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3忍者の謎と謎の忍者
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『多分、他の人をあまり信用してないんじゃないかな? 特に大人。望月さんは人が良さそうだから……。こちらでも手を打ちますけど、しばらく預かって下さらない?』
養護教諭の先生は鼓がひなかの傍にいたがることを尊重しつつ、その上で対処を考えてくれることになった。この一連の騒動に目途が立ったので、彼女も折れてしばらく保護することになったのだが……。
「主殿―! 朝餉が出来ましたよ!」
日の出と共に庭で焚火をしてご飯を炊く鼓にひなかは顔を覆って溜息をつくしかなかった。本人に悪気が無いのは確かで、良かれと思ってやっているのだろうが、またも現代にそぐわない行動をしてしまう。
「あれ? また拙何かしてしまったのですか……?」
「いや……コンロについて教えなかった私が悪いな、うん」
鼓が着物の裾から出した指をもじもじ絡めて慌てるので、ひなかは事前に教えておくべきを教えなかったことを悔いる。
「いえ、主殿の不手際はございません! あるとしたら全て拙の責任です」
「そんなこと……ないけどなぁ……」
鼓はそれを否定するが、それを矯正することもひなかには出来ない。言ったところで押し問答になるのが目に見えているからだ。
「でもちゃんと炊けてそうね」
ご飯の出来は漂う香りから悪いものでないことが察することが出来た。鍋は煤まみれになったが。
「水の出し方分かったんだ」
変な匂いもしないことから、蛇口の使い方が分からず川の水を汲んでくる様な暴挙には至らなかったと思われる。彼の住んでいるとされる山奥と違い、この辺りの河川は排水路だ。そんなもの、とても食用に出来ない。
「はい、主殿が使っていたので。面妖なものとは思いましたが……」
ひなかが身体を拭いてあげた時に使い方を習得したらしく、不思議には感じていたが使用に問題はない。
「一汁も一菜もご用意出来ませんでしたが……」
「逆によくちゃんとご飯は炊けたわね」
「本来なら男の仕事ではないのですが……拙にはこれくらいしかなく」
男女平等が叫ばれる今でも、田舎ではまだそういう考えが根強いのだろうか。そう言う割には非常によく出来ている。テキパキとご飯をよそって鼓はひなかに渡す。食べてみると、芯も残っておらずふっくらと炊き上がっていた。鍋で炊くのはかなり難しいと聞くが、炊飯ジャーの使い方が分からないくらいなのでむしろ鍋でやるのが当たり前という日常を送ってきたことが予想出来る。
「鼓は食べないの?」
残ったご飯を全ておにぎりに変換している鼓を見て、ひなかは聞いた。昨日も兵糧丸なる妙なものしか食べておらず、それで十分だからと夕食も食べていない。無理に食べさせてアレルギーにでも引っ掛かったらいけないので中々食べさせることが出来ずに困っていたのだ。
「拙は兵糧丸で十分です」
「その兵糧丸も無いみたいだけど……」
肝心の兵糧丸は昨日ので最後らしく、保健室で齧っていたもの以降食べている様子もない。
「暇を見て作ります故。材料の調達は容易です」
「……だといいけど」
彼基準では野原に生えている野草でも、山を下りるとぱったり見なくなる植物も多い。材料が何だかは分からないが、果たして麓で揃えることが出来るのか。
「私は今日も学校行くけど、あんた家で大人しくしてなさい」
「がっこう……? それは分かりませんが、主殿から離れるわけには……」
さすがに鼓をまた連れていくと騒ぎになりかねない。昨日はたまたまよかったが、本来なら部外者、それも男が入れば大問題という場所だ。
「いや、危なくないから」
「いつどんな時でも主殿をお守りするのが役目です。それに、刺客は安全そうな場所を狙ってくるものなのです」
「刺客て」
