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第一章
では、俺が選ぼう
しおりを挟む「選べない、のか?」
エルシアの涙目、という初めて見る顔に思わずポーーと見惚れていたクロード。
だが、ハッと我に帰ると彼は優しくエルシアの手を取った。
ーーエルシアはどんな顔も美しいが、やはり彼女には笑っていて欲しい。
「選べないなら、この手に一番似合う物を俺が選んでもいいか?」
クロードは思う。
エルシアが分からないなら、自分が最良の物を選びたい。
そしてそれを彼女が気に入ってくれたなら、自分は幸せとしか言いようがない気持ちになるだろう。
「お、お願いいたします」
オズオズと答えるエルシア。
「うむ。エルシアの白磁のような手には、大きすぎるよりシンプルで輝きが美しい宝石が似合うな」
ドキッ。
(は、白磁のような手って。それに指輪を選ぶためだけれど距離が近いわ)
クロードは宝石を選ぶのに夢中で気が付いていない。
だが、エルシアは手を取られ、顔が付きそうな程の近さにいるクロードにドギマギしてしまっていた。
「やはり、エルシアにはダイヤが繊細に花を形作るこの指輪が一番似合うと思うが、どうだ?」
やはりこれだろう、と振り返ったクロードと手を取られたままのエルシアの目が合う。
途端に二人は真っ赤になって手を離した。
(勘違いしちゃ、ダメ)
エルシアは自分に言い聞かせる。
殿下は偽装婚約がバレない為に指輪を選んでくれただけ。
一生懸命に見えたのは、殿下が真面目だから。
これは、わたくしの為じゃないのよ。
(それでもーー。嬉しい)
「あ、ありがとうございます。殿下」
クロードがエルシアの為に選んだ花形の指輪は、キラキラと彼女の手を彩る。
それを見て思わず微笑むエルシア。
そして、彼女の笑顔が見れた事に嬉しそうにするクロードは同時に笑い合ったのであった。
こうして無事に思いの丈を指輪に込めて贈ることが出来たクロードであったが。
指輪の請求書を見たケインから、『では、馬車馬のように働いて下さいね』と大量の業務を手渡され、乾いた笑いで答えたのであった。
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