ひよこクスマ

プロトン

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第49話 柔軟性

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ある日、ふゆこはクスマに回避を学びたいと申し出た。

クスマはほとんど躊躇することなく、すぐに意気揚々とそれに応じた。彼は「師匠」としての威厳が大いに満たされたのを感じ、この「唯一の弟子」のために、オーダーメイドの「地獄の特訓」を考案することに決めた。

「ふゆこ」

クスマの表情は、今この時、この上なく荘厳でプロフェッショナルなものに変わっていた。

「覚えておきたまえ。全ての強力な回避技術は、一つの最も基礎的な核心――身体の柔軟性に由来する! ゆえに、我々の第一の授業は、『極限柔軟』だ!」

「また何か始まった……」

隣にいたクレイは壁にもたれかかり、自分にしか聞こえない声で、白目を剥いてツッコミを入れた。
言い終わると、クスマは一つ咳払いをし、隣にいるクレイの「また何か企んでるのか」と言いたげな視線を完全に無視して、ふゆこに、彼に言わせれば「身体の柔軟性とバランス感覚を高める」が、他人から見れば極めて奇妙な「ヨガ」のポーズを指導し始めた。

「さあ! 私と一緒にやるんだ!」

クスマは自ら手本を見せた。

「まずは『下向きの犬のポーズ』だ! 両手を地面につき、お尻を高く突き上げ、体で逆V字を作る……そうそう、そんな感じだ! そのままキープ! 太ももの裏の筋肉が伸びるのを感じるんだ!」

「し、師匠……」

ふゆこは必死に真似をしながら、困惑に満ちた、震える声で尋ねた。

「このポーズ……本当に……回避と関係があるんですか?」

「良い質問だ!」

クスマは振り返らず、依然としてその標準的なポーズを保ったまま、深遠な口調で言った。

「君は回避をただの移動だと思っているのかね? 違う! それは最も低級な境地だ! 真の回避とは、体をどんな不可思議な角度にも折り畳み、攻撃を避けることなのだ! そしてこのポーズこそが、その境地へと至る、最初の足がかりなのだ!」

ふゆこは、このポーズと「回避」の間に何の関係があるのか全く理解できなかったが、師匠への絶対的な信頼から、彼女はそれでも必死に、一糸乱れず真似をした。しかし、元々不器用な彼女の体では、その「逆V字」は、まるで壊れかけの、ぐにゃぐにゃに歪んだ「N」の字のように見えた。

「ぷっ――」

クレイはついに堪えきれず、噴き出して、ふゆこの惨状を指さし、クスマを嘲笑った。

「おい、『大師匠』様よ。どう見ても、あんたの弟子のそのポーズは、回避っていうより、敵に後ろからケツを蹴り飛ばされるのを待ってるようにしか見えねえんだが?」

クスマはちらりと見たが、自分の教えに何の問題があるとは微塵も思わず、むしろ当然のように言った。

「それはふゆこの体がまだ硬すぎるという証拠だ。もっとストレッチが必要だな! ふゆこ、そいつの言うことなど気にするな、もっとお尻を高く突き上げるんだ!」

「は……はい、師匠……」

ふゆこは小さな悲鳴を上げた。

廊下の向こうから、みぞれが切り分けたばかりの果物を皿に乗せてリビングに入ってきた。目の前の、奇妙なポーズとツッコミどころに満ちた光景を見て、彼女はただ静かに、呆れたようにため息をつくと、「もう慣れたわ」という表情で、黙って果物の皿をテーブルに置いた。

そして、彼女は爪楊枝を手に取り、一番綺麗に切られたリンゴを一つ刺すと、ぐにゃぐにゃの「N」の字を必死に維持し、まだ小刻みに震えているふゆこの前まで歩いていった。

「ふゆこ」

みぞれは、いつも通りの優しい口調で言った。

「お疲れ様。まずは糖分を補給してね」

言い終わると、彼女はそっと、そのリンゴを、ふゆこの口に優しく運んであげた。

ふゆこは一瞬固まり、頬を微かに赤らめ、はっきりしない声で礼を言うと、口の中で甘いリンゴを咀嚼した。過度なストレッチで壊れかけていた体が、少しだけ回復したような気がした。

─ (•ө•) ─

クスマはいくつかの基礎的なヨガの動作を教え終えると、ふゆこの、不器用さゆえにぐにゃぐにゃで可愛らしいポーズを見て、突如ひらめいた。彼はふゆこに、「極限柔軟」の、さらに高次の奥義を伝授することに決めた。

「ふゆこ」

クスマは突如、極めて真剣な口調で言った。

「極限柔軟の最高境地、それは最小極限まで圧縮することだ! 例えば……」

クスマの視線は、寮の中をぐるりと見回し、最終的に、隅に置いてあった装飾用の、口が彼の頭よりほんの少し大きいだけで、高さは彼の身長の三分の一にも満たない陶器の花瓶に、ぴたりと止まった。

「……自分自身を、あの花瓶に、詰め込むんだ!」

「はぁ?!」

クレイが最初に、驚愕と侮蔑に満ちた声を上げた。

「お前、本気で狂ってんのか? あの口じゃお前の頭だって入らねえだろ!」

「し、師匠……」

ふゆこも恐怖で目を見開き、小声で言った。

「あ、あれは……難しそうです……」

クスマはしかし、彼らの疑問を完全に無視し、自らの理論の実現可能性を証明するため、自ら手本を見せることにした。彼は花瓶の前まで歩いていくと、もったいぶって、準備運動まで始めた。

