目立ちたくない英雄はコッソリ世界を救いたい

四畳半

文字の大きさ
4 / 17

第4話 不意打ちな出会い

しおりを挟む
あれから特に何も進展が無いまま、あっという間に2年が過ぎた

俺は中学生になり、家から離れた学校に通っていた

バスを2台乗り継いで着く程の距離がある学校で、大体片道2時間位の通学になっている

学校がある地域は俺が住んでいる所よりは発展していて、大型の商業施設があるのでそれなりに賑わっている地域だ

生徒数は1500人程で中高一貫の大きい学校だ

この学校はカトリック系の為、生徒の大多数がカトリック教徒

中にはカトリック教徒ではない生徒もいるようで、珍しい事に学校側が入信を免除している者もいるようだ

多様性?とでも言うのかな?俺には分からないが…

俺はカトリック教徒だか、特に信仰心は無い

色んな世界を見てきたから今更神様を崇める様な事は無いだろう

神様なんて……ゴロゴロいたからね!

◯◯神や邪神◯◯(どれも自称だったけど…)との戦いに巻き込まれたし、良い事無かったなぁ…

特にあの戦いの時は……

と、言っていると長くなるので止めておこう

さて、まずは今直面している問題と課題は

1:40歳で死ぬ呪いを解く方法を探す
2:不可解な現象の対応
3:目立たない様に活動する方法

の3つだ

呪いを解く方法だか、そもそも呪いが発動する条件の1つの

『人々に注目される事で集まる負の影響で呪いは発動する』

だか、これがかなり曖昧だ

どの程度の注目が発動のトリガーとなっているのか?

注目される事によって生まれる負の影響とは?

注目は一瞬でも駄目なのか?それとも期間の様なものがあるのか?

注目されるという尺度はどの位?

例えば俺の正体に気付いた人の記憶を消すことが出来れば解消するものなのだろうか?

……最初の問題ですらほぼ迷宮入りしそうな位なんだが…

これまでの不可解な現象はというと、実はあまり遠くの場所での発生情報が無い

ここ数年で対処した現象は、俺の生活圏内から約500km程度の地域でしか起こっていないようだ

もしかしたら俺が感知しきれていない現象があるかも知れないが、それを差し引いたとしたら比較的俺の身の回りに現象が起きている事になる

俺が現象の原因ならば、俺を中心とした範囲で起きていたとしても不思議では無いな

ちなみに“不可解な現象”とはモンスターの出現だけではなく、空間の歪みや行方不明者が出た、とかが発生した際に何かしらの魔力を感知したものを指しているので、その現象は多岐に渡る

…その中で少し気になる状況がいくつかあった

魔力反応はあるのに、現場に行くとその魔力の元を見つけられない事が何回かあった

特に西の方で感知した反応に対して起きている事が多い

特に被害があった様な痕跡が無いので、あまり気にかけず『問題も無さそうだし、いいか』程度に考えていた

それ以外の対処としては、前に言った通り比較的近場(移動魔法があるので直ぐに現場に行く事が出来る)で、尚且つ複数箇所で同時に現象が起きていなかったのが幸いしている

更にこの現象が今の所1か月に1~2回程度、更に現象が起こり易い時間帯が夕方~夜中と言うのも大きい

しかし、現象の発生頻度は徐々に間隔が短くなって来ている(気がする…多分)

今の所現象の発生が無い時にある程度準備しているので問題は無いが、現象の対応ばかりしていても一向に呪いを解く為の手段が解らないだろう

悩ましいがそれが現状だ…

う~ん…どうしたものか?

そう考えていると、その日の夜に大きめの魔力を感知した

ここ数カ月ではなかなか大きな反応だ!

その反応は西に400km程離れた場所から出ている

超高速移動の魔法を使えば時間は掛からず到着するだろう

現場に向かう際に状況を確認する為、火1R・水2R・風2R・聖3Rのリゾンを合成させ、遠くの状況が見える望遠魔法を造り出す

!っ既に暴れ始めている!

