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10章 海は広くて冒険いっぱい
378.ぶくぶくバブル〜
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寄り道するお店もなくなり街の外れまで来ると、海草のような木と貝殻やサンゴなどがある林に着いた。
海底都市リュウグウに来て初めて見たところと似てるけど、ここは宮殿を挟んで反対側に位置してる。
「膜の向こう側は暗いねー」
海底都市を囲むシャボン玉のような膜の先は暗くて何があるか見えない。でも、たぶん海の底なんだと思う。
そう考えると、僕が今ごく普通に呼吸して歩いてるのが不思議になる。
海のハイエルフが海底都市を作るのに使った魔術って、どういうものなんだろうね?
『藤花貝は向こう側にあるわよ』
「……え? 向こうって……ほんとに、膜の向こう?」
当然と言いたげな顔で頷くメーアから、膜の方へ視線を戻す。
……そっかぁ。藤花貝って、簡単に採れるものじゃなさそうだね。
『私が見せたいものはここ』
遠い目をする僕に気づいていないのか、メーアはマイペースに手招きをしてる。
首を傾げながら近づくと、海草のような木に隠れるように、大きな巻き貝があった。人間が中に入れそうなくらい大きくて、内側は虹色の光沢がある乳白色で、外側は濃い青色だ。
「おお、綺麗! でも、なんか迫力がある大きさ……」
これ、普通の貝じゃなくない?
ちょっぴり疑問が湧いて、すぐさま鑑定してみる。
——————
【泡巻貝】
シャボリンを生み出す貝
生み出されたシャボリンに入ると、五分間海の中を浮遊できる
——————
シャボリン? それ何?
きょとんとしながら泡巻貝を見ていると、突然中から透明なシャボン玉のようなものが出てきて、ふわっと宙に浮かび飛んでいった。
「あ、すごい! 綺麗ー」
『でしょう? あれはシャボリンというものよ。ここに来る時に乗っていたシャボーンと似たようなものだけど、これは自然発生するの。遊び道具ね』
メーアがひょいっと泡巻貝の穴のところに入ると、生み出されたシャボリンに包まれてふわふわと宙を飛んでいく。
「楽しそう!」
「きゅぃ(僕も入ってみたい!)」
メーアが『おいでおいで』と手招きするので、僕もウキウキと泡巻貝の穴のところにジャンプして入った。すっぽりと貝に包まれたかと思うと、すぐにシャボリンに包まれて上昇していく。
飛翔スキルで飛んでる感覚とは違って、不安定なのが面白い。
球体の中で体重移動することで進む方向を変えられるみたいだ。最初は操作が難しかったけど、しばらくがんばったらなんとか目的の方向に進めるようになった。
スラリンたちもそれぞれシャボリンに包まれて、楽しそうに浮遊してる。
僕より高度が上がってるみたいだけど、大丈夫かな?
『街を包む膜より外に出たら、シャボリンが割れた途端海水に飲み込まれるから気をつけてね』
「え、これ、外に出ちゃうの!?」
遅すぎる注意に、僕はぎょっと目を見開いた。
すぐにスラリンたちに「膜の外に出ないようにしてね!」と叫ぶ。スラリンたちがそれぞれ『わかったー』と返事をした。
みんな、まだ膜から遠いから大丈夫そう。
ホッと息をつき、五分経ってシャボリンが割れるまでのんびりと楽しんだ。
「面白かったー。連れてきてくれてありがとう、メーア」
『楽しんでくれたならよかったわ。泡巻貝はこういう海草に隠れるようにいろんなところにあるから、見つけたら楽しんでみてね。この膜の外側に行くために使うエルフもいるわよ』
「あ、そうなんだ? 確かに、五分しか使えないけど、便利かも?」
なるほど、と頷く僕に、メーアがニコリと笑う。なんか含みがある笑みだね?
僕がきょとんとしてたら、メーアは声を潜めてある情報を教えてくれた。
『シャボリンはそこにある貝の中身と珊瑚の欠片を使って強化できるわよ。あなたなら錬金術でできるんじゃないかしら』
メーアが指した貝と珊瑚を鑑定してみる。
——————
【強靭貝】レア度☆☆☆
硬い二枚貝。中に【強真珠】が入っていることがある。
【強真珠】レア度☆☆☆☆
水属性のアイテムを強化する素材として使用できる。
【赤珊瑚】レア度☆☆☆
水属性のアイテムを加工しやすくする素材として使用できる。
——————
なかなかいいアイテムだね!
