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バチン!!
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声がした方向にジトっとした目を向ける。
そこにいたのはバルコニーで見た、さっき廊下ですれ違った令嬢達とは違う取り巻きたち数人がいた。この庭園にふさわしい、違和感のないドレスや宝石を身に纏った令嬢達は私を観察するようにしげしげと見つめてくる。私を呼びかけた硬い声といい、この視線といい、この令嬢達も私のことをよく思っていないみたいだね。もし、さっきの令嬢達のように私の半分嘘の噂を鵜呑みにしてるとすれば、尚更だ。
令嬢達は一歩私に近づいてきた。
「何か?」
「あなたがさっき私達をバルコニーで見下ろしていた聖女様かしら?」
「そうだけど」
様付けされているけど、声音でめちゃくちゃ馬鹿にされているんだということがわかる。
ほんと、あんたたちここに夏芽がいなくてマジでラッキーだって思いなよ。
夏芽ってそういうのにも敏感だからさ。
「まぁ、やっぱりそうなのね。なら、ちょうど良かったわ。聞きたいことがあったのよ。ねぇ、聖女様って瘴気の浄化という役目を放棄して、たくさんのお金で街遊びを繰り返しているって本当かしら?」
「………まぁ、浄化はあのモンスターの一匹以降していない――」
「やっぱり、そうだったのね!貴族でもないのに、なんて身の程知らずなの!」
「そうよそうよ!聖女と言えど、得体のしれない異世界人だというのに!」
令嬢達は私の話を遮り、大げさに騒ぎ出した。
さっきの令嬢達との会話を聞いていて思っていたけど、どうやら令嬢たちは私が瘴気の浄化という役目を全うしないのが気に入らないのではなく、貴族でもないのに贅沢をしているのが気に入らないみたいだ(贅沢なんてしていないけど)。しかも、異世界に対しての偏見もあるみたい。
ていうか、たくさんのお金なんて持ってないし。
この世界でお金に触れた機会なんて一度だけ。チンピラからお金を拝借した、あの時だけ。
「あの方が言うには、大司教様や王太子殿下に口に出すにもおぞましい無礼を働いたとか」
「まぁ、それは私、聞いていなかった話だわ。聖女というのは無礼を息をするかのように働く生きものなのね」
「そのとおりよ。浄化はしない、お金をただ使いに使いまくる、王族に無礼を働く聖女なんて国にとって害にしかならないわ」
「聖女と言えど、十分に不敬罪に当たるわ。何らかの罰を与えるべきよ。あの方もそう言ってたわ。私、さっそくお父様に進言するわ」
あの方?もしかして、あらぬ噂を振りまいている馬鹿のこと?
「ちょっと、あなた。何かしらの弁明はないの?」
キッと令嬢の一人が私をビシッと指差した。どうやらこの令嬢達はさっきの令嬢達とは違って、嫌いな相手は直接的に絡むタイプらしい。
「弁明?………いや、そもそもその噂の全部を把握なんてしてないから、弁明も何もないんだけど。まぁ、一つだけ弁明するとしたら、その無礼って私じゃなくて私の妹のほうなんだよね。だから、その無礼について私に文句言っても困るんだけど」
「同じ顔なんだからどっちだって同じじゃない。妹の罪は姉のあなたの罪でもあるわ」
「………………」
今の言い方はちょっとカチンときた。
いつのまにか、何人かがひそひそと私を見ながら話していた。
そのひそひそと話す声が私の耳にも入ってくる。
「私、庭園で皆さんと合流する前に妹のほうの聖女を見かけたわ。東館の廊下のほうを歩いていたわ」
「私は南館よ。気味が悪かったわ」
ふぅん。やっぱり、王宮を徘徊していたんだ。
「そういえば私も見たわね。たしかマシじゃないほうの聖女なのよね」
一人の令嬢がふふっ、と嘲笑の笑みを浮かべた。
この笑みは貴族令嬢独特の嫌な笑い方なんだとすぐにわかった。
「さっきの言葉を訂正してあげるわ。同じじゃないわね。見た限りだと、あなたとは会話がこの通り成立しているもの」
「………………どういう意味?」
「あの方の話によると妹のほうは話が通じない野蛮な猿だって聞いていたのよ。たしかに、あなたとあなたの妹は違ったわね。あなたの妹のほうがよっぽど猿っぽかったわ」
「………………」
私が黙っているのをいいことに他の令嬢達も便乗するかのようにクスクスと笑い始めた。
「だめよ、そんな言い方しては。一応「聖女様」らしいんだから」
「そういうあなただって、さっき見た妹の聖女のことを「猿並みの脳みそしか持ってなさそうな女」って言っていたじゃない」
「あら、聞こえていたのね」
「………………」
「ねぇ、姉だったら妹に伝えてくれないかしら?」
「……………何?」
「あまり、王宮内を歩き回るのはやめてほしいと。王宮が動物くさくなるのは我慢できないから、と」
よっぽど面白かったのか令嬢たちは一斉に「うふふふ」と笑い合った。
「………………」
私は全くもって面白くない。
面白くないにも程がある。
バチン!!
