94 / 555
4章 錬金術士だよ?
124.ツンデレくん可愛いなー
しおりを挟む
にぎやかな食事会も終わったし、そろそろログアウトするかーって考えてたところで、ルトに首元をがっしりと掴まれた。
「え、なに?」
急にびっくりするじゃん、と思いながら見上げたら、半眼と視線がぶつかる。
「モモ、そろそろしっかりレベリングするぞ。せっかく経験値二倍キャンペーン中なんだから」
「うん?」
レベリングしてるつもりだけど?
サウス街道でバトルして種族レベルが19になったんだよ。魔術士レベルも10だし。バトルより錬金術士としてのレベルを上げようかなーって考えてるくらいだ。
「いいか? お前が足踏みしてる間に、第一陣でこのゲームに参加してる大体のプレイヤーはレベル30近くなってるんだぞ。このままじゃ、第二陣にも追い越されるぞ?」
「えっ……」
衝撃が走るような感覚。
僕、結構弱い……? みんな、そんなに強くなってるの?
「お前は初期ステータスとか、種族のわけわからんスキルとかで恵まれてる。だけど、それにあぐらをかいてちゃダメだろ」
「……うん。そうだね」
確かに天兎のステータスやスキルのすごさに甘えてたかも。最近は自分より弱いモンスターしか相手にしてこなかったから、僕は強いって勘違いしてた?
しょんぼりと項垂れてたら、パシッと音が聞こえてきた。
「痛ぇ」
「ルトってば、どうしてそう威圧的に言うの? 素直に、エリアボス討伐できないから手伝って、て言えばいいじゃない。ゲームの楽しみ方は人それぞれなんだから、モモに強くなれって強制するのはおかしいでしょ」
リリが腰に手を当て、ルトを叱ってた。ルトはちょっとバツが悪そうな表情をしてる。これ、どういうことかな?
「つまり?」
僕が首を傾げたら、リリが申し訳なさそうに微笑んだ。
「私たち、エリアボスに挑んでるんだけど、どうしても勝てないんだよね。それでモモに協力してもらえたらクリアできるんじゃないかと思って。でも、そのためにはモモにしっかりとレベリングしてもらわないといけないし」
「それで、ルトが僕に発破をかけて、バトルに連れ出そうとしてたってこと?」
ちらっと見上げたら、ルトが小さく頷いた。「悪い……」って小声で謝ってくれたし、ルトが言ったことはそんなに間違ったことでもないから別にいいよー。
「――そっかぁ。エリアボスねぇ……」
僕は考えたことなかったけど、エリアボス討伐は大抵のプレイヤーの目標の一つなんだろうなぁ。第二の街が開放されてから結構時間が経ってるし、そろそろ第三の街に行きたいって人も多いだろうしね。
「何度か二人で挑戦してるんだけど、なかなか倒せないんだよね。即死攻撃は、青乳牛のお守りとかのアイテムでなんとかなるんだけど、それ以外の攻撃も強いし、防御力高いし……」
リリの説明にうんうんと頷きながら聞き入る。
エリアボスってそんなに強いんだ? てっきり即死攻撃を無効化すれば、簡単にどうにかなるものだと思ってた。即死攻撃無効化アイテム自体、手に入れるのが難しいけど。
「他のパーティーメンバーは募集してないの?」
リリとルトが普段二人でパーティーを組んでることは知ってるけど、他の友だちもいるんだし、エリアボスに挑戦する時は協力してもいいんじゃない? タマモとか強いらしいし。
「……してねぇよ」
「ルトが、一緒にバトルするならモモがいいって言うからねー」
「ばっ、おいこら、リリ! 余計なこと言うな!」
「……ふーん?」
急に慌て始めたルトの顔を覗き込もうとして、背けられた。それを追おうとしたら、さらに背けられる。それを繰り返してたら、僕とルトで鬼ごっこしてるみたいになって、笑っちゃいそう。
