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誰よ、その馬鹿は
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廊下を歩いていると、向こうからさっき見たドリル令嬢の取り巻き令嬢3人が歩いてきた。3人も私に気づいたらしく、足を止めた。私は特に足を止めようと思わなかったので、令嬢3人を素通りしようとした。
「あれが聖女よね?」
「そうみたいよ。噂通りのみすぼらしい娘ね」
「嫌だわ。あんな娘が王宮内をうろついているなんて」
私はピタッと足を止めた。
おいおい、聞こえてるぞ。そのひそひそ話。
いや、わざと聞かせているの?確実にわざとだね。
ここまで、一言一句全部聞こえてるんだから。
令嬢たちは構わず続ける。
「なんでも聖女であるにも関わらず、瘴気を一切浄化しないのよね。その上、周囲に対して粗暴な振る舞いを繰り返すのよね。信じられないわ」
まぁ、これは合ってる。
「しかも聖女であることを笠に着て、毎日贅沢三昧をしているんでしょう?」
「そう聞いているわ。豪華なドレスや宝石を何個も買い漁り、朝昼晩の食事もまるで豚のように貪っているとか」
「税金の無駄だわ。ドレスや宝石は貴族だけが身につけていいモノなのに」
その噂は嘘だ。ドレスだって宝石だってこの世界では触ったことがない。
食事が豪華だっていうのは本当だけど、私たちはそういうのはもう食べ飽きているから、ほとんどを食べ残している。
「こういう噂も聞いたわ。あの聖女、異世界では裸で生活しているって」
「私は拾い食いを平気でしているって聞いたわ」
「まぁ、なんて卑しいの」
なんだ、その噂。ちょっとめちゃくちゃなんじゃないの?
私はくるりと後ろを振り返った。
「あら?聞こえちゃったかしら」
令嬢たちはくすくすと馬鹿にしたかのような笑みを浮かべる。
「うん、ばっちりね」
「まぁまぁ、地獄耳だこと。貴族の世間話に聞き耳を立てるなんてやっぱり聖女とはいえ、異世界人。なんて卑しいのかしら」
「嫌だわ。ほんと、卑しいのは庶民だけで充分よ」
私は目を何度も瞬かせた。
おお、女子にこんな風に面と向かって悪口を言われるなんて久方ぶりだ。
かなり遠回しな嫌味や皮肉を言われることは時折あるが、こんな直接的な悪口はしばらくご無沙汰しだった。私たちを知っている女子って大概怖がって、近寄ったり目も合わせようとしないから。
だから正直、腹立つよりも感心してしまう。
なんて命知らずなんだろうって。
「もう、行きましょう」
「そうね。あまり見てしまうと目が腐ってしまうわ」
思いっきり嫌な捨てセリフを吐いた令嬢たちは立ち去って行った。
マジで久方ぶりだ。年齢が近そうな女子にあんな直接的な悪口を言われたの。
そして、なんて運が良い令嬢たちなんだろう。
もし、ここにいるのが私じゃなくて夏芽だったら、笑いながら立ち去るなんて絶対にできなかったんだから。胸倉掴むか、めちゃくちゃ痛いビンタを喰らわせたと思うよ。最悪の場合、ドレス破って、裸にして外に放り出す可能性も大だった。
私だって例外じゃないよ。機嫌がめちゃくちゃ悪い時にあんな悪口を言われたら、正直夏芽と似たような行動を取っちゃってかも。
でも、今の私はコロネ令嬢の「おーほっほっほっほ」の面白い動画を撮れたから機嫌が良かったりしている。それと、久方ぶりに女子からの攻撃的な嫌味に物珍しさを感じていたことも相まって、思いのほか、むかっ腹はそれほど立たなかった。
まぁ、二度目はないと思うけどね。また、あんな攻撃的な嫌味を言われたら私にだって考えがある。
あれ?そういえば聖女の存在って秘匿されているんだよね。
噂がこうやって普通に独り歩きしている状態ってよくないんじゃない?