強靭貝は薄く開いた二枚貝で、中を覗き込むと乳白色の真珠のようなものが見えた。この貝、どうやって開けるの?
「ううっ!」
僕より大きいサイズの貝をがんばって開けようとしてみたけど、どれほど力を入れてもビクともしない。
「きゅぃ(僕に任せて! 中身を手に入れられたらいいんだよね?)」
「うん、そう。お願いします」
潔く諦めて、スラリンが強靭貝を取り込み分解するのを見守った。
おー、貝が溶けてるー。あ、中身だけとれた。僕の顔くらいのサイズの真珠だー。
「きゅぃ(はい、どうぞ)」
「スラリン、ありがとー」
『……予想外な入手法だわ』
メーアがポカンとした顔をした。
そっか、スライムがいなくても中身はゲットできるはずだもんね。
「普通はどうやって開けるの?」
『強靭貝は塩分濃度が濃いと口を開けるのよ。だから、濃い塩水をたくさんかけたらいいわ』
貝の砂抜きかな? 微妙に違うけど、方法としてはわからないでもない。でも、僕はスラリンに頼るのが楽だから、たぶん正攻法は使わないと思う。
スラリンが次々と強真珠を手に入れてくれるのをニコニコと見守った。
赤珊瑚の方は、採集スキルで入手できたから楽です。
入手した強真珠と赤珊瑚を錬金布に載せ、シャボリンは泡巻貝から出てきたところを「えいっ」とキャッチしてすぐさま錬金布の上に運んだら素材にできた。
「レシピ検索~……うん、【強化シャボリン】があるね」
——————
【強化シャボリン】レア度☆☆☆☆
泡のような膜でできた水中用の乗り物
中に入ると三十分間水中を自由に浮遊できる
——————
ササッと作って完成~!
やったー、と僕が喜んでたら、メーアがニコッと笑った。
『シャボリンはシャボーンと違ってモンスター避けの効果がないから、シャボリンで移動するなら海守りが必須よ』
……なんですと? 情報が遅すぎない?
海底都市リュウグウに来て初めて見たところと似てるけど、ここは宮殿を挟んで反対側に位置してる。
「膜の向こう側は暗いねー」
海底都市を囲むシャボン玉のような膜の先は暗くて何があるか見えない。でも、たぶん海の底なんだと思う。
そう考えると、僕が今ごく普通に呼吸して歩いてるのが不思議になる。
海のハイエルフが海底都市を作るのに使った魔術って、どういうものなんだろうね?
『藤花貝は向こう側にあるわよ』
「……え? 向こうって……ほんとに、膜の向こう?」
当然と言いたげな顔で頷くメーアから、膜の方へ視線を戻す。
……そっかぁ。藤花貝って、簡単に採れるものじゃなさそうだね。
『私が見せたいものはここ』
遠い目をする僕に気づいていないのか、メーアはマイペースに手招きをしてる。
首を傾げながら近づくと、海草のような木に隠れるように、大きな巻き貝があった。人間が中に入れそうなくらい大きくて、内側は虹色の光沢がある乳白色で、外側は濃い青色だ。
「おお、綺麗! でも、なんか迫力がある大きさ……」
これ、普通の貝じゃなくない?
ちょっぴり疑問が湧いて、すぐさま鑑定してみる。
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【泡巻貝】
シャボリンを生み出す貝
生み出されたシャボリンに入ると、五分間海の中を浮遊できる
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シャボリン? それ何?
