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愛しき傷
愛しき傷(1)
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取調室に座る梅木は、ネクタイとベルトを外し、ふてくされて座っている。中津は調書をとりながら、俺はなんとも言えない気持ちのまま、この取調べを聞いている。
「お疲れのようですね」
御堂はいつものように、人懐っこく笑う。
「忙しくてね、こんなところに来ている暇はないんだが」
「それは申し訳ないです、では、手短に終わらせましょうか」
「俺はなにも知らない、野江くんが起こした事故じゃないんですか?」
「事故、ですか」
「聞いた話じゃ、相手が転んで勝手に頭を打ったとか、それなら、事故でしょう。交通事故みたいなみたいなもんだ」
「なるほど、その話は誰から聞いたんです?」
「野江くんに決まってるでしょう。まったく、あの女には迷惑かけられっぱなしだ」
「迷惑? どういうことですか。聞いたところ、野江聡子さんは、随分真面目に勤務されているようですが?」
「刑事さん、ご存知でしょう。あの女は、殺人犯なんですよ、しかもヤクザを殺したね、亡くなった妻の親友だというから信用して雇ってやったのに、こんな事故を起こして……恩知らずもいいところだ」
「なるほど、ところで社長、あなた、被害者の宮川さんから、何か脅されていたんじゃないですか?」
「この前も言ったでしょう、ゆすられていたのは、野江くんですよ、何度も金を工面してやった。まあね、妻を助けてくれた借りはありますから、でももう、面倒見きれない。野江くんには辞めてもらうつもりです」
「おかしいですね、野江さんは、あの事件の夜、あなたから金を渡して欲しいと頼まれたと言ってますよ。脅されてたのは、あなたではないんですか?」
「俺よりあんな女の言うことを信じるのか? 嘘に決まってるだろう、バカバカしい、もう付き合いきれん!」
梅木は汗をだらだらかきながら、立ち上がった。
「まあまあ、それでは、質問を変えましょうか。野江さんのことは亡くなられた雅子さんが、大阪から呼び寄せたそうですね、それはどうしてですか」
「それは……と、友達が困ってるから、雇ってやってほしいと……」
「でも当時、あなたの会社はかなりの経営難だったのでは? いくら奥様の頼みでも、しかも、元殺人犯を雇うなんて、ちょっと人が良すぎませんか。仕事だけでなく、住むところや、当面の生活費も工面したそうじゃないですか」
「経営は苦しかったんですがね、人手は欲しかったんですよ、工場で働いていたこともあるというし、だから雇ったまでです。それに、その時は犯罪歴のことは知らなかった。友達が困っているから助けて欲しいと妻に頼まれた、それだけです」
「野江さんはその頃、出所後に勤めていた会社を辞めて、住所不定の状態だったようですが、どうやって探したんですか。大阪の城田刑事から、雅子さんから居場所と共に、手紙を渡して欲しいと頼まれた、と聞いていますよ。ふたりはずっと音信不通だったようですし、誰がどうやって、居場所をつきとめたんですか?」
「それは……ツテをつかって……」
「ツテ? 大阪にお知り合いが?」
梅木は忙しなく汗を拭って、イライラと身体を揺すり始めた。
「探偵にでも調査依頼をしたんじゃないんですか? それとも、ツテの方から居場所を持ってきたか」
「……知らなかったんですよ、なにも」
「知らなかった、何をですか」
「雅子とは、見合いなんです。彼女が大学を出てすぐに、見合いの話がきました。俺は大学を出てすぐあの会社を継いだもんで、結婚なんてそんな暇なかった。政治家の娘だというし、なにより若くて美人だしね。派手好きで金がかかる女だとは思ったけど、社交的で人当たりもいい、それに、こんなオッサンのところに来てくれる女はこの先もいないだろうし。まだその頃は会社も上手くいってて、経済的にも余裕があった。二つ返事で、結婚して……でも、雅子は身体が弱くて、何度か流産して、子供には恵まれなかった。それでも、別によかった、夫婦2人で、のんびり暮らすのもいいだろうって、俺はそう思ってた……」
