もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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10章 海は広くて冒険いっぱい

400.ふるふるフルーツ♪

 メーアのお願いごとを叶えてから、「タイムリミットですーっ」と名残惜しそうに去っていたタマモを見送り、僕は転移スキルでリュウグウの中心街に戻ってきた。

 海精霊シーフェアリーの里を散策してもよかったんだけど……それより、リュウグウのシークレットエリアに早く行きたくなったんだよ。

「ルンルルルーン♪」

 ハミングしながら飛んでいく。
 すでにシークレットエリアに入っているから、プレイヤーの姿がない。今のところここに入れるのは僕やルトたちだけなのかも。

「──あ、果物屋さんはっけーん!」

 リオさんにもらった偽苺フェイクベリーそっくりの果物が並べられているお店を見つけて立ち止まる。
 偽苺フェイクベリーは、やっぱりほんとに果物なのか疑う見た目だ。

 ……って、違う色形のものもあるぞ?

「おや、君、ここの住人じゃないね」

 果物屋さんの店主は海エルフの男性だった。ちょっとリオさんに似た雰囲気だ。

「うん、今日リュウグウに来たばっかりだよー。モモって名前だから覚えてね! リオさんに紹介されて来たよ」
「俺はノアだけど……リオって誰だ?」

 ノアさんが首を傾げる。
 えっと、リオさんの正式な名前は知らないけど、通称は──

「宮殿図書館の司書をしてるリオルさんのことだよ」

 なんとか思い出した名前を伝える。
 あだ名つけちゃうと、元の名前を忘れちゃうよね。
 モンちゃんはもうモンちゃんとしか覚えてないもん。いや、がんばれば思い出せる……たぶんモンハ、だったかな?

「ああ、リオルな! 通り名をあだ名に変えるヤツは初めて見た。ハハッ」

 ノアさんが楽しげに笑う。
 僕は変なことをしたつもりはないんだけど、海エルフ的には笑いのツボにささることらしい。

「そうなの? あだ名は仲良くなるのにいい方法だよー。それより、リオさんに偽苺フェイクベリーをもらって、リュウグウ特有の果物があることを知ったんだけど……ここに並んでるの、全部果物?」

 並んでいるアイテムをマジマジと眺める。
 偽苺フェイクベリーのように円錐形のものもあるけど、立方体や球体、星形……など様々な形のものが陳列されてる。彩りも豊かで目に楽しい。

 質感がゼリーっぽくプルプルしてるのは共通してる。
 果物屋さんっていうより、ゼリー屋さんと言いたくなるなぁ。

「果物っつーか……うん、それっぽいものだな。海畑うみばたけで育つんだ」
「畑で採れる作物なんだね……」

 不思議な食べ物だなぁ。
 せっかく来たし、全種手に入れて食べ比べしてみよう。

 ノアさんに「全種五個ずつください!」と頼んだら、「どんだけ食うんだ!?」と驚かれた。
 食べるのは事実だけど、大半は料理用・錬金素材用だよー。

「これで何かスイーツ作れるかな?」
「熱するのは向かないぞ? 溶けるからな」
「溶けるんだ!? これ、ほんとにゼリーじゃない?」
「海畑で採れる作物だ」

 真面目な顔で言われたけど、ちょっと信じられないよ……。
 とりあえず、買ったばかりの偽苺フェイクベリーを鍋で煮てみる。

「って、早速熱してる!?」
「溶けるだけで消えるわけじゃないんでしょ?」

 ノアさんにぎょっとされながら、熱してる鍋の中を観察。
 ──うん、溶けた。ジャムじゃなくて、サラサラのジュースっぽい。
 コップに入れて飲んでみよう。

「……炭酸が抜けた、イチゴ風味の炭酸ジュース?」

 イチゴそのままのジュースっていうより、果汁がほぼ入ってなくて風味付けされてるジュースって感じ。ちょっと物足りない。微妙に苦みも感じるし。
 熱する前なら美味しく食べられたんだけど。やっぱり炭酸の刺激って大切!

「ほらぁ、だから熱するなって……」
「チャレンジ精神は大切だよ? まぁ、今後は熱しないことにする」

 ノアさんに呆れ気味に言われて、「てへぺろ」と笑いながら返す。
 熱さずに何を作れるかなー。

 とりあえず、たくさんの偽果物フェイクフルーツ──果物っぽいものの総称らしい──を小さくカットして、カップに入れる。
 これを太めのストローで吸えば……

「新感覚スイーツ! 炭酸シュワシュワで美味し~。次々にいろんな味が口の中に入ってきて楽しい!」
「……そういう食べ方は初めて見たな」

 興味をそそられた様子のノアさんにもあげたら、すごく気に入ってもらえたようだ。
 簡単に作れるものだから、今後お店で売り出すらしい。名前はフルフルジュース。
 僕も売ろうかな~。

「アイディア料として、偽果物フェイクフルーツたくさんやるよ!」

 満面の笑みを浮かべたノアさんに、偽果物フェイクフルーツを各種三十個ずつもらった。たくさんだー。

 思いがけない報酬にルンルンな気分で散策を再開する。
 シークレットエリアは基本的に異世界の住人NPC向けの場所なだけあって、お店に目新しいものがたくさん並んでる。

「……お金、両替してくればよかったー」

 海守りを売って余裕があった懐も、買い物を続ければどんどん寂しくなっちゃう。
 今度ここに来るときは、もっとたくさんお金を持ってこよう。

 ちょっとしょんぼりしながら歩いてたら、シークレットエリアの第二目的地──【水術鍛錬場】に着いた。
 リオさんに水術士・スイナさんの紹介状をもらってたから来たんだよ。

 水術は海エルフのオーシャンさんが使っててカッコよかったから、早く習得して使ってみたい!

「道場って感じ?」

 水術鍛錬場は和風な門構えの場所だった。
 門を入って石畳を歩くと建物があり、そこは板張りの広い空間になってる。正面の壁に『水術一生!』と達筆の文字で書かれた掛け軸があった。

「……誰もいない」

 スイナさん、どこー?
 キョロキョロと周囲を見渡す。ひと気が全然ないです。

 どうしよう、としょんぼりしてたら、不意に肩を叩かれた。
 思わず「ふぎゃっ」と悲鳴を上げて飛び跳ねちゃう。

 気配なかったよ!?
 慌てて振り返ると、淡い水色の道着を着た女性が、空間から滲み出るようにして立っていた。
 というか、半身が透けて見えないよ……? これって、もしかして……幽霊?
 
「──ウチに何か用かな?」
「シャ、シャベッター!」

 幽霊ってこんなにはっきりと喋るものなの!?
 僕はホラー苦手です! 幽霊さんはどうぞお帰りください! 南無阿弥陀仏……!

 咄嗟に手を合わせてお祈りした僕の行動は間違ってないと思うんだ。
 なぜか幽霊さんに笑われちゃったけど!

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