目立ちたくない英雄はコッソリ世界を救いたい

四畳半

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第2話 返って来た現代

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キッチリと40歳で息を引き取った俺は三度目覚めた

「オギャー!、オギャー!」

と元気よく泣く赤ん坊の俺

目は完全に開いてはいないが、そんな視界のボヤケた中見えたのは、俺を抱き上げる助産婦と横になっている、恐らく俺の母親であろう人

更にはその傍らで涙を流し母親の手を握っている男性…こちらは恐らく父親だろう

横になっている母親は、

「…はぁ、はぁ、あ、あぁ…元気な声…」

と苦しみながらも喜びに満ちた声で言う

その横の父親も泣きながら、

「お、おぉ…良く頑張ったな!二人共!」
「すっごい元気な声じゃないか!」
「…は、ははっ、あ、安心したら力が抜けてきた…」

と言ってその場にしゃがみ込む

そんの父親を見て母親は、

「ふ、ふふっ」
「あなたったら、…もう」
「…あなたもジュンも本当にお疲れ様…」
「…もう、ちょっと顔み、見たいけど…疲れちゃっ…た…」

と言って母親は眠りについた

その後は医者の適切な対応で両親は病室へ、俺は新生児室に向かった

周りに誰も居なくなった事を確認した俺は、改めて現状を確認する

『……ん?……やっぱり記憶があるのか…』
『と、言う事はまた違う所で転生したんだな…』
『今度はどんな世界なんだ?』

どうやらこの世界は最初に転生する前にいた世界…即ち俺からすれば現代の日本に戻ったようだ

『!っ、……まさか元の世界に戻ったのか!』
『…でも、どうして現代に戻ったんだろう…』

俺は現代に戻った事で、他の世界に転生した時の倍以上の驚きを感じた

そして少し考えてみたが理由など分かるはずもなく、

『…この場所じゃ確認のしようが無いか』
『とりあえず退院してからだな…』

そして俺は母親と退院するまでの間はじっとしている事にした

退院の日、父親が小型の車で迎えに来る

病室から車まで俺の事は父親が抱き抱えている

一方母親はまだ少しふらついている様だ

車に乗り込むと、父親は母親が後部座席に座ったのを確認して俺を母親に渡した

母親は優しく俺を抱えながら座っていた

暫く車を走らせ、1時間位すると家に着いた

家の外観を見る限りだと小さな店舗の様だ

裏手の玄関から入り、2階に上がると両親の部屋があり、その隣に襖で仕切られたもう1つの部屋に行った

そこにはベビーベッドがあり、俺はそこに寝かされた

父親が俺に向かって優しい声で言う

「ジュン…ここが君の家だよ」
「逞しく元気になる様に育てるからね…」

今俺は泣く事しか出来ないが、この両親の優しさと温かさは十分に伝わっていた

両親が荷物を運ぶ為、行ったり来たりしている間に身の回りの物からここがどの時代なのか探ってみた

どうやら風景や文明?を見る限り1980年代後半と言った所じゃないかな…

テレビはまだブラウン管だし、両親は携帯等を持ってる様な感じがしない…

それになんかこう…来る途中で街並みやすれ違う人を見る限りだと、色んな意味で活気がある感じだ

そうそう、俺の家は都会から少し離れた所にある閑静な地域にある

ビルとかは殆ど無いが、それなりに発展してる街並みになっている

後から聞いたのだが、以前両親は都会暮らしをしていたが、俺が生まれるのをきっかけに今の場所に移ったと言っていた

父親は元電気工事士で、その経験を活かして小さな電気店を営む傍ら出張サービスで取り付けや修理等を行っている普通の職業

母親はその手伝いをしている

その父親(俺には祖父)は今俺達が住んでいる所から少し離れた場所で昔から名のある教会の神父をしている

母親は祖父がフランスで祖母が日本のハーフで、幼少期にはフランスの方で生活していたらしい

『母親がフランス人とのハーフだったのか…』

前の転生した世界が中世フランスの様な所だった事もあり、これも何かの縁なのだろうかと思った…

『ん?と、言う事は俺はクォーターって事か』
『憧れがあった訳じゃないんだか、実際になってみると嬉しいな…』

そんな殆どどうでも良い様な事を考えながら淡々と月日は経っていった…

そして俺は今5歳、現在に至るという訳だ。

「大分この時代の事が分かってきた」
「元々の俺が生まれるよりは前の時代みたいだな…」
「微妙に知ってる事もあるから困る事は無さそうだ…」

と思いながら生活を送っている

良しっ、来年には晴れて小学生になる

これまでは目立たぬように、周りから見ても普通のちょっと可愛らしい見た目の子供として生活をしてきたつもりだ