もしそんなもの出た場合鼓ではどうしようもなさそうだというのはさておき、とにかく何とか理由を付けて家にいて貰わないといけない。
「そうだ、私がいない間家を守っておいてよ。留守番。頼める」
「主殿のご指示とあれば」
上手く言いくるめて同行をキャンセルするのには成功した。しかし、ひなかの予想せぬ問題がもう一つ残っていた。
「男だてらではありますが、家の仕事もお任せください」
「いや大丈夫だから」
家事をすると言い出す鼓。このままでは選択も皿洗いも今朝の様なことになりかねない。
「拙は忍として不十分です、故に少しでも主殿のお役に……」
「家に誰かいるってだけで防犯になるから! 家事ならそんな大変じゃないから自分で出来るし……」
「いえ、主殿のお手を僅かでも煩わせるわけにはいきません」
このままではやはり平行線。仕方なくここは家事が大変でないことを示すしかない。自動食器洗い機の前に移動して、麓の家事がどれだけ楽になったかを実演する。
「ほら、食器洗いだってこの食洗器に突っ込んで、洗剤入れて、ピッてやって終わり! このまま乾かしておけるから」
「な、なんですかこのからくり……」
ところが鼓は食洗器という概念を知らない様子であった。見たことはなくてもこの情報社会で知りもしないというのはやはり何度見ても奇妙な状態である。
「洗濯もほら、これ乾かすとこまでやってくれるのよ」
きっと洗濯機はよくテレビで昭和が取り上げられると出てくる二層式で止まっているんだろうなー、と思いつつひなかは洗濯機を見せる。最新のドラム式洗濯機だ。
「また大きくて珍妙な葛籠ですな……洗濯道具なんですかこれ?」
「え?」
まさか洗濯が板と桶で止まっているとは思わなかったのであった。とりあえずボタンを押して、登録されているコースを起動する。これで洗濯は乾燥まで済ませてくれるとても便利な代物なのだ。ひなかの両親は一人暮らしをする彼女の負担を減らすため、こういう最新の家電を用意してくれるのだ。
「わ! 何が起きているんですか?」
洗濯機が注水を始めたことに驚く鼓。これでも従来のものより静かなはずだが、腰が引けておっかなびっくりという状態になっている。
「何って水入れてんのよ」
「水? そんな葛籠に水が出るんですか?」
「そういうものなの。こんな感じで麓じゃ色々便利だから」
説明するのは面倒……というより案外口にしてみると分かりやすく解説するのが難しいと思ったひなかはそういうことにしておいた。日常生活は結構なブラックボックスに囲まれているものである。
「あ、やらないと思うけどこれには入らないでね。内側から開けられないから」
「は、入りませんそんな恐ろしい葛籠」
「あと終わったらそのままにしておいていいから。しわにならないし」
年下で女の子にも見えなくない子とはいえ、下着などを触られるのには抵抗があったので一応言っておくのであった。
「んじゃ、私学校行くから」
「主殿、お弁当を……えっと入れ物が……」
鼓はおにぎりを作ってくれていた。海苔も巻いていないものであったが。とはいえ、持ち運ぶものがないと困っている様子だったので、ひなかはアルミホイルを取り出しておにぎりを巻く。
「これでよし」
「この輝く紙は……」
もうアルミホイルを知らないくらいでは驚かない。のだが……ここまで山の子と単に片付け切れない要素が多い。
「金属、鉄的なものを薄く伸ばしたもの」
「ええ? 鉄がこんなぺらっぺらに……?」
「それじゃ、もう行くからお留守番頼むね」
混乱真っただ中にいる鼓を置いてひなかは学校へ行く。家を出ると、今日は少し暖かいことが分かった。この時期は寒暖の差が激しく、基本下に着ていくスタイルの制服では調整が難しいのが悩みだ。
@
「で、あの忍者ちゃんどんな感じ?」
学校に着くと、クラスメイトに鼓の様子を聞かれる。外野で見ている分には楽しいのだろうが、内野にいると本当大変なので実のところ変わって欲しいと思うのであった。
