もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

352.海上イベントに出発

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 海上イベントのために用意されていたのは、五隻の船だった。
 スタ島に行く時に乗った豪華客船のようなものではなく、戦艦っぽい見た目だ。実際、魔法砲撃を放つ武器を搭載しているらしい。

 ——という話を、船に乗り込んで甲板に並んでいたベンチに座ったところで、ルトから教えられた。情報収集バッチリなのは、さすがルトだね!

「この船でどこまで行くの?」
「はじまりの街近くらしいぜ」
「それなら、王都よりはじまりの街から出港した方がよくない?」
「お前……あのはじまりの街に、こんなデケェ船が着ける場所があったか?」

 なぜかルトに憐れみの目で見られた。
 はじまりの街の港ねぇ……確かに、小型船が着けるような港しかなかったかも? よく釣りに行ってたけど、小さな港と砂浜の印象しかないや。

 あれ? でも、それなら——

「大きな港がないなら、はじまりの街と王都の間で定期船が運行されたら、どうやって船を停めるの?」

 純粋に疑問です。
 僕が首を傾げながら呟くと、アイテムボックスから取り出したポテトチップスを食べていたルトが、ちょっと目を丸くして「……確かに」と呟いた。

 美味しそうなもの食べてるねー。
 眉間に僅かにシワを寄せて考え込んでいるルトの手元にある器から、コソッとポテトチップスを取る。

 パリッとした食感とちょうどいい塩加減。うまうま。
 こういう食べ物って、食べ始めたら手が止まらなくなっちゃうよね。もうちょっと食べてもいいかな。

 ルトがまだ沈思黙考しているのを見て、そっと手を伸ばす。そして、ササッと奪うのに成功。パリッとうまうまー♪

 盗み食いするのを繰り返してたら、さすがに気づかれちゃったけど。

「お前……食いたいなら普通に言えよ」
「スリルがあって楽しかった!」
「……そうかよ」

 ほら、とルトが器を差し出してきたから、今度は堂々と手を伸ばす。ちょっぴりルトが呆れた顔をしてる気がする。なんでだろー。

 ちなみにタマモは、僕が盗み食いを始める前から僕を凝視してて、ずっと「かわゆい……いたずらっ子なモモさん萌える……」とニコニコニコニコしてた。
 幸せそうな笑みだったから、僕はソッと見なかったことにしたよ。僕えらい!

「あ、そういえば、はじまりの街には大きな港もあるんですよ」

 タマモがポンッと手を叩き、思い出したように言う。

「そうなんだ?」
「おい、その情報あるなら、さっさと言えよ」

 ルトがタマモを見据えて、「考え込んでた俺が馬鹿みてぇじゃねーか」とブツブツと文句を続けた。
 タマモはルトの言葉なんて聞こえていないみたいに「モモさんの可愛らしさに気を取られていて、言うのが遅れましたねー」とあっけらかんとしてる。タマモ、強い。

 船着き場でのやり取りもそうだったけど、ルトとタマモって案外相性がよさそう。

「どこに大きな港があるんだ? 見たことねぇけど」
「西の港を北に進んだところです。長い間整備されてなくて、立ち入り禁止になってましたけど。おそらく定期船が就航する頃には整備されるんでしょう」
「へぇ……そういや北の方には行ったことなかったな」

 ポツリと呟くルトの横で、僕もうんうん、と頷く。
 僕は西の港の南側にしか行ったことなかった。そっちの方が砂浜があって、なんとなく釣りやすそうだなって思って。

「北の方はモンスターが出るんですよ」
「は? 西の港エリアって、モンスター湧かないんじゃなかったか?」
「北は例外で、今回のイベントで討伐対象になっているモンスターの影響のようですよ。冒険者ギルドから依頼を受けないと、北側には入れないんです」
「あー、そりゃ行ったことないのも当然か。俺、はじまりの街で冒険者ギルドからの依頼は全然受けてねぇや」

 タマモがくれた情報に、ルトが納得した様子で頷いた。
 冒険者ギルドからの依頼かー……僕、全然受けてないね! これまで受けたのは、第三の街で指名依頼のようなものくらいかも。

「冒険者ギルドからの依頼って受けた方がいいの?」

 ちょっと気になって聞いてみる。
 自由に気が向くままに行動するのが好きなんだけど、ちょっとは依頼に取り組んだ方がいいのかな?

 ルトは「金とか冒険者ランク気にしないなら、別にしなくていいんじゃね?」と首を傾げる。
 タマモは「依頼を受けていないと行けない場所もあるので、そのようなところが気になるなら情報を集めてから受けてみてもいいと思いますよ」とにこりと笑った。

「なるほどー……じゃあ、気が向いたら行ってみる!」

 僕、事前に情報を集めるのってあんまり得意じゃないんだよね。だから、依頼を受けるにしても、行き当たりばったりになりそうだし、それを楽しめると思う。

「モモらしいな」

 ルトがフッと笑う。それから、目を細めて「そういや、今回のレイドイベントの敵モンスの情報を話し忘れてたけど——」と話を本題に戻した。

「確か、シャチみたいなモンスターですよね」
「らしいな。この船を噛み砕けそうなくらい口がデカいんだって聞いた」

 タマモの情報にルトが追加で説明し、僕を見てニヤリと笑う。

「——モモなら丸呑みだな」
「ひぇっ!? なんでそんな怖いこと言うのー!」

 想像してブルッと体が震えちゃったよ。脅かすなんてひどい。

 ルトの脇腹あたりを狙ってポスポスとパンチして抗議してみたけど、ルトは「おー、いいマッサージだなぁ」とニヤニヤ笑うばかりだ。ちょっとムカッとしちゃうぞ。

「大丈夫です。モモさんが飲み込まれそうになったら、私がいち早く救出しますから!」
「……そういうことじゃないんだけど……でも、ありがとう」

 拳を握って気合いを入れてるタマモを見て、怒る気持ちが削がれた。
 そもそも丸呑みされそうになる前提で話さないでほしい。僕、そんな間抜けじゃないよ。

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