目立ちたくない英雄はコッソリ世界を救いたい

四畳半

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第17話 旅立ちの始まり

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自宅では芸能人と一緒に食事をすると言う異様とも言える食卓を囲んでいた

そんな異様な光景とは裏腹にその後は和やかなムードで時間が過ぎていった

何気ない日常会話や芸能生活の事を聞きつつ食事も終わり、2人が帰る

2人を途中まで見送るといって俺も一緒に家を出た

車に乗り込み発進して少し走った所で車を止めた

運転していたミケが車内に入って来たと思ったら、

「はぁ~、緊張した…」
「殆ど隣に居ただけなのに凄く疲れたぁ…」

と言った

カノンも全身の力が抜けた様に、

「あぁ~…私もぉ~、緊張したぁ…」
「ねぇ城島君?あんな感じで大丈夫だったかな?」
「緊張しすぎて何話したか全然覚えてないよぉ…」

俺は疲れてグッタリしている2人に、

「2人共ありがとう」
「完璧だったよ」
「流石売れっ子アイドルとそのマネージャーって感じで、息もピッタリだった」
「最後にはうちの両親とも打ち解けてくれて、感謝しているよ」

と労った

続けて俺は、

「これで僕がフランスに行く為の口実が出来た」
「後は、カノンさんがミヒャエルさんに連絡を取ってもらって、向こうが快諾してくれれば問題無いね」

そう言うとカノンから、

「あぁその事だけど、昨日の内にミヒャエルさんに連絡しておいたわ」
「向こうは歓迎してくれるって言ってくれたからいつでも大丈夫よっ!」

仕事の早い人で助かる

「そうですか!ありがとうございます!」

と俺が言うと、何故かミケが得意満面で胸を張っていた

お膳立ては完璧だ

後はタズキとフランスに行きミヒャエルと会い、向こうで占星術師に会って俺の呪いについて更なる情報を仕入れるだけだ

俺は2人に頭を下げ、

「本当にありがとう、2人がいなかったらフランスに行く事は出来なかったよ」
「後、今度ミヒャエルさんの連絡先を下さい」
「早ければ来週にもフランスに行くつもりです」

と言って2人と別れ、立ち去ろうとする

その時ミケが小声で、

「へぇ、来週なんだぁ…」

と言っていたが、特に気にも留めず俺は帰った

その後は急な話ではあったものの、親の協力も有り学校への休学届けは問題なく済ませる事が出来た

サエキ、ゴトウ、ミカワは急にホームステイする俺に驚いていたが、夢の為と言うと快く見送ってくれた

そして出発の日

予定通り俺は空港に向かっていた

両親も我が子を見送る為に店を閉め、父の運転で一緒に空港まで来てくれていた

その道中で父から携帯電話を渡された

「?これは何ですか?」

と俺が言うと、父はこう言った

「この携帯電話は海外でも使える物だ」
「昔の知り合いに頼んで、何とか調達してもらったんだ」
「もう番号とか色々な設定はしてあるから、これを使って連絡をしてくれ」

この時にはまだ珍しい海外用の電話を準備していた様だ

母は気丈にも、

「寂しくなるけど、ちゃんと向こうに着いたら連絡頂戴ね?」
「怪我とか病気に気を付けるんだよ?」
「それに、向こうで知らな人に付いて行ったら駄目だからね?それに…」

と言うと、父が母の言葉を遮る様に、

「母さん、その辺にしとおけ」
「心配なのは分かるが、あんまり言い過ぎるとジュンの方が不安になるだろう?」
「ヒイロさんから、向こうに信頼できるガイドを用意しているって連絡があったんだから、俺達はそれを信じよう」

母が今にも泣き出しそうな顔で、

「…だって、あなた…」

と言うと、父は俺に向かって、

「ジュン、まだ幼いお前には向こうでの生活は大変だと思う」
「だが、これは人生の勉強だ」
「向こうにいる間、色んな事を経験して、今よりもっと成長したお前が元気に帰って来るのを待ってるぞ」
「…母さんが心配するから連絡はちゃんとくれよ?」