「もう大変……。庭で焚火してご飯炊くわ、食洗器はおろか洗濯機もアルミホイルも知らないわで……」
「もしかしてマジの忍者がタイムスリップしてきたんじゃないの?」
クラスメイトは茶化す様に言うが、流石にそれはないとひなかも思っていた。
「まさか」
知っているフリは難しくとも、知らないフリならかなり入念に設定を作れば可能だろう。そこまで鼓が出来るかはさておき。
「でもいいなぁ、家事してくれる可愛い忍者がいてくれるなんて……」
「羨ましかったらいつでも譲るけど」
鼓が忠実なのは確かだが、如何せんジェネレーションギャップというレベルで収まらない常識の無さから家事要員としても微妙なところだ。
「マジ? やった、期末試験で忙しいからお店も手伝ってくれると嬉しいなー」
「そういえば期末試験あった……なんてタイミングに来てくれやがった……」
クラスメイトの発言で期末試験のことをひなかは思い出した。本当に忙しい時に面倒を持ち込んでくれたものである。
「あらあら、勉強をしないと試験に通れない人は大変ですわね」
話に横から金髪の女が取り巻きと共に割り込んでくる。彼女は氏旗カリン。何かに付けてひなかへ突っかかってくるクラスメイトだ。
「あ、ハメフラ女」
「いっつも思うのですけどなんですのそのあだ名」
ちなみにひなかの友人からは破滅フラグ系悪役令嬢、通称ハメフラ女と呼ばれているが本人はその意味が分かっていない。
「出た出た、ノー勉アピール。これ信用して自分も勉強しないで挑むと痛い目見るよね」
「ワタクシは本当に勉強していないのです! 不要ですので」
学校あるあるな状況をとりあえず横に置き、カリンはひなかに忠告する。
「あなた、部外者を学校に招いたそうね? あまりそういうことをすると先生からの心象も良くなくってよ?」
「あー、あれね」
鼓のことを言っているのだろうが、もし問題になっても養護教諭を通しているのでそんなに騒ぎには発展しないだろうとひなかは見ていた。むしろ呼んだことで然るべき保護に進んだことを考えれば、自分の元々気にもしていない心象などどうでもいいことだ。
「まぁ、あなたが迂闊な行動をしてくれればお父様の出世にも響いてこちらとしては好都合ですが……」
「犯罪でとっ捕まらなければ別によくね?」
カリンがひなかに突っかかる理由は何となく察しがついている。どうもひなかの父が外務省でカリンの父の上司をやっているらしい。学歴や家柄はカリン父の方が上らしいが、実務能力で勝るのかそういうことになっている。
「いつまでもその余裕が続くといいですわね」
チャイムが鳴ったので、すごすごとカリンは席に戻る。毎日の如く繰り返される一人相撲にダメ忍者の介護まで増えると地味に心労が祟る。単純に面倒臭い。
「はい、ホームルームですよー」
いつもの様にホームルームが始まる。特にいつも言うことはないのだが、今日は微妙に違った。
「いきなりですが不審者の情報が入ってます」
(お? オザワかな?)
ひなかは不審者と聞き、先日現れた小澤一味を思い出す。あれは通報されてもおかしくない連中だ。
「オレンジの着物とマフラーを着た男だか女だかが場所や日時を聞くという報告が……」
話を聞いた瞬間、ひなかと鼓を知る一部クラスメイトが吹き出した。もうこれ完全に鼓である。
「望月さん?」
「いえなんでも」
「……その人物は『今は元禄のはず』と言っていて、子供に見えますがかなり怪しい人物なので皆さんも気を付けて下さいねー」
「元禄?」
しかし妙な点があった。元禄とは江戸時代頃の年号であり、アルミホイルも知らないレベルで学の無い鼓が知っているとは思えないことであった。
「先生、その不審者っていつ頃出たんですか?」
「望月さんも見たんですか? たしか一昨日だった様な……それ以降見られてないみたいですけど」
「んんー?」
詳しい話を先生に聞いても、謎は深まるばかり。まぁ鼓はただの山奥に住み過ぎて常識を知らない子だろうし、今回は関係ないだろうとひなかも聞き流した。
@
