【完結】婚約破棄された伯爵令嬢、今度は偽装婚約の殿下に溺愛されてます

ゆーぴー

文字の大きさ
5 / 52
第一章

婚約指輪が選べませんっ!

しおりを挟む

「……婚約指輪、ですか?」

「ああ。好きなデザインで作らせよう」

 エルシアと二人で自室にいる、という緊張感ともうすぐ彼女を家に帰さなければならないという寂しさからクロードは二人のこれからに関わる話を始めた。

「そんな物を頂くわけには。契約上の関係ですし……」

(それに、わたくしカザルス様からも婚約指輪なんて貰ってませんし)



 エルシアは元婚約者のカザルスを思って溜め息をつく。
 カザルスから私的に渡された物は何もない。


 誕生日等には細々とした物が公爵家から贈られてきたし、婚約指輪は公爵夫人のお下がりを頂く予定だった。


 特にそれを不満に思ったこともなかったが、今にして思えば不信に思うべきだったのだ。

(わたくし、本当に愛されてなかったわねぇ)


 そんなエルシアの憂鬱を遠慮だと思ったクロードは話を続ける。

「エルシア、婚約指輪は俺が贈りたいんだ。契約上とは言え婚約者になるのだし、君さえ良ければ貰って欲しいんだがーー」

 ふふふ


 チラチラとエルシアの顔色を伺うクロードが何だか大きな犬みたいで可愛い、と彼女は思わず微笑む。

 嫌われているとばかり思っていたのに、偽装婚約の契約を交わしてからエルシアの中で彼の印象は変わりつつあった。


(殿下は、いつも一生懸命でいらっしゃるわ)



 長身でイケメンで、と言った風貌は変わらないのに私生活に触れたからだろうか。

「では、お気持ち程度の物でをお願い致しますわ、殿下」

 エルシアは控え目な物を、というつもりで言った言葉であったが、気持ち程度、という言葉はクロードの心に火をつける。


「ありがとう、エルシア! 必ず納得いくものを見つけよう。では早速、王宮専属の宝石商に頼んでくる!」

「は、はい」

 思いの丈を指輪に込めよう、と光の速度で去って行くクロードであった。



 ★


 後日。

「こちらは、この国最高峰のダイヤでございます。そしてこちらは、東洋から取り寄せた貴重なルビーでございまして……」

「ちょ、ちょっと待って下さい」

 テーブルの上にこれでもか、と並べられた宝石はそのどれもが超一級品であることは説明されなくても伝わってくる程の大きさと輝きである。

「ん? ああ。エルシア、デザインはこれから職人と相談して変えることも出来るから心配いらないよ?」

(そういう意味じゃないってばぁ~~)

 腰が引けるエルシアはなんとか抗議の声を出す。

「で、殿下さすがに、これは……」

「俺のエルシアへの気持ちだからな!」

 これで気持ちは伝わるのでは、と爽やかに笑うクロードとは反対に益々ワケが分からなくなるエルシアである。

(え、気持ち? 偽装婚約の慰謝料的な?)

「あの、もう十分良くして頂いておりますので……」

 なんとか受け取らずにしようとしているエルシアを見て、さすがのクロードも気が付いた。

ーーこれは断ろうとしている、と。

 だが、気持ちだとエルシアに言われた婚約指輪を受け取って欲しいクロードは言葉を連ねる。

「その、何だ。それなりの物でないと周りに不信に思われる。特に、ご令嬢達は目ざといだろう」

(うぅぅ……そう言われると、確かにそうかも)

 咄嗟にひねり出した、偽装婚約がバレないようにと言う言い訳はエルシアを納得させたようである。
 彼女は困った顔をしながらもコクン、と頷いた。

「よかった……!! エルシアが好きな物を選んでくれ」

(好きな物を……)

 エルシアは好きな物を選べ、と言われることに戸惑いを隠せなかった。
 彼女は家族から愛されて育った自覚はある。

 だが、幼い頃より実家の経済状況を理解していた彼女は、好みよりも体裁を整えることに重きを置いてきた。
 勿論、カザルスから好きな物を選んで、と言われた事もない。

「……分かりませんわ、殿下。選べませんの」

 何だか無性に寂しい気持ちになったエルシアは、涙目でクロードを見つめたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~

ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、 夜会当日── 婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、 迎えに来ることはなかった。 そして王宮で彼女が目にしたのは、 婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。 領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、 感情に流されることもなく、 淡々と婚約破棄の算段を立て始める。 目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、 頭の中で、今後の算段を考えていると 別の修羅場が始まって──!? その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、 エヴァンジェリンの評価と人生は、 思いもよらぬ方向へ転がり始める── 2月11日 第一章完結 2月15日 第二章スタート予定

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした

鍛高譚
恋愛
『幼すぎる』と婚約破棄された公爵令嬢ですが、意識不明から目覚めたら絶世の美女になっていました 幼すぎる、頼りない――そんな理由で婚約者に見限られた公爵令嬢シルフィーネ。 心ない言葉に傷ついた彼女は、事故に遭い意識不明となってしまう。 しかし一年後、彼女は奇跡的に目を覚ます。 そして目覚めた彼女は――かつての面影を残しつつも、見る者すべてを惹きつける絶世の美女へと変貌を遂げていた! 周囲の反応は一変。婚約破棄を後悔する元婚約者、熱視線を送る他家の令息たち、さらには王太子からの突然の縁談まで舞い込み――? 「もう、誰にも傷つけられたくない。私は私の幸せを手に入れるの」 これは、冷たく突き放された少女が美しく咲き誇り、誇りと自由を手に入れる、ざまぁ&逆転恋愛劇。

処理中です...