「――ふはっ、ルトってば、僕のこと大好きだねー?」
「ふざけんな、そういうんじゃねぇよ!」
怒鳴るように言われても、全然怖くないよ。照れた顔して、可愛いやつだよね。
「ルトがそーんなに僕がいいって言うんなら、がんばっちゃおうかなー?」
「はあ? 別に、そんなこと言ってねぇ――」
「え、じゃあ、スローライフに専念しててもいい?」
「ぐっ……」
ルトの言葉を遮って、首を傾げながら問いかけたら、なんとも言えない表情で黙り込まれちゃった。リリが爆笑してる。
「ふふっ、もう、ルトの負けでしょ。素直に頼もうよー」
「……うるせ」
プイッと顔を背けるルトを追い詰めるのはここまでにしよう。友だちをからかうにも、限度があるからね。お互いに楽しい範疇でおさめるのが、良いコミュニケーションのコツ。
「僕も第三の街に行きたいし、レベリングちゃんとしようと思ってたところなんだ。リリとルト、付き合ってくれる?」
「もちろん! エリアボス討伐までがんばろうねー」
僕を見て、リリが『モモってば、ルトに甘いんだから』なんて言いたげな表情をしてる気がする。
甘いんじゃなくて、程よい距離感は大事だよ、ってことなんだけど。僕はリリと違って、ルトの幼馴染みじゃないから。
「……モモが頼むんなら、一緒にレベリングしてやるよ」
ルトが顔を背けながら呟いた。強気な言葉だけど、ホッと安堵した感じが声に滲んでる気がする。
リリと顔を見合わせて、思わず吹き出すように笑っちゃった。ルトってば、ほんと素直じゃないね。そういうところも、ルトの良いところではあるんだけど。
「――なんだよ」
不貞腐れたような、気恥ずかしそうな、複雑な表情で睨まれて、笑いながら首を振る。これ以上からかわないから、そんなに警戒しないで。
「なんでもなーい。ルトたちとバトルするの楽しみだなーって思っただけ!」
これは本心。ヤナとか希少種会とかとバトルするのも楽しかったけど、やっぱりルトたちとのバトルが一番慣れてるし、安心するから。
それにしても、エリアボス討伐を目指すなら、錬金術士としてアイテム開発もがんばってみようかな。きっとなにか役に立つアイテムがあるはずだもん。
「え、なに?」
急にびっくりするじゃん、と思いながら見上げたら、半眼と視線がぶつかる。
「モモ、そろそろしっかりレベリングするぞ。せっかく経験値二倍キャンペーン中なんだから」
「うん?」
レベリングしてるつもりだけど?
サウス街道でバトルして種族レベルが19になったんだよ。魔術士レベルも10だし。バトルより錬金術士としてのレベルを上げようかなーって考えてるくらいだ。
「いいか? お前が足踏みしてる間に、第一陣でこのゲームに参加してる大体のプレイヤーはレベル30近くなってるんだぞ。このままじゃ、第二陣にも追い越されるぞ?」
「えっ……」
衝撃が走るような感覚。
僕、結構弱い……? みんな、そんなに強くなってるの?
「お前は初期ステータスとか、種族のわけわからんスキルとかで恵まれてる。だけど、それにあぐらをかいてちゃダメだろ」
「……うん。そうだね」
確かに天兎のステータスやスキルのすごさに甘えてたかも。最近は自分より弱いモンスターしか相手にしてこなかったから、僕は強いって勘違いしてた?
しょんぼりと項垂れてたら、パシッと音が聞こえてきた。
「痛ぇ」
「ルトってば、どうしてそう威圧的に言うの? 素直に、エリアボス討伐できないから手伝って、て言えばいいじゃない。ゲームの楽しみ方は人それぞれなんだから、モモに強くなれって強制するのはおかしいでしょ」
リリが腰に手を当て、ルトを叱ってた。ルトはちょっとバツが悪そうな表情をしてる。これ、どういうことかな?