その日の昼休み。鼓が握ったおにぎりを食べていたひなかはスマホの通知に気づいた。母親からの、鼓について聞いた件の返信であった。
『たしかうちのおばあちゃんが戦時に米兵に襲われた時、忍者が現れて助けてくれたって言ってたよ。でもその時結構暑くてお腹も減ってたから、助けてくれた人が忍者に見えたんじゃないかなって』
「なるほど」
過去にそんな話があった、程度でしかなかった。しかしあまり確証のある内容ではない。あの時期のヒーローと言えば忍者だろうし。何より本人が勘違いじゃないかと言っているレベルだ。
「あれ? お弁当なんて珍しいね」
「ん、まぁね」
いつもは購買でパンを買って済ませるのだが、今日は鼓が作ってくれた。沢山食べる人は大変だろうが、ひなかは平均的な食欲なのでそんなに食費がかさまない。とはいえ、昼食も自炊すれば一か月の生活費を趣味に回せるのでは? そんなことも思ったが、そこまでつぎ込む趣味もないのでその労力は不要だった。
「もしかしてあの忍者の子?」
「そうなんだけど……塩すらないなんて……」
お米は美味しいが、塩すら付けていないので薄味もいいところだ。
「どれどれ」
「あ、ちょっと……」
クラスメイトがおにぎりを一口食べる。
「うん、美味しい。薄味だけど。あの子結構やるのね。焚火でやったの?」
「そうなんだけど……おかげでお鍋が煤だらけよ」
焚火で炊飯器にも劣らないお米を炊けるのは凄いが、現代で求められるスキルではない。
「これ出来るんなら他の家事も出来るんじゃない?」
「どうだか……洗濯機を葛籠だと思ってるくらいだし」
確かに焚火ご飯よりその他の家事より難易度は低い。見た様子ではライターは愚かマッチも使った様子も無かった。
「つづら? あの舌切り雀でお爺さんがもらうやつ?」
「そ。私も久しぶりに聞いたよそんな言葉」
ふと、その話でひなかは鼓のある特徴に思い至る。単に常識知らずの田舎者、というより全体的に古臭い様な。
「まぁ田舎だし古臭くなるか」
とはいえ、それもそんなに気にならなかった。現代の常識を知らないということは、必然的に古臭くもなる。
「まぁいいか」
とにかく、問題なのは彼の素性よりもどうやって今後保護していくかであるかだ。大人に任せればいいのだが、その間になるべく現代慣れさせる必要がある。
「あ、なんか曇って来た」
「本当だ」
朝はドタバタして天気予報を見る暇が無かったので、今日雨が降るかは確認していなかった。スマホを見れば、今日は曇り止まりなのが分かるので便利なものだ。いつも折り畳み傘を入れているのでいつ降っても問題はない。
@
結局、雨は降らなかった。しかし曇るだけで暗くなる時間が一気に早くなるものだ。こんな日は真っすぐ家に帰るに限る。そうでなくても鼓を一人家に置いておくのは不安なのだ。
「見つけたぞ……」
「げ、こんな時に!」
そんなタイミングで小澤とその取り巻きが絡んできた。
「チッ、今日はあの妙な忍者はいねぇな」
(あ、これはビビってる)
まず真っ先に鼓の所在を確認する小澤。当然、ガチ凶器を投げられたので警戒する。
「目を付けた女に逃げられたんじゃあ俺の名が泣くぜ」
(すでに泣いてるんだよなぁ……)
不良している時点でアレなのだがひなかは口にしなかった。とりあえず、逃げ道を考える。国道沿いなので車通りは多いが、逆に助けは求めにくい。
「ん?」
どうしたものか、と思った瞬間、変なBGMが流れる。とうとう鼓が専用曲をひっさげてきたのかとひなかが当たりを見渡すと、国道を走るトラックの上に仮面の忍者が立っていた。トラックと共に忍者はこちらへ来る。
自称忍者の鼓と異なり、この忍者は大半の人が思い浮かべるその姿をしている。忍者はトラックがひなか達のところに来ると飛び降り、小澤の前に立ちはだかる。
「誰だお前は」
「……」
忍者は何も言わず、まきびしを投げる。小澤達はその直撃を受けた。
「グワーッ!」
(あれ? まきびしってこんな能動的な攻撃手段だっけ?)