令嬢たちの笑い声がピタッと止まった。
妹のことを動物くさいと言っていた一人の令嬢をビンタしたからだ。
令嬢はビンタした反動で思いっきり倒れた。
「な………な………な」
殴られると思っていなかった令嬢は赤くなった頬を押さえながら呆然とした顔で私を見上げる。
さすがは貴族の令嬢様だ。
その怖いもの知らずの心意気に私なりの敬意を払ってあげよう。
そこにいたのはバルコニーで見た、さっき廊下ですれ違った令嬢達とは違う取り巻きたち数人がいた。この庭園にふさわしい、違和感のないドレスや宝石を身に纏った令嬢達は私を観察するようにしげしげと見つめてくる。私を呼びかけた硬い声といい、この視線といい、この令嬢達も私のことをよく思っていないみたいだね。もし、さっきの令嬢達のように私の半分嘘の噂を鵜呑みにしてるとすれば、尚更だ。
令嬢達は一歩私に近づいてきた。
「何か?」
「あなたがさっき私達をバルコニーで見下ろしていた聖女様かしら?」
「そうだけど」
様付けされているけど、声音でめちゃくちゃ馬鹿にされているんだということがわかる。
ほんと、あんたたちここに夏芽がいなくてマジでラッキーだって思いなよ。
夏芽ってそういうのにも敏感だからさ。
「まぁ、やっぱりそうなのね。なら、ちょうど良かったわ。聞きたいことがあったのよ。ねぇ、聖女様って瘴気の浄化という役目を放棄して、たくさんのお金で街遊びを繰り返しているって本当かしら?」
「………まぁ、浄化はあのモンスターの一匹以降していない――」
「やっぱり、そうだったのね!貴族でもないのに、なんて身の程知らずなの!」
「そうよそうよ!聖女と言えど、得体のしれない異世界人だというのに!」
令嬢達は私の話を遮り、大げさに騒ぎ出した。
さっきの令嬢達との会話を聞いていて思っていたけど、どうやら令嬢たちは私が瘴気の浄化という役目を全うしないのが気に入らないのではなく、貴族でもないのに贅沢をしているのが気に入らないみたいだ(贅沢なんてしていないけど)。しかも、異世界に対しての偏見もあるみたい。
ていうか、たくさんのお金なんて持ってないし。
この世界でお金に触れた機会なんて一度だけ。チンピラからお金を拝借した、あの時だけ。
「あの方が言うには、大司教様や王太子殿下に口に出すにもおぞましい無礼を働いたとか」
「まぁ、それは私、聞いていなかった話だわ。聖女というのは無礼を息をするかのように働く生きものなのね」
「そのとおりよ。浄化はしない、お金をただ使いに使いまくる、王族に無礼を働く聖女なんて国にとって害にしかならないわ」
「聖女と言えど、十分に不敬罪に当たるわ。何らかの罰を与えるべきよ。あの方もそう言ってたわ。私、さっそくお父様に進言するわ」
あの方?もしかして、あらぬ噂を振りまいている馬鹿のこと?
「ちょっと、あなた。何かしらの弁明はないの?」
キッと令嬢の一人が私をビシッと指差した。どうやらこの令嬢達はさっきの令嬢達とは違って、嫌いな相手は直接的に絡むタイプらしい。
「弁明?………いや、そもそもその噂の全部を把握なんてしてないから、弁明も何もないんだけど。まぁ、一つだけ弁明するとしたら、その無礼って私じゃなくて私の妹のほうなんだよね。だから、その無礼について私に文句言っても困るんだけど」
「同じ顔なんだからどっちだって同じじゃない。妹の罪は姉のあなたの罪でもあるわ」
「………………」
今の言い方はちょっとカチンときた。
いつのまにか、何人かがひそひそと私を見ながら話していた。
そのひそひそと話す声が私の耳にも入ってくる。
「私、庭園で皆さんと合流する前に妹のほうの聖女を見かけたわ。東館の廊下のほうを歩いていたわ」
「私は南館よ。気味が悪かったわ」
ふぅん。やっぱり、王宮を徘徊していたんだ。
「そういえば私も見たわね。たしかマシじゃないほうの聖女なのよね」
一人の令嬢がふふっ、と嘲笑の笑みを浮かべた。
この笑みは貴族令嬢独特の嫌な笑い方なんだとすぐにわかった。
「さっきの言葉を訂正してあげるわ。同じじゃないわね。見た限りだと、あなたとは会話がこの通り成立しているもの」
「………………どういう意味?」
「あの方の話によると妹のほうは話が通じない野蛮な猿だって聞いていたのよ。たしかに、あなたとあなたの妹は違ったわね。あなたの妹のほうがよっぽど猿っぽかったわ」
「………………」
私が黙っているのをいいことに他の令嬢達も便乗するかのようにクスクスと笑い始めた。
「だめよ、そんな言い方しては。一応「聖女様」らしいんだから」
「そういうあなただって、さっき見た妹の聖女のことを「猿並みの脳みそしか持ってなさそうな女」って言っていたじゃない」
「あら、聞こえていたのね」
「………………」
「ねぇ、姉だったら妹に伝えてくれないかしら?」
「……………何?」
「あまり、王宮内を歩き回るのはやめてほしいと。王宮が動物くさくなるのは我慢できないから、と」
よっぽど面白かったのか令嬢たちは一斉に「うふふふ」と笑い合った。
「………………」
私は全くもって面白くない。
面白くないにも程がある。
バチン!!
令嬢たちの笑い声がピタッと止まった。
妹のことを動物くさいと言っていた一人の令嬢をビンタしたからだ。
令嬢はビンタした反動で思いっきり倒れた。
「な………な………な」
殴られると思っていなかった令嬢は赤くなった頬を押さえながら呆然とした顔で私を見上げる。
さすがは貴族の令嬢様だ。
その怖いもの知らずの心意気に私なりの敬意を払ってあげよう。
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