「つまり?」
僕が首を傾げたら、リリが申し訳なさそうに微笑んだ。
「私たち、エリアボスに挑んでるんだけど、どうしても勝てないんだよね。それでモモに協力してもらえたらクリアできるんじゃないかと思って。でも、そのためにはモモにしっかりとレベリングしてもらわないといけないし」
「それで、ルトが僕に発破をかけて、バトルに連れ出そうとしてたってこと?」
ちらっと見上げたら、ルトが小さく頷いた。「悪い……」って小声で謝ってくれたし、ルトが言ったことはそんなに間違ったことでもないから別にいいよー。
「――そっかぁ。エリアボスねぇ……」
僕は考えたことなかったけど、エリアボス討伐は大抵のプレイヤーの目標の一つなんだろうなぁ。第二の街が開放されてから結構時間が経ってるし、そろそろ第三の街に行きたいって人も多いだろうしね。
「何度か二人で挑戦してるんだけど、なかなか倒せないんだよね。即死攻撃は、青乳牛のお守りとかのアイテムでなんとかなるんだけど、それ以外の攻撃も強いし、防御力高いし……」
リリの説明にうんうんと頷きながら聞き入る。
エリアボスってそんなに強いんだ? てっきり即死攻撃を無効化すれば、簡単にどうにかなるものだと思ってた。即死攻撃無効化アイテム自体、手に入れるのが難しいけど。
「他のパーティーメンバーは募集してないの?」
リリとルトが普段二人でパーティーを組んでることは知ってるけど、他の友だちもいるんだし、エリアボスに挑戦する時は協力してもいいんじゃない? タマモとか強いらしいし。
「……してねぇよ」
「ルトが、一緒にバトルするならモモがいいって言うからねー」
「ばっ、おいこら、リリ! 余計なこと言うな!」
「……ふーん?」
急に慌て始めたルトの顔を覗き込もうとして、背けられた。それを追おうとしたら、さらに背けられる。それを繰り返してたら、僕とルトで鬼ごっこしてるみたいになって、笑っちゃいそう。
「――ふはっ、ルトってば、僕のこと大好きだねー?」
「ふざけんな、そういうんじゃねぇよ!」
怒鳴るように言われても、全然怖くないよ。照れた顔して、可愛いやつだよね。
「ルトがそーんなに僕がいいって言うんなら、がんばっちゃおうかなー?」
「はあ? 別に、そんなこと言ってねぇ――」
「え、じゃあ、スローライフに専念しててもいい?」
「ぐっ……」
ルトの言葉を遮って、首を傾げながら問いかけたら、なんとも言えない表情で黙り込まれちゃった。リリが爆笑してる。
「ふふっ、もう、ルトの負けでしょ。素直に頼もうよー」
「……うるせ」
プイッと顔を背けるルトを追い詰めるのはここまでにしよう。友だちをからかうにも、限度があるからね。お互いに楽しい範疇でおさめるのが、良いコミュニケーションのコツ。
「僕も第三の街に行きたいし、レベリングちゃんとしようと思ってたところなんだ。リリとルト、付き合ってくれる?」
「もちろん! エリアボス討伐までがんばろうねー」
僕を見て、リリが『モモってば、ルトに甘いんだから』なんて言いたげな表情をしてる気がする。
甘いんじゃなくて、程よい距離感は大事だよ、ってことなんだけど。僕はリリと違って、ルトの幼馴染みじゃないから。
「……モモが頼むんなら、一緒にレベリングしてやるよ」
ルトが顔を背けながら呟いた。強気な言葉だけど、ホッと安堵した感じが声に滲んでる気がする。
リリと顔を見合わせて、思わず吹き出すように笑っちゃった。ルトってば、ほんと素直じゃないね。そういうところも、ルトの良いところではあるんだけど。
「――なんだよ」
不貞腐れたような、気恥ずかしそうな、複雑な表情で睨まれて、笑いながら首を振る。これ以上からかわないから、そんなに警戒しないで。
「なんでもなーい。ルトたちとバトルするの楽しみだなーって思っただけ!」
これは本心。ヤナとか希少種会とかとバトルするのも楽しかったけど、やっぱりルトたちとのバトルが一番慣れてるし、安心するから。
それにしても、エリアボス討伐を目指すなら、錬金術士としてアイテム開発もがんばってみようかな。きっとなにか役に立つアイテムがあるはずだもん。
1,695
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。
子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。
マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。
その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。
当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。
そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。
マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。
焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。
やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。
HOTランキング1位になることができました!
皆さま、ありがとうございます。
他社の投稿サイトにも掲載しています。
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。