中年男はため息をついて、左手の指輪をじっと見つめている。
「でも不況のあおりを受けて、経営が厳しくなった。それでも、雅子の贅沢癖はなおらなくて、ブランド品を買い漁って、パーティだなんだと……経済的に厳しくなり始めて、夫婦仲もうまくいかなくなった。まあ、それだけならまだよかったんだがね……」
「ドラッグですか」
「そんなもんに手を出すなんて、信じられなかったよ。雅子のものを調べてみたら、写真が出てきました。高校時代に友達と撮ったっていう、なんとも派手な格好で……まさかあんな不良だったとは思わなかった。おまけに、殺人事件に関与してたっていうし、ようやくわかりましたよ、吉野家では雅子は厄介者で、行き遅れの俺はただ、押しつけられただけだって」
梅木は、目を閉じて、天井を見上げた。
「ある時、宮川が現れました。野江くんの写真を持ってね……あの写真の少女だってすぐわかりましたよ」
「宮川はなんと?」
「あの事件は、この女が犯人ってことになってるけど、真犯人は別にいると……自分はあの事件の捜査をしていたから、真実を知っている、真犯人は……雅子だと……もう、なにがなんだかわからなくて……どういうことなのか、義父に確かめました。もちろん、義父は認めませんでしたが、突然、うちの会社に融資をすると言い出して、それで悟りましたよ、そういうことかって」
「雅子さんは、認めたんですか」
「いえ、雅子には聞けませんでした。聞いたところで、真実は……そんなことはもう、よかったんです。だから、彼女を東京に呼ぼうと言ったんです、近くに置いた方が、監視できると思って。雅子は嫌がりました、今更、会えないと。来てくれるわけがないと……それでも無理やり説得して、野江くんを呼び寄せました」
「なぜ監視する必要があったんです?」
「宮川は、このことを週刊誌に売ると行ったんです。現に、ネットでは、このことが噂で広まってましたから。もしも宮川と野江くんが結託していたらと思うと、不安で仕方なかった」
なんともまあ、気の弱い男だ。嫁さんより、自分のことかよ、つまんねえ男だな。だからつけこまれんだよ。
「それから、宮川は金を無心するようになりました。一度に言うのは、5万とか10万とか、どうにかできる額だったので、つい、渡してしまって……それが13年です、もうずっと、あの女のせいで……俺が何をしたっていうんだ? 俺は厄介者を押し付けられて、クズみたいな男に金をせびられて、犯罪者を雇って……なにもかも、あの野江のせいなんだよ、あいつさえいなけりゃ、こんなことにはならなかったんだよ!」
「なるほどね、自分だけが不幸ってことか」
「ああ、そうだ。俺は悪くない、悪いのは死んだ雅子と野江だ、あいつらは死神だよ! 雅子が死んで、せいせいしたんだ。これでやっと宮川から解放されるってね。なのに今度は保険金詐欺だとか言い出したんだよ。あの火事は本当に漏電が原因だったんだ、雅子が逃げ遅れたのは、処方薬の影響だった。俺は知らない、関係ないのに、あの野郎……またネットで広めやがって、火消しして欲しけりゃ金をよこせと、俺はいつまでこいつに揺すられるのか……おまけに、吉野の家から野江を保護するように言われたんだ。あんな女、あの火事で死ねばよかったんだよ。なんで生き残ったんだ? 社内では美談になって、野江は英雄扱いだ。仕事をやって、生活まで面倒みさされて、刑事さん、俺はここまでやったんだよ、充分だろう? これ以上、俺にどうしろっていうんだよ!」
「あの夜も、金を渡したんだな」
「……ええ、あの夜で終わらせようと思ったから、500万渡すと言いました」
「500? 渡したのは100万じゃないのか?」
「あの日、急な注文が入って、それに追われていました。だから銀行に行く暇がなくて……事務員に100万、ATMでおろさせて、とりあえずそれを渡そうと思った。夕方すぎか、野江くんが、タイムカードを取りに来ました。給料計算を家でやるからと……金が足りないと揉めることはわかっていたし、だから、野江くんに頼みました」