いろいろ疑問があったが、小澤一味が逃げると忍者も通りすがりのトラックに飛び乗って帰っていく。
「あ、待って!」
ひなかの呼びかけに一切答えず、忍者が消えるとBGMも無くなった。
「何あれ……」
とりあえず助かったからいいか、と思いながら帰ることにした。投げたまきびしも道路には一切散らばっていない。
@
「ただいまー」
「主殿―、おかえりなさいー」
家に帰ると、犬の様にパタパタと鼓がやってくる。尻尾があったら降っているだろう。
「なんか家綺麗になった?」
よく見ると、廊下などがピカピカに磨かれている。まさか掃除をしてくれたのだろうか。
「申し訳ございません……夕餉の支度は出来ていないのですが……」
「掃除でも十分だよ。ありがとね」
軽く礼を言っただけで凄く笑顔になる鼓。しかし、心なしか顔が赤い。
「ん? 熱ない?」
「いえ、平気です。忍ですので」
熱があること自体は否定しないので、彼女の予想は当たっていた。が、やはり忍という謎根拠で我慢してしまう。
「多分色々目新しいことが多かったので知恵熱です」
「それならいいけど……」
知恵熱ならまだいいが、色々と心配になるひなかで会った。鼓のことはなんとも思っていないが、一緒に暮らすとそれなりに思うところが出てくるのだ。
養護教諭の先生は鼓がひなかの傍にいたがることを尊重しつつ、その上で対処を考えてくれることになった。この一連の騒動に目途が立ったので、彼女も折れてしばらく保護することになったのだが……。
「主殿―! 朝餉が出来ましたよ!」
日の出と共に庭で焚火をしてご飯を炊く鼓にひなかは顔を覆って溜息をつくしかなかった。本人に悪気が無いのは確かで、良かれと思ってやっているのだろうが、またも現代にそぐわない行動をしてしまう。
「あれ? また拙何かしてしまったのですか……?」
「いや……コンロについて教えなかった私が悪いな、うん」
鼓が着物の裾から出した指をもじもじ絡めて慌てるので、ひなかは事前に教えておくべきを教えなかったことを悔いる。
「いえ、主殿の不手際はございません! あるとしたら全て拙の責任です」
「そんなこと……ないけどなぁ……」
鼓はそれを否定するが、それを矯正することもひなかには出来ない。言ったところで押し問答になるのが目に見えているからだ。
「でもちゃんと炊けてそうね」
ご飯の出来は漂う香りから悪いものでないことが察することが出来た。鍋は煤まみれになったが。
「水の出し方分かったんだ」
変な匂いもしないことから、蛇口の使い方が分からず川の水を汲んでくる様な暴挙には至らなかったと思われる。彼の住んでいるとされる山奥と違い、この辺りの河川は排水路だ。そんなもの、とても食用に出来ない。
「はい、主殿が使っていたので。面妖なものとは思いましたが……」
ひなかが身体を拭いてあげた時に使い方を習得したらしく、不思議には感じていたが使用に問題はない。
「一汁も一菜もご用意出来ませんでしたが……」
「逆によくちゃんとご飯は炊けたわね」
「本来なら男の仕事ではないのですが……拙にはこれくらいしかなく」
男女平等が叫ばれる今でも、田舎ではまだそういう考えが根強いのだろうか。そう言う割には非常によく出来ている。テキパキとご飯をよそって鼓はひなかに渡す。食べてみると、芯も残っておらずふっくらと炊き上がっていた。鍋で炊くのはかなり難しいと聞くが、炊飯ジャーの使い方が分からないくらいなのでむしろ鍋でやるのが当たり前という日常を送ってきたことが予想出来る。
「鼓は食べないの?」
残ったご飯を全ておにぎりに変換している鼓を見て、ひなかは聞いた。昨日も兵糧丸なる妙なものしか食べておらず、それで十分だからと夕食も食べていない。無理に食べさせてアレルギーにでも引っ掛かったらいけないので中々食べさせることが出来ずに困っていたのだ。
「拙は兵糧丸で十分です」
「その兵糧丸も無いみたいだけど……」
肝心の兵糧丸は昨日ので最後らしく、保健室で齧っていたもの以降食べている様子もない。
「暇を見て作ります故。材料の調達は容易です」
「……だといいけど」
彼基準では野原に生えている野草でも、山を下りるとぱったり見なくなる植物も多い。材料が何だかは分からないが、果たして麓で揃えることが出来るのか。
「私は今日も学校行くけど、あんた家で大人しくしてなさい」
「がっこう……? それは分かりませんが、主殿から離れるわけには……」
さすがに鼓をまた連れていくと騒ぎになりかねない。昨日はたまたまよかったが、本来なら部外者、それも男が入れば大問題という場所だ。
「いや、危なくないから」
