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03 追撃、そして
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「『闇よ、我が力となり敵を穿て。シュライド』!」
俺は呪文を唱え、大鎌をリュカウスの背に浴びせた……筈だった。
「なっ、避けた!?」
リュカウスのターゲットは間違いなくリゲルだった筈だ。その状態で背後からの攻撃を避けるだなんて、あり得ない。防ぎようが無い。
「グルシュッ……!」
しかしリュカウスも完全に避けきれたわけではないらしく、左足から血が滴っていた。
……血が滴っていた?
「リゲルあれ、血が……!」
「マジだ……なんなんだよ今日は」
本来、ロスアスでは血流エフェクトは流れない仕様だった。
それはこのVRという非常にリアルな世界と現実との境目をつくるためだとか、プレイしている子供の教育的によろしくないだとか、様々な理由があるが、とにかく、血流エフェクトは本来無い筈なのだ。
「グルァッ!」
「俺が止める! アッシュ、もう一度攻撃だ!」
俺は一旦思考を止め、リュカウスの背後に回った。
今度はワサラハが近くに居ない分、身体を大きく使う技を使える。
「『闇よ、我が刃となりて敵を斬り裂け。ラセツザン』!」
《ラセツザン》━━横薙ぎに払う闇属性攻撃スキルだ。縦斬り(若干斜め)のコンパクトな《シュライド》と違い、そのダメージ量は大きいうえに範囲もそこそこ広い。欠点としては硬直時間が長い事だが……。
「うえっ、なんだこれっ?」
先ほどはただかすっただけでなんとも思えなかったが、リュカウスを切り裂いた瞬間、あまりにも生々しいその感触に、俺は悪寒を感じた。
それだけでない。リュカウスは切り裂かれたその背から、大量の血液を撒き散らした。当然俺にたっぷりとそれはこびりついた。
「グル……グルル……」
リュカウスは、血をだらだらと流しながら、どこへいくのか歩き始めた。
長くない。俺は確信していた。俺が《ラセツザン》を放った時、触れてはいけないものを切り裂いてしまったからだ。
「グル、グルァッ、グ…………━━」
リュカウスは地面に倒れ、一瞬びくりと身体を震わし━━絶命した。
「なんなんだ……これ」
俺は握っていた鎌を落とした。
「ワサラハ! 大丈夫か?」
俺がリュカウスの死体を眺めていると、リゲルがワサラハに声をかけ、駆け寄っている音が聞こえた。
そうだ。ワサラハ。俺達プレイヤーも仕様が変わっていたら、ワサラハは……? 考えるのもおぞましいが、そんなことも言ってられない。
俺は二人の元へ駆け寄った。
「い、痛い……ああぁ……」
ワサラハはリュカウスに切り裂かれた左肩を抑え、身を震わせていた。
「落ち着け、ワサラハ。落ち着いてヒールをかけるんだ」
リゲルがワサラハの背を片手で抑え、僅かに持ち上げた。ワサラハは頷きはしなかったものの、右手を傷から数センチ離し、詠唱を始めた。
「リル……ヒール…………アルタ……」
ワサラハが途切れ途切れの詠唱を言い終えると、緑のエフェクトが傷口に現れ、甲高い音声と共に消え去った。
傷は消えていた。しかし、流れた血はそのままだ。
「ワサラハ、深呼吸して落ち着け。アッシュ、俺達も一旦落ち着いて、状況を整理しよう」
先ほどまでイライラしていたリゲルとは別人のように頼りがいがあるな。こういうときはリーダーらしいから俺達は付いていけるのだ。そういえばリアルでもそうだったな。
「あ、てか俺一旦武器取ってくる」
リゲルは頷き、行っていいことを手振りで表現した。
俺は小走りで近づき、紫紺色と黒でデザインされた鎌を手に取る。
ずしりとくる重みに、俺は安堵の息を吐いた。
「お待た━━」
お待たせ。という言葉が遮られた。
俺が武器を背に預けながら振り向くと、どこからか矢が飛んできたからだ。
その矢は、俺の左腕に突き刺さった。
「…………っ、がぁぁぁぁ!」
自分でも恐ろしいと感じる程の悲鳴をあげた。
突き刺さった部分が酷く熱い。どくどくと流れる血液が、さらに俺の思考を鈍らせる。
「アッシュ!」
「来るなッ!」
俺はリゲルにそう怒鳴り、飛んできた方向から背を向けるように木の影に潜り込んだ。
「これ、抜いたほうがいいのか?」
声を震わせながら、そんな独り言を呟く。
突き刺さった矢を眺め、抜こうか抜かまいか考えていると、すとんと矢が俺の隠れている木の幹に刺さった。
「おい、大丈夫か? そこのふたり!」
異常な程にかいている汗をぬぐうと同時に、そんな声が聞こえてきた。
俺は呪文を唱え、大鎌をリュカウスの背に浴びせた……筈だった。
「なっ、避けた!?」
リュカウスのターゲットは間違いなくリゲルだった筈だ。その状態で背後からの攻撃を避けるだなんて、あり得ない。防ぎようが無い。
「グルシュッ……!」
しかしリュカウスも完全に避けきれたわけではないらしく、左足から血が滴っていた。
……血が滴っていた?