そして、残りの三人の、徐々に石化していく、驚愕に満ちた視線の中、クスマは本当に、生物の構造に反するかのような、まるで軟体動物のような姿で、少しずつ、自分自身を、あの狭い花瓶の中に詰め込んでいった。

彼の体は、まるで骨がないかのように、極めて奇妙な角度で、ゆっくりと、滑らかに、その小さな胴体の中へと収まっていった。

最終的に、花瓶の口から、黄色い小さな頭だけが、ちょこんと覗いていた。クスマはさらにふゆこに向かって、「どうだ、師匠はすごいだろう」と言わんばかりの、誇らしげな表情を見せた。

ふゆこ、クレイ、そしてみぞれは、完全に呆気に取られていた。

しかし、次の瞬間、クスマの顔に浮かんだ誇りは、驚愕へと変わった。彼は体を少し捻ってみたが、自分ががっちりと挟まってしまっていることに気づいた。

「……あのさ」

クスマは、気まずさと助けを求めるような口調で言った。

「俺、多分……出られない……!」

「師匠が捕まった!」と見て、ふゆこは不器用なヨガのポーズをやめ、真っ先に駆け寄った。彼女は小さな力で、師匠を花瓶から引き抜こうとしながら、嗚咽混じりに言った。

「し、師匠!だ、大丈夫ですか?!」

「ぷっ――ははははははは!」

クレイの抑えに抑えていた爆笑が、ついに火山の噴火のように、きのこ寮全体に響き渡った。

「この馬鹿野郎! そうなると思ったぜ!」

一方、隣にいたみぞれは、手で額を押さえ、呆れたようにため息をつくと、黙って振り返り、寮の戸棚の中から、潤滑油を探し始めた。

─ (•ө•) ─

クレイがまだ腹を抱えて、床を転げ回らんばかりに笑っている一方で、師匠が捕まったことで気が気でなかったふゆこに、突如変化が訪れた。

「師匠、どうか……動かないでください」

ふゆこの声は、初めて、全ての臆病さと不安を脱ぎ捨て、ただ純粋な、人を安心させるほどの静けさに満ちていた。

そして、彼女は右手を差し出した。彼女の伴生植物である「ヤナギマツタケ」が、その決意に応えるかのように、音もなく、滑らかにその手の中に現れ、その刃(傘の縁?)は、瞬く間に、目に見えるほど凝縮された魔力の微光に包まれた。

「お、おい! ふゆこ、何する気だ?!」

クレイの笑い声がぴたりと止まった。彼はふゆこの、これまでに見たことのない、氷のような表情を見て、ぎょっとした。

「まさか、花瓶ごとあいつを真っ二つにする気か?! 死ぬぞ!」

しかし、ふゆこはクレイの叫びを全く意に介さなかった。

ふゆこの、いつもは不安げに揺れていた澄んだ瞳は、今この時、まるで鋭利な刃のように、鋭く、一点に集中し、微塵の揺らぎもなかった。

「――『鋭利』」

中に閉じ込められた師匠を切らないよう、ふゆこは自らの全ての精神、全ての魔力、全ての信念を、この次の一度きりの斬撃に注ぎ込んだ。

「ま、待て! ふゆこ! 弟子よ! 話せば分かる! 師はまだ若死にしたくないのだ――!」

花瓶の中から、クスマの恐怖に満ちた、裏返った悲鳴が聞こえてきた。

そして、クスマの恐怖に満ちた視線の中、ふゆこは動いた。

それは、ふゆこのいつもの、不器用で、がむしゃらな斬りつけではなかった。それは完璧な、月光のように清らかな、目で捉えることのできない一閃の弧光だった。

「キィン――」

風鈴のような、澄んだ軽い響き。

クスマを閉じ込めていた、硬い陶器の花瓶の真ん中に、髪の毛のように細い、完璧な切れ目が浮かび上がった。そして、花瓶の上半分が、ゆっくりと、滑らかに、その切れ目から滑り落ち、「パリーン!」という音を立てて、床に砕け散った。

クレイとみぞれは、目の前の光景を、まるで化け物でも見るかのような目で、ただ呆然と見ていた。彼らは、ふゆこの今の一撃が、正確に花瓶を二つに分けただけでなく、中に閉じ込められていたクスマの羽毛の一本すら、傷つけていないことに気づいて、愕然とした。

「……嘘だろ……」

クレイはどもりながら言った。

「あいつの今の一太刀……あのコントロール力……」

「……『頓悟』ね」

みぞれは小声で言った。そのいつもは優しい瞳に、初めて、驚愕と安堵が入り混じった、極めて複雑な光が宿っていた。

クスマがその半分になった花瓶から、みっともなく、這うようにして転がり出た後、ふゆこはようやく、全ての力を使い果たしたかのように、体がふらつき、手の中のヤナギマツタケもそれに伴って消えていった。

彼女の鋭い眼差しも、元の臆病で不安げなものに戻っていた。ふゆこは自分の両手を見つめ、呆然と、困惑に満ちた口調で、小声で呟いた。

「……私の『鋭利』の能力、なんだか……『開花』した、みたい?」
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