ていうか、よくよく考えると聖女召喚って国にとって最重要機密になってるんだよね。そんな国にとって重大な機密だったら、例え関係者だろうが身内だろうが軽々しく教えちゃいけないような気がするんだけど。あの3人ってどう考えても直接私らを召喚の儀で見たって言うんじゃなくて、噂で知ったって感じだった。
たぶん、どっかの馬鹿が秘匿されている聖女についてでたらめな噂を広めてるんだな。
誰よ、その馬鹿は。
「ま、いっか。直接害が及ぶことがなかったら、どんな噂を広められても別にいいし」
現実世界でも「性悪双子」って勝手な二つ名が独り歩きしてるしね。
悪い噂を気にするなんて、今更って感じだ。また、あんな風な攻撃的な嫌味を言われたら返り討ちにすればいいだけのこと。
私はそう完結させ、庭園へ急いだ。
◇◇◇
私は上機嫌で庭園を回っていた。やっぱりバルコニーで眺めるのと間近で直接見るのとは違う。どこもかしこも写真映えのする景色ばかりだ。庭園に植えられている花々の正体のほとんどがバラ(バラじゃないかもしれないけど、バラということにしておく)。
鮮やかな色合いのバラが前後左右、斜めと埋め尽くされている。あまり、花の写真は撮らない私でもこの風景には惚れ惚れする。バラの甘い香りも堪能でき、ますます気分が上々する。なんて、メルヘンチックな風景。童話のお姫様がまさに似合う。
私は何枚もシャッターボタンを押し続けた。時には花びら部分を切り取った部分アップを撮ったり、密度を出せるように低めのアングルから撮ったり、奥に咲く花を入れることで奥行きを感じさせ密集して咲き乱れているように撮ったり、背景を花いっぱいにするためにスマホを高く掲げたりと自分なりの工夫でシャッターボタンを押す。
あ~あ、加工アプリ使えたらもっと色とか明るさとかぼかしとか色々できるのに。またしてもSNSにアップしたい欲求が沸き上がってきた。
私は写真を撮りながら、ぷくっと頬っぺたを膨らませた。
神官たち、マジで帰還についてどうにかしてくれないと私の堪忍袋がどうにかなるかもしれないよ。私がブチ切れると、ある意味夏芽よりも手が付けられないらしいから。
おっとと、いかんいかん。せっかく、メルヘンな場所に立っているのに邪悪な思考に落ちかけていた。今は、今あるスマホの機能でできるだけいい写真を撮ることに集中しよう。
「ちょっと、よろしいかしら」
なんか、黒板を爪でひっかいたような不快な音が聞こえたような。
気にしない気にしない。きっと気のせいだ。
次は自撮りでもしようかな。
「ちょっと、聞いているの?」
この庭園に制服ってちょっと場違い気味になっちゃうかな。でも、そこは私の撮影のテクニックでなんとかカバーしよっと。
「こっちを向きなさい!そこの異世界人!」
「………………何、人がせっかく気のせいにしてあげているのに」
不快な女の声にうんざりする。せっかく、人がメルヘンな風景に浮足立っていたのに。
温厚な私でもこれはさすがにイラっとする。
「あれが聖女よね?」
「そうみたいよ。噂通りのみすぼらしい娘ね」
「嫌だわ。あんな娘が王宮内をうろついているなんて」
私はピタッと足を止めた。
おいおい、聞こえてるぞ。そのひそひそ話。
いや、わざと聞かせているの?確実にわざとだね。
ここまで、一言一句全部聞こえてるんだから。
令嬢たちは構わず続ける。
「なんでも聖女であるにも関わらず、瘴気を一切浄化しないのよね。その上、周囲に対して粗暴な振る舞いを繰り返すのよね。信じられないわ」
まぁ、これは合ってる。
「しかも聖女であることを笠に着て、毎日贅沢三昧をしているんでしょう?」
「そう聞いているわ。豪華なドレスや宝石を何個も買い漁り、朝昼晩の食事もまるで豚のように貪っているとか」
「税金の無駄だわ。ドレスや宝石は貴族だけが身につけていいモノなのに」
その噂は嘘だ。ドレスだって宝石だってこの世界では触ったことがない。
食事が豪華だっていうのは本当だけど、私たちはそういうのはもう食べ飽きているから、ほとんどを食べ残している。
「こういう噂も聞いたわ。あの聖女、異世界では裸で生活しているって」
「私は拾い食いを平気でしているって聞いたわ」
「まぁ、なんて卑しいの」
なんだ、その噂。ちょっとめちゃくちゃなんじゃないの?