小学生になれば今までより行動範囲が広くなるので、徐々に呪いを解く方法を探していこう

ある朝、俺は登校前に両親へ声を掛ける

「お父さん、お母さん」
「今日学校が終わったらおじいちゃんの所に寄ってから帰るから、少し遅くなるね」

と言うと母親が店の開店準備をしながら答える

「分かったわぁ、お父さんに宜しくねぇ」
「それに遅くなるって言っても早目に帰って来なさいよ~」

と、母親が言ったので俺は元気よく、

「は~い!」
「じゃあ学校行くね!」
「いってきま~す!」

と言って家を出る

学校は集団登校で、約10人程て集まり登校する

大体20分掛からない位の場所にあるカトリック系の学校だ

キーンコーンカーンコーン

学校が終わり下校する

学校からさほど離れていない場所にある教会

この地域の中でも大きく、かなり昔からある教会

ここが母親の実家である教会で、その地下には書庫や倉庫があり古い文献や物品が数多くあるの

ここで少しでも手がかりになるような物がないか探してみる事にする

住んでいる家からもそこまで離れていないので、休みの日も利用してたまに行っていた

そして月日が経ち、俺は小学2年生になった

たまに母親の実家に行った時に目を盗んで書庫や倉庫を漁った所、興味深い物を見つけていた

『?これは…フランスの書物か?』

それはフランスの作家ハイド・E・ミヒャエルという人が書いた【dissimulation(隠匿)】という書物だ

内容は、不思議な力を持った少年がその力を目当てに来る強欲な人達から身を隠し、様々な問題を人目に付かないように解決する

という、ありきたりな内容のファンタジックな物語

話しの内容はよく見る様な異能力系のものだったが、不思議と引き込まれて気になっていった

和訳されてはいなかったが、前回の転生時に覚えたフランス語で内容は理解出来た

だが、人前でこの書物を読んでしまうと、フランス語を理解出来る小学生として目立ってしまうので、たまに来て少しづつ読み進めてる状態
 
同じ著者が書いた物がいくつかあったが、不思議とこの書物だけがファンタジーな内容のものだった

【dissimulation】は全5冊あり、俺はまだ1冊目の中盤位までしか読めてない

書物を読み進めていく内に少し気になる文面を見つけ、俺に強烈なインパクトを与えた

〈少年の不思議な能力は悪魔によって掛けられた呪いであった〉

呪い…この少年は呪いが掛けられている設定になっているのか…

この設定と俺が違うのは、俺の能力は最初に転生した際に会得した為、呪いによる物では無い事だ

時間を掛け、徐々に読み進めてついに5冊目の終盤まで来た

…が、残りのページ数から見てとてもじゃないが完結しそうに無かった

とりあえず最後まで読み進めたが、やはり予想通りこの物語は完結していなかった

ただ最後の一文に、

〈青年は今も何処かで安息の地を求め続けている〉

と締められていた

『安徳の地』か…確か俺に呪いを掛けた術師が

《永遠に安息を得ることは出来ない》

と言っていたな…

そういう事で言えば、この主人公の青年と俺が求める結末は同じって事になるのかな?

本を読み終えた後少し気になったので、作家であるハイド・E・ミヒャエルの事を調べる事にした

……どうやらこの作家は未だ健在の様だ

しかもこの書物を最後に今はもう執筆をしていない…

現在(俺が小学3年生の時)の年齢は64歳でフランスの郊外で今は一人暮らしをしているらしい

古い書物の様に思えたから、まさか現役の人だと思っていなかった

他の書物を探してみると、その殆どが超常現象を否定する様な内容の物ばかりだったので、俺が読んだ書物は大変珍しい様だ

しかし内容があまりにもファンタジックだった為、俺が読んでいた書物はイマイチ認知度が低く、お国元フランスではこの本の事を知る人は少なさそうだ

それまでの作品とはまるで違う、むしろ今までの著書で否定していた様な内容だった為、人気も出なかったのだろう

だが俺はその内容に不思議な魅力を感じてしまっていた

他にも興味のある物はあったが、この書物程夢中にはならなかった

暇があると祖父の教会に行ったり、図書館で目立たない様に呪いについての文献を探していた

そんな俺は目立ちたくないせいか、あまり積極的に友達を作ろうとはしなかった

両親はそんな俺をいつも心配をしていたが、呪いの事があるので適当に誤魔化していた

そんな日々を送っていた俺は特に何の進展も無く只々時間が過ぎていった…

第3話に続く
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