と言うと、母は涙し、父は力強く俺を見送ってくれた

程なくして空港に着いた俺は、両親との別れの挨拶をした後に搭乗口に向かうゲートをくぐり出発待ちのラウンジに向かう

父は俺が見えなくなるまで手を振り、母は泣いていた

両親との別れを終えラウンジに向かうと既にタズキの姿があった

「おはようデミス君、ご両親とのお別れは済んだのかな?」

とタズキが言う

俺は少しホッとしたのか笑みを浮かべ、

「今生の別れみたいに言わないで下さい」
「ちゃんと送り出してもらいました」

と言った

フランス行きの飛行機が出発するまで、まだ時間がある様だ

飛行機に乗り込む前に少しラウンジで時間を潰していると、タズキがやってきて俺に、

「デミス君、私は先に機内に向かっていますので、時間前には必ず来て下さいね」

というと俺は、

「…そこまで子供じゃ無いですから心配しないで下さい」

といった

暫くして、そろそろ飛行機に乗っておこうかと思い、搭乗口から自分の席に向かった

座席は窓側の後ろにある2人席

この飛行機は貨客混載機で、客室の後方に貨物室があるタイプの様だ

何故か隣では無く、タズキは俺の前に座っていた

?まぁいいか…ふぅ、これで後は向こうに着くまでは快適な空の旅をするとしよう

そんな感じでゆったりと飛行機の離陸を待っていると、俺の隣の席に人がやってきた

隣の人なんだろうと思っていると、その隣に来た人が声を掛けて来た

どうやら女性の様だが…

『隣、失礼するわね』

!!

声を聞いた途端俺はまさか!と思い隣を見た

するとそこには…

「あら~、隣なんて偶然ねぇ~?デ・ミ・スっ♡」

そこには紛れもなくミケがいた

余りの驚きに気絶するかと思った

気絶しかけた俺は何とか意識を保ちつつ冷静さを取り戻し、

「…何でここにいる?」
「というか、どうして俺の隣に来たんだ?」
「そもそもカノンはどうした?君はマネージャーだろ?仕事はどうしたんだ?」

と矢継ぎ早に質問した

ミケは何故か少し嬉しそうに、

「そんな一気に聞かないでよ~」
「仕事に関しては、カノンと相談してうちの事務所から別のマネージャーに付いてもらったわよ?」
「あの事件以降はカノンの周りで不可解な現象が起きていないし、カノンも『今度は城島君の力になって欲しい』って頼まれちゃったからね」

それを聞いた俺は、

「…しょうがないなぁ…で、何で君がこの飛行機に俺がいると分かっていたのかはどう説明するんだ?」
「まさかストーキングでもしてたんじゃないだろうな?」
「あの軍団証の魔力を消して無いのか?」

と言うとミケは、

「違うわよ~」
「ちゃんと軍団証の魔力は消してあるわ」
「なんで知ってるって?そんなのタズキに聞いたに決まっているじゃない」

と言ったのを聞いて少しフリーズしてしまった

タズキ?おいおい、どういう事だ?2人は知り合いだったのか?何も聞いてないぞ?

そう思い、タズキの方を見るとこちらを見てニヤついている

…あいつ、こうなると思ってワザと言わなかったな

空港に着いたら尋問だな…

とか考えながらミケに聞いてみる

「…君はタズキと知り合いだったのか?」

と聞くと、

「そうよ、もう10年位の付き合いになるかしら?」
「私達は元々聖霊騎士団で一緒だったんだけど、タズキが途中で離団して占星術士の仕事を始めたわ」
「何でも『今後私達の運命を変える出会いの為、ここを離れる必要がある』とかなんとか言って」
「その時私は何の事だかさっぱりだったけど、その数年後あなたに会った」
「もしかしたらこの事かもって思ってタズキに連絡したら『そうだ』って言うから、そこからあなたに興味を持ったってわけ」