きょとんとしながら泡巻貝を見ていると、突然中から透明なシャボン玉のようなものが出てきて、ふわっと宙に浮かび飛んでいった。
「あ、すごい! 綺麗ー」
『でしょう? あれはシャボリンというものよ。ここに来る時に乗っていたシャボーンと似たようなものだけど、これは自然発生するの。遊び道具ね』
メーアがひょいっと泡巻貝の穴のところに入ると、生み出されたシャボリンに包まれてふわふわと宙を飛んでいく。
「楽しそう!」
「きゅぃ(僕も入ってみたい!)」
メーアが『おいでおいで』と手招きするので、僕もウキウキと泡巻貝の穴のところにジャンプして入った。すっぽりと貝に包まれたかと思うと、すぐにシャボリンに包まれて上昇していく。
飛翔スキルで飛んでる感覚とは違って、不安定なのが面白い。
球体の中で体重移動することで進む方向を変えられるみたいだ。最初は操作が難しかったけど、しばらくがんばったらなんとか目的の方向に進めるようになった。
スラリンたちもそれぞれシャボリンに包まれて、楽しそうに浮遊してる。
僕より高度が上がってるみたいだけど、大丈夫かな?
『街を包む膜より外に出たら、シャボリンが割れた途端海水に飲み込まれるから気をつけてね』
「え、これ、外に出ちゃうの!?」
遅すぎる注意に、僕はぎょっと目を見開いた。
すぐにスラリンたちに「膜の外に出ないようにしてね!」と叫ぶ。スラリンたちがそれぞれ『わかったー』と返事をした。
みんな、まだ膜から遠いから大丈夫そう。
ホッと息をつき、五分経ってシャボリンが割れるまでのんびりと楽しんだ。
「面白かったー。連れてきてくれてありがとう、メーア」
『楽しんでくれたならよかったわ。泡巻貝はこういう海草に隠れるようにいろんなところにあるから、見つけたら楽しんでみてね。この膜の外側に行くために使うエルフもいるわよ』
「あ、そうなんだ? 確かに、五分しか使えないけど、便利かも?」
なるほど、と頷く僕に、メーアがニコリと笑う。なんか含みがある笑みだね?
僕がきょとんとしてたら、メーアは声を潜めてある情報を教えてくれた。
『シャボリンはそこにある貝の中身と珊瑚の欠片を使って強化できるわよ。あなたなら錬金術でできるんじゃないかしら』
メーアが指した貝と珊瑚を鑑定してみる。
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【強靭貝】レア度☆☆☆
硬い二枚貝。中に【強真珠】が入っていることがある。
【強真珠】レア度☆☆☆☆
水属性のアイテムを強化する素材として使用できる。
【赤珊瑚】レア度☆☆☆
水属性のアイテムを加工しやすくする素材として使用できる。
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なかなかいいアイテムだね!
強靭貝は薄く開いた二枚貝で、中を覗き込むと乳白色の真珠のようなものが見えた。この貝、どうやって開けるの?
「ううっ!」
僕より大きいサイズの貝をがんばって開けようとしてみたけど、どれほど力を入れてもビクともしない。
「きゅぃ(僕に任せて! 中身を手に入れられたらいいんだよね?)」
「うん、そう。お願いします」
潔く諦めて、スラリンが強靭貝を取り込み分解するのを見守った。
おー、貝が溶けてるー。あ、中身だけとれた。僕の顔くらいのサイズの真珠だー。
「きゅぃ(はい、どうぞ)」
「スラリン、ありがとー」
『……予想外な入手法だわ』
メーアがポカンとした顔をした。
そっか、スライムがいなくても中身はゲットできるはずだもんね。
「普通はどうやって開けるの?」
『強靭貝は塩分濃度が濃いと口を開けるのよ。だから、濃い塩水をたくさんかけたらいいわ』
貝の砂抜きかな? 微妙に違うけど、方法としてはわからないでもない。でも、僕はスラリンに頼るのが楽だから、たぶん正攻法は使わないと思う。
スラリンが次々と強真珠を手に入れてくれるのをニコニコと見守った。
赤珊瑚の方は、採集スキルで入手できたから楽です。
入手した強真珠と赤珊瑚を錬金布に載せ、シャボリンは泡巻貝から出てきたところを「えいっ」とキャッチしてすぐさま錬金布の上に運んだら素材にできた。
「レシピ検索~……うん、【強化シャボリン】があるね」
——————
【強化シャボリン】レア度☆☆☆☆
泡のような膜でできた水中用の乗り物
中に入ると三十分間水中を自由に浮遊できる
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ササッと作って完成~!
やったー、と僕が喜んでたら、メーアがニコッと笑った。
『シャボリンはシャボーンと違ってモンスター避けの効果がないから、シャボリンで移動するなら海守りが必須よ』
……なんですと? 情報が遅すぎない?
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