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第三章(過去編)
◆チャプター27
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「間に合いましたん!」
黒煙が幾筋も立ち昇るアイアンランドの上空に到達したJu52輸送機から、向きが逆の双眼鏡で見えてもいないソフィアの姿を確認したイルザは歓喜の声を響かせた。
「レッツビギンでございますん!」
そして軍服の上に白い防寒コートを羽織っている女性将校がパイロットの隣で操縦席備え付けの無線機に叫んだ直後、プロトサメ人間は胴体左側のハッチから外に飛び出す。
黄色の双眸を有し、創造主と変わらぬ黒服、左上腕にハーケンクロイツなしの赤い腕章を巻いている試作個体は膝を抱えて縦回転しつつ高度を下げ、凄まじい雪吹雪を巻き上げて大地に降り立った。
「新手……ッ?」
傭兵二人をまた棘で刺殺し、さあ敵首領を討ち取らんと四号駆逐戦車を視界に捉えたコハルは、自分とソフィアの間に割り込んだ新参者を前に身構える。
開いた右の掌を雪面に広げながら同膝を折って身を屈め、こちらに精悍な顔を向けている敵増援の姿はまさに――サメだ。
ゆっくりと上体を起こし、中国拳法の構えを見せたプロトサメ人間はすぐさま前に出る。
恐るべき踏み込みの速さ!
危機を感じたコハルは全身から棘々を伸ばすが、鮫怪人は音速で迫る鋭利群をサーカス宜しく回避、直撃コースのそれも肘に付いたヒレ一閃で薙ぎ払う。
そしてプロトサメ人間はそのまま、尽く切り落とされた硬化物が雪没する前に距離を詰めての斬撃を放った。
「コテンのパーですん!」
吐血しながら大きく後退するコハルを見たイルザが輸送機内でガッツポーズを見せると、胸元を切り裂かれたミュータントを瞳に映しているプロトサメ人間は空手の型にも似た構えを取る。
『シュヴァルツヴァルト』
プロトサメ人間の右胸のポーチに収納されている無線機から電子音声が響いた直後に二者は交錯――鰭撃で付け根から両腕を切断させられたコハルの胴体から凄まじい量の血が噴き出した。
「まだ……だ……まだ……!」
しかしミュータントは足元に赤黒い池を作り、激しく両太腿を震わせながらも血走った目を大きく見開いて自分の背後に移動したプロトサメ人間に向き直る。
『ローゼンライン』
今度は左胸側の小型無線機が電子音声を響かせた後、まだ温かい鮮血で両手を真っ赤に染めているプロトサメ人間は再び空手めいた構えを見せてから第二撃を敢行した。
試作体の両足が雪面を離れてから数秒経たずして柔らかな腹部を貫いた五指がコハルの背中から飛び出し、臓物と赤い肉片を周囲にぶちまけた。
「オーイェーでございますん!」
逆向き双眼鏡で今日一人目の実験結果を確認したイルザは、何がオーイェーだ人が大勢死んでいるんだぞと言いたげなパイロットの横でまた大声を上げる。
残された中庭のミュータント達が彼女のマイルストーン兼セックスフレンドに全滅させられたのは、それから僅か七分十二秒後のことであった。
黒煙が幾筋も立ち昇るアイアンランドの上空に到達したJu52輸送機から、向きが逆の双眼鏡で見えてもいないソフィアの姿を確認したイルザは歓喜の声を響かせた。
「レッツビギンでございますん!」
そして軍服の上に白い防寒コートを羽織っている女性将校がパイロットの隣で操縦席備え付けの無線機に叫んだ直後、プロトサメ人間は胴体左側のハッチから外に飛び出す。
黄色の双眸を有し、創造主と変わらぬ黒服、左上腕にハーケンクロイツなしの赤い腕章を巻いている試作個体は膝を抱えて縦回転しつつ高度を下げ、凄まじい雪吹雪を巻き上げて大地に降り立った。
「新手……ッ?」
傭兵二人をまた棘で刺殺し、さあ敵首領を討ち取らんと四号駆逐戦車を視界に捉えたコハルは、自分とソフィアの間に割り込んだ新参者を前に身構える。
開いた右の掌を雪面に広げながら同膝を折って身を屈め、こちらに精悍な顔を向けている敵増援の姿はまさに――サメだ。
ゆっくりと上体を起こし、中国拳法の構えを見せたプロトサメ人間はすぐさま前に出る。
恐るべき踏み込みの速さ!
危機を感じたコハルは全身から棘々を伸ばすが、鮫怪人は音速で迫る鋭利群をサーカス宜しく回避、直撃コースのそれも肘に付いたヒレ一閃で薙ぎ払う。
そしてプロトサメ人間はそのまま、尽く切り落とされた硬化物が雪没する前に距離を詰めての斬撃を放った。
「コテンのパーですん!」
吐血しながら大きく後退するコハルを見たイルザが輸送機内でガッツポーズを見せると、胸元を切り裂かれたミュータントを瞳に映しているプロトサメ人間は空手の型にも似た構えを取る。
『シュヴァルツヴァルト』
プロトサメ人間の右胸のポーチに収納されている無線機から電子音声が響いた直後に二者は交錯――鰭撃で付け根から両腕を切断させられたコハルの胴体から凄まじい量の血が噴き出した。
「まだ……だ……まだ……!」
しかしミュータントは足元に赤黒い池を作り、激しく両太腿を震わせながらも血走った目を大きく見開いて自分の背後に移動したプロトサメ人間に向き直る。
『ローゼンライン』
今度は左胸側の小型無線機が電子音声を響かせた後、まだ温かい鮮血で両手を真っ赤に染めているプロトサメ人間は再び空手めいた構えを見せてから第二撃を敢行した。
試作体の両足が雪面を離れてから数秒経たずして柔らかな腹部を貫いた五指がコハルの背中から飛び出し、臓物と赤い肉片を周囲にぶちまけた。
「オーイェーでございますん!」
逆向き双眼鏡で今日一人目の実験結果を確認したイルザは、何がオーイェーだ人が大勢死んでいるんだぞと言いたげなパイロットの横でまた大声を上げる。
残された中庭のミュータント達が彼女のマイルストーン兼セックスフレンドに全滅させられたのは、それから僅か七分十二秒後のことであった。
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