「いつどんな時でも主殿をお守りするのが役目です。それに、刺客は安全そうな場所を狙ってくるものなのです」
「刺客て」
もしそんなもの出た場合鼓ではどうしようもなさそうだというのはさておき、とにかく何とか理由を付けて家にいて貰わないといけない。
「そうだ、私がいない間家を守っておいてよ。留守番。頼める」
「主殿のご指示とあれば」
上手く言いくるめて同行をキャンセルするのには成功した。しかし、ひなかの予想せぬ問題がもう一つ残っていた。
「男だてらではありますが、家の仕事もお任せください」
「いや大丈夫だから」
家事をすると言い出す鼓。このままでは選択も皿洗いも今朝の様なことになりかねない。
「拙は忍として不十分です、故に少しでも主殿のお役に……」
「家に誰かいるってだけで防犯になるから! 家事ならそんな大変じゃないから自分で出来るし……」
「いえ、主殿のお手を僅かでも煩わせるわけにはいきません」
このままではやはり平行線。仕方なくここは家事が大変でないことを示すしかない。自動食器洗い機の前に移動して、麓の家事がどれだけ楽になったかを実演する。
「ほら、食器洗いだってこの食洗器に突っ込んで、洗剤入れて、ピッてやって終わり! このまま乾かしておけるから」
「な、なんですかこのからくり……」
ところが鼓は食洗器という概念を知らない様子であった。見たことはなくてもこの情報社会で知りもしないというのはやはり何度見ても奇妙な状態である。
「洗濯もほら、これ乾かすとこまでやってくれるのよ」
きっと洗濯機はよくテレビで昭和が取り上げられると出てくる二層式で止まっているんだろうなー、と思いつつひなかは洗濯機を見せる。最新のドラム式洗濯機だ。
「また大きくて珍妙な葛籠ですな……洗濯道具なんですかこれ?」
「え?」
まさか洗濯が板と桶で止まっているとは思わなかったのであった。とりあえずボタンを押して、登録されているコースを起動する。これで洗濯は乾燥まで済ませてくれるとても便利な代物なのだ。ひなかの両親は一人暮らしをする彼女の負担を減らすため、こういう最新の家電を用意してくれるのだ。
「わ! 何が起きているんですか?」
洗濯機が注水を始めたことに驚く鼓。これでも従来のものより静かなはずだが、腰が引けておっかなびっくりという状態になっている。
「何って水入れてんのよ」
「水? そんな葛籠に水が出るんですか?」
「そういうものなの。こんな感じで麓じゃ色々便利だから」
説明するのは面倒……というより案外口にしてみると分かりやすく解説するのが難しいと思ったひなかはそういうことにしておいた。日常生活は結構なブラックボックスに囲まれているものである。
「あ、やらないと思うけどこれには入らないでね。内側から開けられないから」
「は、入りませんそんな恐ろしい葛籠」
「あと終わったらそのままにしておいていいから。しわにならないし」
年下で女の子にも見えなくない子とはいえ、下着などを触られるのには抵抗があったので一応言っておくのであった。
「んじゃ、私学校行くから」
「主殿、お弁当を……えっと入れ物が……」
鼓はおにぎりを作ってくれていた。海苔も巻いていないものであったが。とはいえ、持ち運ぶものがないと困っている様子だったので、ひなかはアルミホイルを取り出しておにぎりを巻く。
「これでよし」
「この輝く紙は……」
もうアルミホイルを知らないくらいでは驚かない。のだが……ここまで山の子と単に片付け切れない要素が多い。
「金属、鉄的なものを薄く伸ばしたもの」
「ええ? 鉄がこんなぺらっぺらに……?」
「それじゃ、もう行くからお留守番頼むね」
混乱真っただ中にいる鼓を置いてひなかは学校へ行く。家を出ると、今日は少し暖かいことが分かった。この時期は寒暖の差が激しく、基本下に着ていくスタイルの制服では調整が難しいのが悩みだ。
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「で、あの忍者ちゃんどんな感じ?」
学校に着くと、クラスメイトに鼓の様子を聞かれる。外野で見ている分には楽しいのだろうが、内野にいると本当大変なので実のところ変わって欲しいと思うのであった。
「もう大変……。庭で焚火してご飯炊くわ、食洗器はおろか洗濯機もアルミホイルも知らないわで……」
「もしかしてマジの忍者がタイムスリップしてきたんじゃないの?」
クラスメイトは茶化す様に言うが、流石にそれはないとひなかも思っていた。
「まさか」
知っているフリは難しくとも、知らないフリならかなり入念に設定を作れば可能だろう。そこまで鼓が出来るかはさておき。