「揉めることがわかっていたのに、しかも女性に、行かせたのか?」
「野江くんなら大丈夫かと……彼女も、すんなり受けてくれたので……」
ひどい男だ。信じられねえな。俺はいつのまにか、拳を握りしめていて、調書をとってる中津も、わなわなと震えている。そして、こんな状況でも冷静な御堂は、改めてすごいなと思う。
「でも、それくらい当然でしょう、あの女は……どうせ殺人犯なんだ」
「どうせ? どうせってなんだ。梅木さん、こうなったことを、あなたは、全て他人の、野江さんのせいにしてるようですが、そうじゃない。全て……」
珍しかった。御堂が、デスクをたたいて、こんなに大声を出すのは。
「てめえのせいだろうが! いいか、彼女が何をした、彼女は、自分の罪を償うために、ずっと、あんたら夫婦に尽くしてきた、命がけで奥さんを助けたんだろう。今回のことだってそうだ、あんたのために、あんたのその大事な会社のために、世話になった人のために、誰に頼まれるでもなく、罪を被ろうとした……どうせ……どうせ、自分は殺人犯だからってな……」
どうせ……か。彼女は、聡子はそうやって、ずっと生きてきた。どうせ、自分なんかって、どうせ、幸せになんか……なれないって……
「あの夜、男2人が口論していたと、目撃証言があります。あなたと、宮川ではないんですか」
「……野江くんの後をつけました、ちゃんと金を持って行くか……」
「公園に行ったんだな?」
「行きました。宮川が転んだのを見て、もし、通報でもされたらと焦って……それで野江くんを帰しました」
「その後、どうしたんだ」
「約束が違うと宮川が詰め寄ってきたので、残りの金は明日必ず渡すと言ったんですが……宮川は納得しなくて、それで、もういい加減にしてくれって……花壇の煉瓦で、殴りました」
「どこを殴った」
「こめかみのあたりです。ベンチにぶつけたところを見せて、警察に行くと言ったので、カッとなって……そのまま、逃げました……」
「自分が殴ったことを認めるんだな」
梅木は、ぐったりと項垂れて、微かに頷いた。
「申し訳……ありませんでした……」
終わったか、これで。思ってたより、長引いたな……本当にこれで、よかったのか、俺はどこかすっきりしない気分で、残りの書類を整理することにする。
「お疲れのようですね」
御堂はいつものように、人懐っこく笑う。
「忙しくてね、こんなところに来ている暇はないんだが」
「それは申し訳ないです、では、手短に終わらせましょうか」
「俺はなにも知らない、野江くんが起こした事故じゃないんですか?」
「事故、ですか」
「聞いた話じゃ、相手が転んで勝手に頭を打ったとか、それなら、事故でしょう。交通事故みたいなみたいなもんだ」
「なるほど、その話は誰から聞いたんです?」
「野江くんに決まってるでしょう。まったく、あの女には迷惑かけられっぱなしだ」
「迷惑? どういうことですか。聞いたところ、野江聡子さんは、随分真面目に勤務されているようですが?」
「刑事さん、ご存知でしょう。あの女は、殺人犯なんですよ、しかもヤクザを殺したね、亡くなった妻の親友だというから信用して雇ってやったのに、こんな事故を起こして……恩知らずもいいところだ」
「なるほど、ところで社長、あなた、被害者の宮川さんから、何か脅されていたんじゃないですか?」
「この前も言ったでしょう、ゆすられていたのは、野江くんですよ、何度も金を工面してやった。まあね、妻を助けてくれた借りはありますから、でももう、面倒見きれない。野江くんには辞めてもらうつもりです」
「おかしいですね、野江さんは、あの事件の夜、あなたから金を渡して欲しいと頼まれたと言ってますよ。脅されてたのは、あなたではないんですか?」
「俺よりあんな女の言うことを信じるのか? 嘘に決まってるだろう、バカバカしい、もう付き合いきれん!」
梅木は汗をだらだらかきながら、立ち上がった。