…そういえばこの2人は同じ西方の異能力者だったな

反応もそこまで離れてはいなかったし…接点があってもおかしくは無い…

盲点だった…

「…2人が知り合いだって事も、カノンが安全な状況なのも分かった」
「だけど、何故君はここにいるんだ?」
「この旅の事をタズキに聞いて付いて来たって事か?」
「っていうか、何故今までタズキと接点があったと言わなかったんだ?」

と俺が言うとミケは、

「…そんな事言われても…私だってあなたがタズキと面識あって、一緒に旅に行くのなんて最近知ったんだから」
「それにこの旅に一緒に行かないかって言ったのタズキからだし」

タズキめ…こうなる事が分かっていたな?

俺は前の席でニヤ付いているタズキを睨んだ

すると続けてミケが、

「私だってあなたの助けになりたいって思ってるのよ?」
「あなたの力を知っている数少ない仲間として」

…まぁ確かに、俺の(全てではないが)正体をしっている数少ない存在ではあるし、能力としても一緒にいてくれると助かる事も多いだろう…

それにもう同じ飛行機に乗ってしまっている訳だから、どうする事も出来ないか…

「…分かった、その気持ちを素直に受け取っておくよ」
「フランスに行く理由はタズキから聞いているのか?」

と俺が聞くと、

「タズキからは、あなたの周りに起きる現象の解明をする為の旅としか聞いてないわ」

とミケが答えた

俺はこれからの行動を考え、まだ伝えていない呪いの事をミケに話した

「!!えっ、そんな…デミス…あなたってそんな状態で今まで生活してきたの?」
「その力の理由も、カノンとの共通点も、その呪いが関係しているのね?」
「…だとしたら私の力ではあなたを助ける事は出来ないかもしれない…でも!どんな形でもあなたに協力したいと思ってる」
「初めて会った時も、カノンの時もあなたに助けられた…」
「私に恩返しさせて…お願い、デミス」

そこまで言われて断る事は出来ないだろう

「最初に言っておく事がある」
「おそらくこの旅の最中には、会場に現れた魔王軍と戦う事があるだろう」
「もし、奴らが現れ自分自身の命が危ないと思ったら迷わず逃げろ」
「あいつらの目標は俺の筈だ」
「俺から離れれば命の危険からは逃れる事が出来る」
「付いてくるならそれが条件だ」

と俺が言った

それに対してミケは、

「…分かった、でもそのギリギリまでは私は逃げない」
「あんな奴等何人来ようと全員追っ払ってやるから!」
「後、これは私からのお願い」
「必ず皆で帰る事!」
「あなたを待っているご両親やお友達の為に…(それに…私の為にも…)」

それに対して俺は、

「…ふぅ、しょうがないな、君は言い出したら聞かなさそうだ」
「単純に俺はこの呪いを解いて、普通の人生を全うしたいだけ」
「だが危険が伴うのは間違いないからな」
「…なんだか巻き込んだ形になって申し訳ない」

そう言うとミケは機嫌の悪そうな顔で

「何言ってんの、あなたの力になりたいのは私の勝手、ただの我儘よ?」
「もうそういう事は2度と言わないで」
「次言ったら本気で怒るわよ?」

俺はそんなミケの心遣いを察して、

「分かった分かった、もう言わないよ」
「…とりあえずこれから宜しく」

ミケは少し納得いかない様な素振りで、

「”とりあえず”って言うのが引っ掛かるけど…」
「良いわっ、ヨロシクっ」

と言って握手を交わした

そう話していると飛行機が離陸の準備に入った

向こうに着いたら俺が想像出来ない位大変な事があるんだろうという不安と、頼りになる(だろう)仲間がいる事で少しの安心を胸に秘め空へと飛び立とうとしていた

…この時は、この先に待ち受ける更なる試練の事など知る由も無かった
 

第1部 完
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