「でもいいなぁ、家事してくれる可愛い忍者がいてくれるなんて……」
「羨ましかったらいつでも譲るけど」
鼓が忠実なのは確かだが、如何せんジェネレーションギャップというレベルで収まらない常識の無さから家事要員としても微妙なところだ。
「マジ? やった、期末試験で忙しいからお店も手伝ってくれると嬉しいなー」
「そういえば期末試験あった……なんてタイミングに来てくれやがった……」
クラスメイトの発言で期末試験のことをひなかは思い出した。本当に忙しい時に面倒を持ち込んでくれたものである。
「あらあら、勉強をしないと試験に通れない人は大変ですわね」
話に横から金髪の女が取り巻きと共に割り込んでくる。彼女は氏旗カリン。何かに付けてひなかへ突っかかってくるクラスメイトだ。
「あ、ハメフラ女」
「いっつも思うのですけどなんですのそのあだ名」
ちなみにひなかの友人からは破滅フラグ系悪役令嬢、通称ハメフラ女と呼ばれているが本人はその意味が分かっていない。
「出た出た、ノー勉アピール。これ信用して自分も勉強しないで挑むと痛い目見るよね」
「ワタクシは本当に勉強していないのです! 不要ですので」
学校あるあるな状況をとりあえず横に置き、カリンはひなかに忠告する。
「あなた、部外者を学校に招いたそうね? あまりそういうことをすると先生からの心象も良くなくってよ?」
「あー、あれね」
鼓のことを言っているのだろうが、もし問題になっても養護教諭を通しているのでそんなに騒ぎには発展しないだろうとひなかは見ていた。むしろ呼んだことで然るべき保護に進んだことを考えれば、自分の元々気にもしていない心象などどうでもいいことだ。
「まぁ、あなたが迂闊な行動をしてくれればお父様の出世にも響いてこちらとしては好都合ですが……」
「犯罪でとっ捕まらなければ別によくね?」
カリンがひなかに突っかかる理由は何となく察しがついている。どうもひなかの父が外務省でカリンの父の上司をやっているらしい。学歴や家柄はカリン父の方が上らしいが、実務能力で勝るのかそういうことになっている。
「いつまでもその余裕が続くといいですわね」
チャイムが鳴ったので、すごすごとカリンは席に戻る。毎日の如く繰り返される一人相撲にダメ忍者の介護まで増えると地味に心労が祟る。単純に面倒臭い。
「はい、ホームルームですよー」
いつもの様にホームルームが始まる。特にいつも言うことはないのだが、今日は微妙に違った。
「いきなりですが不審者の情報が入ってます」
(お? オザワかな?)
ひなかは不審者と聞き、先日現れた小澤一味を思い出す。あれは通報されてもおかしくない連中だ。
「オレンジの着物とマフラーを着た男だか女だかが場所や日時を聞くという報告が……」
話を聞いた瞬間、ひなかと鼓を知る一部クラスメイトが吹き出した。もうこれ完全に鼓である。
「望月さん?」
「いえなんでも」
「……その人物は『今は元禄のはず』と言っていて、子供に見えますがかなり怪しい人物なので皆さんも気を付けて下さいねー」
「元禄?」
しかし妙な点があった。元禄とは江戸時代頃の年号であり、アルミホイルも知らないレベルで学の無い鼓が知っているとは思えないことであった。
「先生、その不審者っていつ頃出たんですか?」
「望月さんも見たんですか? たしか一昨日だった様な……それ以降見られてないみたいですけど」
「んんー?」
詳しい話を先生に聞いても、謎は深まるばかり。まぁ鼓はただの山奥に住み過ぎて常識を知らない子だろうし、今回は関係ないだろうとひなかも聞き流した。
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その日の昼休み。鼓が握ったおにぎりを食べていたひなかはスマホの通知に気づいた。母親からの、鼓について聞いた件の返信であった。
『たしかうちのおばあちゃんが戦時に米兵に襲われた時、忍者が現れて助けてくれたって言ってたよ。でもその時結構暑くてお腹も減ってたから、助けてくれた人が忍者に見えたんじゃないかなって』
「なるほど」
過去にそんな話があった、程度でしかなかった。しかしあまり確証のある内容ではない。あの時期のヒーローと言えば忍者だろうし。何より本人が勘違いじゃないかと言っているレベルだ。
「あれ? お弁当なんて珍しいね」
「ん、まぁね」
いつもは購買でパンを買って済ませるのだが、今日は鼓が作ってくれた。沢山食べる人は大変だろうが、ひなかは平均的な食欲なのでそんなに食費がかさまない。とはいえ、昼食も自炊すれば一か月の生活費を趣味に回せるのでは? そんなことも思ったが、そこまでつぎ込む趣味もないのでその労力は不要だった。