「リゲルあれ、血が……!」
「マジだ……なんなんだよ今日は」
本来、ロスアスでは血流エフェクトは流れない仕様だった。
それはこのVRという非常にリアルな世界と現実との境目をつくるためだとか、プレイしている子供の教育的によろしくないだとか、様々な理由があるが、とにかく、血流エフェクトは本来無い筈なのだ。
「グルァッ!」
「俺が止める! アッシュ、もう一度攻撃だ!」
俺は一旦思考を止め、リュカウスの背後に回った。
今度はワサラハが近くに居ない分、身体を大きく使う技を使える。
「『闇よ、我が刃となりて敵を斬り裂け。ラセツザン』!」
《ラセツザン》━━横薙ぎに払う闇属性攻撃スキルだ。縦斬り(若干斜め)のコンパクトな《シュライド》と違い、そのダメージ量は大きいうえに範囲もそこそこ広い。欠点としては硬直時間が長い事だが……。
「うえっ、なんだこれっ?」
先ほどはただかすっただけでなんとも思えなかったが、リュカウスを切り裂いた瞬間、あまりにも生々しいその感触に、俺は悪寒を感じた。
それだけでない。リュカウスは切り裂かれたその背から、大量の血液を撒き散らした。当然俺にたっぷりとそれはこびりついた。
「グル……グルル……」
リュカウスは、血をだらだらと流しながら、どこへいくのか歩き始めた。
長くない。俺は確信していた。俺が《ラセツザン》を放った時、触れてはいけないものを切り裂いてしまったからだ。
「グル、グルァッ、グ…………━━」
リュカウスは地面に倒れ、一瞬びくりと身体を震わし━━絶命した。
「なんなんだ……これ」
俺は握っていた鎌を落とした。
「ワサラハ! 大丈夫か?」
俺がリュカウスの死体を眺めていると、リゲルがワサラハに声をかけ、駆け寄っている音が聞こえた。
そうだ。ワサラハ。俺達プレイヤーも仕様が変わっていたら、ワサラハは……? 考えるのもおぞましいが、そんなことも言ってられない。
俺は二人の元へ駆け寄った。
「い、痛い……ああぁ……」
ワサラハはリュカウスに切り裂かれた左肩を抑え、身を震わせていた。
「落ち着け、ワサラハ。落ち着いてヒールをかけるんだ」
リゲルがワサラハの背を片手で抑え、僅かに持ち上げた。ワサラハは頷きはしなかったものの、右手を傷から数センチ離し、詠唱を始めた。
「リル……ヒール…………アルタ……」
ワサラハが途切れ途切れの詠唱を言い終えると、緑のエフェクトが傷口に現れ、甲高い音声と共に消え去った。
傷は消えていた。しかし、流れた血はそのままだ。
「ワサラハ、深呼吸して落ち着け。アッシュ、俺達も一旦落ち着いて、状況を整理しよう」
先ほどまでイライラしていたリゲルとは別人のように頼りがいがあるな。こういうときはリーダーらしいから俺達は付いていけるのだ。そういえばリアルでもそうだったな。
「あ、てか俺一旦武器取ってくる」
リゲルは頷き、行っていいことを手振りで表現した。
俺は小走りで近づき、紫紺色と黒でデザインされた鎌を手に取る。
ずしりとくる重みに、俺は安堵の息を吐いた。
「お待た━━」
お待たせ。という言葉が遮られた。
俺が武器を背に預けながら振り向くと、どこからか矢が飛んできたからだ。
その矢は、俺の左腕に突き刺さった。
「…………っ、がぁぁぁぁ!」
自分でも恐ろしいと感じる程の悲鳴をあげた。
突き刺さった部分が酷く熱い。どくどくと流れる血液が、さらに俺の思考を鈍らせる。
「アッシュ!」
「来るなッ!」
俺はリゲルにそう怒鳴り、飛んできた方向から背を向けるように木の影に潜り込んだ。
「これ、抜いたほうがいいのか?」
声を震わせながら、そんな独り言を呟く。
突き刺さった矢を眺め、抜こうか抜かまいか考えていると、すとんと矢が俺の隠れている木の幹に刺さった。
「おい、大丈夫か? そこのふたり!」
異常な程にかいている汗をぬぐうと同時に、そんな声が聞こえてきた。
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