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「つまんない」
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私と夏芽は神殿内にある食堂にいる。リオン君が言うには、前回のマヨネーズはここの厨房で作ったらしい。食堂と厨房は仕切りのない、対面式になっているためリオン君がせかせかとマヨネーズを作っている姿が見える。
遠めだが見た限り、リオン君の手つきはテキパキとした見事なものだった。マヨネーズを一口だけ味見しただけだったけど、めちゃくちゃ美味しかったことを覚えている。夏芽がやみつきになりかけているのもわかるほど。
きっとリオン君は料理も得意なんだろうな。
料理や裁縫も得意でしかも顔が良いなんて、絶対十年後はモテているだろうな。
いや、今でもモテてるかも。こういうタイプはきっと大人なお姉さんに可愛がられてるだろうから。
でも、そんな大人なお姉さんはあんまりこの王宮では見かけてないからな。
実際のところ、どうなんだろう。
色気のあるお姉さんは王宮内よりも外にいそうだけど………。
そんなどうでもいいことを考えているうちに、マヨネーズが出来上がったみたい。
出来上がったマヨネーズを木製の入れ物にせっせと移しているのが見える。
移し終わったのか、リオン君が入れ物を持ってこっちに来た。
「できました」
「おお、早いね」
「はい、もうマヨネーズのレシピは覚えましたので」
そう言ってリオン君はテーブルの上にマヨネーズが入った入れ物を置いた。
あれ、よくよく見るとこの入れ物、前の入れ物よりも一回り大きい。
「ねぇ、この入れ物………」
「あ、はい。マヨネーズができるだけ多く入るように入れ物を変えました」
「小さな気遣い身に染みるよ。ね、夏芽」
はは、喜んでる喜んでる。目をキラキラキラキラさせてるよ。そんなに嬉しいなら笑えばいいのに、という水を差すようなツッコミを入れるのは野暮というものか。
夏芽はまるで子供のように瞳をキラキラとさせたまま、マヨネーズを掬ったスプーンを大げさなほど頬張った。
「!!」
「美味しい?」
「………」
返事なんてわざわざ必要ないって顔だな。幸福感と満足感の文字が顔中に表れてるよ。
一昨日の時の、初めてリオン君の手作りマヨネーズを口に入れたとき以上の喜びようだ。
さては前のより美味しいんだな。そんな顔だ。
「昨日貰ったサンドイッチってもしかしてリオン君の手作り?」
「は、はい。お弁当は毎日僕が作っています。昨日のサンドイッチも。お口に合いませんでしたか?」
「いやいや、美味しかったよ。料理上手な男子って私、嫌いじゃないんだよね」
「あ、ありがとうございます」
軽く褒めてあげるとリオン君の頬がうっすらと赤く染まった。
改めて思うけど、やっぱり美少年だな、この子。
「ねぇ、リオン君ってモテるでしょ?」
「え?」
「料理上手で優しくて小さいな気遣いが出来てその上、顔も良いんだから」
まぁ、よっぽどのコミュ障じゃなかったら大概男って顔が良けりゃモテるんだけど。
「そ、そんなことないです。ぼ、僕なんか」
リオン君の狼狽した姿はまさに想像通りだった。
あたふたしながら大げさなくらいに首を振り、さきほどよりも顔を真っ赤にしている。
この千人に一人と言われても不思議じゃない美少年顔も今日で見納めか。
ちょっと惜しいかも。見納めだから、一枚撮っておこうかな。
私はスマホを取り出し、カメラモードにしてリオン君に向けた。
「あ………あのナツメ様、ずっと気になっていたのですが、それは一体」
カメラに映ったリオン君は照れ顏のまま、ちらちらとこっちの方に様子を窺ってくる。
それとはたぶんこのスマホだ。そういえば、リオン君にスマホの説明をしたことがなかったな。
「ああ、これ?う~ん、説明が難しいね。強いて言うなら私を楽しませてくれるモノかな」
「は、はあ」
かいつまみ過ぎているけど、間違ってはいないな。
私はそのまま、シャッターボタンを押そうと指を置いた。
これが最後か。これがリオン君最後の写真か。
伏し目がちな瞳、赤く染まった頬、キュッと軽く引き結んだ唇。
………………前にも見たことがある照れ顏。
「つまんない」
「え?」
「可愛いけど、つまんないわ」
私はスマホのカメラはあくまで映える写真やおもしろ動画を撮るものだ。キッズモデル並みの美少年だろうが、見慣れてしまった笑顔や照れ顔を何枚も撮るものじゃない。そんなもの一枚か二枚だけで十分。ブサイクだったらコロコロ変わる表情は面白いと思うし何枚撮っても飽きないと思うけど、美形は数枚撮ったら飽きちゃうな。
せっかく最後なんだ。笑顔や照れ顔じゃなく、もっとそそられる表情を撮りたい。
そんな考えを巡らせ、一旦スマホを向けるのをやめようとした時だった。
「美味い」
ずっともごもごとしていた夏芽がしゃべった。
「美味すぎる」
「あ、ありがとうございます」
私はいまだにスマホをリオン君に向けたままだった。
う~ん、可愛い照れ顔だけどやっぱりつまんないな。
ここから、変化しないものか。変化するかしないのかの瞬間ギリギリな表情が撮りたいな。
私は視線だけ夏芽のほうに向けた。
………夏芽、『あれ』言うつもりでしょう。ちょっと腕痺れてきたからさっさと言って。
夏芽はじっとマヨネーズを見つめた後、立ち上がった。
そして、マヨネーズから頬を赤めらせているリオン君に視線を移した。