私はくるりと後ろを振り返った。
「あら?聞こえちゃったかしら」
令嬢たちはくすくすと馬鹿にしたかのような笑みを浮かべる。
「うん、ばっちりね」
「まぁまぁ、地獄耳だこと。貴族の世間話に聞き耳を立てるなんてやっぱり聖女とはいえ、異世界人。なんて卑しいのかしら」
「嫌だわ。ほんと、卑しいのは庶民だけで充分よ」
私は目を何度も瞬かせた。
おお、女子にこんな風に面と向かって悪口を言われるなんて久方ぶりだ。
かなり遠回しな嫌味や皮肉を言われることは時折あるが、こんな直接的な悪口はしばらくご無沙汰しだった。私たちを知っている女子って大概怖がって、近寄ったり目も合わせようとしないから。
だから正直、腹立つよりも感心してしまう。
なんて命知らずなんだろうって。
「もう、行きましょう」
「そうね。あまり見てしまうと目が腐ってしまうわ」
思いっきり嫌な捨てセリフを吐いた令嬢たちは立ち去って行った。
マジで久方ぶりだ。年齢が近そうな女子にあんな直接的な悪口を言われたの。
そして、なんて運が良い令嬢たちなんだろう。
もし、ここにいるのが私じゃなくて夏芽だったら、笑いながら立ち去るなんて絶対にできなかったんだから。胸倉掴むか、めちゃくちゃ痛いビンタを喰らわせたと思うよ。最悪の場合、ドレス破って、裸にして外に放り出す可能性も大だった。
私だって例外じゃないよ。機嫌がめちゃくちゃ悪い時にあんな悪口を言われたら、正直夏芽と似たような行動を取っちゃってかも。
でも、今の私はコロネ令嬢の「おーほっほっほっほ」の面白い動画を撮れたから機嫌が良かったりしている。それと、久方ぶりに女子からの攻撃的な嫌味に物珍しさを感じていたことも相まって、思いのほか、むかっ腹はそれほど立たなかった。
まぁ、二度目はないと思うけどね。また、あんな攻撃的な嫌味を言われたら私にだって考えがある。
あれ?そういえば聖女の存在って秘匿されているんだよね。
噂がこうやって普通に独り歩きしている状態ってよくないんじゃない?
ていうか、よくよく考えると聖女召喚って国にとって最重要機密になってるんだよね。そんな国にとって重大な機密だったら、例え関係者だろうが身内だろうが軽々しく教えちゃいけないような気がするんだけど。あの3人ってどう考えても直接私らを召喚の儀で見たって言うんじゃなくて、噂で知ったって感じだった。
たぶん、どっかの馬鹿が秘匿されている聖女についてでたらめな噂を広めてるんだな。
誰よ、その馬鹿は。
「ま、いっか。直接害が及ぶことがなかったら、どんな噂を広められても別にいいし」
現実世界でも「性悪双子」って勝手な二つ名が独り歩きしてるしね。
悪い噂を気にするなんて、今更って感じだ。また、あんな風な攻撃的な嫌味を言われたら返り討ちにすればいいだけのこと。
私はそう完結させ、庭園へ急いだ。
◇◇◇
私は上機嫌で庭園を回っていた。やっぱりバルコニーで眺めるのと間近で直接見るのとは違う。どこもかしこも写真映えのする景色ばかりだ。庭園に植えられている花々の正体のほとんどがバラ(バラじゃないかもしれないけど、バラということにしておく)。
鮮やかな色合いのバラが前後左右、斜めと埋め尽くされている。あまり、花の写真は撮らない私でもこの風景には惚れ惚れする。バラの甘い香りも堪能でき、ますます気分が上々する。なんて、メルヘンチックな風景。童話のお姫様がまさに似合う。
私は何枚もシャッターボタンを押し続けた。時には花びら部分を切り取った部分アップを撮ったり、密度を出せるように低めのアングルから撮ったり、奥に咲く花を入れることで奥行きを感じさせ密集して咲き乱れているように撮ったり、背景を花いっぱいにするためにスマホを高く掲げたりと自分なりの工夫でシャッターボタンを押す。
あ~あ、加工アプリ使えたらもっと色とか明るさとかぼかしとか色々できるのに。またしてもSNSにアップしたい欲求が沸き上がってきた。
私は写真を撮りながら、ぷくっと頬っぺたを膨らませた。
神官たち、マジで帰還についてどうにかしてくれないと私の堪忍袋がどうにかなるかもしれないよ。私がブチ切れると、ある意味夏芽よりも手が付けられないらしいから。
おっとと、いかんいかん。せっかく、メルヘンな場所に立っているのに邪悪な思考に落ちかけていた。今は、今あるスマホの機能でできるだけいい写真を撮ることに集中しよう。
「ちょっと、よろしいかしら」
なんか、黒板を爪でひっかいたような不快な音が聞こえたような。
気にしない気にしない。きっと気のせいだ。
次は自撮りでもしようかな。
「ちょっと、聞いているの?」
この庭園に制服ってちょっと場違い気味になっちゃうかな。でも、そこは私の撮影のテクニックでなんとかカバーしよっと。
「こっちを向きなさい!そこの異世界人!」
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温厚な私でもこれはさすがにイラっとする。
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