゃしながら食べるの、楽しい気分になるね。
「もう食べていい?」
「別に俺らの許可いらないだろ」
ルトに苦笑された。リリが「私も食べるー」と言ったのを合図に、みんながフォークを手に取る。
「いただきまーす」
皿の上には桃のタルトと桃のムースがのってる。タルトの方が幻桃を使ったメニュー。
桃のムースもプリン・ア・ラ・モードのようにフルーツで飾られてて十分美味しそう。
まずはムースを一口。僕は好きなものを最後に食べるタイプなんだ。今回はどっちのスイーツも好きなものだけど、より大きな楽しみは後に取っておく。
「――ムース、うまうま。濃厚な桃ソースがいい感じ。飾ってある桃は、生のと、焼いたのと、コンポートしたのの三種類かな? 味わいが変わって面白いね」
「口直し的に、りんごとかイチゴとかあんのも、いいな」
ルトが「桃ばっかりじゃ飽きるし」と呟いてる。僕は桃だけでもいいけど、そう思う人がいるのは理解できるよ。
「美味しー!」
「これはたくさんのお客さんが詰めかけそうだね」
リリとアイリーンも満足そう。しかも、アイリーンが「みんなにおすすめしなきゃ」って呟いてるから、ナンバーワン・スイーツフルが盛況になるのは決まったも同然では?
桃カフェのパティエンヌちゃんを通して、フルーオさんのような農家も態度を軟化させてるらしいし、スパルくんも「良い取引先だ」ってライアンさんと仲良くなってるって聞いた。地元の人との関係改善も良い感じで進んでる。
もうそろそろミッションクリアになるかな。
そんなことを考えながらムースを食べきり、タルトに手を付ける。
さっくりしたタルト生地。中に入ってるのはクリームとジャムかな? 一口食べた瞬間、真っ先に幻桃の味がダイレクトに伝わってくる。うま!
その後に、ミルクの濃厚な味わいとタルト生地の香ばしさ、桃ジャムの甘さ、アクセントに酸味のあるソースが複雑なハーモニーを奏でるように口いっぱいに広がった。
「うまうま……これぞ至福の味……」
「……否定できねぇな」
あまりスイーツを食べないルトも認める最高の味わいだ。
にぎやかだった店内も、スイーツを真剣に味わっているのかちょっと静かだ。それくらい美味しいんだよ。
ライアンさんはちょっぴり不安そうな表情で見守ってるけど、そんな顔をする必要はないって全力で伝えたい。というか、伝える!
「ライアンさん! すっごく美味しいよ! このメニューを出したら、絶対に評判になるね!」
「ありがとうございますっ」
頭を下げるライアンさんに、他のみんなからの感想も降り注ぐ。どれも好意的で、素晴らしいスイーツを称賛するものだ。当然だけどね。
「うま~」
食べ進めてたら、あっという間に最後の一口になっちゃった。さみしい、けど美味しい。もっと食べたいぃ。
うろ、と視線を彷徨わせたら、隣の皿に二口分ほどのタルトが残ってる。
「おい」
伸ばした手があっさりと捕まった。そろりと視線を上げると、呆れた顔のルトが片手で僕の頬を引っ張ってくる。
「――なに、俺のタルト食おうとしてるんだ?」
「ごみゃんにゃしゃい……」
つい出来心で。
謝ったら、大きくため息をつかれた。その後、頬を解放されたと思うと、一口分のタルトを突き出される。
「一口だけな」
「ルトって、ほんといいヤツだよね!」
遠慮なくいただきます。ぱくっと食べて、「うまーい」と落ちそうな頬を押さえてたら、再びタルトが差し出された。
「私のもどうぞ!」
アイリーンがきらめく笑顔で勧めてくれる。女の子にあーんってされるの、ちょっと恥ずかしいけど、このタルトのためなら受け入れられるよ!
「ぱくっ――うまうま!」
僕がにこにこ笑えば、アイリーンもにこにこ。笑顔の連鎖だね。スイーツは誰をも幸せにするんだ。
「モモさん、私からもどうぞ!」
「え?」
いつの間にか僕の傍に列ができてた。みんなお皿を持って、僕にあーんってしようと、待ち構えてる。
「あー……えー……うん……」
嬉しいんだけど、恥ずかしい。でも、食べたい。
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