「美味すぎるから、お前の家に行く」
「え」
「連れていけ」
「はい?」
お、変化した。シャッターチャンス。私はパシャ、とシャッターボタンを押した。
遠めだが見た限り、リオン君の手つきはテキパキとした見事なものだった。マヨネーズを一口だけ味見しただけだったけど、めちゃくちゃ美味しかったことを覚えている。夏芽がやみつきになりかけているのもわかるほど。
きっとリオン君は料理も得意なんだろうな。
料理や裁縫も得意でしかも顔が良いなんて、絶対十年後はモテているだろうな。
いや、今でもモテてるかも。こういうタイプはきっと大人なお姉さんに可愛がられてるだろうから。
でも、そんな大人なお姉さんはあんまりこの王宮では見かけてないからな。
実際のところ、どうなんだろう。
色気のあるお姉さんは王宮内よりも外にいそうだけど………。
そんなどうでもいいことを考えているうちに、マヨネーズが出来上がったみたい。
出来上がったマヨネーズを木製の入れ物にせっせと移しているのが見える。
移し終わったのか、リオン君が入れ物を持ってこっちに来た。
「できました」
「おお、早いね」
「はい、もうマヨネーズのレシピは覚えましたので」
そう言ってリオン君はテーブルの上にマヨネーズが入った入れ物を置いた。
あれ、よくよく見るとこの入れ物、前の入れ物よりも一回り大きい。
「ねぇ、この入れ物………」
「あ、はい。マヨネーズができるだけ多く入るように入れ物を変えました」
「小さな気遣い身に染みるよ。ね、夏芽」
はは、喜んでる喜んでる。目をキラキラキラキラさせてるよ。そんなに嬉しいなら笑えばいいのに、という水を差すようなツッコミを入れるのは野暮というものか。
夏芽はまるで子供のように瞳をキラキラとさせたまま、マヨネーズを掬ったスプーンを大げさなほど頬張った。
「!!」
「美味しい?」
「………」
返事なんてわざわざ必要ないって顔だな。幸福感と満足感の文字が顔中に表れてるよ。
一昨日の時の、初めてリオン君の手作りマヨネーズを口に入れたとき以上の喜びようだ。
さては前のより美味しいんだな。そんな顔だ。
「昨日貰ったサンドイッチってもしかしてリオン君の手作り?」
「は、はい。お弁当は毎日僕が作っています。昨日のサンドイッチも。お口に合いませんでしたか?」
「いやいや、美味しかったよ。料理上手な男子って私、嫌いじゃないんだよね」
「あ、ありがとうございます」
軽く褒めてあげるとリオン君の頬がうっすらと赤く染まった。
改めて思うけど、やっぱり美少年だな、この子。
「ねぇ、リオン君ってモテるでしょ?」
「え?」
「料理上手で優しくて小さいな気遣いが出来てその上、顔も良いんだから」
まぁ、よっぽどのコミュ障じゃなかったら大概男って顔が良けりゃモテるんだけど。
「そ、そんなことないです。ぼ、僕なんか」
リオン君の狼狽した姿はまさに想像通りだった。
あたふたしながら大げさなくらいに首を振り、さきほどよりも顔を真っ赤にしている。
この千人に一人と言われても不思議じゃない美少年顔も今日で見納めか。
ちょっと惜しいかも。見納めだから、一枚撮っておこうかな。
私はスマホを取り出し、カメラモードにしてリオン君に向けた。
「あ………あのナツメ様、ずっと気になっていたのですが、それは一体」
カメラに映ったリオン君は照れ顏のまま、ちらちらとこっちの方に様子を窺ってくる。
それとはたぶんこのスマホだ。そういえば、リオン君にスマホの説明をしたことがなかったな。
「ああ、これ?う~ん、説明が難しいね。強いて言うなら私を楽しませてくれるモノかな」
「は、はあ」
かいつまみ過ぎているけど、間違ってはいないな。
私はそのまま、シャッターボタンを押そうと指を置いた。
これが最後か。これがリオン君最後の写真か。
伏し目がちな瞳、赤く染まった頬、キュッと軽く引き結んだ唇。
………………前にも見たことがある照れ顏。
「つまんない」
「え?」
「可愛いけど、つまんないわ」
私はスマホのカメラはあくまで映える写真やおもしろ動画を撮るものだ。キッズモデル並みの美少年だろうが、見慣れてしまった笑顔や照れ顔を何枚も撮るものじゃない。そんなもの一枚か二枚だけで十分。ブサイクだったらコロコロ変わる表情は面白いと思うし何枚撮っても飽きないと思うけど、美形は数枚撮ったら飽きちゃうな。
せっかく最後なんだ。笑顔や照れ顔じゃなく、もっとそそられる表情を撮りたい。
そんな考えを巡らせ、一旦スマホを向けるのをやめようとした時だった。
「美味い」
ずっともごもごとしていた夏芽がしゃべった。
「美味すぎる」
「あ、ありがとうございます」
私はいまだにスマホをリオン君に向けたままだった。
う~ん、可愛い照れ顔だけどやっぱりつまんないな。
ここから、変化しないものか。変化するかしないのかの瞬間ギリギリな表情が撮りたいな。
私は視線だけ夏芽のほうに向けた。
………夏芽、『あれ』言うつもりでしょう。ちょっと腕痺れてきたからさっさと言って。
夏芽はじっとマヨネーズを見つめた後、立ち上がった。
そして、マヨネーズから頬を赤めらせているリオン君に視線を移した。
「美味すぎるから、お前の家に行く」
「え」
「連れていけ」
「はい?」
お、変化した。シャッターチャンス。私はパシャ、とシャッターボタンを押した。
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