…周りには人家が無い所だか、この後の状況によっては危ないぞ

…ん、何だ?

何かモヤの様なものが掛かっていて対象の姿が鮮明に見えない

それにモンスターの他にも何かが動いている様に見えるが、それもハッキリとは確認出来ない

今までこんな事は無かったが…

いや待てよ?…そうだ、俺はこの感覚を知っている

以前の世界で結界を張られた箇所を見る時に同じ様な感覚があった

その時は結界の中にいる聖霊術師がモンスターを逃さない為に結界を張って戦っていた事を思い出した

まさか…この世界にも聖霊術師が存在するのか?

こんな高度の結界を普通の人間が使える筈が無いのだが…

…確認する為にもとにかく急ごう!

移動魔法を使い、俺は程なくして目的地に着いた

やはり結界が張られており、中で何者かが戦っている様だ…

魔力を感知出来る俺には結界が見えるが、普通の人には何も無いような空間に見えているはず

結界の外側から中で動いている人影が見えたので、咄嗟に声を掛けてしまった、

「おいっ!この結界はお前が作ったのか!?」

中から声がする

「!!誰?何故ここに結界を張っているのが分かるの!?」

今までに無い状況に冷静さを失った俺は、後先考えず声を掛けてしまった

誤魔化しきれそうも無い俺は更に、

「俺は魔力を感知出来る!まずはそのモンスターを倒すのが先だ!俺を結界の中に入れてくれ!」

と言った

結界の中で行動するには、その結界を張った人物の認知が無いと動きに制限が掛かり戦い辛くなってしまう

そして少しの間結界の中で戦っていたようだが、結界の一部が開き、

「早く!入るなら入って!」

結界の中にいたのは女性だった…

右手には長剣、左腕に中型の盾、斜め掛けにしたベルトの様な物には何本かの小さな薬瓶

顔は布の様な物で覆っていた為分からないが、まさに戦う女戦士という様な出で立ちでモンスターと戦っていた

俺はその姿を見て驚いたが、直ぐに状況を理解して結界の中に入った

「……色々と聞きたい事があるが、まずはコイツの退治が先だな!」

戦っているモンスターは中型級の『グリフォン』だ

モンスターにも階級があり、この前倒したオークにも上位種の〔オークウォリアー〕や〔オークナイト〕等様々な種類が存在する

このグリフォンも上位種になると炎や冷気等を放つ種類がいるが、こいつは下位種のグリフォンなので攻撃方法は単調だ

グリフォン種に共通する事は飛行能力を持ち、鋭い鉤爪で攻撃してくる事

結界の中で戦っていた女性は声色で20代位に思えた

だが女性の動きを見る限りでは戦い慣れている様に見えた

それに近くまで来たから分かるが、相当強い聖霊力を感じた

しかし飛行するグリフォンに対して有効な攻撃手段が無いのか大分苦戦している様だ

正直俺からしたらこの程度のモンスターはまだまだ脅威では無かった

ここは早めに片付けよう

聖1R・邪1R・土1R・風5Rを合成させ、下級消滅魔法を造り出しグリフォンの額を撃ち抜く

勝負は一瞬で片付いた

頭を撃ち抜かれたグリフォンは地上へと落下し、動かなくなった

それまで戦っていた女性はあっという間の出来事にポカンとしている

「…えっ?一撃?」

戦いが終わり冷静さを取り戻した俺は、

『とりあえず片が付いた、が…』
『絶対に色々聞いて来そうだな…』
『このままそっと後ろを向いて帰れないかな?』

と思ったが、もはや手遅れだった…

何時も肝心な時に後先考えず突っ走ってしまうのが俺の欠点だ

そして少し間が開き、当然だか女性から、

「貴方は…誰?何者?」

やはり聞いてきたか…

俺は何も言わずそのまま立ち去ろうと思ったが、腕を掴まれ逃げれなかった…

そしてその腕をグイっと引き付けられ、女性との距離が縮まりこう言った

「ちょっと!このまま帰るつもり?」
「突然現れて何も言わず去って行くなんて非常識よっ!」
「せめて名前位名乗るのが礼儀じゃない?」

…ちょっと何言ってるか分からないんだが

そもそもこの状況が既に非常識じゃないのか?