「もしかしてあの忍者の子?」
「そうなんだけど……塩すらないなんて……」
お米は美味しいが、塩すら付けていないので薄味もいいところだ。
「どれどれ」
「あ、ちょっと……」
クラスメイトがおにぎりを一口食べる。
「うん、美味しい。薄味だけど。あの子結構やるのね。焚火でやったの?」
「そうなんだけど……おかげでお鍋が煤だらけよ」
焚火で炊飯器にも劣らないお米を炊けるのは凄いが、現代で求められるスキルではない。
「これ出来るんなら他の家事も出来るんじゃない?」
「どうだか……洗濯機を葛籠だと思ってるくらいだし」
確かに焚火ご飯よりその他の家事より難易度は低い。見た様子ではライターは愚かマッチも使った様子も無かった。
「つづら? あの舌切り雀でお爺さんがもらうやつ?」
「そ。私も久しぶりに聞いたよそんな言葉」
ふと、その話でひなかは鼓のある特徴に思い至る。単に常識知らずの田舎者、というより全体的に古臭い様な。
「まぁ田舎だし古臭くなるか」
とはいえ、それもそんなに気にならなかった。現代の常識を知らないということは、必然的に古臭くもなる。
「まぁいいか」
とにかく、問題なのは彼の素性よりもどうやって今後保護していくかであるかだ。大人に任せればいいのだが、その間になるべく現代慣れさせる必要がある。
「あ、なんか曇って来た」
「本当だ」
朝はドタバタして天気予報を見る暇が無かったので、今日雨が降るかは確認していなかった。スマホを見れば、今日は曇り止まりなのが分かるので便利なものだ。いつも折り畳み傘を入れているのでいつ降っても問題はない。
@
結局、雨は降らなかった。しかし曇るだけで暗くなる時間が一気に早くなるものだ。こんな日は真っすぐ家に帰るに限る。そうでなくても鼓を一人家に置いておくのは不安なのだ。
「見つけたぞ……」
「げ、こんな時に!」
そんなタイミングで小澤とその取り巻きが絡んできた。
「チッ、今日はあの妙な忍者はいねぇな」
(あ、これはビビってる)
まず真っ先に鼓の所在を確認する小澤。当然、ガチ凶器を投げられたので警戒する。
「目を付けた女に逃げられたんじゃあ俺の名が泣くぜ」
(すでに泣いてるんだよなぁ……)
不良している時点でアレなのだがひなかは口にしなかった。とりあえず、逃げ道を考える。国道沿いなので車通りは多いが、逆に助けは求めにくい。
「ん?」
どうしたものか、と思った瞬間、変なBGMが流れる。とうとう鼓が専用曲をひっさげてきたのかとひなかが当たりを見渡すと、国道を走るトラックの上に仮面の忍者が立っていた。トラックと共に忍者はこちらへ来る。
自称忍者の鼓と異なり、この忍者は大半の人が思い浮かべるその姿をしている。忍者はトラックがひなか達のところに来ると飛び降り、小澤の前に立ちはだかる。
「誰だお前は」
「……」
忍者は何も言わず、まきびしを投げる。小澤達はその直撃を受けた。
「グワーッ!」
(あれ? まきびしってこんな能動的な攻撃手段だっけ?)
いろいろ疑問があったが、小澤一味が逃げると忍者も通りすがりのトラックに飛び乗って帰っていく。
「あ、待って!」
ひなかの呼びかけに一切答えず、忍者が消えるとBGMも無くなった。
「何あれ……」
とりあえず助かったからいいか、と思いながら帰ることにした。投げたまきびしも道路には一切散らばっていない。
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「ただいまー」
「主殿―、おかえりなさいー」
家に帰ると、犬の様にパタパタと鼓がやってくる。尻尾があったら降っているだろう。
「なんか家綺麗になった?」
よく見ると、廊下などがピカピカに磨かれている。まさか掃除をしてくれたのだろうか。
「申し訳ございません……夕餉の支度は出来ていないのですが……」
「掃除でも十分だよ。ありがとね」
軽く礼を言っただけで凄く笑顔になる鼓。しかし、心なしか顔が赤い。
「ん? 熱ない?」
「いえ、平気です。忍ですので」
熱があること自体は否定しないので、彼女の予想は当たっていた。が、やはり忍という謎根拠で我慢してしまう。
「多分色々目新しいことが多かったので知恵熱です」
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知恵熱ならまだいいが、色々と心配になるひなかで会った。鼓のことはなんとも思っていないが、一緒に暮らすとそれなりに思うところが出てくるのだ。
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