「まあまあ、それでは、質問を変えましょうか。野江さんのことは亡くなられた雅子さんが、大阪から呼び寄せたそうですね、それはどうしてですか」
「それは……と、友達が困ってるから、雇ってやってほしいと……」
「でも当時、あなたの会社はかなりの経営難だったのでは? いくら奥様の頼みでも、しかも、元殺人犯を雇うなんて、ちょっと人が良すぎませんか。仕事だけでなく、住むところや、当面の生活費も工面したそうじゃないですか」
「経営は苦しかったんですがね、人手は欲しかったんですよ、工場で働いていたこともあるというし、だから雇ったまでです。それに、その時は犯罪歴のことは知らなかった。友達が困っているから助けて欲しいと妻に頼まれた、それだけです」
「野江さんはその頃、出所後に勤めていた会社を辞めて、住所不定の状態だったようですが、どうやって探したんですか。大阪の城田刑事から、雅子さんから居場所と共に、手紙を渡して欲しいと頼まれた、と聞いていますよ。ふたりはずっと音信不通だったようですし、誰がどうやって、居場所をつきとめたんですか?」
「それは……ツテをつかって……」
「ツテ? 大阪にお知り合いが?」
梅木は忙しなく汗を拭って、イライラと身体を揺すり始めた。
「探偵にでも調査依頼をしたんじゃないんですか? それとも、ツテの方から居場所を持ってきたか」
「……知らなかったんですよ、なにも」
「知らなかった、何をですか」
「雅子とは、見合いなんです。彼女が大学を出てすぐに、見合いの話がきました。俺は大学を出てすぐあの会社を継いだもんで、結婚なんてそんな暇なかった。政治家の娘だというし、なにより若くて美人だしね。派手好きで金がかかる女だとは思ったけど、社交的で人当たりもいい、それに、こんなオッサンのところに来てくれる女はこの先もいないだろうし。まだその頃は会社も上手くいってて、経済的にも余裕があった。二つ返事で、結婚して……でも、雅子は身体が弱くて、何度か流産して、子供には恵まれなかった。それでも、別によかった、夫婦2人で、のんびり暮らすのもいいだろうって、俺はそう思ってた……」
中年男はため息をついて、左手の指輪をじっと見つめている。
「でも不況のあおりを受けて、経営が厳しくなった。それでも、雅子の贅沢癖はなおらなくて、ブランド品を買い漁って、パーティだなんだと……経済的に厳しくなり始めて、夫婦仲もうまくいかなくなった。まあ、それだけならまだよかったんだがね……」
「ドラッグですか」
「そんなもんに手を出すなんて、信じられなかったよ。雅子のものを調べてみたら、写真が出てきました。高校時代に友達と撮ったっていう、なんとも派手な格好で……まさかあんな不良だったとは思わなかった。おまけに、殺人事件に関与してたっていうし、ようやくわかりましたよ、吉野家では雅子は厄介者で、行き遅れの俺はただ、押しつけられただけだって」
梅木は、目を閉じて、天井を見上げた。
「ある時、宮川が現れました。野江くんの写真を持ってね……あの写真の少女だってすぐわかりましたよ」
「宮川はなんと?」
「あの事件は、この女が犯人ってことになってるけど、真犯人は別にいると……自分はあの事件の捜査をしていたから、真実を知っている、真犯人は……雅子だと……もう、なにがなんだかわからなくて……どういうことなのか、義父に確かめました。もちろん、義父は認めませんでしたが、突然、うちの会社に融資をすると言い出して、それで悟りましたよ、そういうことかって」
「雅子さんは、認めたんですか」
「いえ、雅子には聞けませんでした。聞いたところで、真実は……そんなことはもう、よかったんです。だから、彼女を東京に呼ぼうと言ったんです、近くに置いた方が、監視できると思って。雅子は嫌がりました、今更、会えないと。来てくれるわけがないと……それでも無理やり説得して、野江くんを呼び寄せました」
「なぜ監視する必要があったんです?」
「宮川は、このことを週刊誌に売ると行ったんです。現に、ネットでは、このことが噂で広まってましたから。もしも宮川と野江くんが結託していたらと思うと、不安で仕方なかった」