と思いつつも、彼女の迫力に負けたのか俺は咄嗟に答えてしまった

「…『dissimulation(ディスミゥケーション)』」

ボソッと口から出たのは何故かこの言葉だった

女性はこちらに耳を近づけ、

「…えっ?何?何て言ったの?良く聞き取れなかったんだけど」

と言って聞き直して来た

俺はそれに対して少し間を空け、

「…デミスだ」

と少しでも誤魔化せる様に何とか絞り出して答えた

そうすると女性は、

「デミス?…どう見ても日本人にしか見えないんだけど」

と言われた

まぁそうなるだろうとは思っていたので、更に追及がくると思って身構えていたが、

「…まぁいいわ、そっちの都合って事ね?」

と言って何故か納得してくれた様だ

心の中で胸を撫で下ろしていると女性から、

「じゃあそうね…私の名前は…『ミケ』でいいわ、勿論本当の名前じゃないわよ?」

ミケ?まぁ特に詮索するつもりは無かったのでそのままスルーした

続けざまに女性が、

「…貴方、っとデミスだったよね?何者なの?あんなモンスターを一撃だなんて、普通じゃ無いのは分かるけど、それにしても凄い力じゃない?」

まぁそうなるだろう

俺からしたら大した事では無いが、この女性からしたら自分が苦戦していた敵を一撃で倒したのだから興味が湧くに決まっている

しかし、見られてしまったからと言って何でも話す訳にはいかない俺は、

「…待ってくれ、お互いの詮索は止めよう、此方は貴女の事を聞くつもりは無いので、此方の事も聞かないでくれ」

と言って話を遮った

ミケは不機嫌そうな口調で、

「はぁ?突然現れて怪物を倒したと思ったら、『詮索するな』って?」
「な~にを格好付けて…」

とブツブツ言っていたが、

「…はぁ…分かったわ、色々とそっちの都合があるって訳ね?じゃあ今は何も聞かないし、この事は私の中だけの事にしておく」
「あっ、そうだ、言い忘れてたわね?」
「モンスターを倒してくれてありがとう」
「正直決定的な攻撃方法が見つからなくって苦戦してたの」

と納得してくれた様だ(『今は』と言う言葉が気になるが…)

「お礼を言われる程の事じゃないよ」
「そっちが結界を張って被害を最小限にしてくれていたから今以上の被害が出なかったんだから」
「…とにかく無事で良かった、それじゃあ」

と答え俺は姿を消し、その場を去った

家に帰って部屋に戻って来た俺は、

『見られてしまったな…』
『しかも素顔をバッチリと…』
『…これで呪いは発動してしまうのか?』

と考えたが、今更どうしようも無い

記憶を消す事も考えたが、相手はおそらく聖霊術師

耐魔性がある筈だから俺の魔法が完全に効くとは限らない

中途半端な事をしてしまうと、かえってややこしくなるかもしれないので止めておいた

人には見られてしまったが、『ミケ』とやらが口の軽い人間じゃない事を祈ろう

…さて、これで呪いが発動してしまった可能性がある

『人々に』と言っていたので、流石に1人だけでは大丈夫だとは思うが、覚悟はしておこう

…しかし、ミケとは何者なんだろう…

モンスターと戦っていたと言う事は、その存在にも以前から気が付いていたのだろう

西側の反応は彼女が対応してたからか?

苦戦はしていたが戦い慣れているようだし、あの聖霊術には中々の魔力を感じたと言う事は、その家系も代々聖霊術師なのだろうか?

色々と疑問が残るが『今は』考えないでおこう

 第5話に続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...