なんともまあ、気の弱い男だ。嫁さんより、自分のことかよ、つまんねえ男だな。だからつけこまれんだよ。
「それから、宮川は金を無心するようになりました。一度に言うのは、5万とか10万とか、どうにかできる額だったので、つい、渡してしまって……それが13年です、もうずっと、あの女のせいで……俺が何をしたっていうんだ? 俺は厄介者を押し付けられて、クズみたいな男に金をせびられて、犯罪者を雇って……なにもかも、あの野江のせいなんだよ、あいつさえいなけりゃ、こんなことにはならなかったんだよ!」
「なるほどね、自分だけが不幸ってことか」
「ああ、そうだ。俺は悪くない、悪いのは死んだ雅子と野江だ、あいつらは死神だよ! 雅子が死んで、せいせいしたんだ。これでやっと宮川から解放されるってね。なのに今度は保険金詐欺だとか言い出したんだよ。あの火事は本当に漏電が原因だったんだ、雅子が逃げ遅れたのは、処方薬の影響だった。俺は知らない、関係ないのに、あの野郎……またネットで広めやがって、火消しして欲しけりゃ金をよこせと、俺はいつまでこいつに揺すられるのか……おまけに、吉野の家から野江を保護するように言われたんだ。あんな女、あの火事で死ねばよかったんだよ。なんで生き残ったんだ? 社内では美談になって、野江は英雄扱いだ。仕事をやって、生活まで面倒みさされて、刑事さん、俺はここまでやったんだよ、充分だろう? これ以上、俺にどうしろっていうんだよ!」
「あの夜も、金を渡したんだな」
「……ええ、あの夜で終わらせようと思ったから、500万渡すと言いました」
「500? 渡したのは100万じゃないのか?」
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「揉めることがわかっていたのに、しかも女性に、行かせたのか?」
「野江くんなら大丈夫かと……彼女も、すんなり受けてくれたので……」
ひどい男だ。信じられねえな。俺はいつのまにか、拳を握りしめていて、調書をとってる中津も、わなわなと震えている。そして、こんな状況でも冷静な御堂は、改めてすごいなと思う。
「でも、それくらい当然でしょう、あの女は……どうせ殺人犯なんだ」
「どうせ? どうせってなんだ。梅木さん、こうなったことを、あなたは、全て他人の、野江さんのせいにしてるようですが、そうじゃない。全て……」
珍しかった。御堂が、デスクをたたいて、こんなに大声を出すのは。
「てめえのせいだろうが! いいか、彼女が何をした、彼女は、自分の罪を償うために、ずっと、あんたら夫婦に尽くしてきた、命がけで奥さんを助けたんだろう。今回のことだってそうだ、あんたのために、あんたのその大事な会社のために、世話になった人のために、誰に頼まれるでもなく、罪を被ろうとした……どうせ……どうせ、自分は殺人犯だからってな……」
どうせ……か。彼女は、聡子はそうやって、ずっと生きてきた。どうせ、自分なんかって、どうせ、幸せになんか……なれないって……
「あの夜、男2人が口論していたと、目撃証言があります。あなたと、宮川ではないんですか」
「……野江くんの後をつけました、ちゃんと金を持って行くか……」
「公園に行ったんだな?」
「行きました。宮川が転んだのを見て、もし、通報でもされたらと焦って……それで野江くんを帰しました」
「その後、どうしたんだ」
「約束が違うと宮川が詰め寄ってきたので、残りの金は明日必ず渡すと言ったんですが……宮川は納得しなくて、それで、もういい加減にしてくれって……花壇の煉瓦で、殴りました」
「どこを殴った」
「こめかみのあたりです。ベンチにぶつけたところを見せて、警察に行くと言ったので、カッとなって……そのまま、逃げました……」
「自分が殴ったことを認めるんだな」
梅木は、ぐったりと項垂れて、微かに頷いた。
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